StudyMed医師国家試験

紫のキャップは「固めない」サイン―早産児の血小板数はどの容器で測る?

第114回医師国家試験 A問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第114回 A問題 第3問

NICUに入院している日齢2(在胎30週2日)の新生児。血小板数の確認のため末梢血血液検査をすることとなった。検体提出のために必要な物品の写真を別に示す。  正しいのはどれか。

第114回 A問題 第3問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、NICUの早産児で血小板数を調べるときに、どの採血容器を選ぶかという実践的な問題だ。考えるポイントは2つ。「血小板数を測るにはどんな検体が必要か」と「早産児という患者背景が容器選びにどう影響するか」だよ。まず、血小板数はどの検査に含まれるかな。
医学生医学生
血算、つまりCBCの項目ですよね。赤血球や白血球と一緒に自動分析装置で数えるものだと思います。
ドクタードクター
その通り。では血算をするには、血液をどういう状態で提出すればいいと思う?
医学生医学生
臨床検査医学の講義で「血清」と「血漿」の違いを習いました。生化学は血清で出すことが多いので、血算も血清でいいんでしょうか。
ドクタードクター
そこがよくある誤解なんだ。血清は、血液をいったん凝固させて、血餅を除いた残りの液体成分のこと。凝固する過程で血小板は凝集して消費されてしまうから、血清用の容器では血小板を正しく数えられない。血球を数えるには、固まっていない全血が必要なんだ。
医学生医学生
なるほど、血球そのものを数えるのに、血球を固めてしまったら意味がないですね。だから抗凝固薬が入った容器が必要なんですね。
ドクタードクター
そう。血算に使う抗凝固薬はEDTA塩、多くはEDTA-2Kだ。EDTAは血中のカルシウムイオンをキレートして凝固反応を止めるので、血球の数や形が保たれる。採血管のキャップは添加物ごとに色分けされていて、EDTA入りは紫、ラベンダー色が代表的だよ。
医学生医学生
OSCEの採血の練習で、紫・水色・灰色のスピッツが並んでいたのを思い出しました。でも、今回は成人用の太い真空採血管ではなく小さな容器もありますよね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。それが2つ目のポイント。早産児は体重が小さく、循環血液量は体重1kgあたりおおよそ80〜90mL程度しかない。成人と同じ感覚で採血を重ねると、それだけで貧血になってしまう。これを医原性貧血という。
医学生医学生
検査のための採血が原因で輸血が必要になることもある、ということですか。
ドクタードクター
そうなんだ。だから新生児、特に早産児では、ごく少量の血液で測れる微量採血管を使う。底が上げ底になっていて、少ない血液でも分析できるよう工夫されている。つまり今回の正解は「紫キャップの、EDTA入り微量採血管」ということになる。
医学生医学生
同じ微量採血管でも、底に白っぽいゲルが入っているものがありましたが、あれはどう違うんですか。
ドクタードクター
それは血清分離剤だね。血液を凝固させて遠心すると、比重の差でゲルが血餅と血清の間に層をつくり、血清を取り出しやすくなる。生化学や免疫検査用の容器だから、血液を固める前提で、血小板数の測定には使えない。施設によってはこのタイプのキャップが緑など別の色のこともあるよ。
医学生医学生
大きいほうの真空採血管も、中にフィルムのようなものが入っていました。
ドクタードクター
あれは凝固促進剤付きのフィルムと血清分離剤が入った、成人用の生化学用採血管だ。キャップの色に引っ張られると間違えやすいけれど、中身は血清を得るためのもので血算には向かない。そもそも必要な採血量が多いので、早産児にはサイズの点でも不適切なんだ。
医学生医学生
残りの2つは、滅菌スピッツと血液培養ボトルですね。
ドクタードクター
そう。滅菌スピッツは尿や髄液、膿などを培養や一般検査に出すための容器で、抗凝固薬は入っていない。血液培養ボトルは、敗血症を疑うときに血液を培地に直接注入して菌を増やし、起炎菌を同定するためのもの。どちらも血球を数える目的では使わないよ。
医学生医学生
整理すると、検査項目から必要な検体の種類を決めて、患者背景から容器のサイズを決める、という2段階ですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。ついでに他のキャップの色も押さえておこう。水色はクエン酸ナトリウムでPTやAPTTなどの凝固検査や赤沈、灰色はフッ化ナトリウムで解糖を止めて血糖を測る、緑はヘパリンで血液ガスや一部の生化学検査に使う。メーカーや施設で多少違うから、実際には必ずラベルで確認する習慣をつけてほしい。
医学生医学生
血液内科の実習で、EDTAで血小板が低く出る人がいると聞いたことがあります。
ドクタードクター
EDTA依存性偽性血小板減少だね。EDTAの存在下で血小板が凝集して、自動分析装置では見かけ上少なく数えられてしまう。臨床症状と合わない血小板減少を見たら、塗抹標本で凝集塊を確認したり、クエン酸など別の抗凝固薬で再検したりする。それから早産児では、敗血症、母体由来の抗体による免疫性血小板減少、DICなどで本当に血小板が減ることがあるから、経過を追って測定することが多い。だからこそ、少ない採血量で正確に測る工夫が大切なんだ。
医学生医学生
採血容器の選択ひとつにも、検査の原理と患者さんへの負担の両方が関わっているんですね。
ドクタードクター
その感覚を持っていれば、研修医になってから検体の取り違えや無駄な再採血をぐっと減らせるよ。

