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声を生み出す筋はすべて「迷走」の支配下―内喉頭筋と反回神経の基本

第116回医師国家試験 C問題 第24問

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第116回 C問題 第24問

発声時に活動する内喉頭筋を支配する神経はどれか。

  1. a.顔面神経
  2. b.舌咽神経
  3. c.迷走神経
  4. d.副神経
  5. e.舌下神経

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、声を出すときに働く喉頭の筋がどの脳神経に支配されているかを問う問題だ。シンプルだけど、臨床でとても大事な「反回神経麻痺」につながる知識だよ。まずは喉頭がどこから発生してくるかを思い出してみよう。
医学生医学生
発生学の講義で、咽頭弓ごとに対応する脳神経が決まっていると習いました。喉頭は第4と第6咽頭弓でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。第4・第6咽頭弓に対応する神経は迷走神経だ。だから喉頭の運動も知覚も、ほぼすべて迷走神経の枝が担っている。正解は迷走神経だね。
医学生医学生
迷走神経って副交感神経のイメージが強くて、筋肉を動かしているとは意識していませんでした。
ドクタードクター
よくある誤解だね。迷走神経には咽頭・喉頭の横紋筋を動かす運動成分もしっかりある。喉頭に向かう枝は2本で、上喉頭神経と反回神経だ。上喉頭神経はさらに内枝と外枝に分かれ、内枝は声門より上の粘膜の知覚、外枝は輪状甲状筋の運動を担う。
医学生医学生
じゃあ、残りの内喉頭筋は反回神経ですか。
ドクタードクター
そう。輪状甲状筋以外の内喉頭筋、つまり後輪状披裂筋、外側輪状披裂筋、披裂筋、甲状披裂筋はすべて反回神経支配だ。末端部分は下喉頭神経とも呼ばれる。声門より下の粘膜の知覚も反回神経が受け持つよ。
医学生医学生
発声のときは声門を閉じて声帯を張るんですよね。どの筋が働くんでしょう。
ドクタードクター
声門を閉じるのが外側輪状披裂筋、披裂筋、甲状披裂筋で、声帯を緊張させるのが輪状甲状筋と、甲状披裂筋の内側部である声帯筋だ。どれも迷走神経の枝に支配されている。逆に声門を開くのは後輪状披裂筋ただ一つ、というのも頻出ポイントだよ。
医学生医学生
ほかの選択肢も確認させてください。舌咽神経は咽頭に関わるので、喉頭にも来ていそうな気がしたんですが。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。舌咽神経は第3咽頭弓の神経で、主な働きは舌後1/3の味覚・知覚や咽頭粘膜の知覚、頸動脈洞からの入力といった知覚系だ。運動は茎突咽頭筋だけで、内喉頭筋には分布しない。顔面神経は第2咽頭弓の神経で、表情筋やアブミ骨筋などを動かすけれど、喉頭とは無関係だね。
医学生医学生
副神経は、昔の教科書で延髄根が喉頭筋に行くと書いてあった気がします。
ドクタードクター
よく知っているね。古典的にはそう説明されたけれど、現在ではその線維は迷走神経の一部とみなすのが一般的だ。副神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する神経として覚えておけばいい。舌下神経は舌の筋を動かす純粋な運動神経で、障害されると挺舌時に舌が障害側へ偏る。これも喉頭には関わらない。
医学生医学生
つまり、喉頭の筋は輪状甲状筋だけ上喉頭神経外枝、それ以外は反回神経で、どちらも迷走神経の枝、と整理すればいいんですね。
ドクタードクター
完璧だ。ここからは臨床の話をしよう。反回神経は名前の通り胸部で反転して上行する。右は鎖骨下動脈、左は大動脈弓を回るから、左のほうが走行が長いんだ。
医学生医学生
耳鼻咽喉科の実習で、嗄声で紹介された患者さんが実は肺癌だったと聞きました。左のほうが多いのはそのせいですか。
ドクタードクター
まさにそう。左反回神経は肺癌、縦隔腫瘍、大動脈瘤、食道癌などで障害されやすい。甲状腺の手術や甲状腺癌の浸潤でも傷つくことがある。片側麻痺では声門が閉じきらず、息が漏れるような気息性嗄声や誤嚥が起こる。だから原因不明の嗄声を診たら、喉頭だけでなく胸部まで調べることが大切なんだ。
医学生医学生
両側が麻痺したらどうなるんですか。
ドクタードクター
声門を開く唯一の筋である後輪状披裂筋が両側とも働かなくなるので、声門が開かず吸気性喘鳴や呼吸困難をきたす。気道確保が必要になることもある緊急事態だよ。一方、上喉頭神経外枝の障害では輪状甲状筋が働かず高い声が出しにくくなり、内枝の障害では声門上の知覚が落ちて誤嚥しやすくなる。神経ごとの症状の違いも押さえておこう。

