StudyMed医師国家試験

窓口で払うのは一部だけ―「現物給付」から読み解く日本の公的医療保険

第115回医師国家試験 F問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第13問

公的医療保険について誤っているのはどれか。

  1. a.現金が給付される。
  2. b.主たる財源は保険料である。
  3. c.被用者保険の加入者が最も多い。
  4. d.国民はいずれかの医療保険に加入する。
  5. e.小学校就学前の自己負担は2割である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公的医療保険の基本的な仕組みを問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、そこは読み違えないように注意しよう。着眼点は、給付の形、財源、加入者、自己負担割合の4つの柱。どれも医師として毎日の診療の裏側にある仕組みだよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習ったはずなんですが、臨床の勉強に比べてどうしても後回しになっていました。
ドクタードクター
そういう人は多いね。でも実はシンプルなんだ。まず給付の形から考えよう。患者さんが病院にかかったとき、保険から何を受け取っていると思う?
医学生医学生
かかった医療費の7割分のお金を保険から受け取っている、というイメージでしょうか。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴なんだ。医療保険の中心である「療養の給付」は、診察や検査、投薬、手術といった医療サービスそのものを提供する「現物給付」なんだよ。患者さんは窓口で一部負担金を払うだけで医療を受けられて、残りは保険者から医療機関へ診療報酬として支払われる。患者さんの手元にお金が渡るわけではないんだ。
医学生医学生
なるほど、お金を受け取って医療を買うのではなく、医療そのものが給付されるんですね。だから「現金が給付される」という記述が誤り、つまり正解になるわけですか。
ドクタードクター
その通り。ただし厳密には、医療保険にも付随的な現金給付はある。被用者保険で病気休業中の所得を支える傷病手当金、出産育児一時金、埋葬料、高額療養費の払い戻し、やむを得ず全額自費で受診したときの療養費などだね。それでも制度の基本は現物給付だ、というのがこの問題の趣旨だよ。
医学生医学生
臨床実習で入院患者さんが「傷病手当金の書類を書いてほしい」と言っていたのを思い出しました。あれは例外的な現金給付なんですね。
ドクタードクター
よく結びつけたね。では次は財源。医療費は何でまかなわれていると思う?
医学生医学生
高齢者医療に税金がたくさん使われていると聞くので、公費が一番多いのかと思っていました。
ドクタードクター
公費の投入が大きいのは事実だけど、国民医療費を財源別にみると、事業主と被保険者が払う保険料が約5割で最も多く、公費が約4割、患者負担などが約1割強なんだ。日本はあくまで保険方式をとりつつ、そこに税金を投入している仕組みだと理解しよう。だから「主たる財源は保険料」は正しい。
医学生医学生
加入者数はどうでしょう。自営業や無職の人が入る国民健康保険も多そうですが。
ドクタードクター
会社員や公務員とその家族が入る被用者保険、つまり協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などが全体の約6割を占めて最多だ。国民健康保険は約2割強、75歳以上の後期高齢者医療制度は約1割強。高齢化で後期高齢者医療制度の割合は増えてきているよ。
医学生医学生
全国民がどれかに加入するのは国民皆保険ですよね。CBTの勉強で1961年と覚えました。
ドクタードクター
正確だね。健康な人も含めて、国民はいずれかの公的医療保険に加入する義務がある。例外として、生活保護の受給者は国民健康保険から外れ、医療は医療扶助でまかなわれる。ここは国試でもよく狙われるポイントだ。
医学生医学生
自己負担は原則3割で、小学校に入る前の子どもは2割でしたっけ。小児科の実習では窓口負担がゼロの子が多かった気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。医療保険制度上は義務教育就学前は2割なんだけど、多くの自治体が独自に子どもの医療費助成をしているから、実際の窓口負担はさらに軽くなったり無料になったりしていることが多いんだ。制度上の割合と実際の支払いを分けて考えよう。ほかに70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割で、所得に応じて2割や3割になる。75歳以上の2割負担は2022年10月から導入されたものだよ。
医学生医学生
整理すると、給付は現物給付が基本、財源は保険料が最多、加入者は被用者保険が最多、全国民が加入、就学前は2割ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点を一つ。医療費が高額になりそうな患者さんには、限度額適用認定証を使えば高額療養費も窓口で現物給付化でき、立て替えの負担を減らせる。こうした制度を知っていると、治療を続けられるか不安な患者さんに具体的な助言ができるんだ。
医学生医学生
制度を知ることも、患者さんを支える手段の一つなんですね。
ドクタードクター
その通り。医療は保険制度の上に成り立っているから、医師こそ仕組みを理解しておく価値があるよ。

まとめ

わが国の公的医療保険の中心である療養の給付は、医療サービスそのものを提供する現物給付であり、患者は窓口で一部負担金を支払うだけで医療を受けられます。傷病手当金や出産育児一時金、高額療養費などの現金給付もありますが、あくまで付随的なものです。財源は保険料が約5割で最多、加入者は被用者保険が約6割で最多であり、1961年の国民皆保険達成以降、生活保護受給者を除く全国民がいずれかの制度に加入しています。自己負担は原則3割で、義務教育就学前は2割、70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割(所得により2割・3割)です。制度の仕組みを理解しておくことは、医療費に不安を抱える患者への適切な助言にもつながります。

