StudyMed医師国家試験

「何人いるか」と「何件起きたか」―国勢調査と人口動態統計を見分ける

第120回医師国家試験 F問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第120回 F問題 第10問

国勢調査で把握されるのはどれか。

  1. a.婚姻
  2. b.死産
  3. c.死亡
  4. d.出生
  5. e.人口

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、国勢調査で何がわかるかを問う問題だ。ポイントは、人口統計を「ある一時点の姿を切り取る統計」と「一定期間に起きた出来事を記録する統計」の2つに分けて考えられるかどうか。この区別さえできれば迷わないよ。
医学生医学生
国勢調査って、「10月1日現在」で家族のことをいろいろ書くあの調査ですよね。
ドクタードクター
そう、それだ。国勢調査は統計法に基づいて総務省統計局が5年ごとに行う全数調査で、10月1日午前0時現在に日本に住んでいるすべての人、外国人も含めて対象にする。これを人口静態統計と呼ぶ。
医学生医学生
静態というのは、写真を撮るように止まった状態を見る、という意味ですか。
ドクタードクター
いい表現だね。一方、出生・死亡・死産・婚姻・離婚という5つの出来事を、1月1日から12月31日の1年間について届出から集計するのが人口動態統計で、こちらは厚生労働省の所管だ。ストックを数えるのが国勢調査、フローを数えるのが人口動態統計と整理できる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で「動態は5項目」と覚えました。そうすると、出生、死亡、死産、婚姻はすべて動態の項目なので、国勢調査で把握されるのは人口ですね。
ドクタードクター
正解。国勢調査では性別・年齢別の人口や世帯数が得られ、人口ピラミッドや年齢3区分別人口、人口密度なども、ここから作られる。
医学生医学生
でも婚姻は少し迷いました。国勢調査の調査票に、結婚しているかどうかを書く欄がありませんでしたか。
ドクタードクター
鋭いね。国勢調査には「配偶関係」の項目があって、未婚・有配偶・死別・離別を答える。ただしそれは調査時点の状態にすぎない。1年間に何件の婚姻が成立したかという出来事としての婚姻は、婚姻届をもとに人口動態統計で把握するんだ。
医学生医学生
状態と出来事を区別する、ということですね。死産もほかと同じく戸籍法の届出ですか。
ドクタードクター
そこは違うので要注意。出生・死亡・婚姻・離婚は戸籍法に基づく届出だけど、死産は「死産の届出に関する規程」による死産届で把握される。対象は妊娠満12週以後の死児の出産で、届出は出産後7日以内だ。
医学生医学生
出生届と死亡届の期限も試験に出そうです。
ドクタードクター
出生届は出生の日から14日以内で出生証明書を添付、死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内で死亡診断書か死体検案書を添付する。医師になれば死亡診断書を書く機会は必ずあるから、その書類が人口動態統計の死因統計の基になることも意識しておいてほしい。
医学生医学生
救急科の実習で、指導医の先生が死亡診断書の死因欄をとても慎重に書いていたのを思い出しました。
ドクタードクター
それが日本全体の死因統計につながるからね。もう一つ大事なのは、2つの統計が組み合わさって使われる点だ。出生率や死亡率を計算するとき、分子は人口動態統計の件数、分母は国勢調査を基礎とした人口になる。
医学生医学生
国勢調査は5年ごとなのに、毎年の率はどうやって出すんですか。
ドクタードクター
国勢調査のない年は、国勢調査人口を基準に出生・死亡数や出入国者数を加減して推計人口を算出し、それを使うんだ。ちなみに第1回国勢調査は1920年で、西暦の末尾が0の年は大規模調査、5の年は簡易調査として行われる。
医学生医学生
厚生労働省の国民生活基礎調査とも混同しそうです。
ドクタードクター
あれは世帯の保健・医療・福祉・所得などを調べる標本調査で、全数調査の国勢調査とは別物だよ。また生命表のうち完全生命表は、国勢調査人口と人口動態統計をもとに5年ごとに作られる。統計ごとに、所管、根拠、時点か期間か、全数か標本かを表にして整理しておくと強いね。

まとめ

人口統計は、ある一時点の人口の姿をとらえる人口静態統計と、一定期間に起きた出来事を記録する人口動態統計に大別されます。国勢調査は人口静態統計の代表で、統計法に基づき総務省が5年ごとに10月1日午前0時現在の全数調査として実施し、人口や世帯、性・年齢、配偶関係などの状態を把握します。一方、出生・死亡・死産・婚姻・離婚の5項目は届出をもとに厚生労働省が1年単位で集計する人口動態統計の対象で、死産だけは戸籍法ではなく「死産の届出に関する規程」に基づきます。国勢調査の配偶関係は時点の状態であり、出来事としての婚姻とは区別が必要です。出生率や死亡率は動態統計の件数を分子、国勢調査を基礎とする人口を分母として算出されるため、両者の違いと関係を理解することは疫学指標を正しく読み解く土台になります。

