StudyMed医師国家試験

高齢者世帯の2つに1つは一人暮らし―「分母」を見極める世帯統計

第120回医師国家試験 C問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第9問

2023(令和5)年国民生活基礎調査で高齢者世帯のうち単独世帯の割合に最も近いのはどれか。

  1. a.10%
  2. b.20%
  3. c.30%
  4. d.40%
  5. e.50%

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国民生活基礎調査の世帯統計、それも高齢者世帯に占める単独世帯の割合を問う問題だ。数値の暗記問題に見えるけれど、カギは「高齢者世帯」という言葉の定義を正しく押さえることにある。まず、高齢者世帯とはどんな世帯を指すか分かるかな。
医学生医学生
65歳以上の人がいる世帯のこと、ではないんですか。
ドクタードクター
そこがよくある誤解なんだ。国民生活基礎調査でいう高齢者世帯は、65歳以上の者のみで構成するか、それに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。65歳以上が1人でもいれば該当する「65歳以上の者のいる世帯」とは別の概念だよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義でも似た用語が並んでいて、正直区別がついていませんでした。
ドクタードクター
混同しやすいよね。では、高齢者世帯は全員が高齢者なのだから、どんな世帯構造が考えられる?
医学生医学生
子や孫と同居していれば外れるので、一人暮らしか、高齢の夫婦だけの世帯がほとんどになりそうです。
ドクタードクター
その通り。だから単独世帯の割合はかなり高くなる。2023年の調査では高齢者世帯は約1,656万世帯で全世帯の約3割、そのうち単独世帯は約855万世帯で51.6%だった。つまり高齢者世帯の約半数が一人暮らしで、最も近いのは50%になる。
医学生医学生
思ったより多いです。私は3割くらいかと思ってしまいました。
ドクタードクター
3割という感覚は、実は別の数字と取り違えている可能性が高い。「65歳以上の者のいる世帯」に占める単独世帯の割合は31.7%で、全世帯に占める高齢者世帯の割合も約3割だ。分母を取り違えると30%を選んでしまう、典型的な誤答パターンだね。
医学生医学生
40%はどうでしょう。夫婦のみの世帯と半々くらいかと思ったんですが。
ドクタードクター
夫婦のみの世帯は高齢者世帯の4割台を占めるけれど、単独世帯はそれを上回って半数を超えている。10%や20%は、全員が高齢者という定義を考えればまずありえない。単独世帯の割合は長期的に上昇してきて、近年は5割前後で推移しているんだ。
医学生医学生
整理すると、高齢者世帯が分母なら約5割、65歳以上の者のいる世帯が分母なら約3割、ということですね。
ドクタードクター
よくまとまった。ついでに、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数で、その内訳では夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割と多い。かつて主流だった三世代世帯は大きく減っているよ。
医学生医学生
調査は毎年行われているんでしたっけ。
ドクタードクター
毎年実施されていて、3年ごとに所得や健康、介護まで含めた大規模調査が行われる。2022年が大規模調査の年だった。年度によって数値は少しずつ動くから、細かい値よりも「約半数」「約3割」という大づかみの傾向で覚えておくのが実用的だね。
医学生医学生
なぜこれほど一人暮らしが増えているんでしょうか。
ドクタードクター
高齢化の進行に加えて、未婚率の上昇、子との同居の減少、配偶者との死別などが重なっているからだ。そして臨床でこそ、この数字の重みを感じる場面が多い。一人暮らしの高齢者は孤立や孤独死、急病時の発見の遅れ、服薬管理や栄養摂取の問題、介護者の不在といったリスクを抱えやすい。
医学生医学生
総合診療科の実習で、退院前カンファレンスにケアマネジャーさんや訪問看護師さんが参加して、独居の方の退院後の生活をみんなで相談していました。
ドクタードクター
まさにそれが地域包括ケアの実践だね。退院支援では病気そのものだけでなく、誰と暮らしているか、誰が異変に気づけるかを確認することが欠かせない。見守りや在宅医療・介護の連携を考えるうえで、この統計は土台になる数字なんだ。
医学生医学生
数字を覚えるだけでなく、目の前の患者さんの生活背景を想像する材料にする、ということですね。

