死因1位のがんは要介護の1位ではない―統計が映す「認知症の時代」
第120回医師国家試験 F問題 第7問
国試問題にチャレンジ
2022(令和4)年国民生活基礎調査の項目で,要介護となる原因として最も頻度が高いのはどれか。
- a.認知症
- b.関節疾患
- c.Parkinson病
- d.心疾患(心臓病)
- e.悪性新生物(がん)
対話形式の解説
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ドクターまとめ
2022(令和4)年国民生活基礎調査では、要介護者が介護を必要とするようになった原因の第1位は認知症、第2位は脳血管疾患、第3位は骨折・転倒です。一方、要支援者では関節疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒が上位を占めます。認知機能が低下すると生活全般に介助が必要となって重い要介護になりやすい一方、運動器疾患は比較的軽度の要支援にとどまりやすいという機序で理解すると覚えやすくなります。悪性新生物は死因の第1位ですが、終末期まで日常生活動作が保たれやすいため要介護原因としては上位ではなく、Parkinson病や心疾患も数%程度です。設問の対象(要介護・要支援・全体)を見極め、死因統計と混同しないことが、公衆衛生統計を正しく読み解き、フレイル・ロコモ対策や介護者支援を考える土台になります。
解答・解説
正解はaです
本問は、国民生活基礎調査(厚生労働省が世帯を対象に実施する基幹統計調査で、3年ごとの大規模調査年に介護票による調査が行われる)のうち、「介護が必要となった主な原因」の統計を問うている。 2022(令和4)年調査では、要介護者(要介護1〜5)の原因の第1位は認知症(23.6%)、第2位は脳血管疾患(脳卒中)(19.0%)、第3位は骨折・転倒(13.0%)であった。一方、要支援者(要支援1・2)では関節疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒が上位を占め、要介護者とは順位が大きく異なる。 このように「要介護者」「要支援者」「介護が必要な者全体」のどれを問われているかで答えが変わる点が本問の要である。要介護度が重い状態をもたらすのは、記憶・判断力の低下で日常生活全般に見守りや介助を要する認知症や、片麻痺などの後遺症を残す脳卒中であり、運動器の疾患は比較的軽度の要支援の原因になりやすい、と機序で理解しておくと覚えやすい。選択肢の中に脳血管疾患はないため、認知症が正解となる。
選択肢考察
- ○a. 認知症
2022年調査で要介護者の介護が必要となった原因の第1位であり、23.6%を占める。認知症は記憶障害や見当識障害、実行機能障害により、食事・排泄・服薬・金銭管理など生活全般に介助や見守りが必要となるため、重い要介護状態につながりやすい。高齢化の進行とともに患者数が増加し、2016年調査以降は脳血管疾患を抜いて首位となっている。
- ×b. 関節疾患
変形性膝関節症や関節リウマチなどの関節疾患は、要支援者における原因の第1位であるが、要介護者では上位3位に入らない。歩行や立ち上がりは不自由になるものの、認知機能が保たれ身の回りのことはある程度自力でできる場合が多く、比較的軽度の介護認定にとどまりやすいためである。
- ×c. Parkinson病
Parkinson病は進行すると無動・姿勢反射障害による転倒や認知機能低下を来し、要介護の原因となる。介護保険の特定疾病(40〜64歳の第2号被保険者でも介護保険サービスを受けられる16疾病)にも含まれるが、患者数そのものが認知症や脳卒中に比べて少ないため、原因の割合としては数%程度にとどまり最多ではない。
- ×d. 心疾患(心臓病)
心不全などの心疾患は活動耐容能を低下させ介護の原因となりうるが、要介護者の原因に占める割合は数%程度であり、上位3位(認知症、脳血管疾患、骨折・転倒)には入らない。
- ×e. 悪性新生物(がん)
悪性新生物は死因の第1位であるが、要介護の原因としての割合は小さい。がんは比較的最期まで日常生活動作が保たれ、終末期に短期間で機能が低下して死亡に至る経過をとることが多いため、長期にわたって要介護状態が続くことが少ない。死因の順位と要介護原因の順位を混同しないことが大切である。
2022(令和4)年国民生活基礎調査:介護が必要となった主な原因の上位
要介護者:1位 認知症(23.6%)、2位 脳血管疾患(19.0%)、3位 骨折・転倒(13.0%) 要支援者:1位 関節疾患、2位 高齢による衰弱、3位 骨折・転倒 要支援者・要介護者全体:1位 認知症、2位 脳血管疾患、3位 骨折・転倒
傾向の読み方
・かつて(2013年調査まで)は全体でも要介護者でも脳血管疾患が第1位であったが、脳卒中の発症・重症化の減少と高齢化に伴う認知症の増加により、現在は認知症が首位である。 ・要支援者では運動器(関節疾患、骨折・転倒)や高齢による衰弱(フレイル)が中心で、運動器の障害により移動機能が低下した状態をロコモティブシンドロームと呼ぶ。介護予防ではフレイル・ロコモ対策が重視される。
国民生活基礎調査
・保健、医療、福祉、年金、所得など国民生活の基礎的事項を世帯単位で調べる基幹統計調査。 ・毎年簡易調査を行い、3年ごとに大規模調査(健康票・介護票・所得票などを含む)を行う。2022年は大規模調査年にあたる。 ・介護票からは、介護が必要となった原因のほか、主な介護者の続柄(同居の配偶者が最多)や介護者の年齢(老老介護の割合)などがわかる。
POINT
・要介護者の原因の第1位は認知症、第2位は脳血管疾患、第3位は骨折・転倒(2022年)。 ・要支援者の第1位は関節疾患であり、要介護者とは順位が異なる。 ・悪性新生物は死因第1位だが、要介護原因としては上位ではない。 ・設問が「要介護」「要支援」「全体」のどれを対象にしているかを必ず確認する。
