後から消せないゆがみ―バイアスと交絡、対処のタイミングを見極める
第115回医師国家試験 E問題 第17問
国試問題にチャレンジ
臨床研究におけるバイアスと交絡について誤っているのはどれか。
- a.情報バイアスは対象者から情報を得る際に生じる。
- b.選択バイアスは対象者の選択方法から生じる。
- c.交絡因子は研究デザインにより調整できる。
- d.交絡因子は原因と結果の両方に関連する。
- e.情報バイアスは統計的手法で調整できる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生まとめ
臨床研究の結果を真の値からずらす系統誤差には、対象者の選び方で生じる選択バイアスと、情報の収集・測定過程で生じる情報バイアスがあり、いずれもサンプルサイズを増やしても減らず、データに入り込んだ後は統計的手法で取り除くことが基本的にできません。そのため、無作為抽出や適切な対照の設定、盲検化や測定の標準化など、研究計画とデータ収集の段階で防ぐことが重要です。一方、交絡は曝露と結果の両方に関連し、因果経路上の中間因子ではない第三の因子によって生じ、デザイン段階(無作為化・限定・マッチング)と解析段階(層別解析・多変量解析・標準化)の両方で制御できます。未知の交絡因子まで制御できるのは無作為化だけであり、この「いつ・どう対処できるか」の違いを理解することは、研究デザインの評価や論文の批判的吟味の基礎になります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
臨床研究や疫学研究で、結果を真の値からずらしてしまう要因(系統誤差)である「バイアス」と「交絡」の定義と対処法を問う問題である。「誤っているもの」を選ぶ形式である点に注意する。
研究結果を真実からずらす要因の整理
研究では、母集団全体ではなくその一部(標本)を調べて結論を導く。その結果が真の値からずれる原因は次のように分けられる。 ・偶然誤差:標本の抽出に伴う偶然のばらつきである。サンプルサイズを大きくすると小さくなる。 ・系統誤差(バイアス):一定の方向に結果をゆがめるずれである。サンプルサイズを大きくしても小さくならない。主に次の2つがある。 選択バイアス:対象者を選ぶ過程で生じる。 情報バイアス:対象者から情報(曝露や結果)を集める・測定する過程で生じる。 ・交絡:調べたい要因(曝露)と結果の両方に関連する第三の因子によって、見かけ上の関連が生じたり、真の関連が隠れたりする現象である。広い意味ではバイアスの一種に含めることもある。
対処法の違いが本問の要点
選択バイアスと情報バイアスは、データを集める段階で生じるゆがみである。いったんデータに入り込むと、どれだけ偏っているかが分からないため、解析段階の統計手法で後から取り除くことは基本的にできない。研究を計画する段階で、対象者の選び方や情報の集め方を工夫して防ぐしかない。 一方、交絡は、交絡因子をきちんと測定してあれば、研究デザインの段階(無作為化、限定、マッチング)でも、解析の段階(層別解析、多変量解析、標準化など)でも制御できる。この違いを押さえれば、「情報バイアスは統計的手法で調整できる」が誤りであると判断できる。
選択肢考察
- ×a. 情報バイアスは対象者から情報を得る際に生じる。
記述は正しい。情報バイアス(測定バイアス)は、対象者の曝露状況や転帰に関する情報を収集・測定する過程で生じる系統的な誤りである。代表例として次のものがある。 ・想起バイアス(思い出しバイアス):症例対照研究で、病気になった人は病気でない人よりも過去の曝露をよく思い出そうとし、曝露を多く申告しやすい。 ・面接者バイアス(観察者バイアス):調査者が対象者の病気の有無を知っていると、聞き方や判定に差が生じる。 ・測定機器の誤差による誤分類なども含まれる。 これを防ぐには、盲検化、標準化した質問票や客観的な記録(診療録など)の利用、測定方法の統一が有効である。
- ×b. 選択バイアスは対象者の選択方法から生じる。
記述は正しい。選択バイアスは、研究対象者の選び方や研究への参加・脱落の過程に偏りがあり、対象集団が本来調べたい母集団を正しく代表しないことで生じる系統誤差である。例として次のものがある。 ・病院の患者を対照に選ぶことで生じる偏り(Berkson(バークソン)バイアス)。 ・健康な人ほど就労している、あるいは検診を受けることによる偏り(健康労働者効果、自己選択バイアス)。 ・追跡中の脱落が曝露群と非曝露群で異なることによる偏り。 防止策として、母集団からの無作為抽出、適切な対照群の設定、高い参加率と追跡率の確保が挙げられる。
