StudyMed医師国家試験

新薬が世に出るまでの最後の関門―第Ⅲ相試験の位置づけを押さえる

第113回医師国家試験 E問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第113回 E問題 第3問

医薬品の有効性・安全性評価のうち,製造販売前の最終段階で実施するのはどれか。

  1. a.第Ⅰ相試験
  2. b.第Ⅱ相試験
  3. c.第Ⅲ相試験
  4. d.第Ⅳ相試験
  5. e.非臨床試験

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、新薬が開発されてから販売され、さらに販売後も評価が続くまでの流れを問う問題だ。「製造販売前の最終段階」という言葉がポイント。開発の各段階を時系列に並べられれば迷わないよ。
医学生医学生
薬理学の講義で治験の相の話を聞きましたが、第Ⅰ相から第Ⅳ相まであって、どれが販売前の最後なのか一瞬迷います。
ドクタードクター
では順番に整理しよう。まず候補物質を探す基礎研究があり、次に動物や培養細胞を使う非臨床試験、そしてヒトを対象にした臨床試験、つまり治験を第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相の順に行う。その後PMDAの審査を経て厚生労働大臣が承認し、販売後に第Ⅳ相が続く。
医学生医学生
ということは、承認申請の直前に行うのは第Ⅲ相試験ですね。
ドクタードクター
その通り。第Ⅲ相は、第Ⅱ相で決めた用法・用量を用いて、多数の患者で有効性と安全性を検証する段階だ。標準薬やプラセボを対照にしたランダム化比較試験、多くは二重盲検で行われ、その成績が承認申請の主要な根拠になる。
医学生医学生
第Ⅳ相は数字が一番大きいので、最後の段階と勘違いしそうでした。
ドクタードクター
よくある誤解だね。第Ⅳ相は承認を得た後、つまり製造販売後に行う試験や調査だ。治験は対象人数も投与期間も限られ、高齢者や小児、妊婦、合併症のある患者は除外されやすい。だから、まれな副作用や長期使用での安全性は承認時点では十分わからない。それを補うのが第Ⅳ相なんだ。
医学生医学生
製造販売後なので、今回の「製造販売前」には当てはまらないわけですね。第Ⅰ相は健康な人に投与する試験でしたよね。
ドクタードクター
そう。第Ⅰ相はヒトに初めて投与する段階で、主に少数の健康成人を対象に、安全性・忍容性と薬物動態を調べる。少量から段階的に増やしていくのが基本だ。ただし抗がん薬のように毒性が強い薬は、健康人ではなく患者さんを対象に行う。
医学生医学生
臨床実習で腫瘍内科を回ったとき、第Ⅰ相試験に参加している患者さんがいて不思議に思っていました。そういう理由だったんですね。
ドクタードクター
いい経験をしたね。続いて第Ⅱ相は、比較的少数の患者を対象に有効性と安全性を探索的に評価し、適切な用法・用量を決める段階だ。用量反応関係を調べ、その結果をもとに第Ⅲ相のデザインが組み立てられる。
医学生医学生
探索してから検証する、という流れなんですね。非臨床試験はヒトに投与する前なので、一番最初の段階ですか。
ドクタードクター
その通り。非臨床試験では薬効薬理、安全性薬理、薬物動態、毒性などを動物や細胞で調べる。治験に入る前の段階だから最終段階ではない。つまり時系列は、非臨床試験、第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相、承認、第Ⅳ相の順だ。
医学生医学生
各段階を目的で覚えると、第Ⅰ相が安全性と薬物動態、第Ⅱ相が用量の探索、第Ⅲ相が多数例での検証、第Ⅳ相が市販後の監視、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。ここで関連する基準の略語も押さえておこう。非臨床の安全性試験はGLP、治験はGCP、製造管理・品質管理はGMP、製造販売後の調査・試験はGPSP、製造販売後の安全管理はGVPだ。治験ではGCPに基づき、文書によるインフォームド・コンセントと治験審査委員会の審査が必須になる。
医学生医学生
販売後の安全対策には、ほかにどんな仕組みがありますか。
ドクタードクター
販売開始から6か月間行う市販直後調査では、医療機関に適正使用を繰り返し促し、重篤な副作用情報を迅速に集める。新有効成分なら原則8年後に再審査があり、医療関係者からPMDAへの副作用報告制度もある。臨床で新薬を使うときは、承認されたからといって安全性がすべてわかっているわけではないと意識し、気になる副作用があれば報告することが大切なんだ。
医学生医学生
処方する側も、市販後の安全性評価の一部を担っているということですね。
ドクタードクター
その通り。現場の医師の報告が、まれな副作用の発見につながった例は少なくない。開発の流れを知っておくと、新薬の添付文書やエビデンスを読むときの視点も変わってくるよ。

まとめ

医薬品開発は、動物や細胞を用いる非臨床試験から始まり、ヒトを対象とする治験を第Ⅰ相(主に健康成人で安全性・薬物動態)、第Ⅱ相(少数患者で有効性の探索と用法・用量の設定)、第Ⅲ相(多数患者で有効性・安全性の検証)の順に行い、承認を経て製造販売後に第Ⅳ相へ進みます。製造販売前の最終段階は第Ⅲ相試験で、ランダム化比較試験などの成績が承認申請の主要な根拠となります。第Ⅳ相は承認後に、治験では捉えきれないまれな副作用や長期の安全性を評価するもので、市販直後調査や再審査制度、副作用報告制度とともに市販後の安全対策を担います。GLP・GCP・GPSPなどの基準も含めて開発の流れを理解しておくことは、新薬のエビデンスを正しく読み、安全に処方するための土台になります。

