StudyMed医師国家試験

血清クレアチニン1.0でも油断禁物―24時間蓄尿で読み解くクレアチニンクリアランス

第118回医師国家試験 C問題 第75問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第75問

血清クレアチニン値1.0mg/dL,24時間蓄尿の尿量1,200mL,蓄尿中クレアチニン濃度48mg/dL。 体表面積補正なしでクレアチニンクリアランス(mL/分)を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答:① ② mL/分

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はクレアチニンクリアランスを実際に計算する問題だ。公式を覚えていれば解けるけれど、落とし穴は単位の扱い。特に「時間」をどうそろえるかに注目してほしい。まず、クリアランスとはそもそも何を表す値かな?
医学生医学生
腎臓がある物質をどれだけ尿に出せるか、を表す値だったと思います。
ドクタードクター
方向性は合っているよ。もう少し正確に言うと、「1分間に何mLの血漿が、その物質から完全に浄化されたか」という仮想的な血漿量だ。尿に出た量が、何mL分の血漿に含まれていた量に相当するかを考えるんだ。
医学生医学生
腎生理の講義で習った、C=U×V÷P の式ですね。Uが尿中濃度、Vが尿量、Pが血漿濃度でした。
ドクタードクター
その通り。ここで大事なのは、Vは「1分間あたりの尿量」だということ。問題で与えられているのは24時間の蓄尿量だから、まず分単位に直す必要がある。
医学生医学生
24時間は24×60で1,440分なので、1,200mLを1,440分で割ると、1分あたり約0.83mLです。
ドクタードクター
いいね。次に濃度の単位も確認しよう。尿中濃度も血清濃度もmg/dLでそろっているから、割り算すると単位は打ち消し合う。そのまま式に入れてごらん。
医学生医学生
48×1,200÷1,440÷1.0で、57,600÷1,440なので……40mL/分です!
ドクタードクター
正解。途中で0.833と丸めずに、最後に1,440で割ると計算誤差が出なくてきれいだね。検算もしておこう。1日に尿へ出たクレアチニン量はいくらになる?
医学生医学生
48mg/dLは480mg/Lなので、1.2Lを掛けて576mgです。
ドクタードクター
血清クレアチニン1.0mg/dLは10mg/Lだから、576mgを含む血漿量は57.6L、つまり57,600mL。これを1,440分で割ればやはり40mL/分。答えが一致すると安心できるね。
医学生医学生
でも、血清クレアチニンが1.0なら、ほぼ正常範囲ですよね。40mL/分というのは低すぎる気がします。
ドクタードクター
鋭い疑問だ。成人のCcrはおおむね80〜120mL/分程度とされるから、40mL/分は明らかに低い。血清クレアチニンは筋肉量に左右されるので、高齢者や痩せた人では、腎機能が落ちていても見かけ上は正常に近い値になることがあるんだ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、小柄な高齢女性のクレアチニンが低めなのに腎機能は悪い、と指導医の先生が話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその状況だね。だから血清クレアチニンだけで安心せず、クリアランスやeGFRで評価することが大切なんだ。ではCcrはGFRそのものと考えていいかな?
医学生医学生
クレアチニンは糸球体で濾過されて、ほとんど再吸収されないので、GFRの近似値になると習いました。
ドクタードクター
そう。ただし尿細管からもわずかに分泌されるから、CcrはGFRより高めに出る。しかも腎機能が落ちるほど分泌の割合が増えて、過大評価が大きくなる。日本ではCcrに0.715を掛けるとGFRに近い値になるとされているよ。正確なGFRを測るなら、分泌も再吸収もされないイヌリンのクリアランスを使う。
医学生医学生
今回は「体表面積補正なし」とありましたが、補正するとどうなるんですか?
ドクタードクター
体格の差をならすために、標準体表面積1.73m²あたりに換算する。Ccrに1.73を掛けて患者さんの体表面積で割ればいい。ただ、薬の投与量を調整するときは、補正しないその人自身の腎機能を使うのが原則だ。臨床的にはこちらも大事なポイントだよ。
医学生医学生
蓄尿で気をつけることはありますか?病棟で看護師さんが蓄尿の管理を大変そうにしていました。
ドクタードクター
取り忘れや余分な尿の混入があると、値は大きくずれてしまう。1日の尿中クレアチニン排泄量は筋肉量に比例し、成人では体重1kgあたりおよそ15〜25mg程度なので、それを目安に蓄尿が正しく行われたかを確かめられる。また、蓄尿が難しい場面では、Cockcroft-Gault式で推算Ccrを出したり、日本人向けの推算式でeGFRを求めたりする。慢性腎臓病の重症度分類にはeGFRが使われるよ。

