StudyMed医師国家試験

14歳の「参加したい」だけでは足りない―未成年者の臨床研究と代諾者の同意

第115回医師国家試験 E問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第115回 E問題 第30問

14歳の女子。採血を伴う臨床研究に参加してもらいたい。患者には知的障害や認知機能障害はない。  誤っているのはどれか。

  1. a.患者への説明は理解ができるように行う。
  2. b.インフォームド・アセントを得る必要がある。
  3. c.同意書は記名・捺印もしくは自署名が必要である。
  4. d.採血行為による侵襲の程度は倫理審査委員会で判断する。
  5. e.保護者が同意しなくても当人が同意すれば研究参加は可能である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、未成年者に臨床研究へ参加してもらうときの同意の手続きを問う問題だ。注目してほしいのは「14歳」という年齢と「採血を伴う」という研究の性質の2点。この2つで、誰の同意が必要かが決まってくるんだ。
医学生医学生
知的障害もないなら、14歳でも本人がしっかり理解して同意すれば十分な気がしてしまいます。
ドクタードクター
その感覚はよくわかる。ただ、研究の世界では「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」というルールがあって、未成年者の同意については年齢などで線が引かれている。まずはインフォームド・コンセントの基本から確認しよう。どういうものだったかな。
医学生医学生
十分な説明を受けて理解したうえで、自由な意思で同意することです。医療倫理の講義で、ヘルシンキ宣言とセットで習いました。
ドクタードクター
その通り。では、その同意を自分で有効に与えるのが難しい人の場合はどうするか。指針では、本人に代わって同意する「代諾者」、通常は親権者などの保護者からインフォームド・コンセントを受けることを原則にしている。中学校等の課程を修了していない、または16歳未満の未成年者がまさにこれに当たるんだ。
医学生医学生
14歳はそこに入りますね。だから「保護者が同意しなくても本人が同意すれば参加できる」という記述が誤り、ということですか。
ドクタードクター
正解。本人の意思はもちろん尊重するし、本人が拒否すれば参加させないのが原則だ。でも逆に、本人がいくら望んでも保護者の同意がなければ参加させられない。ここが今回の答えだね。では、ほかの選択肢がなぜ正しいのかも見ていこう。インフォームド・アセントについてはどうかな。
医学生医学生
保護者の同意があるなら、本人からはもう何ももらわなくていいのでは、と一瞬思いました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。インフォームド・アセントは、法的に有効な同意能力が十分でない子どもにも、理解度に合わせて説明して本人の賛意を得る手続きなんだ。代諾者の同意で研究を行う場合でも、本人が自分の意向を表せるならアセントを得るよう努めることが求められる。小児医療ではおおむね7歳以上がひとつの目安とされていて、理解力に問題のない14歳なら当然得るべきだ。
医学生医学生
小児科の実習で、先生が子どもにも絵を使って検査の説明をしていたのを思い出しました。あれもアセントの考え方ですね。
ドクタードクター
まさにそう。それは「理解できるように説明する」という点にもつながる。専門用語を避けて、研究の目的や方法、採血の痛みや危険性、参加しなくても不利益を受けないこと、途中でやめられることを、年齢に合った言葉で伝える。これは子どもに限らず全ての研究対象者に共通する原則だよ。
医学生医学生
同意書の記名・捺印か自署名が必要、というのも当たり前に思えますが、口頭だけの同意ではだめなんでしょうか。
ドクタードクター
侵襲を伴う研究では、文書でインフォームド・コンセントを受けるのが原則だ。誰がいつ同意したのかを明確に残すために、記名・捺印または自署と日付が必要になる。未成年者が対象なら、代諾者の同意書に加えて本人のアセントも文書に残すのが一般的だね。
医学生医学生
採血の侵襲の程度を倫理審査委員会が判断する、というのは研究者自身が決めてはいけないということですか。
ドクタードクター
そう。侵襲の有無や「軽微な侵襲」かどうかで、同意の取り方や補償・モニタリングの要否が変わるから、研究者の独断ではなく、独立した倫理審査委員会が研究計画書を審査して判断する。健康診断程度の採血は軽微な侵襲とされることが多いけれど、子どもでは採血量や回数、痛みの影響が大人と違うから、研究ごとに評価することが大切なんだ。
医学生医学生
つまり、16歳未満は保護者の同意が必須で、本人にはわかりやすく説明してアセントを得る、侵襲の判断は倫理審査委員会、という整理ですね。
ドクタードクター
よくまとまっている。発展として、中学校等の課程を修了しているか16歳以上の未成年者で十分な判断能力がある場合は、代諾者に加えて本人からもインフォームド・コンセントを受ける。さらに侵襲を伴わない研究で一定の条件を満たせば、本人の同意だけで実施し、保護者には情報公開と拒否の機会を与える方法もとり得る。そして成年、つまり18歳に達すれば本人の同意だけで足りるんだ。
医学生医学生
年齢と侵襲の有無の組み合わせで手続きが変わるんですね。初期研修で研究に関わるときにも役立ちそうです。
ドクタードクター
その通り。臨床では、保護者と本人の意見が食い違う場面にも出会う。そんなときこそ、本人の声を丁寧に聞きつつ、ルールに沿って手続きを踏むことが、子どもを守ることにつながると覚えておこう。

