「誰を呼ぶか」で見分けるT細胞―Th1・Th2・Th17・Treg・CTLの役割分担
第113回医師国家試験 F問題 第18問
国試問題にチャレンジ
各種Tリンパ球〈T細胞〉とその働きの組合せで正しいのはどれか。
- a.Th1細胞 ―― マクロファージの活性化
- b.Th2細胞 ―― 好中球の活性化
- c.Th17細胞 ―― 好酸球の活性化
- d.細胞傷害性T細胞 ―― 抗体産生の誘導
- e.制御性T細胞〈Treg〉 ―― IL-6産生の誘導
対話形式の解説
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ドクターまとめ
CD4陽性ヘルパーT細胞は周囲のサイトカイン環境に応じて分化し、Th1はIFN-γでマクロファージを活性化して細胞内寄生菌に対する細胞性免疫やIV型アレルギーを担います。Th2はIL-4・IL-5・IL-13によりB細胞のIgE産生や好酸球を活性化して寄生虫防御やI型アレルギーに関わり、Th17はIL-17を介して好中球を動員し細胞外寄生菌や真菌の排除、乾癬などの炎症性疾患に関与します。Foxp3を発現する制御性T細胞はIL-10・TGF-β・CTLA-4で免疫を抑制し、炎症性サイトカインであるIL-6はむしろTregへの分化を抑えてTh17への分化を促します。CD8陽性の細胞傷害性T細胞はMHCクラスIに提示された抗原を認識し、パーフォリン・グランザイムやFasリガンドで標的細胞を直接傷害しますが、抗体産生の誘導はCD4陽性T細胞の役割です。「サブセット→サイトカイン→標的細胞」の対応を押さえることは、IGRA、抗IL-17抗体やトシリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬など臨床の検査・治療を理解する基盤となります。
解答・解説
正解はaです
T細胞の亜群(サブセット)ごとの代表的な産生サイトカインと、それによって動員・活性化される細胞の対応を問う問題である。 CD4陽性のヘルパーT細胞(Th細胞)は、抗原提示を受けたときの周囲のサイトカイン環境によって性格の異なる細胞に分化する。おおまかには、Th1はIFN-γ(インターフェロンγ)でマクロファージを、Th2はIL-4・IL-5・IL-13でB細胞(IgE産生)や好酸球を、Th17はIL-17で好中球を動員・活性化する。制御性T細胞(Treg)は逆に免疫応答を抑える側の細胞である。一方、CD8陽性の細胞傷害性T細胞(CTL)は、感染細胞や腫瘍細胞を直接殺す実行役である。 この「サブセット → 主なサイトカイン → 標的となる細胞」の対応を当てはめると、正しい組合せはTh1細胞とマクロファージの活性化だけである。ほかの選択肢は、活性化する細胞が別のサブセットのものと入れ替えられていたり、ほかの細胞の機能が割り当てられていたりする。
選択肢考察
- ○a. Th1細胞 ―― マクロファージの活性化
正しい組合せである。Th1細胞はIL-12の刺激で分化し、IFN-γを大量に産生する。IFN-γはマクロファージを活性化し、貪食した細胞内寄生菌(結核菌など)を殺す能力を高める。Th1はIL-2などを介してCTLの増殖も助け、細胞性免疫の中心を担う。ツベルクリン反応のようなIV型(遅延型)過敏反応もこの経路による。
- ×b. Th2細胞 ―― 好中球の活性化
誤りである。Th2細胞はIL-4、IL-5、IL-13などを産生する。IL-4はB細胞の増殖・分化と抗体産生、特にIgEへのクラススイッチを促し、IL-5は好酸球の分化と活性化を促す。このためTh2は液性免疫、寄生虫に対する防御、I型アレルギーや気管支喘息に関わる。好中球の動員・活性化はTh17細胞の主な働きである。
- ×c. Th17細胞 ―― 好酸球の活性化
誤りである。Th17細胞は、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)とIL-6の存在下で分化が始まり、IL-23によって維持される。IL-17やIL-22を産生し、上皮細胞などにケモカインやG-CSFを出させることで好中球を集め、活性化させる。上皮からの抗菌ペプチド産生も誘導し、細胞外寄生菌や真菌の排除に働く。乾癬などの自己免疫・炎症性疾患にも関わる。好酸球を活性化するのは主にTh2細胞が産生するIL-5である。
