新薬が世に出るまでの最後の関門―第Ⅲ相試験の位置づけを押さえる
第113回医師国家試験 E問題 第3問
国試問題にチャレンジ
医薬品の有効性・安全性評価のうち,製造販売前の最終段階で実施するのはどれか。
- a.第Ⅰ相試験
- b.第Ⅱ相試験
- c.第Ⅲ相試験
- d.第Ⅳ相試験
- e.非臨床試験
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
医薬品開発は、動物や細胞を用いる非臨床試験から始まり、ヒトを対象とする治験を第Ⅰ相(主に健康成人で安全性・薬物動態)、第Ⅱ相(少数患者で有効性の探索と用法・用量の設定)、第Ⅲ相(多数患者で有効性・安全性の検証)の順に行い、承認を経て製造販売後に第Ⅳ相へ進みます。製造販売前の最終段階は第Ⅲ相試験で、ランダム化比較試験などの成績が承認申請の主要な根拠となります。第Ⅳ相は承認後に、治験では捉えきれないまれな副作用や長期の安全性を評価するもので、市販直後調査や再審査制度、副作用報告制度とともに市販後の安全対策を担います。GLP・GCP・GPSPなどの基準も含めて開発の流れを理解しておくことは、新薬のエビデンスを正しく読み、安全に処方するための土台になります。
解答・解説
正解はcです
新薬が開発されてから販売に至り、さらに販売後も評価が続けられるまでの流れ(医薬品開発のプロセス)を問う問題である。 新薬の開発は、おおまかに次の順で進む。 1. 基礎研究:候補となる物質を探索・創製する。 2. 非臨床試験:動物や培養細胞などを用いて、薬理作用、薬物動態、毒性(一般毒性、遺伝毒性、生殖毒性、がん原性など)を調べる。 3. 臨床試験(治験):ヒトを対象に第Ⅰ相→第Ⅱ相→第Ⅲ相の順に行う。 4. 承認申請・審査:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が審査し、厚生労働大臣が製造販売を承認する。 5. 製造販売後の調査・試験(第Ⅳ相):実際の診療で広く使われる中で有効性・安全性の評価を続ける。 「製造販売前の最終段階」とは、承認申請の直前に行われる臨床試験のことであり、多数の患者を対象に有効性と安全性を検証する第Ⅲ相試験がこれにあたる。第Ⅰ相は最初の段階、第Ⅱ相は中間段階、第Ⅳ相は製造販売後、非臨床試験はヒトでの試験より前の段階であり、いずれも該当しない。
選択肢考察
- ×a. 第Ⅰ相試験
誤り。第Ⅰ相試験は、ヒトに初めて候補薬を投与する段階であり、主に少数の健康成人ボランティアを対象として、安全性・忍容性(どの程度の量まで問題なく投与できるか)と薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)を調べる。少量から段階的に増量して評価する。抗がん薬のように毒性が強く健康人に投与できない薬剤では、患者を対象として行う。治験の最初の段階であり、最終段階ではない。
- ×b. 第Ⅱ相試験
誤り。第Ⅱ相試験は、比較的少数の患者を対象に、有効性と安全性を探索的に評価し、適切な用法・用量を決める段階である(用量反応関係を調べる試験を含む)。ここで得られた結果をもとに、第Ⅲ相試験の用量やエンドポイント(評価項目)が設計される。治験の中間段階であり、最終段階ではない。
- ○c. 第Ⅲ相試験
正しい。第Ⅲ相試験は、第Ⅱ相で決定した用法・用量を用いて、より多数の患者を対象に有効性と安全性を検証する段階である。既存の標準薬やプラセボを対照としたランダム化比較試験(多くは二重盲検)として行われ、新薬の優越性や非劣性を示すことが目的となる。ここで得られた成績が承認申請の主要な根拠となるため、製造販売前の最終段階の試験にあたる。
- ×d. 第Ⅳ相試験
誤り。第Ⅳ相試験は製造販売の承認を得た後に行われる試験・調査である。治験では対象患者数や投与期間、対象集団(高齢者、小児、妊婦、合併症のある患者などは除外されやすい)が限られるため、まれな副作用や長期使用時の安全性、実際の診療下での有効性は承認時点では十分にわかっていない。それを補うために、製造販売後臨床試験や使用成績調査などが行われる。製造販売前ではない。
- ×e. 非臨床試験
誤り。非臨床試験は、ヒトに投与する前に動物や培養細胞などを用いて行う試験で、薬効薬理試験、安全性薬理試験、薬物動態試験、毒性試験などが含まれる。GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)に従って実施される。臨床試験(治験)を始める前の段階であり、製造販売前の最終段階ではない。
臨床試験の各相の整理
・第Ⅰ相(臨床薬理試験):主に健康成人、少数。安全性・忍容性、薬物動態。 ・第Ⅱ相(探索的試験):少数〜中等数の患者。有効性・安全性の探索、用法・用量の設定。 ・第Ⅲ相(検証的試験):多数の患者。ランダム化比較試験などで有効性・安全性を検証。承認申請の主要根拠。 ・第Ⅳ相(製造販売後臨床試験など):承認後。長期・大規模での安全性、まれな副作用、実地診療での有効性、新たな効能の探索など。 ・第Ⅰ〜Ⅲ相のうち、承認申請に用いる成績を集める目的で行うものを「治験」と呼ぶ。治験はGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)を遵守して行い、被験者からの文書によるインフォームド・コンセントと治験審査委員会(IRB)の審査が必須である。
製造販売後の安全対策
・市販直後調査:販売開始後6か月間、医療機関に適正使用を繰り返し促し、重篤な副作用情報を迅速に収集する。 ・使用成績調査・製造販売後データベース調査など:GPSP(医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準)に従って行う。 ・再審査制度:新薬は承認後一定期間(新有効成分では原則8年)を経て、有効性・安全性を再確認する。 ・副作用報告制度:製薬企業や医療関係者から副作用・感染症の情報をPMDAに報告する。
関連する基準の略語
・GLP:非臨床試験(安全性試験)の実施基準 ・GCP:臨床試験(治験)の実施基準 ・GMP:医薬品の製造管理・品質管理の基準 ・GPSP:製造販売後の調査・試験の実施基準 ・GVP:製造販売後の安全管理の基準
POINT
・医薬品開発の流れ:非臨床試験→第Ⅰ相→第Ⅱ相→第Ⅲ相→承認申請・審査→製造販売→第Ⅳ相。 ・第Ⅰ相は健康成人で安全性・薬物動態、第Ⅱ相は少数患者で用法・用量の探索、第Ⅲ相は多数患者で有効性・安全性の検証。 ・製造販売前の最終段階は第Ⅲ相試験であり、承認申請の主要な根拠となる。 ・第Ⅳ相は製造販売後に、まれな副作用や長期の安全性を評価する。 ・非臨床試験は動物・細胞を用いた、ヒトでの試験より前の段階。
