「家で過ごしたい」を支える医療―在宅医療の基本5か条を整理する
第119回医師国家試験 B問題 第3問
国試問題にチャレンジ
在宅医療で正しいのはどれか。
- a.緩和ケアは在宅医療の中で実施できる。
- b.緊急時に行う在宅医療は訪問診療と呼ばれる。
- c.使用した注射針は一般廃棄物として処理する。
- d.我が国では病院よりも在宅で死亡する場合が多い。
- e.訪問看護を利用する場合は介護保険よりも医療保険が優先される。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクターまとめ
在宅医療は、通院困難な患者の生活の場で提供される医療であり、オピオイドによる疼痛管理や看取りを含む緩和ケアも在宅で実施できます。医師の訪問は、計画的・定期的な「訪問診療」と、求めに応じた臨時の「往診」に区別されます。使用済み注射針などの鋭利な廃棄物は医療機関や薬局に返却して感染性廃棄物として処理するのが原則で、日本の死亡場所は現在も医療機関が約3分の2を占め、自宅は2割弱です。要介護認定者の訪問看護は原則として介護保険が優先され、末期癌や厚生労働大臣が定める疾病、特別訪問看護指示書の期間などは医療保険が適用されます。高齢化が進む中で多職種連携による在宅医療の仕組みを理解しておくことは、患者の「家で過ごしたい」という希望に応える臨床の基盤となります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
在宅医療に関する基本的な知識(提供できる医療の範囲、用語の定義、医療廃棄物の扱い、死亡場所の統計、保険制度の適用順位)を幅広く問う一般問題である。
在宅医療の概要
在宅医療とは、通院が困難な患者に対し、医師・看護師・薬剤師・リハビリテーション職などが患者の自宅や介護施設などの生活の場を訪れて提供する医療である。高齢化の進行や「住み慣れた地域で最期まで暮らしたい」という希望の高まりを背景に、地域包括ケアシステムの中核として推進されている。対象は寝たきりの高齢者、神経難病、がん終末期、医療的ケア児など多岐にわたり、点滴・在宅酸素療法・経管栄養・疼痛管理なども自宅で行うことができる。
解き方
・医師の訪問には「計画的に定期訪問する訪問診療」と「求めに応じて臨時に訪れる往診」の2種類があることを区別する。 ・注射針のような鋭利な使用済み器材は、感染の危険があるため医療機関に返却して感染性廃棄物として処理するのが原則である。 ・日本では1970年代半ばに病院死が自宅死を上回り、現在も医療機関での死亡が大半を占める。 ・要介護認定を受けている者の訪問看護は原則として介護保険が優先される。 これらを押さえれば、緩和ケアが在宅でも実施できるとする記述が正しいと判断できる。
選択肢考察
- ○a. 緩和ケアは在宅医療の中で実施できる。
緩和ケアは、提供される場所を問わない医療であり、緩和ケア病棟(ホスピス)や一般病棟だけでなく、在宅でも実施できる。在宅では、オピオイド(医療用麻薬)の内服・貼付・持続皮下注射による疼痛管理、呼吸困難や悪心などの症状緩和、精神的支援、家族への支援、看取りまでを、在宅療養支援診療所の医師と訪問看護師、訪問薬剤師などが連携して行う。通院が難しくなった患者の苦痛を和らげ、自宅で過ごしたいという希望をかなえることは、在宅医療の重要な役割の一つである。
- ×b. 緊急時に行う在宅医療は訪問診療と呼ばれる。
緊急時に患者や家族の求めに応じて医師が臨時に患家を訪れて診療するものは「往診」と呼ばれる。これに対し「訪問診療」は、診療計画に基づいて、あらかじめ決めた日時に定期的に患家を訪問して行う診療を指す。診療報酬上も両者は区別されている。在宅医療では、定期的な訪問診療を基本とし、病状の急変時に往診で対応する体制(24時間対応)が求められる。
- ×c. 使用した注射針は一般廃棄物として処理する。