解答・解説

正解はeです

問われているテーマ

人口に関する統計は、「ある一時点での人口の姿」を切り取る人口静態統計と、「一定期間内に起こった人口の変動(出入り)」を記録する人口動態統計の2つに大別される。国勢調査は前者の代表であり、本問はこの区別ができているかを問うている。

考え方

・人口静態統計=国勢調査:統計法に基づき総務省(統計局)が5年ごとに実施する全数調査で、調査年の10月1日午前0時現在に日本国内に住んでいるすべての人(外国人を含む)を対象とする。人口の規模や、性・年齢・配偶関係・就業状態・世帯構成などの「状態」を把握する。 ・人口動態統計:出生・死亡・死産・婚姻・離婚の5つの「出来事(イベント)」を、戸籍法などに基づく届出をもとに厚生労働省が集計する。1月1日〜12月31日の1年間に発生した件数として把握される。 つまり「ある時点で何人いるか(ストック)」を数えるのが国勢調査、「その期間に何件起きたか(フロー)」を数えるのが人口動態統計である。選択肢のうち、婚姻・死産・死亡・出生はいずれも出来事であり人口動態統計の対象、人口(その時点の人数)だけが国勢調査で把握される。

選択肢考察

  1. ×a.  婚姻

    誤り。婚姻は戸籍法に基づく婚姻届によって把握され、人口動態統計の5項目の一つである。なお国勢調査には「配偶関係(未婚・有配偶・死別・離別)」という調査項目があるが、これは調査時点での状態であり、1年間に何件の婚姻が成立したかという出来事としての婚姻は国勢調査では把握されない。

  2. ×b.  死産

    誤り。死産は「死産の届出に関する規程」(厚生省令)に基づく死産届によって把握され、人口動態統計の対象である。ここでいう死産は妊娠満12週(第4月)以後の死児の出産を指し、届出は出産後7日以内に行う。死産は戸籍法の対象ではない点が、出生・死亡・婚姻・離婚と異なる。

  3. ×c.  死亡

    誤り。死亡は戸籍法に基づく死亡届(死亡の事実を知った日から7日以内、死亡診断書または死体検案書を添付)によって把握され、人口動態統計の対象である。死因別死亡数や死亡率などはこの届出をもとに集計される。

  4. ×d.  出生

    誤り。出生は戸籍法に基づく出生届(出生の日から14日以内、出生証明書を添付)によって把握され、人口動態統計の対象である。出生率や合計特殊出生率の分子となる出生数はここから得られる。

  5. ○e.  人口

    正しい。国勢調査は統計法に基づく基幹統計調査で、5年ごとの10月1日午前0時現在の人口を全数調査によって把握する人口静態統計である。性別・年齢別の人口や世帯数が得られ、年齢3区分別人口構成、人口ピラミッド、人口密度などのほか、人口動態統計の各種「率」(出生率、死亡率など)を計算する際の分母人口の基礎にもなる。

人口静態統計と人口動態統計の比較

・人口静態統計(国勢調査)  根拠法:統計法  所管:総務省統計局  時点・期間:5年ごと、10月1日午前0時現在(一時点)  方法:全数調査(調査員による配布・回収、インターネット回答)  主な内容:人口、世帯、性・年齢、配偶関係、国籍、就業状態、従業地・通学地など ・人口動態統計  根拠:戸籍法(出生・死亡・婚姻・離婚)、死産の届出に関する規程(死産)  所管:厚生労働省  期間:毎年1月1日〜12月31日  方法:市区町村への届出を集計する業務統計  内容:出生、死亡、死産、婚姻、離婚の5項目

国勢調査の補足

・第1回は1920年(大正9年)に実施された。 ・西暦の末尾が0の年は調査項目の多い大規模調査、末尾が5の年は項目を絞った簡易調査として実施される。 ・国勢調査のない年の人口は、国勢調査人口を基準に、人口動態統計の出生・死亡数や出入国者数を加減して算出した「推計人口」(人口推計)で把握する。

関連する統計

・生命表:死亡状況から平均余命・平均寿命を算出する(完全生命表は国勢調査人口と人口動態統計をもとに5年ごとに作成、簡易生命表は毎年)。 ・国民生活基礎調査(厚生労働省):世帯の保健・医療・福祉・所得などを調べる標本調査であり、国勢調査とは別物である。

POINT

・国勢調査=人口静態統計(5年ごと、10月1日午前0時現在の全数調査、統計法、総務省)。 ・人口動態統計=出生・死亡・死産・婚姻・離婚の5項目(1年間の届出を集計、厚生労働省)。 ・出生・死亡・婚姻・離婚は戸籍法、死産は「死産の届出に関する規程」に基づく届出。 ・国勢調査の「配偶関係」は時点の状態であり、出来事としての「婚姻」は人口動態統計で把握する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。