まとめ

喉頭は第4・第6咽頭弓に由来するため、発声に関わる内喉頭筋はすべて迷走神経の枝に支配されます。輪状甲状筋のみ上喉頭神経外枝、それ以外の後輪状披裂筋・外側輪状披裂筋・披裂筋・甲状披裂筋は反回神経(下喉頭神経)が支配し、声門を開く筋は後輪状披裂筋だけです。顔面神経・舌咽神経・副神経・舌下神経はいずれも内喉頭筋を支配しません。左反回神経は大動脈弓を回って走行が長いため、肺癌や大動脈瘤、食道癌などの胸部病変で麻痺しやすく、嗄声が胸部疾患の初発症状となることがあります。咽頭弓と脳神経の対応、反回神経の走行を理解しておくことは、嗄声や誤嚥の原因検索という臨床判断に直結します。

解答・解説

正解はcです

問われていること

喉頭の内部にあって声帯の位置や緊張を調節する筋(内喉頭筋)が、どの脳神経の支配を受けているかを問う基本問題である。

考え方

喉頭は第4・第6咽頭弓(鰓弓)に由来する構造であり、これらの咽頭弓に対応する脳神経は迷走神経(第X脳神経)である。そのため喉頭の運動と知覚はほぼすべて迷走神経の枝が担う。 迷走神経から喉頭に向かう枝は2本ある。 ・上喉頭神経:内枝(声門より上の喉頭粘膜の知覚)と外枝(輪状甲状筋の運動)に分かれる。 ・反回神経(末端は下喉頭神経と呼ばれる):輪状甲状筋以外のすべての内喉頭筋の運動と、声門より下の粘膜の知覚を担う。 発声時には声門を閉じる筋(外側輪状披裂筋、披裂筋、甲状披裂筋)と声帯を緊張させる筋(輪状甲状筋、声帯筋)が働くが、これらはいずれも上記の迷走神経の枝によって支配される。したがって正解は迷走神経である。

選択肢考察

  1. ×a.  顔面神経

    顔面神経(第VII脳神経)は第2咽頭弓の神経で、表情筋、アブミ骨筋、顎二腹筋後腹、茎突舌骨筋の運動を支配するほか、舌前2/3の味覚や涙腺・顎下腺・舌下腺の分泌にも関わる。喉頭の筋には分布しない。

  2. ×b.  舌咽神経

    舌咽神経(第IX脳神経)は第3咽頭弓の神経で、主な働きは知覚である(舌後1/3の味覚・一般知覚、咽頭粘膜の知覚、頸動脈洞・頸動脈小体からの入力)。運動成分は茎突咽頭筋のみで、副交感成分は耳下腺の分泌に関わる。内喉頭筋は支配しない。

  3. ○c.  迷走神経

    喉頭の筋はすべて迷走神経(第X脳神経)の枝に支配される。輪状甲状筋は上喉頭神経外枝が、それ以外の内喉頭筋(後輪状披裂筋、外側輪状披裂筋、披裂筋、甲状披裂筋・声帯筋)は反回神経(下喉頭神経)が支配する。発声時に声門を閉じ、声帯を緊張させる筋の運動はこの神経によって担われている。

  4. ×d.  副神経

    副神経(第XI脳神経)は胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する運動神経であり、障害されると肩の挙上や頸部の回旋が弱くなる。古典的な解剖学では副神経の延髄根(脳根)が迷走神経に合流して喉頭筋に至ると説明されたが、現在ではこの線維は迷走神経の一部とみなすのが一般的であり、内喉頭筋の支配神経として副神経を挙げるのは誤りである。

  5. ×e.  舌下神経

    舌下神経(第XII脳神経)は舌の筋(内舌筋と、口蓋舌筋を除く外舌筋)を支配する純粋な運動神経である。障害されると挺舌時に舌が障害側へ偏位する。喉頭の筋には関与しない。

内喉頭筋と支配神経・働き

・後輪状披裂筋:声門を開く唯一の筋(外転筋)。反回神経支配。両側が麻痺すると声門が開かず、吸気性喘鳴や呼吸困難をきたす。 ・外側輪状披裂筋:声門を閉じる(内転)。反回神経支配。 ・披裂筋(横・斜披裂筋):左右の披裂軟骨を寄せて声門後部を閉じる。反回神経支配(左右両側から支配を受ける)。 ・甲状披裂筋(内側部が声帯筋):声門を閉じ、声帯の緊張を微調整する。反回神経支配。 ・輪状甲状筋:甲状軟骨を前下方へ傾けて声帯を引き伸ばし、緊張させる。声の高さ(高音)を調節する。上喉頭神経外枝支配。

反回神経の走行と臨床

反回神経は胸部で反転して上行する。右は鎖骨下動脈、左は大動脈弓を回るため、左の方が走行が長く、胸部疾患(肺癌、縦隔腫瘍、大動脈瘤、食道癌)でも障害されやすい。甲状腺手術や甲状腺癌の浸潤でも障害され、片側麻痺では嗄声(気息性嗄声)や誤嚥が生じる。

上喉頭神経障害

外枝の障害では輪状甲状筋が働かず、高い声が出しにくくなる。内枝の障害では声門上の知覚が低下し、誤嚥しやすくなる。

POINT

・喉頭の運動・知覚はすべて迷走神経の枝(上喉頭神経と反回神経)が担う。 ・輪状甲状筋のみ上喉頭神経外枝、ほかの内喉頭筋はすべて反回神経(下喉頭神経)支配。 ・声門を開く筋は後輪状披裂筋のみ。 ・左反回神経は大動脈弓を回るため走行が長く、胸部病変で麻痺しやすい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。