まとめ

血小板数は血算の項目であり、血球を凝固させずに数えるため、抗凝固薬のEDTA塩(多くはEDTA-2K)が入った紫キャップの採血管を用います。血清分離剤や凝固促進剤の入った生化学用容器では血液が凝固して血小板が消費されるため、血算には使えません。早産児は循環血液量が少なく採血の積み重ねが医原性貧血につながるため、少量で測定できる微量採血管を選ぶことが重要です。凝固検査はクエン酸ナトリウム(水色)、血糖はフッ化ナトリウム(灰色)、血液ガスはヘパリン(緑)など、キャップの色と添加物の対応や、EDTA依存性偽性血小板減少のような落とし穴も合わせて押さえておきましょう。「検査の原理から検体の種類を決め、患者背景から容器のサイズを決める」という考え方は、日常診療での正確な検査と患者負担の軽減に直結します。

解答・解説

正解はaです

問われていること

在胎30週2日で出生した日齢2の早産児について、血小板数を確認するための末梢血検査(血算)に使う採血容器を、写真の物品から選ぶ問題である。

考え方の手順

1. 検査項目から必要な検体の種類を決める:血小板数は血算(全血球計算、CBC: complete blood count)の項目であり、血球を固まらせずに数える必要がある。したがって凝固していない全血が必要で、抗凝固薬としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)塩、通常はEDTA-2K(二カリウム塩)が添加された容器を選ぶ。血清を得るための容器(血清分離剤・凝固促進剤入り)では血液が凝固して血小板が消費されるため、血小板数は測れない。 2. 患者背景から容器のサイズを決める:早産児は体重が小さく循環血液量も少ない(新生児の循環血液量はおおよそ体重1kgあたり80〜90mL程度)。採血による医原性貧血を避けるため、採血量は最小限にとどめ、少量の血液で測定できる微量採血管(いわゆるマイクロティナ型の小型容器)を用いる。成人用の真空採血管は必要量が多く、新生児には適さない。 3. キャップの色で添加物を見分ける:採血管のキャップは添加物ごとに色分けされており、EDTA入りは紫(ラベンダー)色である。 以上から、紫色キャップの微量採血管である①を選ぶ。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    紫(ラベンダー)色キャップの微量採血管で、抗凝固薬のEDTA-2Kが入っている。EDTAは血中のカルシウムイオンをキレートして凝固を止めるため、血球の形態と数が保たれ、血算(赤血球・白血球・血小板数、ヘモグロビンなど)の測定に用いられる。管の底が上げ底になっており少量の血液でも測定できるため、採血量を極力減らしたい早産児の血小板数測定に最も適している。