まとめ

クリアランスは「1分間にその物質から完全に浄化された血漿量」を表し、C=U×V÷P(U:尿中濃度、V:1分間尿量、P:血清濃度)で求めます。24時間蓄尿量は1,440分で割って1分あたりに直す必要があり、本問では48×1,200÷1,440÷1.0=40mL/分となります。血清クレアチニンが正常に近くても、筋肉量の少ない人ではこのように腎機能が大きく低下していることがあるため、クリアランスやeGFRでの評価が欠かせません。Ccrは尿細管分泌の分だけGFRを過大評価し、正確なGFRにはイヌリンクリアランスを用いること、体表面積補正は×1.73÷体表面積で行うこと、薬剤投与量の調整には補正前の値を使うことも併せて押さえておきましょう。単位をそろえて式を正しく使う力は、腎機能評価だけでなく薬物投与設計など臨床のさまざまな場面で役立ちます。

解答・解説

正解は40 mL/分です

考え方

ある物質のクリアランスとは、その物質を単位時間あたりに尿中へ排泄した量が、何mLの血漿に含まれていた量に相当するかを表したものである。言い換えると「1分間に何mLの血漿がその物質から完全に浄化されたか」という仮想的な血漿量である。 クリアランス(mL/分)=尿中濃度(U)×1分間あたりの尿量(V)÷血漿(血清)中濃度(P) すなわち C=U×V/P で求める。クレアチニンに当てはめたものがクレアチニンクリアランス(Ccr)である。

計算過程

(1) 1分間あたりの尿量を求める。24時間は24×60=1,440分なので、  V=1,200mL÷1,440分≒0.833mL/分 (2) 式に代入する。尿中濃度と血清濃度はどちらもmg/dLで単位がそろっているので、そのまま割り算してよい。  Ccr=48(mg/dL)×0.833(mL/分)÷1.0(mg/dL)   =48×1,200÷1,440÷1.0   =57,600÷1,440   =40mL/分

検算

1日に尿中へ排泄されたクレアチニン量は、48mg/dL=480mg/Lより、480mg/L×1.2L=576mg/日である。血清クレアチニン1.0mg/dL=10mg/Lなので、576mgを含む血漿量は576÷10=57.6L/日=57,600mL/日。これを1,440分で割ると40mL/分となり、一致する。 小数点以下は生じないため、解答は40mL/分である。

結果の解釈

体表面積補正前で40mL/分は、成人の基準(おおむね80~120mL/分程度)と比べて明らかに低く、腎機能が中等度以上に低下していることを示す。血清クレアチニンが1.0mg/dLと一見正常範囲に近くても、筋肉量の少ない人ではこのように腎機能が低下していることがある点に注意する。

クレアチニンクリアランスとGFR

クレアチニンは筋肉で産生される代謝産物で、糸球体で自由に濾過され、尿細管ではほとんど再吸収されない。そのためクリアランスが糸球体濾過量(GFR)の近似値となる。ただし尿細管からもわずかに分泌されるため、CcrはGFRより高めに出る(腎機能が低下するほど分泌の割合が増え、過大評価が大きくなる)。日本では、Ccrに0.715を掛けるとGFRに近い値になるとされる。GFRを正確に測定するには、尿細管で分泌も再吸収もされないイヌリンのクリアランスを用いる。

体表面積補正

体格による違いを除くため、標準体表面積1.73m2あたりに換算する。 補正Ccr=Ccr×1.73÷患者の体表面積(m2) 本問は「補正なし」の値を求めるので、この操作は不要である。一方、薬剤の投与量調整には、補正しない(その人の実際の)腎機能を用いるのが原則である。

蓄尿の注意点

24時間蓄尿は、尿の取り忘れや余分な尿の混入があると値が大きくずれる。1日の尿中クレアチニン排泄量は筋肉量に比例し、成人ではおよそ体重1kgあたり15~25mg程度であるため、これを目安に蓄尿が正しく行われたかを確認できる。

血清クレアチニンから推算する方法

・Cockcroft-Gault式(推算Ccr)  男性:(140-年齢)×体重(kg)÷(72×血清クレアチニン)  女性:上記×0.85 ・日本人のGFR推算式(eGFR、mL/分/1.73m2)  男性:194×血清クレアチニン^(-1.094)×年齢^(-0.287)  女性:上記×0.739 慢性腎臓病(CKD)の重症度分類にはeGFRを用いる。

POINT

・クリアランス=U×V÷P(U:尿中濃度、V:1分間尿量、P:血清濃度)。 ・24時間蓄尿量は1,440分で割って mL/分 にそろえる。 ・本問:48×1,200÷1,440÷1.0=40mL/分。 ・Ccrは尿細管分泌のためGFRをやや過大評価する。正確なGFRはイヌリンクリアランス。 ・体表面積補正は×1.73/体表面積。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。