在宅医療で使用した注射針(インスリン用の針など)や翼状針などの鋭利な器材は、針刺し事故や感染の危険があるため、一般家庭ごみとして捨ててはならない。耐貫通性の容器などに入れて医療機関や薬局に持ち込み(返却し)、医療機関側で感染性廃棄物として処理するのが原則である。なお、家庭から出る在宅医療廃棄物のうち、ビニールバッグやチューブ類など鋭利でないものは、市町村の方針に従い一般廃棄物として処理できる場合がある。
- ×d. 我が国では病院よりも在宅で死亡する場合が多い。
人口動態統計によると、日本ではかつて自宅での死亡が多かったが、1970年代半ば(1976年頃)に病院などの医療機関での死亡が自宅死を上回った。その後、医療機関での死亡割合は2000年代半ばに約8割に達し、近年は介護施設や自宅での看取りの増加によりやや低下したものの、令和3年でも医療機関での死亡が約67%を占め、自宅は約17%、介護施設・老人ホーム等は約14%にとどまる。したがって、在宅での死亡が病院より多いという記述は誤りである。
- ×e. 訪問看護を利用する場合は介護保険よりも医療保険が優先される。
要介護(要支援)認定を受けている者が訪問看護を利用する場合、原則として介護保険が医療保険より優先して適用される。ただし例外があり、末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、Parkinson病関連疾患など厚生労働大臣が定める疾病等の患者、急性増悪などで医師が特別訪問看護指示書を出した期間(原則14日以内)、精神科訪問看護などでは医療保険が適用される。また、要介護認定を受けていない者(40歳未満の者や、特定疾病に該当しない40〜64歳の者など)は医療保険で訪問看護を利用する。設問のように「医療保険が優先される」というのは原則と逆であり誤りである。
訪問診療と往診の違い
・訪問診療:計画的・定期的(例:月2回など)に患家を訪問して行う診療 ・往診:患者・家族の求めに応じ、臨時に(急変時など)訪問して行う診療
緩和ケアの定義(WHO)
生命を脅かす疾患に関連する問題に直面している患者とその家族に対し、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に見いだして的確に評価し対応することで、苦痛を予防し和らげ、生活の質(QOL)を向上させるアプローチである。がんの終末期に限らず、診断時から治療と並行して行われるものであり、心不全や慢性呼吸器疾患など非がん疾患も対象となる。
在宅医療を支える仕組み
・在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院:24時間連絡を受け、往診・訪問看護を提供できる体制をもつ医療機関 ・訪問看護ステーション:主治医の訪問看護指示書に基づき看護を提供する ・訪問薬剤管理指導、訪問リハビリテーション、訪問歯科診療など多職種が連携する ・介護支援専門員(ケアマネジャー)が介護保険サービスの計画(ケアプラン)を作成する
在宅医療廃棄物の扱い
・注射針など鋭利なもの:医療機関・薬局へ返却し、感染性廃棄物として処理 ・鋭利でないもの(チューブ類、ガーゼ、バッグ類など):市町村の取り扱いに従い家庭ごみとして出せる場合がある
死亡場所の推移
戦後しばらくは自宅死が8割程度を占めていたが、医療の普及とともに減少し、1970年代半ばに病院死が逆転した。現在は医療機関での死亡が6割台後半、自宅が2割弱、介護施設等が1割台という構成である。一方、国民の意識調査では自宅で最期を迎えたいと望む人も少なくなく、在宅での看取りを支える体制づくりが課題となっている。
POINT
・緩和ケアは場所を問わず、在宅でも実施できる ・定期的・計画的な訪問=訪問診療、緊急・臨時の訪問=往診 ・使用済み注射針は医療機関へ返却し感染性廃棄物として処理する ・日本の死亡場所は医療機関が最多(約2/3)、自宅は2割弱 ・要介護認定者の訪問看護は原則として介護保険が優先(末期癌・指定難病等の厚生労働大臣が定める疾病、特別訪問看護指示書の期間などは医療保険)
