StudyMed医師国家試験

「同意します」は最終決定ではない―インフォームド・コンセントの本質は患者の自己決定権

第115回医師国家試験 E問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第115回 E問題 第5問

成人を対象としたインフォームド・コンセントについて正しいのはどれか。

  1. a.本人と家族の同意が必要である。
  2. b.患者は同意をいつでも撤回できる。
  3. c.予後についての説明は必要でない。
  4. d.医師の過失責任を回避する目的で行う。
  5. e.最新の治療法を推奨しなければならない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はインフォームド・コンセントの基本原則を問う問題だ。考える軸はひとつ、「インフォームド・コンセントは誰のための仕組みか」。ここを押さえれば、各選択肢の正誤は自然に見えてくるよ。
医学生医学生
医療倫理の講義で、自律尊重の原則を具体化したものだと習いました。患者さんの自己決定権を守るためのもの、ですよね。
ドクタードクター
その通り。十分な説明を受けて理解・納得したうえで、患者が自分の意思で同意する、あるいは拒否する。そのためには判断能力があること、必要な情報が説明されること、それを理解すること、強制されず自発的に決めること、そして意思を示すこと、という要素がそろう必要がある。
医学生医学生
臨床実習で手術の説明に同席したとき、ご家族も一緒に署名していました。本人と家族の両方の同意が必要なのかと思っていました。
ドクタードクター
実際によく見る光景だから、そう思うのも無理はないね。でも判断能力のある成人なら、同意の主体は患者本人で、本人の同意があれば原則として家族の同意は必須ではない。家族の同席は、本人の希望や支えという意味で望ましい場面が多いけれど、本人の意思に優先するものではないんだ。
医学生医学生
では家族の同意が問題になるのは、本人に判断能力がないときですか。
ドクタードクター
そう。意識障害や重度の認知症などでは、家族などが本人の推定意思を踏まえて代わりに判断する代諾が問題になる。未成年なら親権者の同意が必要だけれど、本人の理解度に応じて説明し、賛意を得るインフォームド・アセントも大切にされているよ。
医学生医学生
一度同意した後で、患者さんが「やっぱりやめたい」と言ったらどうなるんでしょう。
ドクタードクター
それがこの問題の正解につながる。自己決定権に基づく以上、患者は同意をいつでも撤回できる。理由を示す必要もないし、撤回したことで診療上の不利益を受けてはならない。臨床研究への参加同意でも、いつでも撤回できることを説明文書に明記することが求められているんだ。
医学生医学生
予後については、悪い話だと患者さんが落ち込むから説明しなくてもいい、という考えはどうですか。
ドクタードクター
予後は、治療を受けるか、どの治療を選ぶかを判断するうえで欠かせない情報だ。治療した場合、しなかった場合、別の治療を選んだ場合の見通しを含めて伝える必要がある。伝え方には配慮が必要だけれど、説明しなくてよいわけではない。ただし、本人が説明を受けることを望まない場合、いわゆる知らないでいる権利には配慮するよ。
医学生医学生
正直、同意書は医師が訴えられないための書類というイメージもありました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいポイントだね。目的はあくまで患者の自己決定権の尊重で、医師の免責ではない。同意書があっても医療行為に過失があれば責任は免れないし、説明が不十分ならそれ自体が説明義務違反に問われうる。
医学生医学生
最新の治療法を勧めないといけない、というのも違いますよね。新しい治療が一番いいとは限らないので。
ドクタードクター
その通り。最新の治療は有効性や安全性が十分に確立していないこともある。科学的根拠と患者さんの価値観や生活状況を踏まえて、複数の選択肢の利点と欠点を示すことが大切なんだ。
医学生医学生
患者さんのための権利だと考えれば、本人の同意で足りること、撤回できること、予後も説明すること、免責目的ではないこと、が全部つながりますね。
ドクタードクター
よくまとまったね。発展として法的な位置づけも押さえておこう。わが国では医療法第1条の4第2項に、医療の担い手が適切な説明を行い理解を得るよう努めるという努力義務として規定されている。また、生命に関わる緊急時で同意を得る時間がない場合など、例外的な場面もあることを知っておきたい。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、説明のあとに「ご不明な点はありますか」と確認したり、ほかの医師の意見を聞けることを伝えたりする練習をしました。
ドクタードクター
いい練習だね。セカンドオピニオンは患者の権利として保障されているし、将来の医療・ケアを前もって繰り返し話し合うアドバンス・ケア・プランニングも、自己決定を支える考え方の延長にある。同意は一度きりの署名ではなく、対話を続けるプロセスだと覚えておこう。

