StudyMed医師国家試験

「注射する薬」は合っていても「打つ場所」が違えば誤り―アナフィラキシーとアドレナリンの投与経路

第114回医師国家試験 A問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第114回 A問題 第1問

疾患と標準治療の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.蕁麻疹 ―― H1受容体拮抗薬内服
  2. b.食物アレルギー ―― 原因食物除去
  3. c.アトピー性皮膚炎 ―― 副腎皮質ステロイド外用
  4. d.アナフィラキシー ―― アドレナリン静注
  5. e.気管支喘息発作(急性増悪) ―― β2刺激薬吸入

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的なアレルギー性疾患と、その標準治療の組合せを確認する問題だ。どれも国試でおなじみの組合せだけど、1つだけ「惜しいけれど誤り」が紛れている。薬の種類だけでなく、投与経路まで目を向けるのがポイントだよ。
医学生医学生
全部それっぽく見えて、正直どれも正しく思えてしまいます。
ドクタードクター
そう見えるように作られているからね。整理の軸として、アレルギー疾患の治療は「原因の回避・除去」「ヒスタミンなどの化学伝達物質を抑える薬」「炎症そのものを抑える薬」の3本柱で考えるとわかりやすい。そこに、命に関わる急性期の病態では「速く効く薬を正しい経路で」という視点が加わるんだ。
医学生医学生
命に関わる急性期というと、アナフィラキシーと喘息発作ですね。
ドクタードクター
その通り。ではまずアナフィラキシーから。第一選択薬は何だろう。
医学生医学生
アドレナリンです。BLSの実習で心停止にアドレナリン静注と習ったので、アナフィラキシーも静注でいいのかと思っていました。
ドクタードクター
まさにそこが落とし穴で、これが誤りの組合せだ。アナフィラキシーでのアドレナリンは大腿前外側部への筋肉注射が標準なんだ。用量は0.01 mg/kgで、成人は最大0.5 mg、小児は最大0.3 mg。効果が不十分なら5〜15分ごとに繰り返す。
医学生医学生
なぜ静注ではだめなんでしょうか。静注のほうが早く効きそうです。
ドクタードクター
いい疑問だね。静注だと血中濃度が急激に上がって、重い高血圧や頻脈性不整脈、心筋虚血を起こす危険がある。筋肉は血流が豊富なので皮下注より速やかに吸収され、それでいて静注ほど急激には上がらない。速さと安全性のバランスが筋注なんだ。静注を使うのは心停止時の蘇生か、筋注を繰り返しても改善しない難治例を、モニター監視下で希釈して慎重に投与する場合に限られる。
医学生医学生
同じ薬でも、心停止とアナフィラキシーで経路を使い分けるんですね。では蕁麻疹のH1受容体拮抗薬内服はどうですか。
ドクタードクター
これは正しい。蕁麻疹は皮膚の肥満細胞から放出されたヒスタミンが血管透過性を高めて、膨疹とかゆみを生じる病気だ。だからH1受容体をブロックする抗ヒスタミン薬が第一選択になる。眠気の少ない第2世代が推奨され、効果不十分なら増量や変更・追加を行う。
医学生医学生
食物アレルギーの原因食物除去も基本ですよね。小児科実習で、負荷試験の結果を見ながら食べられる量を決めていたのを思い出しました。
ドクタードクター
よく見ていたね。正しい診断に基づく除去が基本だけど、今は「必要最小限の除去」が推奨されていて、症状なく食べられる範囲までは摂取を続ける。過剰な除去は栄養障害や生活の質の低下につながるからね。アナフィラキシーの既往がある子にはアドレナリン自己注射薬を持たせることも大事だ。
医学生医学生
アトピー性皮膚炎のステロイド外用も正しいと思います。皮膚科の外来で、部位によって強さを変えていました。
ドクタードクター
その通り。アトピー性皮膚炎は抗炎症の外用療法、保湿剤によるスキンケア、悪化因子対策の3本柱で、外用薬の中心はステロイドだ。顔面や頸部ではタクロリムス軟膏も使われるし、最近はJAK阻害薬やPDE4阻害薬の外用薬、重症例には生物学的製剤も選択肢になっている。
医学生医学生
喘息発作のβ2刺激薬吸入も、気管支を急いで広げるという意味で第一選択ですね。
ドクタードクター
そう。発作時は短時間作用性β2刺激薬、いわゆるSABAの吸入が第一選択で、改善しなければネブライザーでの反復吸入、酸素投与、全身性ステロイドを追加する。長期管理の主役は吸入ステロイドだから、発作時と長期管理を区別して覚えておこう。
医学生医学生
アナフィラキシーで抗ヒスタミン薬やステロイドも使いますよね。それだけで対応してもいいのでしょうか。
ドクタードクター
そこは臨床で特に注意したいところだ。抗ヒスタミン薬やステロイドはあくまで補助薬で、アドレナリンの代わりにはならない。初期対応としては、原因を中止し、助けを呼び、アドレナリンを筋注、仰臥位で下肢挙上、酸素と細胞外液の急速輸液。急に立たせたり座らせたりしないことも大切だ。症状がいったん治まっても再燃する二相性反応があるので、一定時間の経過観察も必要になる。
医学生医学生
β遮断薬を飲んでいる人ではアドレナリンが効きにくいと薬理で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。その場合はグルカゴンの投与が考慮される。こうした知識は救急外来だけでなく、造影検査や抗菌薬投与の場面など、どの診療科でも必要になるよ。