解答・解説

正解はcです

新薬が開発されてから販売に至り、さらに販売後も評価が続けられるまでの流れ(医薬品開発のプロセス)を問う問題である。 新薬の開発は、おおまかに次の順で進む。 1. 基礎研究:候補となる物質を探索・創製する。 2. 非臨床試験:動物や培養細胞などを用いて、薬理作用、薬物動態、毒性(一般毒性、遺伝毒性、生殖毒性、がん原性など)を調べる。 3. 臨床試験(治験):ヒトを対象に第Ⅰ相→第Ⅱ相→第Ⅲ相の順に行う。 4. 承認申請・審査:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が審査し、厚生労働大臣が製造販売を承認する。 5. 製造販売後の調査・試験(第Ⅳ相):実際の診療で広く使われる中で有効性・安全性の評価を続ける。 「製造販売前の最終段階」とは、承認申請の直前に行われる臨床試験のことであり、多数の患者を対象に有効性と安全性を検証する第Ⅲ相試験がこれにあたる。第Ⅰ相は最初の段階、第Ⅱ相は中間段階、第Ⅳ相は製造販売後、非臨床試験はヒトでの試験より前の段階であり、いずれも該当しない。

選択肢考察

  1. ×a.  第Ⅰ相試験

    誤り。第Ⅰ相試験は、ヒトに初めて候補薬を投与する段階であり、主に少数の健康成人ボランティアを対象として、安全性・忍容性(どの程度の量まで問題なく投与できるか)と薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)を調べる。少量から段階的に増量して評価する。抗がん薬のように毒性が強く健康人に投与できない薬剤では、患者を対象として行う。治験の最初の段階であり、最終段階ではない。

  2. ×b.  第Ⅱ相試験

    誤り。第Ⅱ相試験は、比較的少数の患者を対象に、有効性と安全性を探索的に評価し、適切な用法・用量を決める段階である(用量反応関係を調べる試験を含む)。ここで得られた結果をもとに、第Ⅲ相試験の用量やエンドポイント(評価項目)が設計される。治験の中間段階であり、最終段階ではない。

  3. ○c.  第Ⅲ相試験

    正しい。第Ⅲ相試験は、第Ⅱ相で決定した用法・用量を用いて、より多数の患者を対象に有効性と安全性を検証する段階である。既存の標準薬やプラセボを対照としたランダム化比較試験(多くは二重盲検)として行われ、新薬の優越性や非劣性を示すことが目的となる。ここで得られた成績が承認申請の主要な根拠となるため、製造販売前の最終段階の試験にあたる。

  4. ×d.  第Ⅳ相試験

    誤り。第Ⅳ相試験は製造販売の承認を得た後に行われる試験・調査である。治験では対象患者数や投与期間、対象集団(高齢者、小児、妊婦、合併症のある患者などは除外されやすい)が限られるため、まれな副作用や長期使用時の安全性、実際の診療下での有効性は承認時点では十分にわかっていない。それを補うために、製造販売後臨床試験や使用成績調査などが行われる。製造販売前ではない。

  5. ×e.  非臨床試験

    誤り。非臨床試験は、ヒトに投与する前に動物や培養細胞などを用いて行う試験で、薬効薬理試験、安全性薬理試験、薬物動態試験、毒性試験などが含まれる。GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)に従って実施される。臨床試験(治験)を始める前の段階であり、製造販売前の最終段階ではない。

臨床試験の各相の整理

・第Ⅰ相(臨床薬理試験):主に健康成人、少数。安全性・忍容性、薬物動態。 ・第Ⅱ相(探索的試験):少数〜中等数の患者。有効性・安全性の探索、用法・用量の設定。 ・第Ⅲ相(検証的試験):多数の患者。ランダム化比較試験などで有効性・安全性を検証。承認申請の主要根拠。 ・第Ⅳ相(製造販売後臨床試験など):承認後。長期・大規模での安全性、まれな副作用、実地診療での有効性、新たな効能の探索など。 ・第Ⅰ〜Ⅲ相のうち、承認申請に用いる成績を集める目的で行うものを「治験」と呼ぶ。治験はGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)を遵守して行い、被験者からの文書によるインフォームド・コンセントと治験審査委員会(IRB)の審査が必須である。

製造販売後の安全対策

・市販直後調査:販売開始後6か月間、医療機関に適正使用を繰り返し促し、重篤な副作用情報を迅速に収集する。 ・使用成績調査・製造販売後データベース調査など:GPSP(医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準)に従って行う。 ・再審査制度:新薬は承認後一定期間(新有効成分では原則8年)を経て、有効性・安全性を再確認する。 ・副作用報告制度:製薬企業や医療関係者から副作用・感染症の情報をPMDAに報告する。

関連する基準の略語

・GLP:非臨床試験(安全性試験)の実施基準 ・GCP:臨床試験(治験)の実施基準 ・GMP:医薬品の製造管理・品質管理の基準 ・GPSP:製造販売後の調査・試験の実施基準 ・GVP:製造販売後の安全管理の基準

POINT

・医薬品開発の流れ:非臨床試験→第Ⅰ相→第Ⅱ相→第Ⅲ相→承認申請・審査→製造販売→第Ⅳ相。 ・第Ⅰ相は健康成人で安全性・薬物動態、第Ⅱ相は少数患者で用法・用量の探索、第Ⅲ相は多数患者で有効性・安全性の検証。 ・製造販売前の最終段階は第Ⅲ相試験であり、承認申請の主要な根拠となる。 ・第Ⅳ相は製造販売後に、まれな副作用や長期の安全性を評価する。 ・非臨床試験は動物・細胞を用いた、ヒトでの試験より前の段階。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。