StudyMed医師国家試験

B細胞は独りでは目覚めない―ヘルパーT細胞との「握手」が抗体を生む

第119回医師国家試験 F問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第119回 F問題 第16問

B細胞の活性化に直接関与する細胞はどれか。

  1. a.NK細胞
  2. b.ヘルパーT細胞
  3. c.マクロファージ
  4. d.制御性T細胞〈Treg〉
  5. e.細胞傷害性T細胞〈CTL〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、B細胞が抗原に反応して抗体を作るまでの過程で、どの細胞が直接はたらきかけるのかを問う問題だ。キーワードは「直接」。間接的に液性免疫を支える細胞はいくつもあるけれど、B細胞と細胞どうしで接して活性化させる細胞はどれか、を考えよう。
医学生医学生
B細胞は自分のB細胞受容体で抗原を認識できるので、抗原がくっつけばそれだけで活性化するのかと思っていました。
ドクタードクター
そこがよくある誤解なんだ。タンパク質抗原の大部分はT細胞依存性抗原で、BCRに抗原が結合しただけではB細胞は十分に活性化しない。B細胞は結合した抗原を取り込んで分解し、その断片をMHCクラスⅡ分子に載せて細胞表面に提示する。
医学生医学生
MHCクラスⅡは抗原提示細胞が持つ分子ですよね。B細胞も抗原提示をするんですか。
ドクタードクター
そう、B細胞はプロの抗原提示細胞の一つなんだ。その提示を、すでに樹状細胞から同じ抗原の提示を受けて活性化したヘルパーT細胞、つまりCD4陽性T細胞がTCRで認識する。ここでヘルパーT細胞上のCD40リガンドがB細胞上のCD40に結合し、さらにIL-4やIL-21などのサイトカインが加わることで、B細胞は増殖し、形質細胞やメモリーB細胞へと分化するんだ。
医学生医学生
なるほど、接触による刺激とサイトカインの二本立てなんですね。だからヘルパーT細胞が正解になる。
ドクタードクター
その通り。リンパ節の胚中心では、ろ胞ヘルパーT細胞、いわゆるTfh細胞がこの役割の中心を担い、IgMからIgGやIgA、IgEへのクラススイッチや親和性成熟を促している。では他の選択肢も確認しよう。マクロファージはどうかな。
医学生医学生
マクロファージも抗原提示細胞なので、B細胞に何か関わりそうな気がします。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。マクロファージは貪食やTNF-α、IL-1、IL-6などによる炎症の惹起に加え、MHCクラスⅡでヘルパーT細胞に抗原を提示する。でも働きかける相手は主にT細胞で、液性免疫にはヘルパーT細胞を介して間接的に関わるにとどまる。ちなみにナイーブT細胞を最初に活性化する最も強力な抗原提示細胞は樹状細胞だ。
医学生医学生
NK細胞は自然免疫の細胞で、抗体が結合した細胞を壊すADCCに関わると免疫学の講義で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。NK細胞は事前の感作なしに、MHCクラスⅠの発現が低下したウイルス感染細胞や腫瘍細胞をパーフォリンやグランザイムで傷害する。ADCCは抗体を「使う」側であって、B細胞を活性化して抗体を「作らせる」側ではないんだ。
医学生医学生
細胞傷害性T細胞もT細胞なので、ヘルパーT細胞と同じように助けられそうに思えますが。
ドクタードクター
CTLはCD8陽性T細胞が分化したもので、MHCクラスⅠ上の抗原を自分のTCRで認識し、感染細胞や腫瘍細胞を破壊する細胞性免疫の実行役だ。むしろCTL自身がヘルパーT細胞からIL-2などの補助を受ける側で、B細胞を活性化することはない。
医学生医学生
制御性T細胞はCD4陽性ですが、名前の通りブレーキ役ですよね。
ドクタードクター
そう。TregはCD4陽性・CD25陽性で転写因子FOXP3を発現し、IL-10やTGF-β、CTLA-4を介して過剰な免疫応答や自己反応を抑える。FOXP3の異常ではIPEX症候群という重い自己免疫疾患が起こる。免疫を抑える細胞だから、B細胞の活性化役ではないね。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、易感染性の男の子の症例にX連鎖高IgM症候群という病名が出てきたのを思い出しました。あれはこの仕組みと関係していますか。
ドクタードクター
まさに直結しているよ。X連鎖高IgM症候群はCD40リガンドの遺伝子異常で、ヘルパーT細胞とB細胞の「握手」が成り立たない。その結果クラススイッチが起こらず、IgMは正常か高値なのにIgG、IgA、IgEが著しく低下する。ヘルパーT細胞との直接の相互作用が成熟した抗体産生に不可欠だという、何よりの証拠なんだ。
医学生医学生
逆に、ヘルパーT細胞なしで活性化できる抗原はないんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。細菌の莢膜多糖体のように繰り返し構造をもつ抗原は、BCRを多数架橋してT細胞の補助なしにB細胞を活性化できる。これがT細胞非依存性抗原だ。ただし主にIgMが作られ、クラススイッチやメモリー形成は起こりにくい。2歳未満の乳幼児はこの反応が弱いので、肺炎球菌やHibのワクチンでは多糖体をキャリアタンパク質に結合させた結合型ワクチンにして、T細胞依存性の反応を引き出しているんだ。
医学生医学生
ワクチンの設計にまでこの仕組みが応用されているんですね。CBTの勉強では丸暗記していたので、つながって腑に落ちました。
ドクタードクター
免疫は「誰が誰に、どの分子で合図を送るか」で理解すると忘れにくい。ヘルパーT細胞にはTh1、Th2、Th17、Tfhなどのサブセットがあり、それぞれマクロファージ活性化、IgE産生やアレルギー、好中球動員、胚中心でのB細胞支援と役割が違う。病態や治療薬を学ぶときにも、この地図が土台になるよ。

