7つの質問で高齢者を見抜く―CGA7が「測らないもの」は何か
第118回医師国家試験 C問題 第18問
国試問題にチャレンジ
高齢者機能評価簡易版〈CGA7〉の項目に含まれないのはどれか。
- a.意欲
- b.経済状況
- c.認知機能
- d.基本的ADL
- e.手段的ADL
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
高齢者機能評価簡易版(CGA7)は、高齢者総合機能評価(CGA)を外来や病棟で短時間に行えるよう7項目にまとめたスクリーニングで、意欲・認知機能(3語の復唱と遅延再生)・手段的ADL(交通機関での一人での移動)・基本的ADL(入浴と排泄)・情緒/気分の5領域を評価します。経済状況や家族・介護環境といった社会的因子は包括的なCGAでは重要ですが、本人の心身機能に絞ったCGA7には含まれません。異常があれば、意欲はVitality index、認知機能はHDS-R/MMSE、IADLはLawton尺度、基本的ADLはBarthel index、気分はGDS-15で詳しく評価する二段階の流れで用います。手段的ADLは基本的ADLより先に低下しやすく、生活機能低下や認知症の早期の手がかりとなるため、この評価の考え方は高齢者診療の基本として重要です。
解答・解説
正解はbです
テーマ
高齢者総合機能評価〈CGA:Comprehensive Geriatric Assessment〉は、高齢者を病気だけでなく生活機能・精神心理・社会環境の面から多角的に評価する手法である。本来は多くの評価尺度を組み合わせるため時間がかかるので、外来や病棟で短時間にスクリーニングできるよう7つの質問・課題にまとめたのがCGA7(高齢者機能評価簡易版)である。
CGA7の構成
CGA7は次の7項目からなり、評価領域としては「意欲」「認知機能」「手段的ADL」「基本的ADL」「情緒・気分」の5領域をカバーする。 (1) 意欲:外来では診察時に自分から挨拶をするか、入院では自分から起床するかを観察する。 (2) 認知機能(復唱):「桜・猫・電車」などの3語を復唱させる。 (3) 手段的ADL:外来ではバスや電車、自家用車を使って一人で移動できるかを尋ねる(入院では「普段」の状況を尋ねる)。 (4) 認知機能(遅延再生):(2)で覚えた3語を、しばらくしてから思い出させる。 (5) 基本的ADL(入浴):一人で入浴できるか。 (6) 基本的ADL(排泄):失禁せずにトイレで排泄できるか。 (7) 情緒・気分:自分が無力だと感じるか。
考え方
CGA7は、医療者がその場で観察・質問して判定できる「本人の機能」に絞ったスクリーニングである。経済状況や家族構成・介護者の有無といった社会環境因子は、CGA全体では重要な評価対象であるが、簡易版の7項目には含まれない。したがって「含まれないもの」を問う本問では、経済状況が正解となる。
選択肢考察
- ×a. 意欲
CGA7の第1項目である。外来では患者が自分から挨拶をするか、入院中であれば自発的に起床するか、といった日常の行動から判定する。低下が疑われた場合は、起床・意思疎通・食事・排泄・リハビリや活動への参加の5項目からなるVitality index(意欲の指標)で詳しく評価する。
- ○b. 経済状況
CGA7の7項目には含まれないため、本問の正解である。経済状況は受療行動、介護サービスの利用、栄養状態などを左右する重要な社会的因子であり、包括的なCGAでは家族・介護環境などとともに評価されることがある。しかしCGA7は短時間で本人の心身機能を拾い上げることを目的としたスクリーニングであり、社会・経済的背景は評価対象としていない。
- ×c. 認知機能
CGA7に含まれる。3語の復唱(即時記憶)と、時間をおいた遅延再生の2項目で判定し、7項目のうち2つを占める。遅延再生は早期のアルツハイマー型認知症で障害されやすい記憶機能を反映する。異常があれば、改訂長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉やMini-Mental State Examination〈MMSE〉で詳しく評価する。
- ×d. 基本的ADL
CGA7に含まれる。基本的ADL(日常生活動作:Activities of Daily Living)は食事・移動・入浴・排泄など身の回りの基本動作であり、CGA7では入浴と排泄の自立度の2項目で判定する。入浴は基本的ADLのなかでも早期に介助が必要になりやすい動作である。異常があれば、食事・移乗・整容・トイレ動作・入浴・歩行・階段昇降・更衣・排便・排尿の10項目からなるBarthel index(バーセル指数)で詳しく評価する。
- ×e. 手段的ADL
CGA7に含まれる。手段的ADL〈IADL:Instrumental ADL〉は、買い物・服薬管理・金銭管理・交通機関の利用など、自立した社会生活に必要なより複雑な動作である。CGA7では、バス・電車・自家用車などを使って一人で外出・移動できるかで判定する。IADLは基本的ADLより先に低下しやすく、認知機能低下の早期の手がかりにもなる。付き添いが必要などの異常があれば、LawtonのIADL尺度(女性8項目、男性5項目)で詳しく評価する。
高齢者総合機能評価〈CGA〉とは
高齢者では複数の疾患を併せ持ち、身体機能・認知機能・精神状態・社会環境が相互に影響し合うため、疾患の診断だけでは適切な治療・ケア方針が立てにくい。CGAはこれらを系統的に評価し、治療目標の設定、介護サービス導入、退院支援などに活用する手法である。主な評価領域と代表的な尺度は次のとおりである。 ・基本的ADL:Barthel index、Katz index ・手段的ADL:Lawton IADL尺度 ・認知機能:HDS-R、MMSE ・情緒・気分(うつ):高齢者抑うつ尺度〈GDS:Geriatric Depression Scale〉15項目版など ・意欲:Vitality index ・社会・環境:家族構成、介護者、住環境、経済状況など(CGA7には含まれない)
CGA7の使い方
CGA7はあくまでスクリーニングであり、いずれかの項目で異常があれば、その領域に対応する詳細な尺度(上記)へ進んで評価する、という二段階の流れで用いる。情緒・気分の項目で異常があればGDS-15で抑うつの有無を評価する。
関連:高齢者の生活機能の低下順序
一般に、社会的役割や手段的ADLが先に低下し、その後に基本的ADLが低下する。基本的ADLのなかでは入浴などが比較的早く、食事は最後まで保たれやすい。
POINT
・CGA7は7項目で、意欲・認知機能(復唱と遅延再生)・手段的ADL・基本的ADL(入浴と排泄)・情緒/気分の5領域を評価する。 ・経済状況や家族・介護環境などの社会的因子はCGA7には含まれない。 ・異常時に進む詳細評価:意欲→Vitality index、認知機能→HDS-R/MMSE、IADL→Lawton尺度、基本的ADL→Barthel index、情緒・気分→GDS-15。
