StudyMed医師国家試験

「食べる」だけでは足りない―樹状細胞が獲得免疫のスイッチを入れる理由

第119回医師国家試験 C問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第119回 C問題 第21問

抗原提示能をもつのはどれか。

  1. a.T細胞
  2. b.血小板
  3. c.好酸球
  4. d.好中球
  5. e.樹状細胞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫学の基本中の基本、「抗原提示能をもつ細胞はどれか」という問題だ。着眼点は、抗原提示とは何をすることなのか、そしてそれを本業としている細胞はどれか、という2点。まず、抗原提示という言葉をどう理解しているか聞かせてくれるかな。
医学生医学生
基礎医学の免疫学の講義で、抗原をT細胞に見せること、と習いました。でも正直、なぜわざわざ見せる必要があるのかはぼんやりしています。
ドクタードクター
そこが出発点だね。B細胞は抗体(B細胞受容体)で抗原の立体構造をそのまま認識できるけれど、T細胞受容体は抗原をそのままの形では認識できない。抗原がいったん細胞内で分解されて短いペプチドになり、MHC分子、ヒトでいうHLAに載せられて細胞表面に示されて、はじめてT細胞が認識できるんだ。この「お皿に載せて見せる」作業が抗原提示だよ。
医学生医学生
MHCにはクラスⅠとクラスⅡがありましたよね。どちらに載せるかで相手のT細胞が変わる、という話だったと思います。
ドクタードクター
その通り。クラスⅠはほぼすべての有核細胞が発現していて、細胞の中で作られたウイルス抗原や腫瘍抗原のペプチドをCD8陽性T細胞、つまり細胞傷害性T細胞に示す。クラスⅡは限られた細胞だけが発現し、外から取り込んだ抗原のペプチドをCD4陽性のヘルパーT細胞に示す。一般に「抗原提示細胞」と言うときは、クラスⅡを恒常的に発現して外来抗原を取り込み、処理し、ヘルパーT細胞を活性化できる、いわゆるプロフェッショナル抗原提示細胞のことを指すんだ。
医学生医学生
CBTの勉強では、樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つと覚えました。選択肢の中だと樹状細胞が当てはまりますね。
ドクタードクター
正解。樹状細胞は皮膚の表皮にいるLangerhans細胞をはじめ、粘膜や各臓器に広く分布していて、枝のような突起で抗原を捕まえる。取り込んだ抗原を分解してMHCクラスⅡに載せ、成熟しながらリンパ管を通って所属リンパ節へ移動する。そこでCD80やCD86といった共刺激分子を強く出して、まだ抗原に出会っていないナイーブT細胞を活性化するんだ。
医学生医学生
ナイーブT細胞を起こせるのは樹状細胞だけ、というのがポイントでしょうか。
ドクタードクター
そう、それが「最強の抗原提示細胞」と呼ばれる理由だね。T細胞の活性化には、抗原ペプチドとMHCの複合体をTCRが認識するシグナルと、CD80/CD86とCD28が結合する共刺激シグナルの2つが必要で、初回の免疫応答でこの両方を十分に揃えられるのが樹状細胞なんだ。では、ほかの選択肢も見ていこう。T細胞はどうかな。
医学生医学生
T細胞は抗原提示を受ける側ですよね。名前が出てくるので一瞬引っかかりそうになりました。
ドクタードクター
そう、T細胞は提示された抗原を認識して活性化される側で、抗原を取り込んで処理し、提示する役割は担わない。血小板はどうだろう。
医学生医学生
血小板は巨核球の細胞質がちぎれた無核の断片で、一次止血の担当ですね。核がないのでMHCクラスⅠすら発現していなかったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。赤血球と血小板はMHCクラスⅠを発現しない例外として押さえておこう。当然、抗原を処理してクラスⅡに載せる機能もない。次は顆粒球の2つだ。
医学生医学生
好中球は貪食がすごく得意なので、取り込んだものを見せることもできそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
それがこの問題の一番の落とし穴だね。好中球は細菌や真菌を活発に貪食・殺菌する自然免疫の主役だけれど、通常はMHCクラスⅡを発現していないから、取り込んだ抗原をヘルパーT細胞に提示することはしない。「貪食能がある=抗原提示能がある」ではないんだ。好酸球も同じで、寄生虫防御やアレルギーに関わる細胞であり、炎症環境下でクラスⅡを発現しうるという報告はあるものの、抗原提示細胞には分類されない。
医学生医学生
ということは、条件は「取り込む」「分解する」「クラスⅡに載せて共刺激とともに示す」の3つが揃うこと、ですね。B細胞は貪食というより、B細胞受容体で特定の抗原をつかんで取り込むんでしたっけ。
ドクタードクター
その理解で完璧だよ。B細胞は膜型免疫グロブリンで抗原を結合して取り込み、ヘルパーT細胞に提示する。その見返りにT細胞の助けを受けて、形質細胞への分化やクラススイッチが進むんだ。マクロファージは主に、すでに活性化されたエフェクターT細胞に抗原を提示し、IFN-γを受け取って殺菌能を高める。肝臓のKupffer細胞、肺胞マクロファージ、中枢神経のミクログリアなど、組織ごとに名前が違うのも覚えておこう。
医学生医学生
病理実習で、肺胞マクロファージが炭粉を貪食している像を見たのを思い出しました。同じ「食べる細胞」でも役割の重心が違うんですね。
ドクタードクター
いい結びつけ方だね。臨床的な話もしておくと、樹状細胞は外来抗原をMHCクラスⅠにも載せてCD8陽性T細胞に示す交差提示ができる。これがウイルス感染や腫瘍に対する細胞傷害性T細胞の誘導に重要で、がんワクチンや樹状細胞を使った免疫療法の研究の土台になっている。また、皮膚のLangerhans細胞は接触皮膚炎の感作にも関わるし、移植の拒絶反応ではHLAの違いを提示することが引き金になる。抗原提示の理解は、アレルギー、移植、腫瘍免疫と臨床のあちこちにつながっていくんだ。