まとめ

タンパク質などのT細胞依存性抗原に対するB細胞の活性化には、ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)との直接の相互作用が必要です。B細胞は取り込んだ抗原をMHCクラスⅡ上に提示し、ヘルパーT細胞はCD40リガンドとCD40の結合およびIL-4・IL-21などのサイトカインによってB細胞の増殖、形質細胞への分化、クラススイッチや親和性成熟を促します。マクロファージは主にT細胞への抗原提示、NK細胞は自然免疫での細胞傷害やADCC、細胞傷害性T細胞は細胞性免疫の実行役、制御性T細胞は免疫抑制を担い、いずれもB細胞を直接活性化する細胞ではありません。CD40リガンド異常によるX連鎖高IgM症候群や、多糖体抗原に対する結合型ワクチンの設計は、この仕組みを理解することで自然に説明でき、免疫不全症やワクチン、アレルギーの理解の土台となります。

解答・解説

正解はbです

B細胞が抗原に反応して増殖・分化し、抗体を産生するまでの過程(液性免疫)で、どの細胞が直接はたらきかけるのかを問う問題である。 B細胞は、細胞表面のB細胞受容体(BCR:膜結合型の免疫グロブリン)で抗原を認識する。タンパク質抗原の大部分(T細胞依存性抗原)では、抗原がBCRに結合しただけではB細胞は十分に活性化しない。B細胞は結合した抗原を細胞内に取り込んで分解し、その断片(ペプチド)をMHCクラスⅡ分子に載せて細胞表面に提示する。これを、すでに樹状細胞から同じ抗原の提示を受けて活性化したヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)がT細胞受容体(TCR)で認識する。 このとき、ヘルパーT細胞上のCD40リガンド(CD40L、CD154)がB細胞上のCD40に結合する「接触による刺激」と、ヘルパーT細胞が分泌するIL-4・IL-21などのサイトカインによる刺激が加わることで、B細胞は増殖し、抗体産生細胞である形質細胞やメモリーB細胞へ分化する。リンパ節の胚中心では、ろ胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)がこの役割の中心を担い、クラススイッチ(IgMからIgG・IgA・IgEへの切り替え)や親和性成熟を促す。 つまり、B細胞の活性化に細胞どうしの直接の相互作用で関与するのはヘルパーT細胞である。他の選択肢は、自然免疫の担い手、細胞性免疫の実行役、免疫応答の抑制役など、それぞれ別の役割をもつ細胞である。

選択肢考察

  1. ×a.  NK細胞

    誤り。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は自然免疫を担う大型の顆粒リンパ球である。抗原特異的な受容体や事前の感作を必要とせず、MHCクラスⅠの発現が低下したウイルス感染細胞や腫瘍細胞を認識し、パーフォリンやグランザイムを放出して傷害する。また、Fc受容体(CD16)を介して抗体が結合した標的細胞を破壊する抗体依存性細胞傷害(ADCC)も行う。インターフェロンγ(IFN-γ)の産生などで免疫応答に影響を与えるが、B細胞を直接活性化する細胞ではない。

  2. ○b.  ヘルパーT細胞

    正しい。ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)は、B細胞がMHCクラスⅡ分子上に提示した抗原ペプチドをTCRで認識し、CD40LとB細胞上のCD40の結合を通じて直接B細胞を刺激する。さらにIL-4、IL-21などのサイトカインを分泌して、B細胞の増殖、形質細胞への分化、クラススイッチ、親和性成熟、メモリーB細胞の形成を促す。CD40Lの遺伝子異常(X連鎖高IgM症候群)ではクラススイッチが起こらず、IgG・IgA・IgEが著しく低下することからも、ヘルパーT細胞との直接の相互作用がB細胞の成熟した抗体産生に不可欠であることがわかる。ヘルパーT細胞はこのほか、細胞傷害性T細胞やマクロファージの活性化も助ける。

