StudyMed医師国家試験

「ママ」「ブーブー」は1歳半のサイン―月齢で読み解くことばの発達

第116回医師国家試験 F問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第21問

1歳6か月の健康診査における言語発達の問診として適切なのはどれか。

  1. a.自分の名前が言えますか。
  2. b.2語文(ワンワンキタ,マンマチョウダイ)などを言いますか。
  3. c.ママ,ブーブーなど意味のあることばをいくつか話しますか。
  4. d.家族といっしょにいるとき,話しかけるような声を出しますか。
  5. e.大人の言う簡単なことば(おいで,ちょうだいなど)がわかりますか。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は1歳6か月児健康診査で、言語発達を確認する問診項目を選ぶ問題だ。選択肢はどれも母子健康手帳に実際に載っている質問なんだけれど、それぞれ想定している月齢が違う。ことばの発達の「時間軸」を頭に描けるかがポイントだよ。
医学生医学生
どれも子どものことばに関する質問なので、全部正しそうに見えてしまいました。
ドクタードクター
そう見えるのがこの問題の難しさだね。だからまず、ことばの発達の流れを順番に整理しよう。生後2〜3か月ごろには機嫌のよいときに「アー」「ウー」と声を出すクーイングが見られる。6〜7か月ごろには「バブバブ」といった喃語が盛んになり、家族に向かって話しかけるような声を出すようになる。
医学生医学生
家族に話しかけるような声を出すかどうか、という質問は、その時期の確認項目なんですね。
ドクタードクター
その通り。母子健康手帳でも6〜7か月の項目に置かれている。1歳6か月の子にこれを聞いても、評価の水準が低すぎるんだ。次に1歳ごろになると、「おいで」「ちょうだい」など簡単なことばを理解し、意味のある単語、いわゆる初語が出始める。
医学生医学生
簡単なことばがわかるかという質問は1歳の項目ですか。でも1歳半でも理解できているか確認するのは大事な気がします。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。確かに理解の確認自体は大切なんだけれど、ことばは「理解」が先、「表出」つまり話すことが後に発達する。1歳6か月ではもう理解はできていて当然の段階だから、この時期に特徴的な問診としては最適とはいえないんだ。
医学生医学生
では1歳6か月では、話せるかどうかを見るんですね。意味のある単語をいくつか話すか、という質問でしょうか。
ドクタードクター
正解。1歳6か月ごろには「ママ」「ブーブー」のような有意語を複数話せるのが目安で、手帳でもこの月齢に置かれている。この時期の言語発達を確認する問診として最も適切だ。
医学生医学生
2語文はどうでしょう。小児科の講義で、早い子は1歳半でも話すと聞いた気がします。
ドクタードクター
個人差はあるけれど、2語文の目安はおおむね2歳ごろで、手帳でも2歳の項目だ。1歳6か月で2語文が出ていなくても遅れとはいえないから、この時期の確認項目としては早すぎる。そして自分の名前が言えるのは3歳ごろで、3歳児健診で確認する内容だね。
医学生医学生
6〜7か月で話しかけるような声、1歳で理解と初語、1歳半で単語をいくつか、2歳で2語文、3歳で名前、という順番ですね。
ドクタードクター
きれいに整理できたね。それが国試でも臨床でも使える物差しになる。では、1歳6か月健診で意味のある単語がまったく出ていなかったら、何を考える?
医学生医学生
CBTの勉強で、ことばの遅れではまず難聴を除外すると覚えました。
ドクタードクター
その通り。まず聴力に問題がないかを確認する。ほかに知的能力障害、自閉スペクトラム症、養育環境の問題なども背景になりうる。だからことばの数だけでなく、ことばを理解しているか、指さしをするか、視線が合うか、呼びかけに反応するかといった対人的なやりとりもあわせて評価するんだ。
医学生医学生
小児科実習の健診見学で、保健師さんが絵カードを見せて「ワンワンどれ?」と指さしを確認していました。あれも意味があったんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。指さしは理解と共同注意の両方を見られる大事なサインなんだ。ちなみに1歳6か月児健診と3歳児健診は母子保健法で市町村に実施が義務づけられた法定健診で、ことばだけでなく一人歩きができるかといった運動発達、歯科、栄養状態、予防接種の状況なども確認する。
医学生医学生
ことばが遅いと親御さんも不安になりそうです。伝え方も難しいですね。
ドクタードクター
そうだね。発達には幅があるから、一度の健診で決めつけず、必要に応じて聴力検査や専門機関での評価、経過観察につなげる。早期に気づいて支援を始めることが、子どもと家族の両方にとって大切なんだ。

まとめ

ことばの発達はおおむね、6〜7か月で喃語や話しかけるような発声、1歳で簡単なことばの理解と初語、1歳6か月で意味のある単語をいくつか話す、2歳で2語文、3歳で自分の名前を言う、という順に進みます。母子健康手帳の問診項目もこの目安に沿って月齢ごとに配置されており、1歳6か月児健康診査では「ママ」「ブーブー」など有意語を複数話すかを確認するのが適切です。ことばは理解が表出に先行して発達するため、理解の確認は1歳、2語文は2歳の課題となります。1歳6か月で有意語がない場合は、難聴、知的能力障害、自閉スペクトラム症などを念頭に、聴力や指さし・視線・呼びかけへの反応といった対人的なやりとりも評価します。月齢ごとの発達の物差しをもつことは、健診で遅れに早く気づき、適切な支援につなげるための基本となります。

解答・解説

正解はcです

問われていること

1歳6か月児健康診査(母子保健法に基づき市町村が行う法定健診)で、言語発達を確認するのにふさわしい問診項目を選ぶ問題である。各選択肢は母子健康手帳の「保護者の記録」に載っている質問で、それぞれ想定されている月齢・年齢が異なる。年齢ごとの言語発達の目安を当てはめて、1歳6か月に該当するものを選べばよい。

