StudyMed医師国家試験

その健診、根拠法はどれ?―健康増進法と高齢者医療確保法の「線引き」を見抜く

第120回医師国家試験 C問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第15問

健康増進法に基づく事業でないのはどれか。

  1. a.受動喫煙防止対策
  2. b.国民健康・栄養調査
  3. c.国民健康づくり運動
  4. d.市町村によるがん検診
  5. e.特定健診・特定保健指導

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の法規の問題だ。健康増進法がどんな事業の根拠になっているかを問い、「でないのはどれか」と聞いている。似たような健診や保健事業が並ぶから、それぞれの根拠法と実施主体をセットで整理できているかがカギになる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で法律がたくさん出てきて、どれがどの法律なのか混乱しがちな分野です。
ドクタードクター
まずは健康増進法の成り立ちから押さえよう。2002年に制定されて、栄養改善法を引き継ぎ、国民健康づくり運動である健康日本21を法的に裏付けるために作られた法律なんだ。
医学生医学生
ということは、国民健康づくり運動はそのまま健康増進法の柱ですね。
ドクタードクター
その通り。健康日本21は2000年に始まり、健康増進法に基づいて国が基本方針を定めている。2024年度からは第三次が進んでいる。都道府県には健康増進計画の策定が義務、市町村には努力義務が課されている点も出題されやすい。
医学生医学生
国民健康・栄養調査は名前に「健康」も「栄養」も入っているので、栄養改善法から来たものですか。
ドクタードクター
いい推論だね。前身は栄養改善法に基づく国民栄養調査で、健康増進法の施行とともに今の名前になった。厚生労働大臣が毎年実施して、身体の状況や栄養摂取量、喫煙や飲酒などの生活習慣を調べ、健康日本21の目標設定や評価に使われる。
医学生医学生
受動喫煙防止はどうでしょう。病院実習のとき、敷地内が全面禁煙になっていたのを覚えています。
ドクタードクター
それも健康増進法だ。制定当初は施設管理者の努力義務だったけれど、2018年の改正で「望まない受動喫煙」をなくすために義務化され、2020年4月に全面施行された。病院や学校、行政機関などは敷地内禁煙、その他の多くの人が利用する施設は原則屋内禁煙で、違反には罰則もある。
医学生医学生
残るのは市町村のがん検診と特定健診ですね。どちらも健診なので、同じ法律の気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だ。かつては老人保健法が40歳以上の基本健康診査もがん検診も担っていた。ところが2008年の制度改革で、これが二つに分かれたんだ。
医学生医学生
分かれた、というのはどういうことですか。
ドクタードクター
老人保健法は高齢者の医療の確保に関する法律、つまり高齢者医療確保法に改正・改称された。そこで40〜74歳を対象にメタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導が新設され、医療保険者に実施が義務付けられた。一方、市町村が行っていたがん検診などは健康増進法の健康増進事業に移されたんだ。
医学生医学生
だから、健康増進法に基づかないのは特定健診・特定保健指導なんですね。実施するのが市町村ではなく保険者、というところがヒントになりそうです。
ドクタードクター
正解。「健診は保険者で高齢者医療確保法、がん検診は市町村で健康増進法」と覚えておくといい。特定健診の目的は生活習慣病の予防による医療費の適正化で、腹囲やBMIに血圧・脂質・血糖・喫煙歴を組み合わせてリスクを判定し、動機付け支援か積極的支援の保健指導につなげる。
医学生医学生
市町村国保や協会けんぽ、健康保険組合が実施主体ということですね。CBTの勉強では腹囲の基準ばかり覚えていました。
ドクタードクター
基準値も大事だけど、根拠法と実施主体も問われるからね。ついでに他の健診も整理しておこう。乳幼児健診は母子保健法、学校健診は学校保健安全法、職場の一般健康診断は労働安全衛生法で事業者が実施する。75歳以上の健診は高齢者医療確保法に基づき後期高齢者医療広域連合が行う。
医学生医学生
市町村の健康増進事業には、がん検診以外に何が含まれますか。
ドクタードクター
歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診、健康教育や健康相談などだ。がん検診は国の指針で胃・大腸・肺・乳・子宮頸の5つが定められている。臨床の場でも、患者さんがどの制度で健診を受けているかを知っておくと、結果のフォローや保健指導への橋渡しがしやすくなるよ。
医学生医学生
誰が、どの法律で、誰を対象にやっているか、の3点セットで覚えるようにします。

まとめ

健康増進法は2002年に栄養改善法を引き継いで制定され、健康日本21の法的基盤として、国民健康・栄養調査、市町村によるがん検診などの健康増進事業、受動喫煙防止対策(2018年改正で義務化・罰則付き)を定めています。これに対し特定健診・特定保健指導は、2008年に老人保健法を改正・改称した高齢者医療確保法に基づき、40〜74歳を対象に医療保険者が実施する事業です。同じ2008年の改革で、がん検診などは市町村の健康増進事業として健康増進法へ移されたため、「健診は保険者・高齢者医療確保法、がん検診は市町村・健康増進法」という役割分担が解答の鍵になります。乳幼児健診は母子保健法、学校健診は学校保健安全法、職場健診は労働安全衛生法と、健診ごとに根拠法と実施主体をセットで整理しておくことが、公衆衛生の得点と実際の保健医療連携の両方に役立ちます。

