StudyMed医師国家試験

都道府県か、市町村か―「根拠法」と「保険者」で解く設置主体の見分け方

第119回医師国家試験 B問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第119回 B問題 第5問

都道府県が設置主体でないのはどれか。

  1. a.児童相談所
  2. b.医療安全支援センター
  3. c.精神保健福祉センター
  4. d.地域医療支援センター
  5. e.地域包括支援センター

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、保健・医療・福祉に関わる相談機関や支援センターを、どの自治体が設置するのかを問う問題だ。名前が似たセンターが並ぶと混乱しやすいけれど、カギは「その機関の根拠法は何か」と「その分野の行政責任を負うのは誰か」の2点。まずは全体の考え方から整理しよう。
医学生医学生
正直、センターの名前を丸暗記しようとして、公衆衛生の講義のあとに挫折した記憶があります。
ドクタードクター
丸暗記はつらいよね。大まかな原則として、専門性が高く広い地域をカバーする機関は都道府県(多くは政令指定都市も含む)が、住民の身近な生活を支えるサービスは市町村が担う、と押さえておくと見通しがよくなる。
医学生医学生
ということは、相談の内容が専門的で重たいものほど都道府県、という感じでしょうか。
ドクタードクター
その理解で大筋はいい。では具体的に見ていこう。まず児童相談所。児童福祉法に基づいて、都道府県と政令指定都市に設置が義務付けられている。中核市や特別区も設置できるけれど、基本は都道府県だ。虐待や非行、障害などの相談に対して、専門的な調査・判定、一時保護、施設入所措置まで行うから、高度な専門職と判定機能が必要になる。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、虐待が疑われる子どもについて児童相談所に通告する場面を見学しました。一時保護までできるのは確かに強い権限ですね。
ドクタードクター
そう、だからこそ広域・専門の機関として都道府県単位で置かれているんだ。次に精神保健福祉センター。精神保健福祉法に基づき、都道府県と政令指定都市が設置する。知識の普及や調査研究、複雑な事例の相談に加えて、精神医療審査会の事務や、精神障害者保健福祉手帳・自立支援医療の判定も担う、精神保健の技術的な中核機関だ。
医学生医学生
精神科実習で、措置入院や医療保護入院の書類を見せてもらいました。精神医療審査会もそこで関わってくるんですね。
ドクタードクター
よく結びつけたね。次は医療法に関係する2つ。医療安全支援センターは、患者や家族からの医療に関する苦情・相談に中立的な立場で応じ、必要に応じて医療機関に助言する機関で、都道府県のほか保健所設置市や特別区が設置に努めることとされている。地域医療支援センターは、医師の地域偏在を解消するための都道府県の事務で、地域枠出身の医師などのキャリア形成を支援しながら、医師不足の地域への派遣調整を行う。
医学生医学生
地域医療支援センターって、地域枠の先輩が話していたものですね。でも医療安全と医師確保がなぜ都道府県なんでしょう。
ドクタードクター
医療計画を策定するのが都道府県だからだ。病床や医療提供体制をデザインする主体が都道府県なので、医療安全や医師確保といった体制づくりに関わる機関も都道府県が担う、と考えると筋が通る。
医学生医学生
となると残る地域包括支援センターは……介護保険法に基づく機関なので、保険者である市町村が設置する、ということですか。
ドクタードクター
正解。地域包括支援センターは介護保険の保険者である市町村(特別区を含む)が設置主体で、社会福祉法人などに運営を委託することもできる。これが都道府県が設置主体でない唯一の選択肢だ。
医学生医学生
「介護保険の保険者は市町村」とCBTの勉強で覚えたのが、ここで効いてくるんですね。
ドクタードクター
その通り。地域包括支援センターの中身も押さえておこう。配置される3職種は保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)。業務は介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、高齢者虐待の防止・早期発見を含む権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援で、地域包括ケアシステムの中核を担っている。
医学生医学生
在宅医療の実習で、退院前カンファレンスに地域包括の保健師さんが来ていました。身近な窓口というのが実感できます。
ドクタードクター
臨床では、独居高齢者の退院調整や、認知症が疑われる人の生活支援、虐待が心配なケースなどで、まず相談する先になることが多い。関連して、保健所は地域保健法に基づき都道府県・政令指定都市・中核市などが、市町村保健センターは市町村が任意で設置する、という対比もセットで覚えておくと応用が利くよ。
医学生医学生
根拠法と、その分野の行政責任や保険者が誰かを考えれば、名前に惑わされずに判断できそうです。
ドクタードクター
そう。暗記に頼るより、制度の成り立ちから考える癖をつけると、新しい機関が出題されても対応しやすい。医師として患者さんを適切な窓口につなぐためにも役立つ知識だよ。

