「聞こえる」のか「つながらない」のか―精神症状を機能ごとに仕分ける力
第118回医師国家試験 F問題 第25問
国試問題にチャレンジ
知覚の障害でないのはどれか。
- a.幻嗅
- b.幻視
- c.思考化声
- d.体感幻覚
- e.連合弛緩
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
精神症状は、意識・知覚・思考・感情・意欲・自我意識などの機能ごとに分類して理解します。幻嗅・幻視・体感幻覚は「対象なき知覚」である幻覚であり、自分の考えが声になって聞こえる思考化声も幻聴の一型としてSchneiderの一級症状に含まれる知覚の障害です。一方、連合弛緩は考えのつながりがゆるむ思考形式(思路)の障害で、Bleulerが統合失調症の基本症状(4つのA)として最も重視しました。幻視が目立つ場合はせん妄やレビー小体型認知症、幻嗅は側頭葉てんかんも考えるなど、症状の分類は鑑別診断の手がかりにもなります。症状名に含まれる字面にまどわされず、どの精神機能の障害かを判断する習慣が、精神科の診察と所見記載の基礎となります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
精神症状を「どの精神機能の障害か」で分類できるかが問われている。精神医学では症状を、意識・知覚・思考・感情(気分)・意欲・自我意識・記憶・知能などの領域に分けて記述する(精神症状学)。
知覚の障害とは
知覚とは、感覚器から入ってきた刺激を「何であるか」として意識にのぼらせる働きである。その障害には大きく、 ・錯覚: 実在する対象を誤って知覚する(例: 壁のしみが人の顔に見える) ・幻覚: 対応する対象が実在しないのに知覚する(「対象なき知覚」) がある。幻覚は感覚の種類によって幻聴、幻視、幻嗅、幻味、幻触、体感幻覚などに分けられる。
思考の障害とは
思考の障害は、考えの進み方・つながり方の異常である「思考形式(思路)の障害」と、考えの中身の異常である「思考内容の障害(妄想など)」に分けられる。連合弛緩は前者に属する。 選択肢のうち幻嗅・幻視・思考化声・体感幻覚はいずれも幻覚であり知覚の障害に分類されるが、連合弛緩だけは思考形式の障害である。
選択肢考察
- ×a. 幻嗅
実在しないにおいを感じる幻覚であり、知覚の障害である。「腐ったにおいがする」「ガスのにおいがする」などと訴えられる。統合失調症でもみられるが頻度は幻聴より低く、側頭葉てんかん(鉤回発作)の前兆としても知られる。自分の体から嫌なにおいが出ていると確信する自己臭症(自己臭恐怖)では、幻嗅か妄想かの判別が問題になる。
- ×b. 幻視
実在しないものが見える幻覚であり、知覚の障害である。統合失調症ではまれで、むしろせん妄(アルコール離脱せん妄で小動物が見えるなど)、レビー小体型認知症(人や動物が生々しく見える)、薬物中毒、パーキンソン病治療薬の副作用などの器質性・中毒性の病態を考える手がかりとなる。
- ×c. 思考化声
自分が頭の中で考えたことが、声になって外から(あるいは頭の中で)聞こえてくる体験であり、幻聴の一型として知覚の障害に分類される。Schneider(シュナイダー)が統合失調症の診断に重要とした一級症状の一つである。考えが他人に伝わってしまうと感じる「考想伝播」とは区別される。
- ×d. 体感幻覚
身体の内部や表面に、実際には起こっていない異常な感覚を感じる幻覚であり、知覚の障害である。「脳が溶けている」「内臓がねじれる」「皮膚の下を虫がはう」など奇妙で表現しにくい訴えとなることが多い。統合失調症でみられるほか、体感幻覚を主症状とするものはセネストパチーと呼ばれる。器質的な原因が見つからない点が特徴である。
- ○e. 連合弛緩
考えと考えのつながり(連合)がゆるみ、話の筋道がまとまらなくなる状態であり、知覚ではなく思考形式(思路)の障害である。軽いうちは話の大意はつかめるがまとまりを欠く程度だが、高度になると文や単語の意味的なつながりがまったく失われた滅裂思考(支離滅裂)に至る。Bleuler(ブロイラー)は統合失調症の基本症状(4つのA)の一つとして連合弛緩を最も重視した。
精神症状の主な分類
・知覚の障害: 錯覚、幻覚(幻聴、幻視、幻嗅、幻味、幻触、体感幻覚)。思考化声は幻聴に含まれる。 ・思考形式(思路)の障害: 連合弛緩、滅裂思考、観念奔逸(躁状態)、思考制止(うつ状態)、思考途絶(統合失調症)、迂遠(てんかん・認知症など)、保続。 ・思考内容の障害: 妄想(被害妄想、誇大妄想、微小妄想など)、強迫観念、支配観念。 ・自我意識の障害: させられ体験(作為体験)、考想伝播、考想吹入、考想奪取、離人症。
Schneiderの一級症状
思考化声、対話形式の幻聴、自分の行為を批評する幻聴、身体への被影響体験、考想奪取・考想吹入などの思考への干渉、考想伝播、妄想知覚、感情・衝動・意志の領域でのさせられ体験。統合失調症の診断上重視されてきたが、それだけで診断が確定するものではない。
Bleulerの基本症状(4つのA)
連合弛緩(Association)、感情の平板化(Affect)、両価性(Ambivalence)、自閉(Autism)。幻覚や妄想は副次症状とされた。
POINT
・幻覚(幻聴・幻視・幻嗅・幻味・幻触・体感幻覚)は知覚の障害。 ・思考化声は幻聴の一型で知覚の障害(Schneiderの一級症状)。 ・連合弛緩は思考形式の障害(Bleulerの基本症状)。 ・統合失調症では幻聴が多く、幻視が目立つときはせん妄やレビー小体型認知症を考える。
