StudyMed医師国家試験

「隔離」はどこまで許されるか―感染症法の類型で読み解く入院勧告

第113回医師国家試験 F問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第19問

感染症法に基づく入院勧告の対象となるのはどれか。

  1. a.麻疹
  2. b.破傷風
  3. c.B型肝炎
  4. d.鳥インフルエンザ(H5N1)
  5. e.後天性免疫不全症候群〈AIDS〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は感染症法の知識問題だ。ポイントは「入院勧告という措置が、どの類型の感染症に認められているか」と「各疾患がどの類型に属するか」の2段階で考えること。まず、入院勧告とはそもそもどういう措置だと思う?
医学生医学生
公衆衛生学の講義で習いました。患者さんに入院を勧めて、従わなければ強制的に入院させることもできる措置ですよね。
ドクタードクター
その通り。勧告に従わない場合は入院措置に進める。つまり患者さんの身体の自由を制限する、行政がとれる中でも最も強い措置の一つなんだ。だからこそ、どんな感染症にでも使えるわけではない。
医学生医学生
感染力が強くて重症になりやすい、危険度の高い類型に限られるということですか。
ドクタードクター
そう。具体的には1類感染症、2類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症が対象で、指定感染症も政令で指定されれば準用される。3類以下では入院勧告は行われない。ここをまず押さえよう。
医学生医学生
じゃあ、選択肢の中で1類か2類に入るものを探せばいいんですね。麻疹は感染力がとても強いので、上の類型かなと思ったんですが……。
ドクタードクター
そこが典型的なひっかけだね。麻疹は5類感染症の全数把握対象なんだ。ただし集団発生を早く把握するため、診断したら直ちに保健所に届け出る必要がある。届出の急ぎ具合と入院勧告の有無は別問題だと整理しておこう。
医学生医学生
CBTの勉強で「麻疹・風疹は直ちに届出」と覚えたので、上の類型だと勘違いしていました。
ドクタードクター
よくある混同だよ。次に破傷風はどうかな。
医学生医学生
小児科の実習で破傷風トキソイドの話を聞きました。芽胞が傷口から入る病気なので、人から人へはうつりませんよね。
ドクタードクター
そう、だから隔離目的の入院勧告をする意味がない。破傷風も5類の全数把握だ。もちろん治療のための入院は必要になるけれど、それは法的な勧告ではなく医学的な判断による入院だね。B型肝炎は?
医学生医学生
血液や体液を介する感染なので、日常の接触ではうつらない。これも隔離は不要そうです。
ドクタードクター
その通り。B型肝炎は「ウイルス性肝炎(A型・E型を除く)」として5類の全数把握で、届出対象は急性肝炎だけ。キャリアや慢性肝炎は届出対象外だ。AIDSも同じ考え方で、感染経路は性的接触、血液、母子感染に限られ、空気や飛沫ではうつらないから5類の全数把握になっている。
医学生医学生
そうなると残るのは鳥インフルエンザ(H5N1)ですね。
ドクタードクター
正解。H5N1はヒトでの致命率が高く、ヒトからヒトへの感染能を獲得すればパンデミックにつながるおそれがある。そのため2類感染症に分類され、入院勧告の対象になる。注意したいのは、2類の鳥インフルエンザはH5N1とH7N9だけで、それ以外の亜型は4類だということ。ヒトの季節性インフルエンザは5類の定点把握だ。
医学生医学生
同じ「インフルエンザ」でも、型によって類型がバラバラなんですね。2類にはほかに何が入っていましたっけ。
ドクタードクター
ポリオ、結核、ジフテリア、SARS、MERS、それに鳥インフルエンザH5N1・H7N9。臨床で一番出会うのは結核だね。排菌している肺結核の患者さんには入院勧告が出て、結核病床のある医療機関に入院してもらうことになる。
医学生医学生
呼吸器内科の実習で、喀痰塗抹陽性の患者さんが結核病棟に移るのを見ました。あれが入院勧告だったんですね。3類はどう違うんでしょう。
ドクタードクター
コレラや細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症などの3類は入院勧告はなく、飲食物を扱う仕事などへの就業制限が中心になる。4類は動物や飲食物を介する感染症で、媒介動物の駆除や消毒といった対物措置が中心だ。「類型ごとにどんな措置がとれるか」を表にして整理すると、知識がつながりやすいよ。

まとめ

感染症法では、感染症を危険度に応じて1〜5類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類し、類型ごとにとれる措置を定めています。身体の自由を制限する入院勧告は、1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症に限られ、3類以下では行われません。鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9)は2類感染症で入院勧告の対象ですが、それ以外の亜型は4類です。麻疹、破傷風、急性B型肝炎、AIDSはいずれも5類の全数把握で、麻疹は直ちに届出が必要でも入院勧告の対象ではない点に注意が必要です。「疾患の類型」と「類型ごとの措置」をセットで覚えることが、届出や患者対応など臨床現場での正しい判断につながります。