解答・解説

正解はeです

健康増進法がどのような事業の根拠法になっているかを問う一般問題である。「でないのはどれか」と問われているので、根拠法が健康増進法以外のものを選ぶ。 健康増進法は2002年に制定(2003年施行)された法律で、それまでの栄養改善法を発展的に引き継ぎ、国民健康づくり運動「健康日本21」を法的に裏付ける目的で作られた。主な内容は次のとおりである。 ・基本方針と健康増進計画:国が基本方針を定め、都道府県は健康増進計画の策定が義務、市町村は努力義務。 ・国民健康・栄養調査の実施。 ・市町村による健康増進事業(健康手帳の交付、健康教育、健康相談、がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診など)。 ・食事摂取基準の策定、特別用途表示の許可など。 ・受動喫煙の防止(2018年改正で強化)。 これに対し、40〜74歳を対象とするメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診と保健指導は、2008年に老人保健法が改正・改称された「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」に基づき、医療保険者に実施が義務付けられた事業である。同じ2008年の制度改革で、市町村が行っていたがん検診などは老人保健法から健康増進法へ移された。この「健診は保険者・高齢者医療確保法、がん検診は市町村・健康増進法」という役割分担を押さえておくことが解答の鍵である。

選択肢考察

  1. ×a.  受動喫煙防止対策

    健康増進法に基づく事業である(本問では正解にならない)。制定当初は多数の者が利用する施設の管理者に受動喫煙防止の努力義務を課すものであったが、2018年の改正(2020年4月全面施行)で「望まない受動喫煙」をなくすことを目的に、施設の種類ごとに禁煙措置が義務化された。学校・病院・児童福祉施設・行政機関などは敷地内禁煙(屋外に喫煙場所の設置は可能)、その他の多数の者が利用する施設は原則屋内禁煙(喫煙専用室などを設置可)とされ、違反には罰則がある。

  2. ×b.  国民健康・栄養調査

    健康増進法に基づく事業である(本問では正解にならない)。健康増進法第10条により厚生労働大臣が毎年実施する調査で、国民の身体の状況、栄養素等摂取量、食習慣・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣を把握する。前身は栄養改善法に基づく国民栄養調査で、健康増進法の施行に伴い現在の名称となった。調査結果は健康日本21の目標設定や評価に用いられる。

  3. ×c.  国民健康づくり運動

    健康増進法に基づく事業である(本問では正解にならない)。健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)は2000年に開始され、2002年制定の健康増進法がその法的基盤となった。同法に基づき国が「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」を定め、第二次(2013〜2023年度)を経て、2024年度から健康日本21(第三次)が進められている。

  4. ×d.  市町村によるがん検診

    健康増進法に基づく事業である(本問では正解にならない)。市町村が住民に対して行うがん検診は、健康増進法第19条の2に基づく健康増進事業に位置付けられている。かつては老人保健法に基づく保健事業であったが、2008年の制度改正で健康増進法に移された。対象と方法は国の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの5つが定められている。

  5. ○e.  特定健診・特定保健指導

    健康増進法に基づく事業ではないため、これが正解である。特定健康診査・特定保健指導は高齢者医療確保法に基づき、2008年度から医療保険者(市町村国保、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)に実施が義務付けられた。対象は40〜74歳の被保険者・被扶養者で、腹囲やBMIに血圧・脂質・血糖・喫煙歴を組み合わせてリスクを判定し、その程度に応じて「動機付け支援」または「積極的支援」の保健指導を行う。目的は生活習慣病の予防による医療費の適正化である。

健診・検診と根拠法の整理

・特定健診・特定保健指導(40〜74歳):高齢者医療確保法、実施主体は医療保険者。 ・後期高齢者の健診(75歳以上):高齢者医療確保法に基づき後期高齢者医療広域連合が行う(努力義務)。 ・がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診:健康増進法、実施主体は市町村。 ・乳幼児健診(1歳6か月児、3歳児):母子保健法、市町村。 ・学校健診:学校保健安全法。 ・職場の一般健康診断:労働安全衛生法、事業者。

健康増進法のその他の主な規定

・食事摂取基準:厚生労働大臣が定める(日本人の食事摂取基準、5年ごとに改定)。 ・特別用途食品の表示許可:消費者庁長官が許可する(病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製乳、えん下困難者用食品など)。 ・特定給食施設への栄養管理の指導。 【制度の変遷】栄養改善法(1952年)→健康増進法(2002年制定)。老人保健法(1982年)→高齢者医療確保法(2008年に改称・改正)。2008年の改正で、40歳以上の基本健康診査は保険者による特定健診へ、がん検診などの保健事業は市町村の健康増進事業へと分かれた。

POINT

・健康増進法:健康日本21の法的基盤、国民健康・栄養調査、市町村のがん検診などの健康増進事業、受動喫煙防止。 ・特定健診・特定保健指導は高齢者医療確保法に基づき医療保険者が実施(40〜74歳)。 ・受動喫煙防止は2018年改正(2020年4月全面施行)で義務化・罰則付きとなった。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。