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年をとると腎臓で「増える」ものは?―細動脈硬化から読み解く加齢腎

第120回医師国家試験 E問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第120回 E問題 第18問

加齢に伴い増加するのはどれか。

  1. a.腎容積
  2. b.尿濃縮力
  3. c.腎血漿流量
  4. d.硬化糸球体数
  5. e.糸球体濾過量〈GFR〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は加齢に伴う腎臓の変化を問う問題だ。選択肢を一つずつ暗記で判断するより、加齢腎の根本にある変化を押さえれば、増えるものと減るものが自然に整理できる。まず、加齢で腎臓に起きる一番の変化は何だと思う?
医学生医学生
機能が落ちる、というイメージはあるんですが、何が原因かまでは考えたことがなかったです。
ドクタードクター
中心にあるのは、腎内の小動脈・細動脈の動脈硬化、つまり細動脈硬化なんだ。血管が硬く細くなると、とくに腎皮質の血流が減る。その下流にある糸球体はどうなるかな。
医学生医学生
虚血になって……病理実習で見た、ピンク色に塗りつぶされたような糸球体になるんでしょうか。
ドクタードクター
いい記憶だね。それが硬化糸球体だ。毛細血管係蹄がつぶれて線維性の組織に置き換わり、もう濾過はできない。加齢とともにこの硬化糸球体の数や割合が増えていく。これが今回の正解だ。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙など動脈硬化を促進する因子があると、変化はさらに加速する。
医学生医学生
硬化糸球体が増えるということは、働けるネフロンが減るということですね。
ドクタードクター
その通り。ここから他の選択肢も順に説明できる。まず腎容積はどうだろう。
医学生医学生
ネフロンが減って萎縮するなら、小さくなりそうです。
ドクタードクター
正解。皮質優位に萎縮・菲薄化が進むので、腎容積や腎重量は減少する。髄質は比較的保たれるのも特徴だ。次に腎血漿流量。細動脈硬化で血管抵抗が上がるから、こちらも低下する。
医学生医学生
GFRも当然下がりますよね。ただ、高齢の患者さんでクレアチニンが正常なことも多い気がします。
ドクタードクター
鋭いね。GFRは機能ネフロン数の減少と腎血流の低下で加齢とともに下がる。ところが高齢者は筋肉量が少ないから、クレアチニンの産生自体が少ない。だから血清クレアチニンが正常範囲でも、実際のGFRは低下していることがある。eGFRや、筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCで評価するのが大切なんだ。
医学生医学生
尿濃縮力はどうでしょう。尿細管の話なので、少し別の仕組みですよね。
ドクタードクター
そう、濃縮は髄質の浸透圧勾配と集合管でのバソプレシンによる水再吸収で行われる。加齢ではネフロン・尿細管の減少に加え、髄質の浸透圧勾配が保ちにくくなることや、集合管のバソプレシンへの反応性が落ちることで、濃縮力は低下する。これが高齢者の夜間多尿や、脱水になりやすい一因なんだ。
医学生医学生
そういえば、腎臓内科の実習で「高齢者は夏に脱水で腎機能が悪化しやすい」と教わりました。
ドクタードクター
まさにつながる話だね。ちなみに一つ引っかけになりうるのが濾過率、つまりGFRを腎血漿流量で割った値だ。腎血漿流量の低下のほうがGFRの低下より大きいので、濾過率はむしろ上昇する傾向がある。
医学生医学生
量や機能はほとんど減るけれど、硬化糸球体のような障害所見や、比で表す濾過率は増える、と整理すればいいんですね。
ドクタードクター
いいまとめだ。臨床で大事なのは腎予備能の低下だよ。安静時は目立たなくても、脱水、感染、手術、薬剤といった負荷で容易に急性腎障害を起こす。またレニン・アルドステロン系の活性が低下するので高カリウム血症になりやすく、ACE阻害薬やARB、カリウム保持性利尿薬の使用時は注意が必要だ。
医学生医学生
薬の量も気をつけないといけませんね。CBTでアミノグリコシドの腎毒性が出ました。
ドクタードクター
その通り。アミノグリコシド系抗菌薬やジゴキシンなどの腎排泄型薬物は、腎機能を推算したうえで減量や投与間隔の延長を検討する。高齢者を診るときは「見かけの腎機能」にだまされないことが大切だ。

まとめ

加齢腎の本態は腎内の小動脈・細動脈の硬化による皮質虚血で、その結果として硬化糸球体が増加し、機能ネフロン数が減少します。そのため腎容積・腎重量(皮質優位)、腎血漿流量、GFR、尿濃縮力はいずれも低下し、増えるのは硬化糸球体や間質線維化などの障害所見、そして腎血漿流量の低下がより大きいことによる濾過率です。高齢者は筋肉量が少ないため血清クレアチニンが正常でもGFRが低下していることがあり、eGFRやシスタチンCによる評価、腎排泄型薬物の用量調整が欠かせません。腎予備能の低下やレニン・アルドステロン系の活性低下により、脱水・急性腎障害・高カリウム血症をきたしやすい点も押さえておきましょう。細動脈硬化という一つの起点から変化を整理する考え方は、高齢者診療で安全に薬物を使い、腎障害を予防するための土台になります。