まとめ

アレルギー性疾患の治療は、原因の回避・除去、化学伝達物質を抑える薬、炎症を抑える薬の3本柱で整理でき、蕁麻疹には第2世代H1受容体拮抗薬内服、食物アレルギーには必要最小限の原因食物除去、アトピー性皮膚炎にはステロイド外用、喘息発作にはSABA吸入が基本となります。アナフィラキシーの第一選択はアドレナリンですが、標準の投与経路は大腿前外側部への筋注(0.01 mg/kg、成人最大0.5 mg、小児最大0.3 mg)であり、静注は高血圧や不整脈、心筋虚血の危険があるため心停止時や筋注抵抗性の難治例に限られます。抗ヒスタミン薬やステロイドは補助薬にすぎず、アドレナリンの代わりにはなりません。二相性反応への経過観察やβ遮断薬内服者でのグルカゴンも含め、「どの薬を、どの経路で」まで押さえることが、どの診療科でも遭遇しうる急変への確実な対応につながります。

解答・解説

正解はdです

問われていること

代表的なアレルギー性疾患について、それぞれの第一選択となる標準治療を正しく対応させられるかを問う問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、標準治療として不適切な組合せを1つ選ぶ。

考え方

アレルギー性疾患の治療は、大きく次の3つの柱で整理できる。 1. 原因(抗原)や悪化因子の回避・除去 2. 症状を引き起こす化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)の作用を抑える薬(拮抗薬・遊離抑制薬) 3. 炎症そのものを抑える薬(副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬など) これに加え、生命に関わる急性期の病態(アナフィラキシー、喘息発作)では、迅速に効果を発揮する薬を適切な経路で投与することが重要になる。 選択肢のうち、蕁麻疹・食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・喘息発作の組合せはいずれも各疾患の基本治療に合致している。一方、アナフィラキシーに対する第一選択はアドレナリンの「筋肉注射」であり、「静脈注射」は標準治療ではない。投与経路の違いが正誤を分けるポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  蕁麻疹 ―― H1受容体拮抗薬内服

    組合せとして正しい。蕁麻疹は主に皮膚の肥満細胞から放出されたヒスタミンが血管透過性を高め、膨疹とかゆみを生じる疾患である。そのため、ヒスタミンのH1受容体への結合を妨げるH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)の内服が薬物療法の第一選択となる。眠気などの副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬が推奨され、効果が不十分なら増量や他剤への変更・追加を行う。原因や悪化因子が明らかであればその回避も並行して行う。

  2. ×b.  食物アレルギー ―― 原因食物除去

    組合せとして正しい。食物アレルギーの管理の基本は、正確な診断に基づいて原因食物を除去することである。ただし現在は、症状を起こさずに食べられる範囲までは摂取を続ける「必要最小限の除去」が推奨されており、過剰な除去による栄養障害や生活の質の低下を避ける。誤食などで症状が出た場合には抗ヒスタミン薬などで対処し、アナフィラキシーの既往がある患者にはアドレナリン自己注射薬(エピペン®)を携帯させる。

  3. ×c.  アトピー性皮膚炎 ―― 副腎皮質ステロイド外用

    組合せとして正しい。アトピー性皮膚炎の治療は、①皮膚の炎症を抑える薬物療法、②保湿剤などによるスキンケア(バリア機能の補強)、③悪化因子の対策の3本柱からなる。炎症を抑える外用薬の中心は副腎皮質ステロイド外用薬であり、部位や重症度に応じて強さを選ぶ。顔面・頸部などではタクロリムス軟膏(カルシニューリン阻害薬)も用いられ、近年はJAK阻害薬外用薬やPDE4阻害薬外用薬、重症例では生物学的製剤なども選択肢となっている。かゆみに対しては抗ヒスタミン薬内服が補助的に用いられる。