解答・解説

正解はaです

わが国の公的医療保険制度の基本的な仕組みを問う問題である。「誤っているもの」を選ぶ形式であることに注意する。 押さえるべき柱は次の4点である。 1.給付の形:医療保険の中心となる「療養の給付」は、診察・検査・投薬・手術などの医療サービスそのものを提供する現物給付である。患者は窓口で一部負担金を支払うだけで医療を受けられ、残りは保険者から医療機関に診療報酬として支払われる。 2.財源:国民医療費を財源別にみると、保険料が約半分を占めて最も多く、次いで公費(国・地方の税金)、患者負担の順である。 3.加入者:国民皆保険(1961年達成)であり、原則として全国民がいずれかの制度に加入する。加入者数は被用者保険(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合など)が最も多い。 4.自己負担割合:原則3割で、義務教育就学前は2割、70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割(所得に応じて2割または3割)である。 これらと照らし合わせると、「現金が給付される」という記述は医療保険の給付の基本(現物給付)に反するため、誤りとして選ぶことになる。

選択肢考察

  1. ○a.  現金が給付される。

    公的医療保険の中心的な給付である療養の給付は、医療サービスそのものを提供する現物給付であり、現金を受け取って自分で医療を購入する仕組み(現金給付)ではない。したがって本記述は誤りであり、これが正解である。なお、医療保険にも傷病手当金(被用者保険で病気休業中の所得保障)、出産育児一時金、埋葬料、高額療養費の払い戻し、やむを得ず全額自費で受診した場合の療養費など、例外的・付随的な現金給付は存在する。しかし制度の基本は現物給付であるという点が本問の問いの趣旨である。

  2. ×b.  主たる財源は保険料である。

    正しい記述である。国民医療費を財源別にみると、保険料(事業主負担と被保険者負担の合計)が約5割(出題時点の統計で約49%)を占めて最も多く、公費が約4割弱(約38%)、患者負担などのその他が約1割強(約12%)である。保険方式をとりつつ、高齢者医療や国民健康保険には多額の公費が投入されているのが特徴である。

  3. ×c.  被用者保険の加入者が最も多い。

    正しい記述である。会社員や公務員とその被扶養者が加入する被用者保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合、船員保険)の加入者が全体の約6割を占めて最も多い。自営業者・無職者などが加入する国民健康保険は約2割強、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は約1割強である。高齢化に伴い後期高齢者医療制度の加入者割合は増加傾向にある。

  4. ×d.  国民はいずれかの医療保険に加入する。

    正しい記述である。わが国は1961年に国民皆保険を達成しており、国民は(健康であっても)いずれかの公的医療保険に加入する義務を負う。被用者保険の加入対象でない者は、住所地の国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入する。例外として、生活保護受給者は国民健康保険から外れ、医療は生活保護の医療扶助で賄われる。

  5. ×e.  小学校就学前の自己負担は2割である。

    正しい記述である。医療保険の一部負担金は原則3割であるが、義務教育就学前(小学校入学前)の乳幼児は2割に軽減されている。実際には多くの自治体が子どもの医療費助成制度を独自に設けており、窓口負担がさらに軽減・無料化されていることが多いが、医療保険制度上の負担割合は2割である。

医療保険制度の体系

・被用者保険:協会けんぽ(主に中小企業)、組合管掌健康保険(主に大企業)、共済組合(公務員・私立学校教職員)、船員保険。保険料は労使折半が原則。 ・国民健康保険:自営業者、農林水産業従事者、無職者、退職者など。保険者は都道府県と市町村(2018年度から都道府県も保険者に加わった)および国民健康保険組合。 ・後期高齢者医療制度:75歳以上(一定の障害がある65歳以上を含む)。運営主体は都道府県単位の後期高齢者医療広域連合。財源は公費約5割、現役世代からの支援金約4割、高齢者の保険料約1割。

自己負担割合(医療保険)

・義務教育就学前:2割 ・義務教育就学後〜69歳:3割 ・70〜74歳:2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上:1割(一定以上の所得者は2割〈2022年10月から〉、現役並み所得者は3割)

主な給付

・現物給付:療養の給付、入院時食事療養費、訪問看護療養費など(保険医療機関に直接支払われる) ・現金給付:傷病手当金・出産手当金(被用者保険)、出産育児一時金、埋葬料(費)、高額療養費(限度額適用認定証を用いれば窓口で現物給付化できる)、療養費

国民医療費

年間40兆円台で推移している。財源は保険料が約5割、公費が約4割、患者負担が約1割強。年齢階級別では65歳以上が約6割を占める。

POINT

・公的医療保険の基本は現物給付(医療サービスそのものの給付)である。 ・財源は保険料が約5割で最多、次いで公費が約4割。 ・加入者は被用者保険が約6割で最多。 ・国民皆保険(1961年):全国民がいずれかの制度に加入する(生活保護受給者は医療扶助)。 ・自己負担は原則3割、就学前2割、70〜74歳2割、75歳以上1割(所得により2割・3割)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。