その検査、何を測る?―統合失調症の症状を「まるごと点数化」するBPRS
第117回医師国家試験 F問題 第24問
国試問題にチャレンジ
統合失調症を主な対象として,精神症状の包括的な評価尺度として使用されるのはどれか。
- a.Rorschachテスト
- b.状態特性不安検査〈STAI〉
- c.リバーミード行動記憶検査〈RBMT〉
- d.Mini-Mental State Examination〈MMSE〉
- e.簡易精神症状評価尺度[Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉]
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
BPRS(簡易精神症状評価尺度)は、主に統合失調症を対象に、陽性症状・陰性症状に加えて不安や抑うつなども含めた精神症状を、面接によって18項目・各7段階で包括的に点数化する評価尺度です。Rorschachテストは投影法の性格検査、STAIは状態不安・特性不安を測る自己記入式質問紙、リバーミード行動記憶検査は日常生活に即した記憶検査、MMSEは認知症のスクリーニング検査であり、いずれも目的が異なります。統合失調症の評価には、BPRSをもとに作られた30項目のPANSSも広く用いられ、病識が乏しいことが多いため面接者評価型の尺度が中心になります。心理検査は「性格」「知能・記憶・認知機能」「症状の重症度」のどれを測るのかと対象疾患を結びつけて整理すると、試験でも臨床でも迷わずに使い分けられます。
解答・解説
正解はeです
本問は、精神科で用いられる心理検査・評価尺度の目的と対象を区別できるかを問う問題である。 心理検査は大まかに、①性格(パーソナリティ)を調べる検査(投影法・質問紙法)、②知能や記憶、認知機能を測る検査、③症状の重さを数値化して評価する尺度(評価尺度)に分けられる。評価尺度は、症状の各項目を何段階かの基準に当てはめて点数化するもので、重症度の把握や治療効果の判定に使われる。 設問の条件は「統合失調症を主な対象とする」「精神症状を包括的に(幅広い症状をまとめて)評価する」の2点である。選択肢を目的別に分類すると、Rorschachテストは性格検査(投影法)、STAIは不安に絞った質問紙、RBMTは記憶の検査、MMSEは認知機能のスクリーニングであり、いずれも条件に合わない。陽性症状・陰性症状・不安・抑うつなど多領域の精神症状を面接によって点数化する尺度はBPRSであり、これが正解となる。
選択肢考察
- ×a. Rorschachテスト
誤り。Rorschach(ロールシャッハ)テストは、左右対称のインクのしみが描かれた10枚の図版を見せ、何に見えるかを自由に答えてもらう投影法の性格検査である。反応の内容や、図版のどの部分・どの特徴(形・色など)に基づいて答えたかを分析し、思考の特徴や情緒、対人関係の傾向などパーソナリティの深い層を推定する。統合失調症の思考障害の評価に参考となることはあるが、精神症状の程度を点数化して包括的に評価する尺度ではない。
- ×b. 状態特性不安検査〈STAI〉
誤り。STAI(State-Trait Anxiety Inventory)は、不安を「状態不安」(いま置かれている状況で一時的に感じている不安)と「特性不安」(状況にかかわらずその人がもともと持つ不安の感じやすさ)の2つに分けて測定する自己記入式の質問紙である。評価対象は不安に限られ、主に不安症などで用いられるため、統合失調症の精神症状を包括的に評価する尺度ではない。
- ×c. リバーミード行動記憶検査〈RBMT〉
誤り。RBMT(Rivermead Behavioural Memory Test)は、人の名前や顔を覚える、物の置き場所を覚える、約束を覚えておく、物語や道順を覚えるといった、日常生活に近い場面を想定した課題で記憶障害を評価する検査である。脳損傷後の記憶障害(高次脳機能障害)や認知症の評価、リハビリテーションの計画に用いられ、精神症状の評価尺度ではない。
- ×d. Mini-Mental State Examination〈MMSE〉
誤り。MMSEは、見当識、記銘、注意と計算、再生、言語(呼称・復唱・指示の理解・読字・書字)、図形の模写などからなる30点満点の認知機能検査であり、認知症のスクリーニングに用いられる。一般に23点以下で認知症が疑われる。認知機能を対象とする検査であり、統合失調症の精神症状を包括的に評価するものではない。
- ○e. 簡易精神症状評価尺度[Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉]
正しい。BPRSは、主に統合失調症を対象として精神症状を幅広く定量化する、面接者評価型の尺度である。代表的な版では18項目からなり、心気的訴え、不安、情動的引きこもり、概念の統合障害、罪業感、緊張、衒奇的な行動や姿勢、誇大性、抑うつ気分、敵意、猜疑心、幻覚、運動減退、非協調性、不自然な思考内容、情動の平板化、興奮、見当識障害を、それぞれ7段階で評価する。陽性症状・陰性症状に加えて不安や抑うつなども含むため「包括的」な評価尺度といえ、重症度の把握や抗精神病薬の治療効果の判定に用いられる。
統合失調症で用いられる主な評価尺度
・BPRS(簡易精神症状評価尺度): 18項目、各7段階。短時間で精神症状全般を評価できる。 ・PANSS(陽性・陰性症状評価尺度): BPRSなどをもとに作られた30項目の尺度で、陽性尺度7項目、陰性尺度7項目、総合精神病理尺度16項目からなり、各7段階で評価する。臨床試験で広く用いられる。 ・SANS(陰性症状評価尺度)、SAPS(陽性症状評価尺度): 陰性症状・陽性症状をそれぞれ詳しく評価する。
その他の主な評価尺度・心理検査の整理
・うつ病: ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D、面接者評価)、ベックうつ病調査票(BDI、自己記入式)、PHQ-9(自己記入式)。 ・不安: STAI、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)。 ・躁状態: ヤング躁病評価尺度(YMRS)。 ・認知症のスクリーニング: MMSE、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R、30点満点で20点以下を認知症の疑いとする)。 ・知能: ウェクスラー式知能検査(WAIS、WISC)、田中ビネー知能検査。 ・記憶: RBMT、ウェクスラー記憶検査(WMS-R)。 ・性格検査: 投影法(Rorschachテスト、TAT〈主題統覚検査〉、SCT〈文章完成法〉、バウムテスト、P-Fスタディ)、質問紙法(MMPI〈ミネソタ多面人格目録〉、YG性格検査〈矢田部ギルフォード性格検査〉)、作業検査法(内田クレペリン精神作業検査)。
評価尺度の評価者による区別
評価尺度には、医師などが面接して評価するもの(BPRS、PANSS、HAM-Dなど)と、患者自身が記入するもの(STAI、BDIなど)がある。統合失調症では病識が乏しいことが多いため、面接者評価型の尺度が主に用いられる。
POINT
・BPRSは統合失調症を主な対象とし、精神症状を包括的に点数化する面接者評価尺度である(18項目・7段階)。 ・同じく統合失調症の評価にはPANSS(30項目)も用いられる。 ・Rorschachテストは投影法の性格検査、STAIは状態不安・特性不安の質問紙、RBMTは日常生活に即した記憶検査、MMSEは認知症のスクリーニング検査である。 ・検査名を見たら、何を測る検査か(性格・知能・記憶・認知機能・症状の重症度)と対象疾患を結びつけて覚える。