  2. ×b.  ②

    微量採血管ではあるが、底部に白っぽいゲル状の血清分離剤が入っている生化学・免疫検査用の容器である。採血後に血液を凝固させて遠心すると、比重の差で分離剤が血餅(血球成分)と血清の間に層をつくり、血清だけを取り出しやすくなる。凝固の過程で血小板は消費されるため、血小板数の測定には使えない。なお施設によっては生化学用微量採血管のキャップが緑色など別の色のこともある。

  3. ×c.  ③

    ①②より明らかに大きい成人用の真空採血管で、底部に血清分離剤、管内に凝固を早めるための凝固促進剤付きフィルムが入っている生化学・免疫検査用の容器である。キャップの色に惑わされやすいが、中身は血清を得るためのもので血算には使えない。また必要な採血量が多く、早産児の検査容器としてはサイズの点でも不適切である。

  4. ×d.  ④

    滅菌スピッツ(滅菌検体容器)である。尿・髄液・膿・分泌物などを細菌検査(培養)や一般検査に提出するときに用いる。抗凝固薬は入っておらず、血液を入れても凝固してしまうため血算には使えない。

  5. ×e.  ⑤

    血液培養ボトルである。菌血症・敗血症を疑うときに血液を培地へ直接注入して細菌を増殖させ、起炎菌を同定するための容器であり、血球数の測定には使わない。成人では好気用と嫌気用の2本を1セットとして採取するのが基本だが、小児や新生児など採血量が限られる場合には、少量の血液に対応した好気用ボトルを用いることが多い。

採血管キャップの色と添加物(代表例)

採血時の取り違えを防ぐため、添加物の種類に応じてキャップを色分けすることがISO(国際標準化機構)で推奨されている。施設やメーカーにより多少異なるが、代表的なものは次のとおりである。 ・紫(ラベンダー):EDTA塩 → 血算、血液像、HbA1cなど ・水色(ライトブルー):クエン酸ナトリウム → 凝固検査(PT、APTT、フィブリノゲンなど)、赤沈 ・灰色:フッ化ナトリウム+抗凝固薬 → 血糖(解糖を阻止する) ・緑:ヘパリン → 血液ガス、一部の生化学検査 ・赤や金色など:凝固促進剤・血清分離剤 → 生化学・免疫血清検査 微量採血管も基本的に同じ色分けに従う。

見た目による見分け方

抗凝固薬は粉末や管壁への塗布の形で入っていることが多く、外見では分かりにくい。一方、血清用の容器は底に白濁した血清分離剤のゲルがあり、凝固促進剤付きのフィルムが入っていることもあるため、外見から区別しやすい。

新生児・早産児の採血の注意

早産児では循環血液量が非常に少なく、検査のための採血の積み重ねが貧血(医原性貧血)や輸血の原因になる。そのため微量採血管を用い、必要最小限の検査にまとめることが重要である。また早産児では、感染症(敗血症)、母体由来の抗体による免疫性血小板減少、播種性血管内凝固(DIC)などを背景に血小板減少を来すことがあり、血小板数の経過観察がしばしば行われる。

EDTA依存性偽性血小板減少

まれに、EDTAの存在下で血小板が凝集し、自動分析装置で血小板数が見かけ上低く出ることがある(偽性血小板減少)。疑われる場合は、塗抹標本で血小板凝集を確認したり、クエン酸やヘパリンなど別の抗凝固薬で再検したりする。

POINT

・血小板数は血算の項目 → 凝固させない全血が必要 → EDTA入り(紫キャップ)の容器を使う。 ・血清分離剤・凝固促進剤入りの容器(生化学用)では血液が凝固するため血算はできない。 ・新生児、特に早産児では採血量を最小限にするため微量採血管を用いる。 ・凝固検査はクエン酸ナトリウム(水色)、血糖はフッ化ナトリウム(灰色)、血液培養は培養ボトルを用いる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。