  4. ○d.  アナフィラキシー ―― アドレナリン静注

    誤った組合せであり、これが正解である。アナフィラキシーの第一選択薬はアドレナリンであるが、標準的な投与経路は大腿前外側部への筋肉注射である。用量は0.01 mg/kg(1 mg/mL製剤を使用)で、成人では最大0.5 mg、小児では最大0.3 mgとし、効果が不十分なら5〜15分ごとに反復する。筋肉注射は血管が豊富な筋肉から速やかに吸収され、皮下注射より早く血中濃度が上がる一方、静脈注射のように急激な濃度上昇を起こさない。アドレナリンの静脈注射は、重篤な高血圧、頻脈性不整脈、心筋虚血などを起こす危険があるため、初期治療としては行わない。静脈内投与は心停止時の心肺蘇生や、筋注を繰り返しても改善しない難治例に対して、循環監視下で希釈して慎重に用いる場合に限られる。

  5. ×e.  気管支喘息発作(急性増悪) ―― β2刺激薬吸入

    組合せとして正しい。喘息発作では気管支平滑筋が収縮して気道が狭くなるため、気管支を速やかに広げる短時間作用性β2刺激薬(SABA)の吸入が第一選択となる。軽症であれば定量噴霧式吸入器で自宅でも対処できるが、改善しない場合や中等症以上では、医療機関でネブライザーによる反復吸入、酸素投与、全身性副腎皮質ステロイドの投与などを追加する。重症例ではアミノフィリン点滴やアドレナリン皮下注射が検討されることもある。

アナフィラキシーの概要

アナフィラキシーは、アレルゲンなどへの曝露後に、皮膚・粘膜、呼吸器、循環器、消化器など複数の臓器に急速に全身性のアレルギー症状が現れ、生命を脅かしうる過敏反応である。血圧低下や意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックという。主な原因は食物、薬剤(抗菌薬、造影剤、NSAIDsなど)、ハチ毒などである。

アナフィラキシーの初期対応

1. 原因と考えられるものの投与・摂取を中止する。 2. 助けを呼び、気道・呼吸・循環・意識を評価する。 3. アドレナリン0.01 mg/kg(成人最大0.5 mg、小児最大0.3 mg)を大腿前外側部に筋注する。改善が乏しければ5〜15分ごとに反復する。 4. 仰臥位にして下肢を挙上する(呼吸困難が強い場合は楽な姿勢、嘔吐があれば側臥位)。急に立たせたり座らせたりしない。 5. 酸素投与、静脈路確保と細胞外液の急速輸液を行う。 6. 補助的に抗ヒスタミン薬(皮膚症状の緩和)、副腎皮質ステロイド、β2刺激薬吸入(喘鳴に対して)を用いる。これらはアドレナリンの代わりにはならない。 7. 症状が治まった後に再び症状が出る二相性反応があるため、一定時間の経過観察を行う。 ※β遮断薬を内服している患者ではアドレナリンが効きにくく、グルカゴンの投与が考慮される。

アドレナリンの投与経路の使い分け

・筋注:アナフィラキシーの初期治療の標準。 ・静注:心停止時の蘇生(1 mgを3〜5分ごと)。アナフィラキシーでは筋注で反応しない難治例に限り、モニター監視下で少量ずつ慎重に用いる。 ・自己注射薬(エピペン®):医療機関外で本人・家族・教職員などが大腿外側に筋注する。体重15 kg以上30 kg未満では0.15 mg製剤、30 kg以上では0.3 mg製剤が目安である。

各アレルギー疾患の基本治療のまとめ

・蕁麻疹:原因・悪化因子の回避、第2世代H1受容体拮抗薬の内服。難治例では抗IgE抗体(オマリズマブ)など。 ・食物アレルギー:正しい診断に基づく必要最小限の原因食物除去、誤食時の対応準備(自己注射薬など)。 ・アトピー性皮膚炎:ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏などによる抗炎症治療、保湿剤によるスキンケア、悪化因子対策。 ・気管支喘息:発作時はSABA吸入、長期管理は吸入ステロイド薬(ICS)を基本とする。

POINT

・アナフィラキシーの第一選択はアドレナリン筋注(大腿前外側部、0.01 mg/kg、成人最大0.5 mg、小児最大0.3 mg)であり、静注ではない。 ・アドレナリン静注は高血圧・不整脈・心筋虚血の危険があり、心停止時の蘇生や筋注抵抗性の難治例に限られる。 ・蕁麻疹は第2世代H1受容体拮抗薬内服、食物アレルギーは必要最小限の原因食物除去、アトピー性皮膚炎はステロイド外用、喘息発作はSABA吸入が基本である。 ・抗ヒスタミン薬やステロイドはアナフィラキシーの補助薬であり、アドレナリンの代わりにはならない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。