1個でも見逃せない―尿沈渣の顆粒円柱が告げる腎実質の異変
第115回医師国家試験 F問題 第14問
国試問題にチャレンジ
健康診断の尿沈渣で各視野に1つでも認められたとき異常となるのはどれか。
- a.赤血球
- b.白血球
- c.顆粒円柱
- d.硝子円柱
- e.扁平上皮
対話形式の解説
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ドクターまとめ
尿沈渣は尿中の有形成分を顕微鏡で観察する検査で、腎・尿路の状態を形態的に把握できます。赤血球と白血球は強拡大1視野あたり4個以下が基準であり、硝子円柱や扁平上皮細胞も健常人に少数みられるため、1個認めただけでは異常といえません。一方、硝子円柱以外の円柱は1個でも出現すれば病的で、顆粒円柱は変性した細胞成分を含み、慢性腎炎や腎不全など腎実質の障害を示唆します。赤血球円柱は糸球体腎炎、白血球円柱は腎盂腎炎・間質性腎炎、脂肪円柱はネフローゼ症候群と、円柱の種類から病態を推定できます。正常でも出る成分と出れば異常な成分を区別しておくことは、健診結果の適切な評価と腎疾患の早期発見に直結します。
解答・解説
正解はcです
尿沈渣とは、尿を遠心分離して得た沈殿物を顕微鏡で観察し、赤血球・白血球・上皮細胞・円柱・結晶・微生物などの有形成分を調べる検査である。腎臓や尿路の状態を形態的に把握できるため、「針を使わない腎生検」とも呼ばれる。 本問は、健常人の尿にも少数なら出現しうる成分と、少数でも出現すれば病的と判断される成分とを区別できるかを問うている。 ・健常人でも少数みられるもの:赤血球(強拡大1視野〈HPF〉あたり4個以下)、白血球(同じく4個以下)、硝子円柱、扁平上皮細胞。 ・少数でも出現すれば異常とされるもの:硝子円柱以外の円柱(顆粒円柱、上皮円柱、赤血球円柱、白血球円柱、ろう様円柱、脂肪円柱など)。 円柱は尿細管の内腔を鋳型として形成される尿特有の成分であり、その基質は尿細管上皮から分泌されるTamm-Horsfall蛋白(ウロモジュリン)が少量の血漿蛋白とともにゲル化したものである。基質だけでできた硝子円柱は健常人でも出現するが、細胞やその変性物を封入した円柱は、尿細管・糸球体など腎実質に障害があることを示す。したがって、選択肢のうち1個でも認められれば異常と判断されるのは顆粒円柱である。
選択肢考察
- ×a. 赤血球
健常人でも尿沈渣中に少数の赤血球はみられ、基準は男女とも強拡大1視野あたり4個以下(0〜4/HPF)である。5個/HPF以上で顕微鏡的血尿と判断する。1個認めただけでは異常とはいえない。なお女性では月経血の混入にも注意する。
- ×b. 白血球
健常人でも少数の白血球はみられ、基準は男女とも強拡大1視野あたり4個以下である。尿中白血球の大部分(約95%)は好中球であり、5個/HPF以上は膿尿として尿路感染症などを疑う。1個認めただけでは異常とはいえない。
- ○c. 顆粒円柱
顆粒円柱は、円柱の基質内に顆粒成分が1/3以上封入されたものである。顆粒の多くは円柱内に取り込まれた尿細管上皮細胞などが変性・崩壊したものと考えられている。健常人には出現せず、慢性糸球体腎炎、腎不全、急性尿細管壊死など腎実質の障害を示唆し、腎機能低下と関連が強い。したがって1個でも認めれば異常と判断する。
- ×d. 硝子円柱
硝子円柱はTamm-Horsfall蛋白を主体とする基質がゲル化しただけの透明な円柱で、すべての円柱の基本形である。健常人の尿にも少数出現し、激しい運動の後や脱水、発熱時、利尿薬使用時などに増加する。少数の出現のみでは病的意義は乏しく、1個認めても異常とはいえない。ただし多数認める場合は他の所見とあわせて腎疾患を考える。
- ×e. 扁平上皮
扁平上皮細胞は外尿道口付近の尿道粘膜に由来するほか、特に女性では外陰部や腟由来の細胞が混入しやすく、健常人の尿にもしばしば認められる。尿道炎、尿路結石、カテーテル挿入による機械的損傷などで増加することはあるが、少数の出現は異常とはいえない。多数みられる場合は採尿時の混入(コンタミネーション)を疑い、中間尿の正しい採取を確認する。
尿沈渣成分の分類
1.非上皮細胞類:赤血球、白血球、大食細胞(マクロファージ) 2.上皮細胞類:尿細管上皮細胞、尿路上皮細胞(移行上皮)、扁平上皮細胞、卵円形脂肪体、ウイルス感染細胞(封入体細胞)など 3.異型細胞類:悪性腫瘍細胞など 4.円柱類:硝子円柱、上皮円柱、顆粒円柱、ろう様円柱、脂肪円柱、赤血球円柱、白血球円柱など 5.微生物類・寄生虫類:細菌、真菌、トリコモナスなど 6.塩類・結晶類:無晶性リン酸塩・尿酸塩、シュウ酸カルシウム結晶、尿酸結晶、シスチン結晶など
円柱の成り立ち
尿細管腔でTamm-Horsfall蛋白が血漿蛋白とともにゲル化して円柱ができ、その後尿流によって押し流されて尿中に出現する。つまり円柱の存在は、尿細管腔が一時的に閉塞し、その後再び尿が流れたことを意味する。蛋白濃度の上昇、尿の酸性化、尿流の停滞(尿量減少)は円柱形成を促す。
主な円柱と関連する病態
・硝子円柱:健常人でも少数出現。運動後、脱水、発熱など。 ・上皮円柱:尿細管上皮細胞を含む。尿細管障害、急性尿細管壊死、腎炎など。 ・顆粒円柱:細胞成分が変性した顆粒を含む。慢性腎炎、腎不全など腎実質障害。 ・ろう様円柱:顆粒円柱がさらに変性・均質化したもので、長期間の尿細管内停滞を示す。重篤な腎疾患(腎不全、ネフローゼ症候群、腎炎末期)。 ・脂肪円柱:脂肪滴や卵円形脂肪体を含む。ネフローゼ症候群。 ・赤血球円柱:赤血球が糸球体由来であることを示す。急性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎、急速進行性糸球体腎炎など出血性の糸球体疾患。 ・白血球円柱:腎実質の炎症。急性腎盂腎炎、間質性腎炎など。
赤血球の形態
糸球体由来の赤血球は、糸球体基底膜を通過し尿細管内で浸透圧変化を受けるため、大小不同やコブ状突出などの変形(変形赤血球、dysmorphic RBC)を示す。下部尿路由来の赤血球は均一な形態を保つ(均一赤血球)。血尿の出血部位の推定に役立つ。
POINT
・赤血球・白血球の基準は強拡大1視野あたり4個以下(5個以上で血尿・膿尿)。 ・硝子円柱は健常人でも少数出現し、運動後や脱水で増加する。 ・硝子円柱以外の円柱(顆粒・上皮・ろう様・脂肪・赤血球・白血球円柱)は1個でも出現すれば病的で、腎実質障害を示す。 ・赤血球円柱は糸球体腎炎、白血球円柱は腎盂腎炎・間質性腎炎、脂肪円柱はネフローゼ症候群を示唆する。 ・扁平上皮細胞は外尿道口・外陰部由来の混入が多く、通常は病的意義が乏しい。