まとめ

抗原提示とは、取り込んだ抗原を分解してできたペプチドをMHC(HLA)分子に載せてT細胞に示すことで、一般に抗原提示細胞とはMHCクラスⅡを恒常的に発現しヘルパーT細胞を活性化できる樹状細胞・マクロファージ・B細胞の3つを指します。なかでも樹状細胞は最も強力で、所属リンパ節へ移動して共刺激分子とともに抗原を示し、ナイーブT細胞を活性化して獲得免疫を始動させます。T細胞は提示を受ける側、血小板は無核の細胞断片、好中球や好酸球は貪食や殺傷を担う顆粒球であり、「貪食能があるから抗原提示能がある」とは限らない点に注意が必要です。MHCクラスⅠはCD8陽性T細胞、クラスⅡはCD4陽性T細胞という対応も合わせて押さえておくと、感染症、アレルギー、移植、腫瘍免疫の理解の土台になります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

「抗原提示能」をもつ細胞、すなわち抗原提示細胞(antigen-presenting cell:APC)を選ぶ問題である。

抗原提示とは

T細胞は、抗原をそのままの形では認識できない。T細胞受容体(TCR)が認識するのは、抗原が細胞内で分解されてできた短いペプチドが、主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC、ヒトでは HLA)分子に載せられて細胞表面に示されたものである。これを「抗原提示」という。 ・MHCクラスⅠ:ほぼすべての有核細胞が発現し、細胞内で作られたタンパク質(ウイルス抗原や腫瘍抗原など)のペプチドを CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)に示す。 ・MHCクラスⅡ:限られた細胞のみが発現し、細胞外から取り込んだ抗原のペプチドを CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)に示す。 一般に「抗原提示細胞」「抗原提示能をもつ細胞」というときは、MHCクラスⅡを恒常的に発現し、外来抗原を取り込んで処理し、ヘルパーT細胞を活性化できる細胞(プロフェッショナル抗原提示細胞)を指す。代表は樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つである。

正解への道筋

選択肢のうち、プロフェッショナル抗原提示細胞に該当するのは樹状細胞だけである。樹状細胞は抗原提示細胞の中でも最も強力で、まだ抗原に出会っていないナイーブT細胞を活性化できる唯一の細胞とされる。したがって正解は e である。

選択肢考察

  1. ×a.  T細胞

    T細胞は抗原提示を「受ける」側の細胞である。T細胞表面の T細胞受容体(TCR)が、抗原提示細胞上の「抗原ペプチド-MHC複合体」を認識し、さらに CD80/CD86 と CD28 の結合などの共刺激シグナルを受けることで活性化される。CD4陽性T細胞は MHCクラスⅡ、CD8陽性T細胞は MHCクラスⅠに提示された抗原を認識する。T細胞は抗原を取り込んで処理し提示する役割は担わないため、抗原提示細胞には含まれない。

