指先で読む赤ちゃんの向き―小泉門が教える「正常な回旋」の見分け方
第114回医師国家試験 C問題 第52問
国試問題にチャレンジ
28歳の初産婦(1妊0産)。妊娠40週0日午前0時に破水感があり,規則的な子宮収縮が出現したため,午前1時に来院した。妊婦健康診査で特に異常は指摘されていなかった。来院時,児は第1頭位で胎児心拍数は正常,腟鏡診にて羊水流出を認め,内診で子宮口は3cm開大していた。午前5時,子宮収縮は5分間隔,内診で子宮口は6cm開大,児頭下降度はSP±0cm,大泉門は母体の右側,小泉門は母体の左側に触知し,矢状縫合は骨盤横径に一致していた。午前9時,子宮収縮は3分間隔,内診で子宮口は9cm開大,児頭下降度はSP+2cmであった。内診で得られた児頭の所見(①~⑤)を別に示す。 正常な回旋をしているのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
正常な分娩機転では、第1回旋(屈曲)で小泉門が先進し、第2回旋(内回旋)で小泉門が恥骨側へ回り、第3回旋(伸展)、第4回旋(外回旋)を経て娩出されます。第1頭位で内回旋が進んでいる途中では、小泉門を骨盤中心付近の母体左前方に触れ、大泉門は触れず、矢状縫合は左前方から右後方へ向かう斜径に一致します。大泉門が先進する前頭位や両泉門を同じ高さで触れる頭頂位は第1回旋の異常、小泉門が後方を向く後方後頭位や骨盤底で矢状縫合が横径のままの低在横定位は第2回旋の異常です。内診図は上が恥骨側、図の左が母体の右側という向きを確認したうえで、「どの泉門が先進しているか」と「小泉門がどちらを向いているか」の2点で判断すると、回旋異常の早期発見と適切な分娩管理につながります。
解答・解説
正解はdです
経過の整理
・28歳の初産婦で、妊娠40週0日(正期産)。妊婦健康診査では異常がなかった。 ・午前0時に破水し、規則的な子宮収縮(陣痛)が始まった。午前1時の来院時は第1頭位(児の背中が母体の左側にある頭位)で、胎児心拍数は正常、子宮口3cm開大であった。 ・午前5時: 陣痛5分間隔、子宮口6cm、児頭下降度SP±0cm(児頭の最下端が坐骨棘の高さ)。大泉門を母体右側、小泉門を母体左側に触れ、矢状縫合は骨盤横径に一致していた。児頭は骨盤入口から濶部へ、矢状縫合を横径に合わせた状態で進入しており、大泉門・小泉門とも触れることから、屈曲はまだ十分ではない。 ・午前9時: 陣痛3分間隔、子宮口9cm、SP+2cm。分娩第1期の終盤で、児頭は骨盤濶部から峡部へ下降し、順調に進行している。
考え方
正常な児頭の回旋(前方後頭位での分娩機転)は次のとおりである。 ・第1回旋(屈曲): 児頭が顎を胸につけるように屈曲し、小泉門が先進部(最も先に下降する部分)となる。内診では小泉門を中心付近に触れ、大泉門は触れにくくなる。 ・第2回旋(内回旋): 骨盤濶部から峡部で、後頭(小泉門)が母体の前方(恥骨側)へ回旋する。矢状縫合は横径→斜径→縦径(前後径)へと向きを変える。第1頭位では後頭は母体の左前方へ向かい、矢状縫合は母体の左前方から右後方に向かう斜径(第1斜径)を通過する。 ・第3回旋(伸展): 後頭結節が恥骨弓下を支点として児頭が伸展し、娩出される。 ・第4回旋(外回旋): 娩出後、児頭は背中の向きに戻るように回旋する(第1頭位では顔が母体の右大腿側を向く)。 したがって、午前9時(SP+2cm)の時点で正常に経過していれば、第1回旋が完了して小泉門が先進し、第2回旋が進んで小泉門が母体の左前方(恥骨側)へ回りつつある所見が得られるはずである。
図の読み方
各図は、上が恥骨側(母体前方)、下が仙骨側(母体後方)、図の左が母体の右側、図の右が母体の左側である。小泉門は矢状縫合と左右のラムダ縫合が合流するY字の部分(三角形の頂点)、大泉門はひし形で示されている。どちらの泉門が先進しているか(図の中心にあるか)と、小泉門が母体のどちらを向いているかに注目して読む。
選択肢考察
- ×a. ①
大泉門が母体右側、小泉門が母体左側の辺縁にあり、両者をほぼ同じ高さで触れ、矢状縫合は骨盤横径に一致している。これは午前5時の所見と同じであり、屈曲(第1回旋)が不十分で大泉門と小泉門の中間が先進する状態(頭頂位に相当)で、内回旋(第2回旋)も進んでいない。SP+2cmまで下降した時点でこの所見のままであるのは回旋の異常であり、このまま骨盤底まで下降して矢状縫合が横径に一致したまま停止すると低在横定位となる。