まとめ

中学校等の課程を修了していない、または16歳未満の未成年者を侵襲を伴う臨床研究の対象とする場合、倫理指針上、保護者などの代諾者からのインフォームド・コンセントが必須であり、本人の同意だけで参加させることはできません。一方で本人の意思も尊重すべきであり、理解できる言葉で説明したうえでインフォームド・アセントを得るよう努めます。侵襲を伴う研究では記名・捺印または署名による文書同意が原則で、侵襲の程度の判断は研究者ではなく倫理審査委員会が行います。16歳以上や中学校課程修了の未成年者、成年者では手続きが異なるため、年齢と侵襲の有無の組み合わせで整理しておくことが、研究倫理を実践するうえでの基本になります。

解答・解説

正解はeです

状況の整理

・対象は14歳の女子で、中学生に相当する年齢の未成年者である。 ・行おうとしているのは採血を伴う臨床研究であり、身体に傷をつける行為を含む、つまり「侵襲」を伴う研究である。 ・知的障害や認知機能障害はなく、年齢相応に説明を理解し、自分の意思を表明する力はあると考えられる。

考え方

人を対象とする医学系研究は、わが国では「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(2021年施行)に従って行う。この指針では、研究対象者が未成年者などで自ら有効なインフォームド・コンセント(IC:十分な説明を受けて理解したうえでの自由意思による同意)を与えることが難しい場合、本人に代わって同意する「代諾者」(通常は親権者などの保護者)からICを受けることを原則としている。 さらに、代諾者の同意で研究に参加させる場合でも、本人が説明内容をある程度理解できる年齢・状態であれば、本人にも分かりやすく説明して賛意を得る「インフォームド・アセント」を得るよう努めることが求められる。 本問の対象者は14歳であり、中学校等の課程を修了していない16歳未満の未成年者にあたる。このような対象者が侵襲を伴う研究に参加する場合、本人がいくら参加を望んでも、保護者(代諾者)の同意なしに参加させることはできない。したがって「保護者が同意しなくても本人が同意すれば参加可能」とする記述が誤りである。 「誤っているのはどれか」を問う設問であり、a〜dは適切な対応、eが不適切な対応である点に注意する。

選択肢考察

  1. ×a.  患者への説明は理解ができるように行う。

    適切な対応であり、誤りではない。ICやインフォームド・アセントの前提は、対象者が内容を理解していることである。14歳で知的障害や認知機能障害がなければ、研究の目的・方法・採血に伴う痛みや危険性・参加しなくても不利益を受けないこと・途中でやめられることなどを十分理解できる。専門用語を避け、年齢に合わせた言葉や資料を用いて、本人が納得できるよう説明する必要がある。これは小児に限らず、すべての研究対象者に共通する原則である。

  2. ×b.  インフォームド・アセントを得る必要がある。

    適切な対応であり、誤りではない。インフォームド・アセントとは、法的に有効な同意能力をもたない小児などに対し、理解力に応じて説明を行い、本人の了解(賛意)を得ることである。保護者(代諾者)からICを得たうえで、本人の意思も尊重するために行う。倫理指針では、代諾者の同意によって研究を行う場合で、対象者が自らの意向を表すことができると判断されるときにはインフォームド・アセントを得るよう努めることとしている。小児医療の領域ではおおむね7歳以上が目安とされ、14歳で理解力に問題がない本人からはアセントを得るべきである。

