StudyMed医師国家試験

持病があっても「健康」―健康寿命の定義は「日常生活の制限」で考える

第120回医師国家試験 C問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第6問

健康日本21(第三次)における健康寿命の定義で正しいのはどれか。

  1. a.自立歩行ができる期間
  2. b.働くことができる期間
  3. c.医療を受けていない期間
  4. d.定期的な通院をせずに生活できる期間
  5. e.健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、健康日本21(第三次)における健康寿命の定義を問う問題だ。着眼点は、健康を「病気の有無」で測るのか、「生活機能」で測るのかという視点。まず健康日本21がどんな計画か、覚えているかな。
医学生医学生
健康増進法に基づく国民健康づくり運動ですよね。公衆衛生の講義で、第三次は2024年度から始まったと習いました。
ドクタードクター
その通り。計画期間は2024年度から2035年度までの12年間で、最上位の目標として「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」が掲げられている。この目標は第二次から引き継がれたものだ。では、健康寿命とは何の期間だと思う?
医学生医学生
病気をせずに過ごせる期間、というイメージでした。医療を受けていない期間が近いでしょうか。
ドクタードクター
多くの人がそう考えがちだけれど、そこが落とし穴なんだ。健康寿命の定義は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」。ポイントは、病気や医療の利用の有無ではなく、日常生活が制限されているかどうかで判断することだ。
医学生医学生
ということは、高血圧で薬を飲んでいる人でも、普通に生活できていれば健康寿命に含まれるんですか。
ドクタードクター
そう。慢性疾患をもって通院・服薬していても、日常生活に制限がなければ健康寿命の期間に含まれる。だから「定期的な通院をせずに生活できる期間」も誤りだ。高齢者の多くは何らかの疾患で通院しているから、通院の有無で区切ると実態とかけ離れてしまう。
医学生医学生
「医療を受けていない期間」も同じ理由で違うんですね。健診や予防接種も医療サービスですし。
ドクタードクター
よく気づいたね。健康な人でも健診やがん検診、予防接種を受ける。医療の利用の有無は基準にならない。次に「自立歩行ができる期間」はどうかな。
医学生医学生
歩けるかどうかだけだと、認知症で生活に支障がある人も健康に含まれてしまいそうです。
ドクタードクター
その通り。歩行という身体機能の一側面に限定していて狭すぎる。逆に、車椅子を使っていても日常生活に制限を感じていなければ含まれうる。「働くことができる期間」はどう?
医学生医学生
就労は定年や雇用環境にも左右されるので、健康の指標としては不適切ですね。退職した高齢者がみんな不健康扱いになってしまいます。
ドクタードクター
その通り。特定の一側面で区切る定義はすべて不適切で、日常生活全般の制限の有無で捉えるものが正解だ。では実際にどうやって算出しているか知っているかな。
医学生医学生
そこまでは知りませんでした。アンケートのようなものでしょうか。
ドクタードクター
いい推測だ。国民生活基礎調査の大規模調査で「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」と尋ね、「ない」と答えた人の割合と生命表を組み合わせて、サリバン法で「日常生活に制限のない期間の平均」を算出する。大規模調査が3年ごとなので、算出も3年ごとだ。補完的指標として、主観的健康感に基づく「自分が健康であると自覚している期間の平均」や、介護保険の要介護2以上を不自立とみなす「日常生活動作が自立している期間の平均」も使われている。
医学生医学生
要介護度を使う指標もあるんですね。平均寿命との差はどれくらいなんでしょうか。
ドクタードクター
平均寿命と健康寿命の差、つまり日常生活に制限のある不健康期間は、男性で約9年、女性で約12年だ。この期間が長いほど医療費や介護給付費が増え、本人や家族のQOLも下がる。だから健康日本21では「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」が目標とされている。
医学生医学生
寿命を延ばすだけでなく、元気に過ごせる期間を延ばすことが大事、ということですね。地域医療実習で訪問した介護予防教室の意味がわかった気がします。
ドクタードクター
まさにそういう取り組みが健康寿命の延伸につながる。第三次ではほかに、個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質の向上、そして胎児期から高齢期までの生涯を通じた健康づくりであるライフコースアプローチが基本的な方向に掲げられている。臨床でも、病気を治すことだけでなく、患者さんの生活機能をどう保つかという視点を持っておきたいね。