  3. ×c.  マクロファージ

    誤り。マクロファージは単球に由来する食細胞で、細菌などの異物や死細胞を貪食・分解するほか、TNF-α、IL-1、IL-6などのサイトカインを分泌して炎症を起こし、MHCクラスⅡを介してヘルパーT細胞に抗原を提示する。マクロファージが働きかけるのは主にT細胞であり、ヘルパーT細胞の活性化を通じて間接的に液性免疫に関わるにとどまる。B細胞の活性化に直接関与する細胞ではない。なお、ナイーブT細胞を最初に活性化する抗原提示細胞として最も強力なのは樹状細胞である。

  4. ×d.  制御性T細胞〈Treg〉

    誤り。制御性T細胞(Treg)はCD4陽性・CD25陽性で、転写因子FOXP3を発現するT細胞である。IL-10やTGF-βなどの抑制性サイトカインの産生や、CTLA-4を介した抗原提示細胞の機能抑制などにより、過剰な免疫応答や自己に対する反応を抑え、免疫寛容の維持に働く。FOXP3の遺伝子異常ではTregが機能せず、重い自己免疫疾患(IPEX症候群)を生じる。免疫応答を「抑える」細胞であり、B細胞を活性化する細胞ではない。

  5. ×e.  細胞傷害性T細胞〈CTL〉

    誤り。細胞傷害性T細胞(CTL)はCD8陽性T細胞が分化したもので、細胞性免疫の実行役である。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞がMHCクラスⅠ分子上に提示した抗原ペプチドを自らのTCRで認識し、パーフォリン・グランザイムの放出やFasリガンドを介したアポトーシス誘導によって標的細胞を破壊する。その分化・活性化にはヘルパーT細胞の補助(IL-2の供給など)が必要だが、CTL自身がB細胞を活性化することはない。

獲得免疫の2つの系統

・液性免疫:B細胞が形質細胞に分化して抗体を産生し、抗体が病原体や毒素を中和・オプソニン化する。細胞外の病原体に有効。 ・細胞性免疫:CTLが感染細胞・腫瘍細胞を直接破壊し、Th1細胞がマクロファージを活性化する。細胞内寄生病原体やウイルスに有効。

T細胞依存性のB細胞活性化の流れ

1. 樹状細胞が抗原を取り込み、リンパ節でナイーブCD4陽性T細胞に提示してヘルパーT細胞へ分化させる。 2. B細胞がBCRで同じ抗原を捕らえて取り込み、MHCクラスⅡ上にペプチドを提示する。 3. ヘルパーT細胞がこれを認識し、CD40L-CD40結合とサイトカイン(IL-4、IL-21など)でB細胞を刺激する。 4. B細胞は増殖し、胚中心でクラススイッチ・親和性成熟を経て、形質細胞(抗体産生)とメモリーB細胞へ分化する。

T細胞非依存性抗原

細菌の莢膜多糖体のように繰り返し構造をもつ抗原は、BCRを多数架橋することでヘルパーT細胞の補助なしにB細胞を活性化できる。ただし主にIgMが産生され、クラススイッチやメモリー形成は起こりにくい。2歳未満の乳幼児はこの反応が弱いため、肺炎球菌やHibのワクチンでは多糖体をキャリアタンパク質に結合させた結合型ワクチンを用い、T細胞依存性の反応を引き出している。

ヘルパーT細胞のサブセット(主なもの)

・Th1:IFN-γを産生し、マクロファージやCTLを活性化(細胞内寄生菌に対する防御)。 ・Th2:IL-4・IL-5・IL-13を産生し、IgE産生や好酸球を介した反応を促す(寄生虫防御、アレルギー)。 ・Th17:IL-17を産生し、好中球の動員を促す(細胞外細菌・真菌防御)。 ・Tfh(ろ胞ヘルパーT細胞):IL-21を産生し、胚中心でB細胞の分化・抗体産生を助ける。 ・Treg:FOXP3陽性で、免疫応答を抑制する。

POINT

・T細胞依存性抗原に対するB細胞の活性化には、ヘルパーT細胞(CD4陽性)との直接の相互作用が必要。 ・B細胞はMHCクラスⅡで抗原を提示し、ヘルパーT細胞はCD40L-CD40結合とサイトカイン(IL-4、IL-21など)でB細胞を活性化する。 ・CD40L異常(X連鎖高IgM症候群)ではクラススイッチが障害される。 ・NK細胞は自然免疫、CTLは細胞性免疫の実行役、Tregは免疫抑制、マクロファージは貪食とT細胞への抗原提示が主な役割。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。