言語発達の大まかな流れ

・生後2~3か月ごろ:機嫌のよいときに「アー」「ウー」などの声を出す(クーイング)。 ・6~7か月ごろ:「バブバブ」などの喃語が盛んになり、家族に向かって話しかけるような声を出す。 ・1歳ごろ:「おいで」「ちょうだい」など簡単な言葉を理解し、意味のある単語(初語)が出始める。バイバイなどの身振りもまねる。 ・1歳6か月ごろ:「ママ」「ブーブー」など意味のある単語をいくつか話す。 ・2歳ごろ:「ワンワン キタ」などの2語文を話す。 ・3歳ごろ:自分の名前を言える。 言葉の発達はまず「理解」が先行し、その後に「表出(話すこと)」が続く点も押さえておく。

1歳6か月健診での意義

1歳6か月の時点で意味のある単語が出ているかは、言語発達の遅れを見つける重要な目安となる。有意語がまったく出ていない場合は、難聴、知的能力障害、自閉スペクトラム症などを念頭に、聴力や対人関係の発達(指さし、視線が合うか、呼びかけへの反応など)もあわせて評価する。

選択肢考察

  1. ×a.  自分の名前が言えますか。

    自分の名前を言えるようになるのはおおむね3歳ごろであり、3歳児健康診査で確認する項目である。1歳6か月児ではまだ単語が出始めた段階で、自分の名前を言えないのが普通であり、この時期の問診としては不適切である。

  2. ×b.  2語文(ワンワンキタ,マンマチョウダイ)などを言いますか。

    2語文(二つの単語をつなげた文)を話すようになるのはおおむね2歳ごろであり、母子健康手帳でも2歳の項目に置かれている。1歳6か月で2語文が出ていなくても遅れとはいえないため、この時期の確認項目としては早すぎる。

  3. ○c.  ママ,ブーブーなど意味のあることばをいくつか話しますか。

    意味のある単語(有意語)は1歳ごろから出始め、1歳6か月ごろには「ママ」「ブーブー」など複数の単語を話せるようになるのが目安である。母子健康手帳でも1歳6か月の項目に置かれており、この時期の言語発達(表出)を確認する問診として適切である。この時点で有意語が一つも出ていない場合は、難聴や発達障害などの可能性を考え、精査や経過観察につなげる。

  4. ×d.  家族といっしょにいるとき,話しかけるような声を出しますか。

    家族に向かって話しかけるような声(喃語など)を出すのは6~7か月ごろの発達であり、母子健康手帳でも6~7か月の項目に置かれている。1歳6か月児ではすでに単語を話す段階に進んでいるはずなので、言語発達の評価としては水準が低すぎる。

  5. ×e.  大人の言う簡単なことば(おいで,ちょうだいなど)がわかりますか。

    「おいで」「ちょうだい」など簡単な言葉の理解は1歳ごろに確認する項目であり、母子健康手帳でも1歳の項目に置かれている。言葉の理解は話すことより先に発達するため、1歳6か月ではすでに達成されているべき段階で、この時期の問診として最も適切とはいえない。

母子健康手帳の主な発達確認項目(言語・精神発達を中心に)

・3~4か月:見えない方向から声をかけると、そちらを見ようとする。 ・6~7か月:家族といっしょにいるとき、話しかけるような声を出す。 ・9~10か月:そっと近づいてささやき声で呼びかけると振り向く。 ・1歳:バイバイ、コンニチハなどの身振りをする。大人の言う簡単な言葉(おいで、ちょうだいなど)がわかる。離れたところにあるおもちゃを指さすと、その方向を見る。 ・1歳6か月:ママ、ブーブーなど意味のある言葉をいくつか話す。 ・2歳:2語文(ワンワンキタ、マンマチョウダイなど)を言う。積み木で塔を作ったり、横に並べて電車などに見立てて遊ぶ。 ・3歳:自分の名前が言える。ままごとやヒーローごっこなどのごっこ遊びができる。 ・4歳:自分の経験したことを親に話す。はさみを上手に使える。 ・5歳:色(赤、黄、緑、青)がわかる。はっきりした発音で話ができる。 ・6歳:自分の前後・左右がおおよそわかる。ひらがなで自分の名前を読んだり書いたりできる。 3~4か月や9~10か月の項目は、聴覚の確認(音や声への反応)としての意味ももつ。

乳幼児健康診査

母子保健法により、市町村は1歳6か月児健康診査(満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児)と3歳児健康診査(満3歳を超え満4歳に達しない幼児)を行う義務がある。身体発育、栄養状態、運動発達、精神・言語発達、歯科、予防接種状況などを確認し、発達の遅れや疾患、育児上の問題の早期発見と支援につなげる。1歳6か月児では一人歩きができるかどうかも運動発達の重要な確認点である。

言葉の遅れをみたときの考え方

言語発達の遅れの背景には、難聴(聴覚障害)、知的能力障害、自閉スペクトラム症、養育環境の問題などがある。言葉が遅いときは、まず聴力に問題がないかを確認し、言葉の理解はできているか、指さしや視線の共有、呼びかけへの反応など対人的なやりとりができているかを評価して鑑別する。

POINT

・言語発達の目安:6~7か月 喃語・話しかけるような発声、1歳 簡単な言葉の理解と初語、1歳6か月 意味のある単語をいくつか話す、2歳 2語文、3歳 自分の名前を言う。 ・言葉は理解が先、表出が後に発達する。 ・1歳6か月で有意語がなければ、難聴・知的能力障害・自閉スペクトラム症などを考えて評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。