10年続けたストマ管理が急にできない―退院支援は「足りないピース」を探すこと
第117回医師国家試験 E問題 第35問
国試問題にチャレンジ
78歳の男性。心不全で入院中である。入院7日目に心不全が改善し,退院の準備を行うこととなった。落ちていた身体機能が回復したが,移動に歩行器が必要であった。もともと大腸癌術後で10年前から自分でストマの管理をしていたが,入院後に管理が難しくなった。妻と2人暮らし。認知機能は問題なく,服薬管理はできる。入浴,食事および整容は自立している。要介護度は要介護1である。退院後は通所リハビリテーション,福祉用具貸与および外来通院を予定している。 退院に際して,この患者に必要な介護サービスはどれか。
- a.訪問看護
- b.訪問診療
- c.訪問入浴介護
- d.訪問薬剤管理
- e.グループホーム入所
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
退院支援では、患者の生活上の課題を一つずつ挙げ、予定されているサービスでカバーできるかを照らし合わせて、不足する部分を補うサービスを選びます。本例では移動は福祉用具貸与、体力回復は通所リハビリテーション、診察は外来通院で対応でき、残る課題はストマ管理のみであるため、看護師が自宅で装具交換や皮膚の処置、手技の再指導を行う訪問看護が適しています。外来通院が可能なら訪問診療、入浴自立なら訪問入浴介護、服薬自己管理が可能なら薬剤師の訪問は不要で、グループホームは認知症高齢者のための施設です。訪問看護は主治医の指示書に基づき、要介護者では原則介護保険、末期悪性腫瘍などでは医療保険から給付されます。各サービスの対象と役割を理解しておくことは、患者を生活の場へ安全に帰すための多職種連携の基盤となります。
解答・解説
正解はaです
所見の整理
・78歳男性、心不全で入院し7日目に改善、退院準備の段階である:退院後の在宅生活を支えるために、どのサービスが足りないかを考える問題である。 ・身体機能は回復したが、移動に歩行器が必要:歩行器は福祉用具貸与で対応でき、すでに計画に含まれている。 ・大腸癌術後で10年間ストマ(人工肛門)を自己管理してきたが、入院後に管理が難しくなった:本人だけでは対応できない医療的ケアの課題が新たに生じている。 ・妻と2人暮らし、認知機能に問題なし、服薬管理は可能:認知症への対応や服薬支援は不要である。 ・入浴・食事・整容は自立:入浴や身の回りの介助は不要である。 ・要介護1、退院後は通所リハビリテーション・福祉用具貸与・外来通院を予定:リハビリ、移動の補助具、定期的な診察はすでに確保されている。
考え方
退院支援では、患者の生活上の課題を一つずつ挙げ、すでに予定されているサービスで対応できるかを照らし合わせる。本例で予定のサービスで対応できない課題は「ストマ管理が自分でできなくなったこと」だけである。ストマの装具交換、ストマ周囲の皮膚トラブルの観察と処置、本人や家族への手技の再指導は看護職による医療的ケアであり、自宅に看護師が訪問して行う訪問看護が適している。 一方、診察は外来通院で、服薬は本人の自己管理で、入浴は自力で可能であり、在宅生活を続けられる状態なので施設入所も必要ない。
選択肢考察
- ○a. 訪問看護
訪問看護は、主治医の指示書に基づいて看護師などが自宅を訪問し、療養上の世話や医療処置を行うサービスである。ストマ装具の交換、ストマ周囲の皮膚炎などの観察と処置、排泄状況の確認、本人・妻への管理手技の再指導などを行うことができる。本例で予定のサービスでは解決できない唯一の課題がストマ管理であるため、追加すべきサービスは訪問看護である。あわせて心不全の再燃の兆候(体重増加、浮腫、息切れなど)の観察も期待できる。
- ×b. 訪問診療
訪問診療は、通院が困難な患者に対して医師が計画的に自宅を訪問して診療を行うものである。本例は歩行器を使えば移動でき、退院後は外来通院を予定しているので、訪問診療を導入する必要はない。
- ×c. 訪問入浴介護
訪問入浴介護は、自宅の浴槽での入浴が難しい人のもとへ浴槽を持ち込み、入浴を介助するサービスである。寝たきりなど重度の要介護者が主な対象となる。本例は入浴が自立しているため不要である。
- ×d. 訪問薬剤管理
薬剤師が自宅を訪問して服薬指導や残薬確認、服薬状況の管理を行うサービス(介護保険では居宅療養管理指導の一つ)である。服薬の自己管理が難しい場合や多剤併用で調整が必要な場合に用いる。本例は認知機能に問題がなく服薬管理もできているため、必要性は低い。
- ×e. グループホーム入所
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら介護を受ける施設である。本例は認知症がなく、妻と2人で自宅生活を続けられる状態であり、入所の適応はない。
退院支援の考え方
入院中から、退院後の生活で困ることを具体的に洗い出し、医療(外来・訪問診療・訪問看護など)と介護(通所・訪問・福祉用具など)のサービスを組み合わせて在宅生活を支える。介護保険サービスの計画(ケアプラン)は介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成する。
主な在宅サービスと対象
・訪問看護:医療処置や療養上の世話が必要な人(ストマ・カテーテル・褥瘡の管理、点滴、病状観察など)。主治医の訪問看護指示書が必要である。要介護認定を受けている人では原則として介護保険から給付されるが、末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病の場合や、急性増悪時に特別訪問看護指示書が出された場合は医療保険の給付となる。 ・訪問診療:通院困難な人に医師が定期的・計画的に訪問する(医療保険)。急な依頼に応じて訪問するものは往診という。 ・訪問介護:ホームヘルパーによる身体介護(排泄・食事介助など)や生活援助(調理・掃除など)。 ・訪問入浴介護:自宅の浴槽で入浴できない重度の要介護者への入浴介助。 ・居宅療養管理指導:医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などが訪問して療養上の管理・指導を行う。 ・通所リハビリテーション(デイケア):介護老人保健施設や病院などに通ってリハビリテーションを受ける。 ・福祉用具貸与:歩行器、車椅子、特殊寝台などのレンタル。 ・グループホーム:認知症の人の共同生活の場で介護を受ける地域密着型サービス。
ストマ管理の内容
面板(皮膚に貼る部分)と袋の交換、ストマの大きさや色調の観察、周囲皮膚のただれ・発赤への対応、排泄物の漏れ対策などである。体力や手指の巧緻性、視力が落ちると、長年自己管理してきた人でも急にできなくなることがある。
POINT
・退院支援では「生活上の課題」と「予定サービス」を照らし合わせ、カバーされていない課題に必要なサービスを選ぶ。 ・ストマ管理、褥瘡処置、カテーテル管理などの医療的ケア → 訪問看護。 ・外来通院できる → 訪問診療は不要。入浴自立 → 訪問入浴介護は不要。服薬自己管理可 → 薬剤師の訪問は不要。 ・グループホームは認知症高齢者のための共同生活施設である。