- ×c. 交絡因子は研究デザインにより調整できる。
記述は正しい。交絡因子は研究デザインの段階で制御できる。具体的な方法は次のとおりである。 ・無作為化(ランダム化):既知・未知を問わず交絡因子が群間で均等になる。最も強力な方法である。 ・限定(制限):対象者を特定の年齢層や性別などに限定する。 ・マッチング:症例と対照で年齢・性別などを揃える。 さらに解析段階でも、層別解析、多変量解析(ロジスティック回帰分析など)、年齢調整などの標準化によって調整できる。デザインと解析のいずれでも制御できる点がバイアスとの大きな違いである。ただし、解析で調整できるのは測定済みの交絡因子に限られ、未知の交絡因子まで制御できるのは無作為化だけである。
- ×d. 交絡因子は原因と結果の両方に関連する。
記述は正しい。交絡因子とみなされるのは、次の3条件を満たす因子である。 1. 結果(疾病)の危険因子である(結果と関連する)。 2. 曝露(原因と考える要因)と関連している。 3. 曝露から結果に至る因果の経路の途中にある中間因子ではない。 例えば、飲酒と肺癌の関連を調べるとき、喫煙は飲酒とも肺癌とも関連するため、喫煙を考慮しないと飲酒が肺癌の原因であるかのような見かけ上の関連が生じる。このとき喫煙が交絡因子である。年齢や性別は多くの疾患で代表的な交絡因子となる。
- ○e. 情報バイアスは統計的手法で調整できる。
記述は誤りであり、これが正解である。情報バイアスは、データを収集する段階で情報そのものがゆがんでしまうことで生じる。想起バイアスや測定バイアスによる誤分類がいったんデータに入り込むと、どの対象者の情報がどの程度ずれているかが分からない。そのため、層別解析や多変量解析などの統計的手法で後から補正することは基本的にできない。情報バイアスは、盲検化、標準化された測定方法、客観的な情報源の利用など、研究計画とデータ収集の段階で防ぐ必要がある。選択バイアスも同様に、解析での調整は困難である。
バイアスと交絡の比較
・選択バイアス:対象者の選択・参加・脱落の段階で生じる。研究計画の段階で防ぐ(無作為抽出、適切な対照の設定、追跡率の確保)。解析での調整は困難である。 ・情報バイアス:情報の収集・測定の段階で生じる。研究計画とデータ収集の段階で防ぐ(盲検化、測定の標準化、客観的記録の利用)。解析での調整は困難である。 ・交絡:曝露と結果の両方に関連する第三の因子によって生じる。デザインの段階(無作為化、限定、マッチング)と解析の段階(層別解析、多変量解析、標準化)の両方で制御できる。
交絡因子と中間因子の区別
曝露から結果に至る因果経路の途中にある因子(例:肥満→高血圧→脳卒中の高血圧)は中間因子であり、交絡因子ではない。中間因子で調整すると、曝露の効果を過小評価してしまう。
研究デザインごとに問題となりやすいバイアス
・症例対照研究:想起バイアス、対照の選び方による選択バイアスが生じやすい。 ・コホート研究:追跡中の脱落による選択バイアスが生じやすい。 ・ランダム化比較試験:無作為化により交絡を最も小さくできる。盲検化により情報バイアス(観察者バイアス)も小さくできる。解析は割り付けた群のまま行う(intention-to-treat解析)ことで、脱落による偏りを抑える。
偶然誤差と系統誤差
偶然誤差は、サンプルサイズを大きくすると小さくなり、信頼区間の幅や統計学的検定で評価する。系統誤差(バイアス)は、サンプルサイズを増やしても小さくならない。精度(precision)は偶然誤差の小ささ、妥当性(validity)は系統誤差の小ささに対応する。
POINT
・選択バイアス(対象者の選び方)と情報バイアス(情報の集め方)は、データ収集の段階で生じ、解析で後から取り除くことはできない。研究計画の段階で防ぐ。 ・交絡は、曝露と結果の両方に関連し、因果経路上の中間因子ではない第三の因子による。研究デザイン(無作為化・限定・マッチング)と解析(層別・多変量解析・標準化)の両方で制御できる。 ・未知の交絡因子まで制御できるのは無作為化だけである。
