StudyMed医師国家試験

「何杯」ではなく「何グラム」で考える―ビール中瓶2本が示す純アルコール40gの境界線

第120回医師国家試験 D問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第120回 D問題 第12問

健康日本21(第三次)で定義されている「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」で男性の1日平均純アルコール量の下限に相当するのはどれか。

  1. a.焼酎1合(180mL,アルコール濃度35%)/日
  2. b.清酒1合(180mL,アルコール濃度15%)/日
  3. c.ワイン1杯(120mL,アルコール濃度12%)/日
  4. d.ウイスキー2杯(1杯45mL,アルコール濃度43%)/日
  5. e.ビール中瓶2本(1本500mL,アルコール濃度5%)/日

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、健康日本21(第三次)が定める「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、実際のお酒の量に換算できるかを問う問題だ。必要なのは基準値と純アルコール量の計算式の2つだけ。まず、男性の基準は1日平均で純アルコール何gだったかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、男性40g以上、女性20g以上と習いました。
ドクタードクター
その通り。では、その40gを飲料の量からどう計算するか。式は覚えているかな。
医学生医学生
飲んだ量に度数を掛ければいいので、ビールなら1,000mLの5%で50gでしょうか。
ドクタードクター
惜しい、そこが最大の落とし穴なんだ。量(mL)×度数で出てくるのはアルコールの「体積」で、単位はmL。これを「重さ」に直すには、エタノールの比重である約0.8を掛ける必要がある。つまり純アルコール量(g)=飲料の量(mL)×度数×0.8。0.8を忘れると、すべての値が1.25倍に膨らんでしまう。
医学生医学生
なるほど、ビール中瓶2本なら1,000×0.05×0.8でちょうど40gですね。
ドクタードクター
正解。これが男性の基準の下限にぴったり一致する。ほかの選択肢も計算して、なぜ違うか確かめておこう。まず清酒1合はどうかな。
医学生医学生
180×0.15×0.8で21.6g、だいたい20gです。CBTの勉強で「清酒1合はビール中瓶1本と同じくらい」と覚えた記憶があります。
ドクタードクター
いい覚え方だね。清酒1合もビール中瓶1本も約20gで、換算の基本単位としてとても便利なんだ。ちなみに約20gというのは女性の基準にほぼ相当する量でもある。では焼酎1合は?
医学生医学生
180×0.35×0.8で50.4gです。40gを超えているので、これもリスクを高める量では?
ドクタードクター
そう、リスクを高める量には該当する。でも問われているのは「下限に相当する量」だから、40gを約10g上回る焼酎1合は当てはまらない。度数35%の焼酎で40gにするには約140mL、1合の8割ほどで足りてしまうんだ。
医学生医学生
ワイン1杯は120×0.12×0.8で約11.5g、ウイスキー2杯は90mL×0.43×0.8で約31gなので、どちらも40gには届きませんね。
ドクタードクター
その通り。ウイスキーは度数が高いから多そうに見えるけれど、シングル2杯ではまだ足りない。40gにはおよそ2.6杯分、約115mLが必要だ。このように、見た目の「杯数」や度数の印象だけで判断すると間違える。だからこそ純アルコール量で考える習慣が大切なんだ。
医学生医学生
男女で基準が倍違うのはなぜですか。
ドクタードクター
女性は一般に体格が小さく体内の水分量も少ないため、同じ量を飲んでも血中アルコール濃度が高くなりやすい。また、より少ない量・短い期間でアルコール性肝障害を起こしやすいことも知られている。高齢者や、飲むとすぐ顔が赤くなるようなアルコールを分解しにくい体質の人も、より少ない量でリスクが高まると考えておこう。
医学生医学生
臨床実習の消化器内科で、患者さんに飲酒歴を聞いたら「付き合い程度」としか答えてもらえず困ったことがあります。
ドクタードクター
よくある場面だね。そういうときこそ、何をどれくらいの頻度で飲むかを具体的に聞き、純アルコール量に換算するのが大事だ。厚生労働省が2024年に出した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」も、飲酒量を「何杯」ではなく純アルコールのグラム数で把握することを勧めている。さらに、高血圧や一部のがんのように、ごく少量の飲酒でもリスクが上がる疾患があることも示されているんだ。
医学生医学生
健康日本21(第三次)では、ほかにも飲酒に関する目標がありましたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。リスクを高める量を飲酒している者の割合の減少に加えて、20歳未満の者の飲酒をなくすこと、妊娠中の飲酒をなくすことが掲げられている。数値と対象をセットで押さえておくと、公衆衛生の問題にも臨床の生活指導にも役立つよ。

まとめ

健康日本21(第三次)では、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を1日平均純アルコール摂取量で男性40g以上、女性20g以上と定義しています。純アルコール量は「飲料の量(mL)×度数×0.8(エタノールの比重)」で求め、0.8を掛け忘れると1.25倍に過大評価してしまう点に注意が必要です。ビール中瓶2本(1,000mL・5%)がちょうど40gとなり男性の基準の下限に相当し、清酒1合やビール中瓶1本は約20gという換算の基本単位として覚えておくと便利です。女性は体格や体内水分量の違いから少ない量でも影響を受けやすく、基準は男性の半量とされています。飲酒量を「杯数」ではなく「グラム数」で把握する習慣は、試験だけでなく外来での飲酒歴聴取や生活指導の基礎となります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