解答・解説

正解はdです

【テーマ】加齢に伴う腎臓の構造・機能の変化 腎臓は加齢の影響を受けやすい臓器の一つである。加齢腎の変化の中心にあるのは、腎内の小動脈・細動脈の動脈硬化(細動脈硬化)である。血管が硬く細くなると、とくに腎皮質の血流が減少し、その下流にある糸球体が虚血に陥って硬化(糸球体の毛細血管係蹄がつぶれて線維性の組織に置き換わること)していく。硬化した糸球体はもはや濾過を行えないため、機能しているネフロン(糸球体と尿細管からなる腎臓の機能単位)の数が減る。 この一連の流れから、加齢により次の変化が生じる。 ・構造: 皮質の菲薄化・萎縮 → 腎容積・腎重量の減少、硬化糸球体の増加、尿細管萎縮・間質線維化 ・血流: 腎血漿流量(RPF)の低下 ・濾過: 糸球体濾過量(GFR)の低下 ・尿細管機能: 尿濃縮力の低下、尿希釈力の低下、Na保持能の低下など つまり、加齢で「増える」のは硬化糸球体(や間質線維化などの障害所見)であり、容積・血流・濾過・濃縮といった「量や機能」はいずれも低下すると整理すれば正解を導ける。

選択肢考察

  1. ×a.  腎容積

    加齢とともに腎皮質の血流が減少し、皮質優位に萎縮・菲薄化が進むため、腎容積と腎重量は減少する。腎重量は成人期に最大となり、高齢になるにつれて徐々に小さくなる。髄質は比較的保たれるため、萎縮は主に皮質に目立つ。

  2. ×b.  尿濃縮力

    尿濃縮は、髄質に形成される高い浸透圧勾配と、集合管での抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)による水再吸収によって行われる。加齢ではネフロン数・尿細管の減少に加え、皮質血流が減る一方で髄質への血流が相対的に増えて髄質の浸透圧勾配が洗い流されやすくなること、集合管のADHへの反応性が低下することなどにより、尿濃縮力は低下する。これが高齢者の夜間多尿・夜間頻尿や、脱水に陥りやすい一因となる。

  3. ×c.  腎血漿流量

    腎内の小動脈・細動脈の硬化により腎血管抵抗が増し、腎血漿流量(RPF)は加齢とともに低下する。血流低下は皮質で目立ち、髄質に近い傍髄質ネフロンへの血流は比較的保たれる。RPFの低下はGFRの低下よりも大きいため、濾過率(FF = GFR/RPF)はむしろ上昇する傾向がある。

  4. ○d.  硬化糸球体数

    加齢により腎内の小動脈・細動脈に硬化が進むと、その支配下の糸球体が虚血に陥り、分節性の硬化から全節性の硬化(糸球体全体の硬化)へと進行する。こうして硬化糸球体の数・割合は年齢とともに増加する。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙など動脈硬化を促進する因子があると、この変化はさらに加速する。硬化糸球体の増加は機能ネフロン数の減少を意味し、GFR低下の主な原因となる。

  5. ×e.  糸球体濾過量〈GFR〉

    硬化糸球体の増加によって機能ネフロン数が減少し、腎血流も低下するため、GFRは加齢とともに低下する。進行した硬化糸球体では輸入細動脈と輸出細動脈の間に短絡路が形成され、血液が糸球体を通らずに流れることも濾過量低下に関与する。高齢者では筋肉量が減るため、血清クレアチニン値が正常範囲でもGFRは低下していることがある点に注意が必要である。

加齢腎(腎の老化)のまとめ

・増加するもの: 硬化糸球体の数・割合、尿細管萎縮、間質線維化、腎内細動脈の硬化(内膜肥厚・硝子化)、濾過率(FF)、腎嚢胞(単純性腎嚢胞は高齢者に多い) ・減少するもの: 腎容積・腎重量(皮質優位)、機能ネフロン数、腎血漿流量、GFR、尿濃縮力・尿希釈力、Na保持能、レニン・アルドステロン活性

臨床的な意味

・腎予備能の低下: 安静時には目立たなくても、脱水・感染・手術・薬剤などの負荷がかかると容易に急性腎障害を起こす。 ・尿濃縮力低下とNa保持能低下: 水分摂取が減ると脱水になりやすく、また夜間多尿・夜間頻尿の原因となる。 ・レニン・アルドステロン系の活性低下: 高カリウム血症をきたしやすく、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)やK保持性利尿薬の使用時に注意が必要である。 ・薬物投与: 腎排泄型の薬物(アミノグリコシド系抗菌薬、ジゴキシンなど)は、高齢者ではGFRを推算したうえで減量・投与間隔の延長を検討する。 ・GFR評価の注意: 高齢者は筋肉量が少ないため、血清クレアチニン値のみでは腎機能を過大評価しやすい。eGFRや、筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCを用いた評価が有用である。

臓器ごとの老化

老化の速さは臓器によって異なり、腎臓と肺は機能低下が比較的大きい臓器である。肺では弾性収縮力の低下により残気量が増え、肺活量が減少し、労作時の息切れの一因となる。

POINT

・加齢腎の本態は腎内小動脈・細動脈の硬化による皮質虚血であり、硬化糸球体が増加して機能ネフロン数が減る。 ・加齢で増加: 硬化糸球体、間質線維化、濾過率(FF)。 ・加齢で減少: 腎容積・腎重量、腎血漿流量、GFR、尿濃縮力。 ・高齢者は血清クレアチニンが正常でもGFRが低下していることがあり、腎排泄型薬物の用量調整が必要である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。