「組み合わせると効き方が変わる」―交互作用と交絡を見分ける疫学の目
第116回医師国家試験 F問題 第22問
国試問題にチャレンジ
ある疾患のリスクについて遺伝要因と喫煙習慣の交互作用が認められるとき,観察される現象として正しいのはどれか。
- a.遺伝要因の有無により喫煙習慣に差異がある。
- b.遺伝要因の有無により喫煙習慣と疾患との関連が異なる。
- c.遺伝要因を調整すると喫煙習慣と疾患との関連が消失する。
- d.喫煙習慣で調整すると遺伝要因と疾患との関連が消失する。
- e.遺伝要因によらず禁煙による疾患予防効果が同じ程度みられる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
交互作用(効果修飾)とは、ある曝露と疾患との関連の強さが、第3の要因の有無や程度によって変わる現象であり、層別解析で層ごとの相対危険やオッズ比が異なることで認識されます。これに対し交絡は、曝露と疾患の両方に関連する第3の要因が見かけの関連を生じさせる現象で、層ごとの値はほぼ等しく、調整すると関連が弱まったり消失したりします。要因同士に相関があることは交互作用の定義ではなく、層によらず効果が等しい場合は交互作用がない状態です。交絡は制御すべきバイアス、交互作用は層別に報告すべき発見という扱いの違いも重要で、喫煙とアスベスト、喫煙と飲酒などの代表例は、ハイリスク者への重点的な予防介入を考える土台になります。
解答・解説
正解はbです
本問は疫学における「交互作用(interaction)」の意味を問う問題である。似た言葉である「交絡(confounding)」との違いを理解しているかが鍵になる。
交互作用とは
ある要因(ここでは喫煙)と疾患との関連の強さが、別の要因(ここでは遺伝要因)の有無や程度によって変わる現象を交互作用という。疫学では「効果修飾(effect modification)」とほぼ同じ意味で使われ、第3の要因は「効果修飾因子」と呼ばれる。たとえば、遺伝要因をもたない人では喫煙による疾患の相対危険が2倍なのに、遺伝要因をもつ人では10倍になる、という場合がこれにあたる。遺伝要因の有無で層別化(グループ分け)して解析すると、層ごとに喫煙と疾患の関連の大きさ(相対危険やオッズ比)が異なって見えるのが特徴である。
交絡とは
一方、交絡は、注目する曝露(喫煙)と疾患の両方に関連し、かつ曝露から疾患への因果経路の途中にない第3の要因によって、見かけ上の関連がゆがめられる現象である。交絡因子で層別化すると、各層での関連の大きさは互いにほぼ等しく、全体(粗)の値だけが層別の値とずれる。交絡因子で調整すると、見かけの関連が弱まったり消失したりする。
解き方
「交互作用がある」とは「層によって関連の強さが違う」ことであると押さえれば、選択肢のうち「遺伝要因の有無で喫煙と疾患の関連が異なる」と述べたものが正解とわかる。調整により関連が消失するという記述は交絡の特徴であり、要因同士に差があるという記述は要因間の相関を述べているにすぎない。
選択肢考察
- ×a. 遺伝要因の有無により喫煙習慣に差異がある。
これは遺伝要因と喫煙習慣という2つの要因の間に関連(相関)があることを述べているだけで、疾患との関連の強さが変わるかどうかについては何も言っていない。2要因の間に関連があり、さらに一方が疾患とも関連していれば交絡が生じる条件の一つになりうるが、交互作用の定義とは異なる。交互作用は、2要因が互いに独立に分布していても成立しうる。
- ○b. 遺伝要因の有無により喫煙習慣と疾患との関連が異なる。
交互作用(効果修飾)の定義そのものである。遺伝要因の有無で対象者を層別化したとき、喫煙と疾患の関連の大きさ(相対危険、オッズ比、リスク差など)が層ごとに異なれば、遺伝要因は喫煙の効果を修飾している、すなわち両者の間に交互作用があるといえる。たとえば、遺伝要因をもつ人では喫煙による疾患リスクの上昇が特に大きいといった状況がこれにあたり、2つの要因が組み合わさると各要因単独の効果から予想されるより大きい効果(相乗効果)が出る場合が典型例である。
- ×c. 遺伝要因を調整すると喫煙習慣と疾患との関連が消失する。
遺伝要因が喫煙と疾患の両方に関連する交絡因子であり、喫煙と疾患の関連が見かけ上のものだった場合にみられる現象である。交互作用がある場合は、遺伝要因の層ごとに喫煙と疾患の関連の強さが異なるのであり、調整によって関連が消失するわけではない。むしろ交互作用があるときは、層ごとの値が異なるため、一つの調整済みの値にまとめると実態を見誤るおそれがあり、層別に結果を示すのが適切である。
- ×d. 喫煙習慣で調整すると遺伝要因と疾患との関連が消失する。
喫煙習慣が遺伝要因と疾患との関連における交絡因子だった場合に起こりうる現象である。つまり、遺伝要因をもつ人が喫煙しやすく、その喫煙が疾患の原因となっているため、遺伝要因と疾患の間に見かけの関連が生じていた状況である。交互作用の説明ではない。
- ×e. 遺伝要因によらず禁煙による疾患予防効果が同じ程度みられる。
遺伝要因の有無にかかわらず禁煙の効果(喫煙と疾患の関連の大きさ)が同程度であるなら、遺伝要因は喫煙の効果を修飾していないことになる。これは交互作用が「ない」状態を表しており、設問の前提と逆である。このとき遺伝要因は疾患と関連しないか、関連していても喫煙とは独立に作用する危険因子であると考えられる。
交互作用と交絡の比較
・交互作用(効果修飾): 第3の要因の層によって、曝露と疾患の関連の強さが異なる。層別解析で層ごとの値が異なる。生物学的・臨床的に意味のある現象であり、取り除くべきバイアスではなく、層別に報告すべき「発見」である。 ・交絡: 第3の要因が曝露と疾患の両方に関連し(因果経路上の中間因子ではない)、見かけの関連を生じさせたり隠したりする。層別解析では層ごとの値がほぼ等しく、粗の値だけがずれる。研究デザイン(無作為化、限定、マッチング)や解析(層別化、多変量解析による調整)で制御すべきバイアスである。
交互作用の尺度
交互作用の有無は、どの尺度で関連を測るかによって変わりうる。リスク差で評価する場合を相加的交互作用、相対危険やオッズ比で評価する場合を相乗的交互作用という。公衆衛生上の介入効果(何人の患者を防げるか)を考える際は相加尺度での評価が重要とされる。
代表例
・喫煙とアスベスト曝露: 両方に曝露した人の肺癌リスクは、各単独曝露のリスクから予想されるよりはるかに大きい(相乗効果)。 ・喫煙と飲酒: 食道癌や口腔・咽頭癌のリスクを相乗的に高める。 ・喫煙と経口避妊薬: 心血管疾患・血栓症のリスクが特に高まる。
POINT
・交互作用(効果修飾)=第3の要因の有無・程度によって、曝露と疾患の関連の強さが変わること。 ・層別解析で層ごとの関連の大きさが異なれば交互作用、層ごとに等しく粗の値だけ異なれば交絡を疑う。 ・「調整すると関連が消失する」は交絡の特徴であり、交互作用ではない。 ・2要因の間に相関があることは交互作用の定義ではない。