健康日本21(第三次)では、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」を、1日当たりの平均純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者と定義している。本問では、男性の基準の下限である純アルコール40gにちょうど相当する飲酒量を、5つの選択肢から選ぶ。

純アルコール量の求め方

純アルコール量(g)= 飲料の量(mL)× アルコール濃度(度数を小数にしたもの)× 0.8 最後の0.8はエタノールの比重(約0.79、計算上は0.8を用いる)であり、体積(mL)を重さ(g)に直すための係数である。これを掛け忘れると、すべての値が1.25倍に過大評価されるため注意が必要である。

各選択肢の計算結果

a 焼酎:180 × 0.35 × 0.8 = 50.4g b 清酒:180 × 0.15 × 0.8 = 21.6g c ワイン:120 × 0.12 × 0.8 ≒ 11.5g d ウイスキー:45 × 2 × 0.43 × 0.8 ≒ 31.0g e ビール:500 × 2 × 0.05 × 0.8 = 40.0g 40gに一致するのはeのビール中瓶2本(計1,000mL)である。aは40gを上回り、b・c・dは40gに届かないため、いずれも「下限に相当する量」ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  焼酎1合(180mL,アルコール濃度35%)/日

    180mL × 0.35 × 0.8 = 50.4gとなり、男性の基準である40gを約10g上回る。リスクを高める飲酒量には該当するが、下限そのものではない。度数35%の焼酎で40gに相当するのは約140mL(約0.8合)である。

  2. ×b.  清酒1合(180mL,アルコール濃度15%)/日

    180mL × 0.15 × 0.8 = 21.6gである。清酒1合が純アルコール約20gに当たることは、飲酒量を換算するときの基本単位としてよく使われる。40gに達するには約330mL(約1.8合)が必要であり、下限には届かない。なお約20gは、女性の基準(20g以上)にはほぼ相当する量である。

  3. ×c.  ワイン1杯(120mL,アルコール濃度12%)/日

    120mL × 0.12 × 0.8 ≒ 11.5gであり、40gを大きく下回る。度数12%のワインで40gに相当するのは約415mL(120mLのグラスで約3.5杯)である。

  4. ×d.  ウイスキー2杯(1杯45mL,アルコール濃度43%)/日

    合計90mLなので、90mL × 0.43 × 0.8 ≒ 31.0gとなり、40gには足りない。度数43%のウイスキーで40gに相当するのは約116mL(45mLのシングルで約2.6杯)である。

  5. ○e.  ビール中瓶2本(1本500mL,アルコール濃度5%)/日

    合計1,000mLなので、1,000mL × 0.05 × 0.8 = 40gとなり、男性の「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」の下限である40gとちょうど一致する。このため本肢が正解である。

健康日本21(第三次)における飲酒の位置づけ

健康日本21(第三次)は2024年度から始まった国民健康づくり運動であり、飲酒の分野では主に次の目標を掲げている。 ・生活習慣病(NCDs:非感染性疾患)のリスクを高める量を飲酒している者の割合の減少 ・20歳未満の者の飲酒をなくす ・妊娠中の飲酒をなくす

男女で基準が異なる理由

女性は一般に男性より体格が小さく、体内の水分量が少ないため、同じ量を飲んでも血中アルコール濃度が高くなりやすい。また、少ない量・短い期間の飲酒でアルコール性肝障害などを起こしやすい。このため女性の基準は男性の半量(20g)とされている。高齢者や、体質的にアルコールを分解しにくい人(顔が赤くなりやすい人など)も、より少ない量でリスクが高まる点に注意が必要である。

関連する概念

・「節度ある適度な飲酒」:かつての健康日本21(第一次)で示された目安で、1日平均純アルコール約20g程度とされた。 ・健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚生労働省、2024年):飲酒量を「何杯」ではなく純アルコール量(g)で把握することを勧めている。また、疾患によってはごく少量の飲酒でもリスクが上がること(例:高血圧、一部のがん)を示している。

男性40gに相当する各飲料の量(目安)

・ビール(5%):約1,000mL(中瓶500mLで2本) ・清酒(15%):約330mL(約1.8合) ・ワイン(12%):約415mL ・ウイスキー(43%):約115mL ・焼酎(35%):約140mL(約0.8合) 女性の20gはこれらの半量である。

POINT

・純アルコール量(g)= 飲料の量(mL)× 度数 × 0.8(比重)。0.8を掛け忘れない。 ・健康日本21(第三次)の「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」は、1日平均純アルコール摂取量で男性40g以上、女性20g以上。 ・ビール中瓶1本(500mL・5%)、清酒1合(180mL・15%)は、いずれも純アルコール約20gで、換算の基本単位として覚えておくと便利。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。