「誰のことか」が分かる情報とは―英語で問う個人識別の考え方
第116回医師国家試験 C問題 第23問
国試問題にチャレンジ
Which is the most likely personal information that can be used to identify an individual person?
- a.ABO blood type
- b.Annual income
- c.Date and place of birth
- d.Occupation
- e.Past medical history
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
ある情報が個人の特定に使えるかどうかは、同じ値をもつ人がどれだけ少ないかで決まり、取りうる値が非常に多い生年月日に出生地が加われば、ほぼ一人に絞り込めます。個人情報保護法も、氏名や生年月日などにより特定の個人を識別できる生存者の情報を個人情報と定義しており、医療現場でもフルネームと生年月日の照合が患者確認の基本です。血液型・年収・職業・一般的な既往歴は該当者が多く単独では特定に至りにくいものの、病歴は要配慮個人情報として特に慎重な扱いが求められます。また、単独では特定できない情報でも組み合わせると個人が特定されうるため、症例発表やカルテ管理では十分な配慮が必要です。英語問題であっても「絞り込める情報か」という本質を押さえれば迷わず解答でき、日々の臨床での情報管理にも直結します。
解答・解説
正解はcです
問題文の意味
「個人を特定(識別)するのに使われる可能性が最も高い個人情報はどれか」という問いである。
考え方
ある情報が個人の特定に役立つかどうかは、「同じ情報をもつ人がどれだけ少ないか」で決まる。同じ値をもつ人が大勢いる情報(例えば血液型A型の人は日本人の約4割)は、それだけでは誰のことか絞り込めない。反対に、同じ値をもつ人がごくわずかしかいない情報は、単独でも、あるいは他の情報と組み合わせることで容易に一人に絞り込める。 生年月日は1年365通り×年齢の幅で数万通りに分かれ、さらに出生地が加われば、該当者は極めて少数に限られる。実際、医療機関では患者の取り違えを防ぐため、氏名と並んで生年月日を確認するのが標準的な本人確認の方法となっている。 また、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」第2条は、個人情報を「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」などと定義しており、生年月日は法律上も個人を識別する情報の典型例として明記されている。 以上から、選択肢の中で個人の特定に最も用いられやすいのは「生年月日と出生地」である。
選択肢考察
- ×a. ABO blood type
ABO血液型はA・B・O・ABの4通りしかなく、日本人ではおよそA型4割、O型3割、B型2割、AB型1割と、それぞれに非常に多くの人が該当する。本人に関する情報ではあるが、それ単独で特定の個人に絞り込むことはできない。
- ×b. Annual income
年収は他人に知られたくない重要なプライバシー情報ではあるが、同程度の年収の人は多数存在するため、それだけでは個人を特定できない。
- ○c. Date and place of birth
生年月日は取りうる値の種類が非常に多く、同じ生年月日をもつ人は限られる。そこに出生地が加わると、該当者はごく少数にまで絞られ、ほぼ一人を特定できる。個人情報保護法第2条でも、氏名と並んで生年月日が特定の個人を識別できる記述の例として挙げられており、医療現場でも患者確認(フルネームと生年月日の照合)に用いられている。
- ×d. Occupation
会社員、教員、看護師など、多くの職業には膨大な数の人が従事しており、職業だけでは個人を特定できない。ただし、内閣総理大臣のように一人しか就かない職や、小さな地域でごく少数しかいない職業では、職業だけ、あるいは地域情報と組み合わせることで個人が推定されうる点には注意が必要である。
- ×e. Past medical history
既往歴(病歴)は、本人に対する不当な差別や偏見につながりうるため、個人情報保護法で「要配慮個人情報」として特に慎重な取り扱いが求められる重要な情報である。しかし、高血圧や虫垂炎の手術歴など、同じ既往をもつ人は多数いるため、一般にはそれだけで個人を特定することはできない。ただし、非常にまれな疾患の既往は、地域などの情報と組み合わさると個人の特定につながることがある。
個人情報保護法の概要
・2003年に成立し、2005年に全面施行された。その後、2015年改正(2017年施行)で「個人識別符号」「要配慮個人情報」が新設され、2020年改正(2022年施行)で本人の権利(利用停止請求など)が強化された。さらに2021年改正により、それまで別々だった行政機関・独立行政法人等を対象とする法律と一本化された。 ・個人情報:生存する個人に関する情報で、氏名・生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合でき、それにより識別できるものを含む)、または個人識別符号を含むもの。 ・個人識別符号:それ単体で特定の個人を識別できる符号。DNAの塩基配列、顔・指紋・虹彩などの身体的特徴をデータ化したもの、旅券番号、運転免許証番号、マイナンバー、基礎年金番号、各種保険者番号など。 ・要配慮個人情報:人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪被害の事実など、不当な差別・偏見が生じないよう特に配慮を要するもの。健康診断の結果や診療・調剤の情報もこれに含まれる。取得には原則として本人の同意が必要である。
医療と個人情報
・医療者には刑法(医師の秘密漏示罪)や各資格法による守秘義務もあり、個人情報保護法と合わせて適切な情報管理が求められる。 ・学会発表や症例報告では、氏名・イニシャル・生年月日・住所・病院の患者番号などを記載せず、日付も個人が特定されない形にするなどの配慮が必要である。 ・単独では個人を特定できない情報(年齢、性別、職業、居住地域、まれな病名など)でも、複数を組み合わせると個人が特定されうることを理解しておく。
POINT
・個人の特定に使われやすいのは、同じ値をもつ人が少ない情報(氏名、生年月日、住所、出生地など)である。 ・個人情報保護法は、氏名・生年月日等により特定の個人を識別できる生存者の情報を個人情報と定義する。 ・血液型・年収・職業・一般的な既往歴は、単独では個人の特定に至りにくい。 ・病歴は「要配慮個人情報」であり、取得には原則本人の同意が必要。 ・単独で特定できない情報も組み合わせると個人が特定されうる。