まとめ

国民生活基礎調査でいう高齢者世帯とは、65歳以上の者のみ、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯であり、2023年調査ではその51.6%が単独世帯で、高齢者世帯の約半数が一人暮らしです。一方、「65歳以上の者のいる世帯」に占める単独世帯は約3割(31.7%)、全世帯に占める高齢者世帯も約3割であり、分母となる世帯の定義を取り違えると誤答につながります。高齢者の単独世帯は、高齢化、未婚率の上昇、子との同居の減少などを背景に増加を続けており、孤立や急病時の発見の遅れ、服薬・栄養管理の問題などのリスクを伴います。用語の定義を正確に押さえて統計を読むことは、退院支援や地域包括ケアの中で患者の生活背景を考える力にもつながります。

解答・解説

正解はeです

国民生活基礎調査は、厚生労働省が世帯の構成・所得・健康・介護などの状況を把握するために毎年行う調査で、3年ごとに大規模調査が実施される(2022年が大規模調査年)。本問はこの調査の世帯統計から、高齢者世帯に占める単独世帯(一人暮らし)の割合を問うている。 解答にあたっては、まず「高齢者世帯」の定義を正確に押さえる必要がある。国民生活基礎調査でいう高齢者世帯とは、65歳以上の者のみで構成する世帯、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。65歳以上の者が1人でもいれば該当する「65歳以上の者のいる世帯」とは別の概念である。 高齢者世帯は構成員が全員高齢者なので、その内訳は事実上「一人暮らし」か「高齢の夫婦のみ(あるいは高齢のきょうだい等)」にほぼ限られる。2023(令和5)年調査では高齢者世帯は約1,656万世帯で全世帯の約3割を占め、そのうち単独世帯は約855万世帯、割合にして51.6%であった。つまり高齢者世帯の約半数が一人暮らしであり、最も近い選択肢は 50% となる。

選択肢考察

  1. ×a.  10%

    誤り。実際の値(51.6%)を大きく下回る。高齢者世帯は全員が65歳以上という定義上、一人暮らしか夫婦のみの世帯が大半を占めるため、単独世帯が1割程度にとどまることはない。

  2. ×b.  20%

    誤り。実際の値(51.6%)とはかけ離れている。高齢者世帯の単独世帯割合は長期的に上昇傾向にあり、近年は5割前後で推移している。

  3. ×c.  30%

    誤り。約3割という数値は、「65歳以上の者のいる世帯」に占める単独世帯の割合(2023年は31.7%)や、全世帯に占める高齢者世帯の割合(約3割)に近い。分母となる世帯の定義を取り違えると選びやすい誤答である。

  4. ×d.  40%

    誤り。高齢者世帯のうち夫婦のみの世帯は4割台を占めるが、単独世帯はそれを上回り半数を超えている(51.6%)。

  5. ○e.  50%

    正しい。2023(令和5)年国民生活基礎調査では、高齢者世帯約1,656万世帯のうち単独世帯は約855万世帯で、51.6%を占めた。高齢者世帯の約半数が一人暮らしであり、選択肢の中で最も近いのは 50% である。

世帯に関する用語の整理(国民生活基礎調査)

・高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯。 ・65歳以上の者のいる世帯:世帯員に65歳以上の者が1人以上いる世帯(子や孫と同居している世帯も含む)。 ・単独世帯:世帯員が1人だけの世帯。

2023(令和5)年調査の主な数値

・高齢者世帯:約1,656万世帯(全世帯の約3割)。うち単独世帯51.6%で、残りの大部分は夫婦のみの世帯。 ・65歳以上の者のいる世帯:全世帯の約半数。世帯構造別では「夫婦のみの世帯」と「単独世帯」がそれぞれ約3割(単独世帯は31.7%)で多く、次いで「親と未婚の子のみの世帯」が続く。かつて主流だった三世代世帯は大きく減少している。

背景と意義

高齢化の進行、未婚率の上昇、子との同居の減少、配偶者との死別などにより、高齢者の一人暮らしは増え続けている。単独世帯の高齢者は、孤立・孤独死、急病時の発見の遅れ、服薬管理や栄養摂取の問題、介護者の不在などのリスクを抱えやすい。地域包括ケアシステムにおける見守り、在宅医療・介護の連携、退院支援などを考えるうえで重要な統計である。

POINT

・高齢者世帯=65歳以上の者のみ(+18歳未満の未婚者)で構成される世帯。 ・高齢者世帯の約半数(2023年:51.6%)が単独世帯。 ・「65歳以上の者のいる世帯」に占める単独世帯は約3割(31.7%)であり、分母の違いに注意する。 ・高齢者世帯は全世帯の約3割、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。