StudyMed医師国家試験

調査票を書くのは誰?―患者調査の「回答者」を見抜く

第113回医師国家試験 F問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第2問

患者調査について誤っているのはどれか。

  1. a.受療率がわかる。
  2. b.3年に1度行われる。
  3. c.患者本人が回答する。
  4. d.平均在院日数がわかる。
  5. e.厚生労働省が実施する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、国の保健統計の一つである患者調査について、実施主体・周期・回答者・わかる指標を正しく押さえているかを問う問題だ。「誤っているのはどれか」という形式なので、患者調査の中身と合わない記述を一つ探すことになる。
医学生医学生
名前が「患者調査」なので、患者さんにアンケートをとる調査だと思っていました。
ドクタードクター
実はそこがこの問題の核心なんだ。患者調査の調査票を記入するのは、無作為に抽出された病院・一般診療所・歯科診療所といった医療施設だ。施設が診療録などをもとに、調査日に受診・入院していた患者や調査期間中に退院した患者の情報を記入する。患者本人に質問する調査ではないんだよ。
医学生医学生
ということは、「患者本人が回答する」が誤りの選択肢、つまり正解ですね。
ドクタードクター
その通り。名前に引きずられやすいから要注意だ。では、本人や世帯が回答する調査には何があるかな。
医学生医学生
国民生活基礎調査でしょうか。公衆衛生の講義で有訴者率や通院者率が出てきた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。有訴者率や通院者率は本人・世帯の申告に基づく指標だから、国民生活基礎調査で把握する。一方、患者調査は医療施設側の記録に基づくから、傷病名などの情報が正確に集められるという特徴があるんだ。
医学生医学生
医師が書くカルテの情報がもとになっているなら、診断名の信頼性は高そうですね。では、ほかの選択肢を確認させてください。実施主体は厚生労働省で合っていますか。
ドクタードクター
合っている。患者調査は厚生労働省が実施する基幹統計で、調査票は都道府県や保健所を通じて医療施設に配布・回収される。周期はどうだろう。
医学生医学生
3年に1度だったと思います。でも毎年やる調査と混ざってしまって自信がありません。
ドクタードクター
3年ごとで正しい。10月に実施される。混同しやすいのが国民生活基礎調査で、こちらは毎年実施し、3年ごとに大規模調査を行う。医療施設の数や病床数を調べる医療施設静態調査も3年ごとだ。周期はまとめて整理しておくと覚えやすいよ。
医学生医学生
受療率がわかる、というのも正しいですよね。CBTの過去問で「受療率は人口10万対」と出てきました。
ドクタードクター
そう、受療率は調査日に医療施設で受療した推計患者数を人口10万人あたりで表した値で、患者調査の代表的な指標だ。入院・外来別、性・年齢階級別、傷病別に集計される。受療率は入院・外来とも高齢になるほど高くなるという傾向も押さえておこう。
医学生医学生
平均在院日数もわかる、とありますが、それは病院報告でわかるものだと思っていました。
ドクタードクター
いい疑問だね。患者調査では、9月の1か月間に退院した患者について入院から退院までの日数を調べるので、退院患者の平均在院日数を傷病別・年齢別に算出できる。一方、病院報告は病院が毎月の在院患者数や退院患者数を報告するもので、病床利用率や病院全体の平均在院日数の算出に使われる。どちらからも平均在院日数は出るけれど、性格が違うんだ。
医学生医学生
患者調査は「どんな病気の人が何日入院したか」、病院報告は「病院全体としてどうか」という違いですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。もう一つ、患者調査では総患者数という推計値も出る。調査日には受診していなくても継続的に治療を受けている人を含めた数で、たとえば高血圧や糖尿病の患者がどれくらいいるかを把握するのに使われる。
医学生医学生
臨床実習で内科外来を回ったとき、高血圧で定期通院している方がとても多かったのを思い出しました。そういう人も数に入るということですね。
ドクタードクター
そういうことだ。統計の問題は、「誰が」「いつ」「何を」調べるのかという調査の設計を意識すると覚えやすい。将来、病院で勤務すれば実際に患者調査の調査票を記入する立場になるかもしれないし、地域の医療計画を考えるうえでもこうしたデータの性質を理解しておくことは大切だよ。