解答・解説

正解はdです

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)は、感染症を感染力や重篤性などの危険度に応じて1類〜5類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類し、分類ごとに行政がとれる措置を定めている。 入院勧告(従わない場合は入院措置)は、患者の身体の自由を制限する最も強い措置の一つであるため、危険度が特に高い分類に限って認められている。具体的には、1類感染症、2類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症が対象であり、指定感染症も政令で指定されれば準用される。3類感染症以下では入院勧告は行われない。 したがって本問は、各選択肢の疾患が感染症法上どの類型に属するかを思い出せれば解ける。麻疹、破傷風、B型肝炎(急性ウイルス性肝炎として)、AIDSはいずれも5類感染症(全数把握)であり、2類感染症に属するのは鳥インフルエンザ(H5N1)のみである。

選択肢考察

  1. ×a.  麻疹

    麻疹は5類感染症の全数把握対象であり、入院勧告の対象ではない。ただし感染力が極めて強く、集団発生の早期把握が重要なため、診断した医師は直ちに(24時間以内に)保健所へ届け出る必要がある。届出の迅速さと入院勧告の有無は別の問題である点に注意する。

  2. ×b.  破傷風

    破傷風は5類感染症(全数把握、診断後7日以内に届出)である。破傷風菌(Clostridium tetani)の芽胞が創傷から侵入して発症し、ヒトからヒトへは感染しないため、隔離目的の入院勧告を行う意味がない。治療のための入院は必要になるが、それは法的な勧告ではなく医学的判断による。

  3. ×c.  B型肝炎

    B型肝炎は、ウイルス性肝炎(E型肝炎およびA型肝炎を除く)として5類感染症の全数把握対象であり、入院勧告の対象ではない。届出対象は急性肝炎であり、無症候性キャリアや慢性肝炎は届出対象外である。主な感染経路は血液・体液であり、日常の接触では感染しない。

  4. ○d.  鳥インフルエンザ(H5N1)

    鳥インフルエンザ(H5N1)は2類感染症に分類される。ヒトでの致命率が高く、ヒト-ヒト感染能を獲得すれば大流行(パンデミック)につながるおそれがあるためである。2類感染症は入院勧告の対象であり、本選択肢が正解となる。同じく鳥インフルエンザ(H7N9)も2類感染症であるが、それ以外の亜型の鳥インフルエンザは4類感染症であり入院勧告の対象とならない。

  5. ×e.  後天性免疫不全症候群〈AIDS〉

    AIDS(およびHIV感染症)は5類感染症の全数把握対象(診断後7日以内に届出)であり、入院勧告の対象ではない。HIVの感染経路は性的接触、血液、母子感染に限られ、日常生活での接触や空気・飛沫では感染しないため、隔離の必要はない。

感染症法の類型と主な措置

1類感染症:エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱。入院勧告(原則として第一種感染症指定医療機関)、就業制限、消毒、交通制限などが可能。 2類感染症:急性灰白髄炎(ポリオ)、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)。入院勧告、就業制限、消毒などが可能。 3類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス。入院勧告はないが、特定業務(飲食物を扱う業務など)への就業制限がある。 4類感染症:動物や飲食物を介して感染する疾患(E型肝炎、A型肝炎、狂犬病、マラリア、デング熱、つつが虫病、日本脳炎、上記以外の鳥インフルエンザなど)。媒介動物の駆除や消毒などの対物措置が中心。 5類感染症:国が発生動向調査を行い情報提供する疾患。全数把握(麻疹、風疹、破傷風、AIDS/HIV感染症、梅毒、急性ウイルス性肝炎〈A型・E型を除く〉など)と定点把握(季節性インフルエンザ、感染性胃腸炎など)がある。 新型インフルエンザ等感染症:新型インフルエンザ、再興型インフルエンザなど。入院勧告の対象となる。 新感染症:未知の重篤な感染症。1類感染症に準じた措置がとられる。

届出の時期

1〜4類感染症、新型インフルエンザ等感染症は診断後直ちに届出。5類感染症の全数把握疾患は原則7日以内だが、麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに届出とされている。

2類の鳥インフルエンザ

H5N1とH7N9のみが2類であり、それ以外の亜型は4類である。ヒトの季節性インフルエンザは5類(定点把握)である。

POINT

・入院勧告の対象は1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症(指定感染症は政令で準用)。3類以下は対象外。 ・2類感染症:ポリオ、結核、ジフテリア、SARS、MERS、鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9)。 ・麻疹、破傷風、急性B型肝炎、AIDSはいずれも5類感染症(全数把握)。 ・麻疹は5類だが届出は直ちに行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。