  2. ×b.  血小板

    血小板は骨髄の巨核球の細胞質がちぎれてできた無核の細胞断片であり、血管損傷部位で粘着・凝集して一次止血を担う。核をもたず、抗原を処理して MHCクラスⅡに載せて提示する機能はないため、抗原提示能をもたない。

  3. ×c.  好酸球

    好酸球は寄生虫(特に蠕虫)に対する防御やアレルギー反応(気管支喘息など)に関わる顆粒球である。主要塩基性タンパク(MBP)などの細胞傷害性顆粒タンパクを放出して寄生虫を攻撃する。炎症環境下で MHCクラスⅡを発現しうるとの報告はあるが、恒常的に抗原提示を担う細胞ではなく、抗原提示細胞には分類されない。

  4. ×d.  好中球

    好中球は細菌や真菌を活発に貪食・殺菌する、自然免疫の主役となる顆粒球である。貪食能は高いが、通常は MHCクラスⅡ分子を細胞表面に発現しておらず、取り込んだ抗原をヘルパーT細胞に提示する機能はもたない。「貪食能がある=抗原提示能がある」ではない点に注意する。

  5. ○e.  樹状細胞

    樹状細胞は皮膚(表皮の Langerhans 細胞など)、粘膜、各臓器に広く分布し、樹木の枝のような突起をもつ細胞である。組織中で病原体や異物を貪食・飲作用で取り込み、細胞内で分解して抗原ペプチドをつくり、MHCクラスⅡ分子に結合させて細胞表面に提示する。抗原を取り込んだ樹状細胞は成熟しながらリンパ管を通って所属リンパ節へ移動し、共刺激分子(CD80/CD86)を強く発現してナイーブT細胞を活性化する。さらに外来抗原を MHCクラスⅠにも載せて CD8陽性T細胞に示す交差提示(クロスプレゼンテーション)も行える。獲得免疫を始動させる最も強力な抗原提示細胞である。

プロフェッショナル抗原提示細胞の共通機能

① 細胞表面に MHCクラスⅡ分子を発現している ② 抗原を細胞内に取り込み、分解してペプチド断片(抗原ペプチド)をつくる ③ 抗原ペプチドを MHCクラスⅡ分子に結合させて細胞表面に提示し、共刺激分子とともにヘルパーT細胞を活性化する

代表的な抗原提示細胞と特徴

・樹状細胞:最も強力。ナイーブT細胞を活性化(初回の免疫応答を開始)する。 ・マクロファージ:貪食能が高い。主に既に活性化されたエフェクターT細胞に抗原を提示し、そのT細胞から IFN-γ などを受けて殺菌能が高まる。肝の Kupffer 細胞、肺胞マクロファージ、中枢神経のミクログリアなど組織ごとに名称がある。 ・B細胞:B細胞受容体(膜型免疫グロブリン)で特定の抗原を結合して取り込み、ヘルパーT細胞に提示する。その見返りにT細胞の助けを受け、形質細胞への分化やクラススイッチが進む。

MHCクラスⅠとクラスⅡの比較

・発現細胞:クラスⅠはほぼすべての有核細胞(赤血球・血小板は発現しない)、クラスⅡは主に抗原提示細胞 ・提示する抗原:クラスⅠは細胞内で合成されたタンパク質由来、クラスⅡは細胞外から取り込んだタンパク質由来 ・認識するT細胞:クラスⅠは CD8陽性T細胞、クラスⅡは CD4陽性T細胞 ・ヒトでの遺伝子座:クラスⅠは HLA-A・B・C、クラスⅡは HLA-DR・DQ・DP

POINT

・抗原提示細胞(MHCクラスⅡを発現)=樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つ。 ・樹状細胞は最も強力な抗原提示細胞で、ナイーブT細胞を活性化できる。 ・好中球は貪食能が高いが抗原提示能はもたない。 ・T細胞は抗原提示を受けて活性化される側である。 ・MHCクラスⅠ→CD8陽性T細胞、MHCクラスⅡ→CD4陽性T細胞。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。