まとめ

健康日本21(第三次)(2024〜2035年度)では、健康寿命を「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義し、「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を最上位の目標としています。健康の基準は病気や通院・服薬の有無ではなく日常生活の制限の有無であり、慢性疾患で通院していても生活に支障がなければ健康寿命に含まれます。算出には国民生活基礎調査の回答と生命表を用いたサリバン法が使われ、平均寿命との差である不健康期間は男性約9年、女性約12年とされます。歩行・就労・医療の利用といった一側面ではなく生活機能全体で健康を捉える考え方は、公衆衛生の理解だけでなく、患者の生活を支える臨床の視点にも直結します。

解答・解説

正解はeです

問われていること

健康日本21(第三次)は、2024年度から2035年度までの12年間を計画期間とする、わが国の国民健康づくり運動(健康増進法に基づく基本方針)である。そのビジョンは「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」であり、最上位の目標として「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」が掲げられている(この目標は第二次から引き継がれている)。

健康寿命の定義

健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義される。ポイントは、病気の有無や医療の利用の有無ではなく、「日常生活が制限されているかどうか」という生活機能の観点で健康を捉えていることである。慢性疾患をもち通院・服薬をしていても、日常生活に制限がなければ健康寿命の期間に含まれる。

考え方

選択肢のうち、歩行・就労・医療の利用・通院といった特定の一側面だけで区切る定義はすべて不適切である。日常生活全般の制限の有無で捉える選択肢が正しい定義となる。

選択肢考察

  1. ×a.  自立歩行ができる期間

    歩行能力という身体機能の一側面に限定しており、定義として狭すぎる。歩行が自立していても、認知機能の低下や精神疾患などで日常生活が制限されていれば健康寿命には含まれない。逆に、車椅子を使用していても日常生活に制限を感じていなければ含まれうる。

  2. ×b.  働くことができる期間

    就労できるかどうかは年齢、定年制度、雇用環境、家庭事情など健康以外の社会的条件に大きく左右される。この定義では退職後の高齢者や就労しない人がすべて「健康でない」ことになり、健康寿命の考え方と一致しない。

  3. ×c.  医療を受けていない期間

    健康な人でも健康診断、予防接種、がん検診などの医療サービスを受ける。また、医療を受けていても日常生活に制限がなければ健康寿命に含まれる。医療の利用の有無は健康寿命の基準ではない。

  4. ×d.  定期的な通院をせずに生活できる期間

    高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患で定期通院していても、適切に管理され日常生活に支障がなければ健康寿命の期間に含まれる。高齢者の多くは何らかの疾患で通院しており、通院の有無で区切ると実態と大きくかけ離れる。

  5. ○e.  健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間

    健康日本21(第三次)(第二次も同じ)における健康寿命の定義そのものである。具体的には、国民生活基礎調査(大規模調査年)の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に「ない」と答えた人の割合と、生命表の情報とを組み合わせ、「日常生活に制限のない期間の平均」として算出される。

健康寿命の算出

・主指標は「日常生活に制限のない期間の平均」で、国民生活基礎調査の上記質問への回答と生命表を用い、サリバン法によって算出される。国民生活基礎調査の大規模調査が3年ごとのため、算出も3年ごとである。 ・補完的指標として「自分が健康であると自覚している期間の平均」(主観的健康感に基づく)や、「日常生活動作が自立している期間の平均」(介護保険の要介護2以上を不自立とみなして算出)も用いられる。

平均寿命との差

・平均寿命と健康寿命の差は「日常生活に制限のある期間(不健康期間)」にあたり、男性で約9年、女性で約12年である。 ・この差が大きいほど、医療費・介護給付費の増大や本人・家族の生活の質(QOL)低下につながるため、健康日本21では「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」が目標とされている。

健康日本21(第三次)の全体像

・期間: 2024〜2035年度。 ・基本的な方向: ①健康寿命の延伸・健康格差の縮小、②個人の行動と健康状態の改善(生活習慣の改善、生活習慣病の発症予防・重症化予防、生活機能の維持・向上)、③社会環境の質の向上、④ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり。 ・ライフコースアプローチとは、胎児期から高齢期に至るまでの人の生涯を経時的に捉えた健康づくりを指し、こども、高齢者、女性の健康が取り上げられている。 ・国際的にはWHOが健康寿命(Healthy life expectancy;HALE)を用いており、算出方法は日本の指標とは異なる。

POINT

・健康寿命=「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」。 ・病気や通院・服薬があっても、日常生活に制限がなければ健康寿命に含まれる。 ・国民生活基礎調査の回答と生命表からサリバン法で算出する(日常生活に制限のない期間の平均)。 ・健康日本21(第三次)(2024〜2035年度)の最上位目標は「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」。 ・平均寿命と健康寿命の差(不健康期間)は男性約9年、女性約12年。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。