B細胞は独りでは目覚めない―ヘルパーT細胞との「握手」が抗体を生む
第119回医師国家試験 F問題 第16問
国試問題にチャレンジ
B細胞の活性化に直接関与する細胞はどれか。
- a.NK細胞
- b.ヘルパーT細胞
- c.マクロファージ
- d.制御性T細胞〈Treg〉
- e.細胞傷害性T細胞〈CTL〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
タンパク質などのT細胞依存性抗原に対するB細胞の活性化には、ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)との直接の相互作用が必要です。B細胞は取り込んだ抗原をMHCクラスⅡ上に提示し、ヘルパーT細胞はCD40リガンドとCD40の結合およびIL-4・IL-21などのサイトカインによってB細胞の増殖、形質細胞への分化、クラススイッチや親和性成熟を促します。マクロファージは主にT細胞への抗原提示、NK細胞は自然免疫での細胞傷害やADCC、細胞傷害性T細胞は細胞性免疫の実行役、制御性T細胞は免疫抑制を担い、いずれもB細胞を直接活性化する細胞ではありません。CD40リガンド異常によるX連鎖高IgM症候群や、多糖体抗原に対する結合型ワクチンの設計は、この仕組みを理解することで自然に説明でき、免疫不全症やワクチン、アレルギーの理解の土台となります。
解答・解説
正解はbです
B細胞が抗原に反応して増殖・分化し、抗体を産生するまでの過程(液性免疫)で、どの細胞が直接はたらきかけるのかを問う問題である。 B細胞は、細胞表面のB細胞受容体(BCR:膜結合型の免疫グロブリン)で抗原を認識する。タンパク質抗原の大部分(T細胞依存性抗原)では、抗原がBCRに結合しただけではB細胞は十分に活性化しない。B細胞は結合した抗原を細胞内に取り込んで分解し、その断片(ペプチド)をMHCクラスⅡ分子に載せて細胞表面に提示する。これを、すでに樹状細胞から同じ抗原の提示を受けて活性化したヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)がT細胞受容体(TCR)で認識する。 このとき、ヘルパーT細胞上のCD40リガンド(CD40L、CD154)がB細胞上のCD40に結合する「接触による刺激」と、ヘルパーT細胞が分泌するIL-4・IL-21などのサイトカインによる刺激が加わることで、B細胞は増殖し、抗体産生細胞である形質細胞やメモリーB細胞へ分化する。リンパ節の胚中心では、ろ胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)がこの役割の中心を担い、クラススイッチ(IgMからIgG・IgA・IgEへの切り替え)や親和性成熟を促す。 つまり、B細胞の活性化に細胞どうしの直接の相互作用で関与するのはヘルパーT細胞である。他の選択肢は、自然免疫の担い手、細胞性免疫の実行役、免疫応答の抑制役など、それぞれ別の役割をもつ細胞である。
選択肢考察
- ×a. NK細胞
誤り。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は自然免疫を担う大型の顆粒リンパ球である。抗原特異的な受容体や事前の感作を必要とせず、MHCクラスⅠの発現が低下したウイルス感染細胞や腫瘍細胞を認識し、パーフォリンやグランザイムを放出して傷害する。また、Fc受容体(CD16)を介して抗体が結合した標的細胞を破壊する抗体依存性細胞傷害(ADCC)も行う。インターフェロンγ(IFN-γ)の産生などで免疫応答に影響を与えるが、B細胞を直接活性化する細胞ではない。
- ○b. ヘルパーT細胞
正しい。ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)は、B細胞がMHCクラスⅡ分子上に提示した抗原ペプチドをTCRで認識し、CD40LとB細胞上のCD40の結合を通じて直接B細胞を刺激する。さらにIL-4、IL-21などのサイトカインを分泌して、B細胞の増殖、形質細胞への分化、クラススイッチ、親和性成熟、メモリーB細胞の形成を促す。CD40Lの遺伝子異常(X連鎖高IgM症候群)ではクラススイッチが起こらず、IgG・IgA・IgEが著しく低下することからも、ヘルパーT細胞との直接の相互作用がB細胞の成熟した抗体産生に不可欠であることがわかる。ヘルパーT細胞はこのほか、細胞傷害性T細胞やマクロファージの活性化も助ける。
