StudyMed医師国家試験

「通えない」こそが条件―訪問診療の対象を決めるたった一つのものさし

第118回医師国家試験 C問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第19問

定期的な治療を要する患者で保険診療における訪問診療の対象となる要件はどれか。

  1. a.認知症の患者
  2. b.通院が困難な患者
  3. c.独居の高齢の患者
  4. d.胃瘻が造設されている患者
  5. e.夜間に発熱した高齢の患者

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅医療の制度に関する問題だ。保険診療で「訪問診療」を算定できるのはどんな患者か、という問いだね。病名や年齢ではなく、何を基準に判断するのかに注目してほしい。
医学生医学生
在宅医療というと、認知症や寝たきりのお年寄りのイメージが強いです。病名で決まるわけではないんですか。
ドクタードクター
そこがポイントなんだ。保険診療上の訪問診療は、居宅で療養している「通院が困難な患者」に対して、本人や家族の同意を得て、計画的な医学管理のもとで医師が定期的に訪問する診療と位置づけられている。中心となる要件は「通院困難であること」で、その原因は問わないんだよ。
医学生医学生
ということは、正解は通院が困難な患者ですね。でも認知症の患者さんも通院は大変そうに思えますが。
ドクタードクター
いい疑問だね。認知症といっても重症度は幅広い。軽度から中等度で、家族の付き添いがあれば外来に来られる人はたくさんいる。BPSDが強くて外出できない、といった理由で結果的に通院困難になったときに初めて対象になるんだ。病名そのものが要件ではない、ということだね。
医学生医学生
精神科の臨床実習で、もの忘れ外来に娘さんと一緒に通っている患者さんを何人も見ました。確かに通えている人は多かったです。
ドクタードクター
まさにそういう人たちは外来で診るのが原則だ。では独居の高齢者はどうだろう。
医学生医学生
一人暮らしだと付き添いもいないので、訪問診療の対象かなと少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。ただ、独居の高齢者でも自力で歩いて来られる人や、送迎サービスや親族の付き添いを使って通える人は多い。独居であることは在宅療養の支援体制を考えるうえで大事な情報だけど、訪問診療の可否はあくまで「通えるかどうか」で判断する。
医学生医学生
胃瘻が造設されている患者さんも、寝たきりの方が多い印象があります。
ドクタードクター
確かに多いね。でも嚥下障害だけで、全身状態は安定していて歩ける人もいる。そういう人は外来で胃瘻の管理をすればいい。医療処置があるかどうかも、それ自体は要件ではないんだ。
医学生医学生
夜間に発熱した高齢者は、そもそも「定期的」な診療ではないので違いますよね。
ドクタードクター
その通り。ここで訪問診療と往診の違いを押さえておこう。訪問診療は計画を立てて定期的に訪問するもの、往診は急な発熱や腹痛など予定外の病状変化に対して、患者や家族の求めに応じてその都度出向くものだ。夜間の発熱は往診の対象で、肺炎などで入院が必要そうなら救急搬送や病院受診を選ぶこともある。
医学生医学生
訪問診療は「計画的・定期的」、往診は「臨時」と覚えればいいんですね。CBTの勉強のときは両者をなんとなく同じものだと思っていました。
ドクタードクター
国試でよく問われる区別だから、ここで整理できてよかった。実際には、訪問診療を受けている患者さんが定期訪問日以外に熱を出したとき、同じ医師が往診で対応する、という組み合わせもよくあるよ。
医学生医学生
訪問診療はどのくらいの頻度で行うものなんですか。
ドクタードクター
月1〜2回程度の定期訪問が一般的だね。診療報酬上は原則週3回が上限だけど、末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病等や急性増悪のときには例外がある。それから「居宅」には自宅だけでなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームなども含まれうる。一方、病院や介護老人保健施設の入所者は施設に医師がいるので原則として対象外だ。
医学生医学生
地域医療実習で同行した在宅クリニックでは、看護師さんやケアマネジャーさん、薬剤師さんとの連絡がとても多かったのが印象的でした。
ドクタードクター
在宅医療は多職種連携そのものだからね。24時間の往診・連絡体制を備えた在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、訪問薬剤管理などがチームで患者さんの生活を支え、看取りまで担うこともある。制度の要件を正しく知ることは、必要な人に必要な医療を届ける第一歩なんだ。

まとめ

保険診療上の訪問診療は、居宅で療養中の「通院が困難な患者」に対し、本人・家族の同意を得て計画的・定期的に医師が訪問する診療であり、要件の核心は通院困難であることです。認知症、独居・高齢、胃瘻などの医療処置は通院困難の背景になりやすいものの、それ自体は要件ではなく、通院できるなら外来診療が原則となります。一方、夜間の発熱のような予定外の病状変化に患者・家族の求めに応じて出向くのは往診であり、「計画的・定期的」な訪問診療とは区別されます。居宅には自宅のほか有料老人ホームやグループホームなども含まれうること、在宅療養支援診療所や訪問看護など多職種の連携が在宅医療を支えていることも押さえておきましょう。高齢化が進むなかで在宅医療の仕組みを理解することは、退院支援や地域連携を担う臨床医にとって欠かせない知識です。