まとめ

インフォームド・コンセントは、十分な説明を受けて理解した患者が自らの意思で医療行為に同意または拒否することであり、医療倫理の自律尊重の原則に基づく患者の権利です。判断能力のある成人では本人の同意で足り、家族の同意は必須ではなく、家族などによる代諾が問題となるのは本人に判断能力がない場合や未成年の場合です。同意はいつでも理由を示さずに撤回でき、撤回によって不利益を受けることはありません。説明すべき内容には病状、治療の目的・方法・効果・危険性、代替手段、予後が含まれ、医師の免責や最新治療の推奨を目的とするものではありません。わが国では医療法に努力義務として規定されており、同意を一度きりの手続きではなく継続的な対話として捉える姿勢が、日常診療や臨床研究の場で求められます。

解答・解説

正解はbです

テーマ

インフォームド・コンセント(informed consent:IC)とは、医療者から十分な説明を受け、それを理解・納得したうえで、患者が自らの意思で医療行為に同意(あるいは拒否)することである。根底にあるのは患者の自己決定権の尊重であり、医療倫理の4原則のうち「自律尊重」を具体化したものといえる。

有効なICの要素

①判断能力(同意能力)がある、②必要な情報が説明される、③患者がその情報を理解する、④強制や誘導がなく自発的に決定する、⑤同意(または拒否)の意思を示す、という要素がそろって初めて有効なICとなる。説明すべき内容には、病名・病状、提案する検査・治療の目的と方法、期待される効果、危険性や副作用、他の選択肢(何もしない場合を含む)とそれぞれの見通し(予後)などが含まれる。

考え方

ICは「患者のための権利」であり、医師を守るための手続きではない。この原則に立てば、同意の主体は判断能力のある成人本人であること、同意は撤回できること、予後も重要な説明事項であることが導かれる。

選択肢考察

  1. ×a.  本人と家族の同意が必要である。

    判断能力のある成人では、同意の主体は患者本人であり、本人の同意があれば原則として家族の同意は必須ではない。家族への説明や同席は、本人の希望や支援の観点から望ましい場面が多いが、本人の意思に優先するものではない。患者本人に判断能力がない場合や未成年の場合には、家族や法定代理人などによる代諾が問題となる。

  2. ○b.  患者は同意をいつでも撤回できる。

    ICは自己決定権に基づくものであるため、一度同意した後でも、患者はいつでも、理由を示さなくても同意を撤回できる。撤回したことで診療上の不利益な扱いを受けてはならない。臨床研究への参加に関する同意でも同様に、いつでも撤回できることを説明文書に明記することが求められている。

  3. ×c.  予後についての説明は必要でない。

    予後は、患者が治療を受けるかどうか、どの治療を選ぶかを判断するうえで欠かせない情報である。治療を行った場合と行わなかった場合、別の治療を選んだ場合の見通しを含めて説明する必要がある。

  4. ×d.  医師の過失責任を回避する目的で行う。

    ICの目的は患者の自己決定権の尊重であり、医師の免責ではない。同意書を取得していても、医療行為に過失があれば医師の責任は免れない。また、説明が不十分であれば、それ自体が説明義務違反として法的責任を問われうる。

  5. ×e.  最新の治療法を推奨しなければならない。

    最新の治療法が常に最善とは限らず、有効性や安全性が十分に確立していないこともある。医師は、科学的根拠(evidence-based medicine:EBM、根拠に基づく医療)と患者の価値観・希望・状況を踏まえて、適切な選択肢を提示し、それぞれの利点と欠点を説明する。最新の治療法を推奨する義務はない。

法的な位置づけ

わが国でICに関する規定は医師法ではなく医療法に置かれている。医療法第1条の4第2項は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手が、医療を提供するに当たり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと定めている(努力義務)。判例上も、医師の説明義務が認められている。

同意能力がない場合

意識障害や重度の認知症などで判断能力がない場合は、家族などが本人の推定意思を踏まえて代わりに判断する(代諾)。未成年の場合は親権者の同意が必要となるが、本人の理解度に応じた説明と賛意(インフォームド・アセント)を得ることも重視される。

ICが免除・修正される主な場面

生命に関わる緊急時で本人の同意を得る時間がない場合、本人が説明を受けることを望まない場合(知らないでいる権利)など。

関連用語

・セカンドオピニオン:主治医以外の医師に意見を求めること。患者の権利として保障される。 ・インフォームド・チョイス:複数の選択肢から患者自身が選ぶことを強調した考え方。 ・アドバンス・ケア・プランニング(ACP):将来の医療・ケアについて、本人・家族・医療者が前もって繰り返し話し合うプロセス。

POINT

・ICの本質は患者の自己決定権の尊重であり、医師の免責のためではない。 ・判断能力のある成人では本人の同意で足り、家族の同意は必須ではない。 ・同意はいつでも、理由なく、不利益なく撤回できる。 ・説明事項には病状、治療の目的・方法・利益・危険性、代替手段、予後を含む。 ・ICは医療法第1条の4第2項に努力義務として規定されている。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。