- ×c. マクロファージ
誤り。マクロファージは単球に由来する食細胞で、細菌などの異物や死細胞を貪食・分解するほか、TNF-α、IL-1、IL-6などのサイトカインを分泌して炎症を起こし、MHCクラスⅡを介してヘルパーT細胞に抗原を提示する。マクロファージが働きかけるのは主にT細胞であり、ヘルパーT細胞の活性化を通じて間接的に液性免疫に関わるにとどまる。B細胞の活性化に直接関与する細胞ではない。なお、ナイーブT細胞を最初に活性化する抗原提示細胞として最も強力なのは樹状細胞である。
- ×d. 制御性T細胞〈Treg〉
誤り。制御性T細胞(Treg)はCD4陽性・CD25陽性で、転写因子FOXP3を発現するT細胞である。IL-10やTGF-βなどの抑制性サイトカインの産生や、CTLA-4を介した抗原提示細胞の機能抑制などにより、過剰な免疫応答や自己に対する反応を抑え、免疫寛容の維持に働く。FOXP3の遺伝子異常ではTregが機能せず、重い自己免疫疾患(IPEX症候群)を生じる。免疫応答を「抑える」細胞であり、B細胞を活性化する細胞ではない。
- ×e. 細胞傷害性T細胞〈CTL〉
誤り。細胞傷害性T細胞(CTL)はCD8陽性T細胞が分化したもので、細胞性免疫の実行役である。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞がMHCクラスⅠ分子上に提示した抗原ペプチドを自らのTCRで認識し、パーフォリン・グランザイムの放出やFasリガンドを介したアポトーシス誘導によって標的細胞を破壊する。その分化・活性化にはヘルパーT細胞の補助(IL-2の供給など)が必要だが、CTL自身がB細胞を活性化することはない。
獲得免疫の2つの系統
・液性免疫:B細胞が形質細胞に分化して抗体を産生し、抗体が病原体や毒素を中和・オプソニン化する。細胞外の病原体に有効。 ・細胞性免疫:CTLが感染細胞・腫瘍細胞を直接破壊し、Th1細胞がマクロファージを活性化する。細胞内寄生病原体やウイルスに有効。
T細胞依存性のB細胞活性化の流れ
1. 樹状細胞が抗原を取り込み、リンパ節でナイーブCD4陽性T細胞に提示してヘルパーT細胞へ分化させる。 2. B細胞がBCRで同じ抗原を捕らえて取り込み、MHCクラスⅡ上にペプチドを提示する。 3. ヘルパーT細胞がこれを認識し、CD40L-CD40結合とサイトカイン(IL-4、IL-21など)でB細胞を刺激する。 4. B細胞は増殖し、胚中心でクラススイッチ・親和性成熟を経て、形質細胞(抗体産生)とメモリーB細胞へ分化する。
T細胞非依存性抗原
細菌の莢膜多糖体のように繰り返し構造をもつ抗原は、BCRを多数架橋することでヘルパーT細胞の補助なしにB細胞を活性化できる。ただし主にIgMが産生され、クラススイッチやメモリー形成は起こりにくい。2歳未満の乳幼児はこの反応が弱いため、肺炎球菌やHibのワクチンでは多糖体をキャリアタンパク質に結合させた結合型ワクチンを用い、T細胞依存性の反応を引き出している。
ヘルパーT細胞のサブセット(主なもの)
・Th1:IFN-γを産生し、マクロファージやCTLを活性化(細胞内寄生菌に対する防御)。 ・Th2:IL-4・IL-5・IL-13を産生し、IgE産生や好酸球を介した反応を促す(寄生虫防御、アレルギー)。 ・Th17:IL-17を産生し、好中球の動員を促す(細胞外細菌・真菌防御)。 ・Tfh(ろ胞ヘルパーT細胞):IL-21を産生し、胚中心でB細胞の分化・抗体産生を助ける。 ・Treg:FOXP3陽性で、免疫応答を抑制する。
POINT
・T細胞依存性抗原に対するB細胞の活性化には、ヘルパーT細胞(CD4陽性)との直接の相互作用が必要。 ・B細胞はMHCクラスⅡで抗原を提示し、ヘルパーT細胞はCD40L-CD40結合とサイトカイン(IL-4、IL-21など)でB細胞を活性化する。 ・CD40L異常(X連鎖高IgM症候群)ではクラススイッチが障害される。 ・NK細胞は自然免疫、CTLは細胞性免疫の実行役、Tregは免疫抑制、マクロファージは貪食とT細胞への抗原提示が主な役割。