まとめ

患者調査は、厚生労働省が3年ごとに実施する基幹統計で、層化無作為抽出された病院・一般診療所・歯科診療所が診療録などをもとに調査票を記入します。回答者は医療施設であり患者本人ではない点が最大のポイントで、本人・世帯の申告に基づく有訴者率や通院者率は国民生活基礎調査で把握します。患者調査からは推計患者数、受療率(人口10万対)、退院患者の平均在院日数、総患者数などがわかり、病院全体の平均在院日数や病床利用率を算出する病院報告とは性格が異なります。各統計を「実施主体・周期・回答者・わかる指標」で整理しておくことが、国試対策だけでなく、地域医療や医療政策のデータを読み解く基礎になります。

解答・解説

正解はcです

患者調査の実施主体・周期・調査対象・わかる指標を問う問題である。「誤っているのはどれか」型なので、患者調査の内容と合わない記述を一つ選ぶ。 患者調査は、病院・一般診療所・歯科診療所を利用する患者の傷病の状況などを把握するため、厚生労働省が3年ごとに行う全国調査である。統計法上の基幹統計にあたる。調査票に記入するのは患者ではなく、無作為に抽出された医療施設であり、施設が診療録などをもとに、調査日に受診・入院していた患者や調査期間中の退院患者の情報を記入する。この調査から、推計患者数、受療率、退院患者の平均在院日数、傷病の分類(主傷病名)などがわかる。 したがって「患者本人が回答する」という記述が誤りである。患者本人や世帯が回答する調査(国民生活基礎調査など)と混同しないことが解答のポイントになる。

選択肢考察

  1. ×a.  受療率がわかる。

    記述は正しい。受療率は、調査日に医療施設で受療した推計患者数を人口10万人あたりで表した値であり、患者調査で得られる代表的な指標である。入院・外来別、性・年齢階級別、傷病別に集計される。

  2. ×b.  3年に1度行われる。

    記述は正しい。患者調査は3年周期で実施される。同じく3年ごとに大規模調査が行われるものに国民生活基礎調査や医療施設静態調査があり、周期はまとめて覚えておくとよい。

  3. ○c.  患者本人が回答する。

    記述は誤りであり、これが正解である。患者調査の回答者(調査票の記入者)は、抽出された病院・診療所などの医療施設である。施設が診療録などに基づき、対象患者の性・年齢、傷病名、入院・外来の別、退院患者の在院期間などを記入する。患者に直接質問する調査ではない。自覚症状がある者の割合(有訴者率)や通院者率のように本人・世帯の申告に基づく指標は、国民生活基礎調査で把握される。

  4. ×d.  平均在院日数がわかる。

    記述は正しい。患者調査では、調査期間内(通常は9月の1か月間)に退院した患者について入院から退院までの日数を調べるため、退院患者の平均在院日数を傷病別・年齢別などに算出できる。なお、病院全体の平均在院日数は病院報告からも算出されるので、両者は区別しておく。

  5. ×e.  厚生労働省が実施する。

    記述は正しい。患者調査の実施主体は厚生労働省である。調査票は都道府県・保健所などを通じて医療施設に配布・回収される。

患者調査の概要

・実施主体:厚生労働省(基幹統計調査) ・周期:3年ごと(10月に実施) ・対象:層化無作為抽出された病院・一般診療所・歯科診療所と、そこを利用する患者 ・記入者:医療施設(患者本人ではない) ・調査の区分:入院・外来患者は、施設ごとに指定された調査日1日分の患者が対象。退院患者は9月の1か月間に退院した患者が対象となる。 ・主な結果指標:推計患者数、受療率(人口10万対)、退院患者の平均在院日数、総患者数(調査日には受診していなくても継続的に治療を受けている者を含めた推計値)、傷病別の患者構成など

混同しやすい調査との違い

・国民生活基礎調査:厚生労働省。毎年実施し、3年ごとに大規模調査を行う。世帯・世帯員が回答し、有訴者率、通院者率、要介護者の状況、所得などがわかる。 ・医療施設調査:医療施設の数・病床数・設備などを調べる。静態調査は3年ごと、動態調査は開設・廃止などを随時把握する。 ・病院報告:病院の在院患者数・新入院患者数・退院患者数などを毎月報告するもので、病床利用率や病院全体の平均在院日数の算出に使われる。

受療率の傾向

入院・外来とも、受療率は高齢になるほど高くなる。傷病別にみると、入院では精神及び行動の障害や循環器系の疾患が多く、外来では消化器系の疾患(歯科疾患を含む)や循環器系の疾患(高血圧性疾患など)が多い。

POINT

・患者調査は厚生労働省が3年ごとに実施する基幹統計である。 ・回答(記入)するのは医療施設であり、患者本人ではない。 ・推計患者数、受療率、退院患者の平均在院日数、総患者数がわかる。 ・本人・世帯の申告に基づく有訴者率・通院者率は国民生活基礎調査で把握する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。