まとめ

保健・医療・福祉の機関の設置主体は、根拠法と行政責任の所在から整理すると判断しやすくなります。児童相談所(児童福祉法)や精神保健福祉センター(精神保健福祉法)のように高度な専門性と判定機能を要する機関は都道府県・政令指定都市が設置し、医療安全支援センターや地域医療支援センターのように医療提供体制に関わるものは、医療計画を策定する都道府県が担います。一方、地域包括支援センターは介護保険法に基づき、保険者である市町村が設置する機関で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種が総合相談や権利擁護、介護予防ケアマネジメントなどを担います。保健所と市町村保健センターの対比もあわせて押さえておくと、制度問題全般に応用が利きます。患者を適切な支援窓口につなぐ力は、退院調整や地域連携の場面で臨床医にも求められる実践的な知識です。

解答・解説

正解はeです

保健・医療・福祉の行政機関は、その役割の広さに応じて、根拠法で「どの自治体が設置するか」が定められている。大まかには、専門性が高く広域的に対応する機関は都道府県(多くは政令指定都市も含む)が、住民に身近なサービスを担う機関は市町村が設置する、という整理ができる。 選択肢のうち、児童相談所(児童福祉法)、医療安全支援センター(医療法)、精神保健福祉センター(精神保健福祉法)、地域医療支援センター(医療法に位置付けられた医師確保の事務)はいずれも都道府県が設置・実施の主体となる。一方、地域包括支援センターは介護保険法に基づく機関で、介護保険の保険者である市町村(特別区を含む)が設置主体である。 「介護保険関連の機関は保険者である市町村」「専門的・広域的な相談機関や医療提供体制に関わる機関は都道府県」と、根拠法と保険者・行政責任の所在から考えると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  児童相談所

    都道府県が設置主体である。児童福祉法に基づき、都道府県と政令指定都市に設置が義務付けられている(中核市や特別区も設置することができる)。児童虐待や養育困難、非行、障害などの子どもに関する相談に応じ、専門的な調査・判定、一時保護、施設入所措置などを行う。

  2. ×b.  医療安全支援センター

    都道府県が設置主体である。医療法に基づき、都道府県のほか保健所を設置する市および特別区が設置するよう努めることとされている。患者・家族からの医療に関する苦情や相談に応じ、必要に応じて医療機関への助言を行うなど、中立的な立場で患者と医療機関の間の調整を担う。医療機関の管理者等への医療安全に関する研修や情報提供も行う。

  3. ×c.  精神保健福祉センター

    都道府県が設置主体である。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づき、都道府県と政令指定都市が設置する。精神保健福祉に関する知識の普及、調査研究、複雑・困難な事例の相談指導のほか、精神医療審査会の事務、精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療(精神通院医療)の判定などを担う、精神保健の技術的中核機関である。

  4. ×d.  地域医療支援センター

    都道府県が実施主体である。医師の地域偏在の解消を目的として国の事業として始まり、現在は医療法に都道府県の医師確保に関する事務として位置付けられている。地域医療に従事する医師(地域枠出身医師など)のキャリア形成を支援しながら、医師不足の病院・地域への医師の派遣調整やあっせんなどを行う。

  5. ○e.  地域包括支援センター

    都道府県ではなく市町村が設置主体である。介護保険法に基づき、介護保険の保険者である市町村が設置する(社会福祉法人などへ運営を委託することもできる)。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の3職種を配置し、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、高齢者虐待の防止・早期発見を含む権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などを行う、地域包括ケアシステムの中核機関である。

主な機関の設置主体と根拠法の整理

・保健所:地域保健法。都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区。 ・市町村保健センター:地域保健法。市町村(設置は任意)。 ・児童相談所:児童福祉法。都道府県・政令指定都市(義務)、中核市・特別区(任意)。 ・精神保健福祉センター:精神保健福祉法。都道府県・政令指定都市。 ・医療安全支援センター:医療法。都道府県、保健所設置市、特別区(努力義務)。 ・地域医療支援センター:医療法上の医師確保に関する事務。都道府県。 ・地域包括支援センター:介護保険法。市町村。 ・福祉事務所:社会福祉法。都道府県・市(特別区を含む)は設置義務、町村は任意。

考え方のコツ

介護保険の保険者は市町村であるため、介護保険法に基づく地域包括支援センターも市町村が設置する。これに対し、児童相談所や精神保健福祉センターのように高度な専門職と判定機能を要する機関は、都道府県・政令指定都市単位で設置される。医療計画の策定主体が都道府県であることから、医療提供体制や医療安全、医師確保に関わる機関も都道府県が担う。

POINT

・地域包括支援センターの設置主体は市町村(介護保険の保険者)である。 ・児童相談所・精神保健福祉センターは都道府県と政令指定都市が設置する。 ・医療安全支援センター・地域医療支援センターは医療法に関連し、都道府県が担う。 ・地域包括支援センターの3職種は保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。