解答・解説

正解はbです

テーマ

在宅医療における「訪問診療」が保険診療として算定できる条件を問う問題である。

訪問診療の定義

保険診療上の訪問診療は、居宅(自宅や施設など)で療養している患者のうち「通院が困難な者」に対し、本人(または家族)の同意を得たうえで、計画的な医学管理のもと、医師が定期的に患家を訪れて診療を行うものである。したがって算定の中心となる要件は「通院困難であること」であり、疾患名、年齢、世帯構成、医療処置の有無そのものは要件ではない。

往診との違い

往診は、急な発熱や腹痛など予定外の病状変化に対し、患者・家族の求めに応じてその都度医師が出向く診療である。訪問診療が「計画的・定期的」であるのに対し、往診は「臨時・不定期」であり、両者は区別して算定される。

考え方

各選択肢について「その患者が外来に通えるかどうか」で判断すればよい。認知症、独居高齢者、胃瘻造設者はいずれも通院困難となりやすい背景ではあるが、家族の付き添いや送迎などで通院できるなら訪問診療の対象にはならない。夜間の急な発熱は定期的な診療ではなく、往診や救急受診の対象である。

選択肢考察

  1. ×a.  認知症の患者

    認知症の診断があること自体は訪問診療の要件ではない。認知症の重症度はさまざまであり、軽度〜中等度で家族の付き添いなどにより外来受診ができる患者は多い。行動・心理症状〈BPSD〉が強く外出が困難であるなど、結果として通院が困難になった場合に初めて対象となる。

  2. ○b.  通院が困難な患者

    保険診療上の訪問診療は、居宅で療養中の「通院が困難な患者」に対して、同意のもとで計画的・定期的に行う診療と定義されている。通院困難であることが本質的な要件であり、その原因(寝たきり、重度の心不全・呼吸不全、末期がん、神経難病、重度認知症など)は問わない。逆にいえば、通院が可能な患者には原則として訪問診療は算定できない。

  3. ×c.  独居の高齢の患者

    独居であることや高齢であることは要件ではない。独居高齢者でも自力で、あるいは送迎サービスや介護者・親族の付き添いを利用して外来に通える場合は多く、その場合は外来診療が原則となる。独居は在宅療養の支援体制を考えるうえで重要な情報だが、訪問診療の可否は通院の可否で判断する。

  4. ×d.  胃瘻が造設されている患者

    胃瘻(経皮内視鏡的胃瘻造設術〈PEG〉などで造設した栄養ルート)の存在は要件ではない。胃瘻造設者は寝たきりの人が多いのは確かだが、全身状態が安定して歩行が可能な人や、嚥下障害のみで活動性が保たれている人もおり、通院できるなら外来で管理する。

  5. ×e.  夜間に発熱した高齢の患者

    突発的な病状変化に対し、患者・家族の要請を受けてその都度出向く診療は往診であり、計画的・定期的に行う訪問診療とは異なる。また肺炎や尿路感染症など入院治療が必要な状態が疑われれば、救急搬送や病院受診が選択されることもある。そもそも本問の前提である「定期的な治療を要する患者」への計画的診療ではない。

訪問診療と往診の比較

・訪問診療:通院困難な居宅療養患者に対し、同意を得て診療計画を立て、定期的に訪問する。慢性疾患の継続管理や看取りを含む在宅療養の基盤となる。月1〜2回程度の定期訪問が一般的で、診療報酬上は原則として週3回が上限とされる(末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病等や急性増悪時には例外がある)。 ・往診:患者・家族の求めに応じて、予定外に患家へ出向く診療。訪問診療を受けている患者が定期訪問日以外に発熱などを起こした際にも往診で対応する。

「居宅」の範囲

自宅のほか、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、特別養護老人ホームなども居宅系の療養の場として訪問診療の対象となりうる(施設種別により算定条件が異なる)。病院や介護老人保健施設の入所者は、施設側に医師がいるため原則として対象外である。

在宅医療を支える仕組み

24時間の往診・連絡体制を備える在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院、訪問看護ステーション、ケアマネジャー(介護支援専門員)、訪問薬剤管理などが多職種で連携して在宅療養を支える。

POINT

・訪問診療の要件は「居宅で療養中で、通院が困難な患者」であること(本人・家族の同意と計画的医学管理のもと、定期的に訪問)。 ・疾患名(認知症など)、高齢・独居、胃瘻などの医療処置は、それだけでは要件にならない。判断基準は通院できるかどうか。 ・訪問診療=計画的・定期的、往診=要請に応じた臨時の訪問、と区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。