- ×d. 細胞傷害性T細胞 ―― 抗体産生の誘導
誤りである。細胞傷害性T細胞(CTL)はCD8陽性で、MHCクラスI分子に提示された抗原ペプチドを認識し、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を攻撃する。パーフォリンで標的細胞の膜に孔を開けてグランザイムを送り込む経路や、Fasリガンドを介した経路によって、標的細胞にアポトーシスを起こさせる。B細胞の抗体産生を誘導するのはCD4陽性ヘルパーT細胞(Th2細胞や濾胞性ヘルパーT細胞)の働きである。
- ×e. 制御性T細胞〈Treg〉 ―― IL-6産生の誘導
誤りである。制御性T細胞(Treg)はCD4陽性・CD25陽性で、転写因子Foxp3を発現する。IL-10やTGF-βなどの抑制性サイトカインの産生や、CTLA-4を介して抗原提示細胞の共刺激分子を抑えることによって、過剰な免疫応答を抑える。これは自己寛容の維持に欠かせない。IL-6はむしろ炎症を進めるサイトカインであり、TGF-βの存在下ではTregへの分化を抑え、Th17への分化を促す方向に働く。Tregの働きはIL-6を誘導することとは相反する。
CD4陽性ヘルパーT細胞サブセットの整理
・Th1:分化因子IL-12、IFN-γ。転写因子T-bet。主なサイトカインはIFN-γ、IL-2。マクロファージとCTLを活性化し、細胞内寄生菌やウイルスに対する細胞性免疫やIV型アレルギーを担う。 ・Th2:分化因子IL-4。転写因子GATA3。主なサイトカインはIL-4、IL-5、IL-13。B細胞(IgE産生)、好酸球、肥満細胞の反応を高め、寄生虫に対する防御やI型アレルギーに関わる。 ・Th17:分化因子TGF-β+IL-6(維持にはIL-23)。転写因子RORγt。主なサイトカインはIL-17、IL-22。好中球を動員し、細胞外寄生菌や真菌の排除、自己免疫疾患に関わる。 ・Treg:分化因子TGF-β、IL-2。転写因子Foxp3。IL-10、TGF-β、CTLA-4を介して免疫を抑制し、自己寛容を維持する。 ・濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh):リンパ節や脾臓など二次リンパ組織の胚中心にいる。IL-21やCD40リガンドを介して、B細胞のクラススイッチ、親和性成熟、抗体産生を助ける。 Th1とTh2は互いに抑え合う関係にある(IFN-γはTh2分化を、IL-4はTh1分化を抑える)。同様に、Th17とTregは分化の分岐点でIL-6の有無によって振り分けられる。
臨床との関連
・Foxp3遺伝子の異常によるTregの欠損は、IPEX症候群(免疫調節異常・多発性内分泌腺症・腸症・X連鎖症候群)として重い自己免疫を起こす。 ・IL-17やIL-23を標的とする抗体製剤は乾癬などの治療に、IL-6受容体に対する抗体(トシリズマブ)は関節リウマチなどの治療に使われる。 ・CTLA-4やPD-1は抑制性分子であり、これらを阻害する免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の抗腫瘍効果を高める一方で自己免疫性の副作用(免疫関連有害事象)を起こしうる。
CTLの特徴
CD8陽性で、MHCクラスIと結合したペプチドを認識する。MHCクラスIはほぼすべての有核細胞に発現するため、どの細胞が感染・腫瘍化しても標的にできる。殺傷はパーフォリン・グランザイム経路とFas/Fasリガンド経路による。
POINT
・Th1:IFN-γ → マクロファージ活性化(細胞性免疫) ・Th2:IL-4・IL-5・IL-13 → B細胞(IgE)・好酸球(液性免疫、アレルギー、寄生虫) ・Th17:IL-17 → 好中球(細胞外細菌・真菌、自己免疫) ・Treg:Foxp3、IL-10・TGF-β・CTLA-4 → 免疫抑制 ・CTL:CD8陽性、パーフォリン・グランザイムで標的細胞をアポトーシスへ導く ・IL-6はTregへの分化を抑え、Th17への分化を促す