- ×b. ②
大泉門が図の中心にあり、先進部となっている。矢状縫合は横径方向で、小泉門は辺縁の外にあって触れにくい。児頭が屈曲せず、むしろ反屈しているため、本来先進すべき小泉門ではなく大泉門が先進する前頭位であり、第1回旋の異常である。前頭位では児頭の通過する周囲径が大きくなるため、分娩が遷延しやすい。
- ×c. ③
大泉門を母体の右前方(恥骨側)、小泉門を母体の左後方(仙骨側)に、いずれも辺縁付近に触れ、矢状縫合は斜径に一致している。大泉門と小泉門の両方を辺縁で触れることから屈曲(第1回旋)が十分でなく、さらに後頭(小泉門)が前方ではなく後方へ回旋しつつある。このまま進むと後頭が仙骨側を向く後方後頭位となるため、正常な回旋とはいえない。
- ○d. ④
小泉門(Y字の合流部)を図の中心付近に触れ、大泉門は触れない。小泉門が先進しており、児頭が十分に屈曲して第1回旋が完了していることを示す。大泉門は図④には描かれておらず、内診で触れない所見である。矢状縫合は小泉門から母体の右後方へ伸びて図の縁に達しており、後頭(小泉門)は母体の左前方を向いている。矢状縫合は母体の左前方から右後方へ向かう斜径に一致しており、第1頭位の児頭が後頭を恥骨側へ向けて内回旋(第2回旋)している途中の所見である。前方後頭位へ向かう正常な回旋であり、子宮口9cm、SP+2cmという進行度にもよく合致する。
- ×e. ⑤
小泉門を先進部として触れるため第1回旋(屈曲)は完了しているが、小泉門は仙骨側(母体後方)にあり、矢状縫合は骨盤縦径(前後径)に一致している。後頭が後方を向いたまま内回旋した後方後頭位であり、第2回旋の異常である。後方後頭位では分娩第2期が遷延しやすく、会陰の裂傷も起こりやすい。
胎位・胎向・胎勢
・胎位: 子宮の縦軸と胎児の縦軸の関係(頭位、骨盤位、横位など)。 ・胎向: 児の背中(横位では児頭)が母体のどちら側にあるか。頭位で背中が母体の左側なら第1頭位、右側なら第2頭位。第1頭位のほうが多い。 ・胎勢: 児の姿勢。正常は屈曲胎勢で、反屈すると前頭位→額位→顔位となる。
内診での泉門の触れ方
・大泉門: 前頭骨と左右の頭頂骨に囲まれたひし形の大きな泉門。矢状縫合・前頭縫合・左右の冠状縫合の4本が集まる。 ・小泉門: 左右の頭頂骨と後頭骨に囲まれた三角形の小さな泉門。矢状縫合と左右のラムダ縫合の3本が集まる(Y字)。 ・正常な屈曲では小泉門が先進し、骨盤の中心付近で触れる。
正常分娩の回旋のまとめ(第1頭位)
・第1回旋: 屈曲。小泉門が先進する。骨盤入口では矢状縫合は横径(または斜径)に一致。 ・第2回旋: 内回旋。小泉門が母体の左前方を経て恥骨側へ回る。矢状縫合は横径→第1斜径→縦径へ。 ・第3回旋: 伸展。恥骨弓下を支点に後頭、続いて前頭・顔面が娩出される。 ・第4回旋: 外回旋。児の顔は母体の右側を向く。
主な回旋異常
・第1回旋の異常(反屈位): 頭頂位(大泉門と小泉門を同じ高さで触れる)、前頭位(大泉門が先進)、額位(前頭縫合と大泉門、反対側に眼窩・鼻根を触れる)、顔位(眼・鼻・口を直接触れる)。 ・第2回旋の異常: 後方後頭位(先進する小泉門を母体後方に触れ、矢状縫合が縦径に一致)、低在横定位(児頭が骨盤底まで下降しているのに矢状縫合が横径に一致したまま回旋しない)、高在縦定位(骨盤入口で矢状縫合が縦径に一致)。 回旋異常は分娩の遷延・停止の原因となり、吸引・鉗子分娩や帝王切開が必要になることがある。
児頭下降度(station)
坐骨棘間線を0とし、児頭の最下端がそれより上ならマイナス、下ならプラスで表す(cm単位)。SP±0cmは児頭が骨盤濶部に達した段階、SP+2cm前後は骨盤峡部付近で内回旋が進む時期にあたる。
POINT
・正常の回旋: 第1回旋(屈曲・小泉門先進)→第2回旋(内回旋・小泉門が恥骨側へ)→第3回旋(伸展)→第4回旋(外回旋)。 ・第1頭位では、第2回旋の途中で小泉門を母体の左前方に触れ、矢状縫合は斜径(左前方〜右後方)に一致する。 ・大泉門が先進→前頭位、両泉門を同じ高さで触れる→頭頂位(いずれも第1回旋の異常)。 ・小泉門が後方で矢状縫合が縦径→後方後頭位、骨盤底で矢状縫合が横径のまま→低在横定位(いずれも第2回旋の異常)。 ・図の向き(上が恥骨側、左が母体右側)を必ず確認してから読む。