  3. ×c.  同意書は記名・捺印もしくは自署名が必要である。

    適切な対応であり、誤りではない。侵襲を伴う研究では、ICは文書で受けることが原則であり、同意した事実と同意者を明確にするために、同意書には同意者の記名・捺印または自署(署名)と日付が記載される。未成年者が対象の場合は、代諾者の同意書に加え、本人のアセント(または同意)についても文書に残すのが一般的である。

  4. ×d.  採血行為による侵襲の程度は倫理審査委員会で判断する。

    適切な対応であり、誤りではない。研究に伴う侵襲が「侵襲」か「軽微な侵襲」か、あるいは侵襲なしかによって、必要なICの手続き(文書か口頭か、代諾者の同意の要否など)や補償・モニタリングの要否が変わる。この判断は研究者が独断で決めるのではなく、研究計画書の審査を通して倫理審査委員会が行う。一般的な健康診断で行う程度の採血は「軽微な侵襲」とみなされることが多いが、小児では採血量・回数・痛みの影響が成人と異なるため、個々の研究ごとに委員会での評価が重要である。

  5. ○e.  保護者が同意しなくても当人が同意すれば研究参加は可能である。

    誤った記述であり、これが正解である。倫理指針では、16歳未満(または中学校等の課程を修了していない)未成年者を研究対象とする場合、代諾者(親権者などの保護者)からICを受けることが必須である。14歳の本人の意思は尊重されるべきであり、本人が拒否すれば参加させないのが原則だが、逆に本人が同意しても保護者の同意がなければ参加させることはできない。なお、中学校等の課程を修了しているか16歳以上の未成年者で十分な判断能力がある場合には、侵襲を伴わない研究など一定の条件を満たせば本人の同意のみで実施できる余地があるが、本問の14歳・採血を伴う研究はこれに当たらない。

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針における未成年者の扱い(要点)

・中学校等の課程を修了していない、または16歳未満の未成年者:代諾者からICを受ける。本人が自らの意向を表せる場合は、インフォームド・アセントを得るよう努める。 ・中学校等の課程を修了している、または16歳以上の未成年者で十分な判断能力がある場合:代諾者のICに加え、本人からもICを受ける。ただし侵襲を伴わない研究で、倫理審査委員会の承認と研究機関の長の許可を得るなどの条件を満たせば、本人の同意のみで実施し、代諾者には情報公開と拒否の機会を与える方法もとり得る。 ・成年(2022年4月以降は18歳)に達すれば、本人のICのみで足りる。

インフォームド・コンセントとインフォームド・アセント

・インフォームド・コンセント:法的・倫理的に有効な同意。同意能力をもつ本人、または代諾者が与える。 ・インフォームド・アセント:同意能力が十分でない小児などに、理解度に応じた説明を行い本人の賛意を得ること。法的な同意そのものではないが、本人の意思を尊重する重要な手続きである。本人が明確に拒否する場合は、その意向を尊重するよう配慮する。

侵襲の区分

・侵襲:穿刺、切開、薬物投与、放射線照射、心的外傷に触れる質問などにより、身体や精神に傷害・負担が生じること。 ・軽微な侵襲:侵襲のうち、その程度がごく小さいもの(一般的な健康診断で行われる程度の採血や胸部X線撮影など)。 ・区分の判断は倫理審査委員会での審査を通じて行われ、ICの方法や補償の要否に影響する。

倫理審査委員会の役割

研究計画の科学的妥当性と倫理的妥当性(対象者のリスクと利益、IC手続き、個人情報保護など)を、研究者から独立した立場で審査する。

POINT

・16歳未満(中学校等の課程を修了していない)未成年者が研究対象のときは、代諾者(保護者)のインフォームド・コンセントが必須である。本人の同意だけでは参加させられない。 ・あわせて本人には理解できるように説明し、インフォームド・アセントを得るよう努める。 ・侵襲を伴う研究では文書による同意(記名・捺印または署名)が原則である。 ・侵襲の程度の判断や研究の可否は倫理審査委員会が審査する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。