熱と頻脈は数えない―qSOFAの3項目で敗血症を素早く拾い上げる
第113回医師国家試験 E問題 第12問
国試問題にチャレンジ
感染症が疑われている患者のバイタルサインを示す。 意識レベルGCS 15。体温39.2℃。脈拍112/分,整。血圧92/50mmHg。呼吸数26/分。 quick SOFA〈Sequential Organ Failure Assessment〉スコアはどれか。
- a.0点
- b.1点
- c.2点
- d.3点
- e.4点
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
qSOFAは、感染症が疑われる患者の中から敗血症の可能性が高い人をベッドサイドで拾い上げるための簡易スコアで、呼吸数22/分以上、意識の変容(GCS 15点未満)、収縮期血圧100mmHg以下の3項目を各1点で評価し、2点以上を陽性とします。体温や脈拍はSIRSの項目でありqSOFAには含まれず、本問ではGCS 15で0点、呼吸数26/分で1点、収縮期血圧92mmHgで1点の合計2点となります。Sepsis-3では敗血症の診断はSOFAスコアのベースラインから2点以上の上昇で行い、qSOFAはあくまでスクリーニングの位置づけです。また、qSOFAは感度が低く陰性でも敗血症を否定できないため、SSCG 2021では単独でのスクリーニング使用は推奨されていません。各スコアの項目と役割を正確に区別しておくことが、救急や病棟で敗血症を見逃さないための基盤になります。
解答・解説
正解はcです
qSOFAの3項目
quick SOFA(qSOFA)は、感染症が疑われる患者のうち臓器障害を伴い予後不良となりうる者、すなわち敗血症の可能性が高い者を、ベッドサイドで素早く拾い上げるための簡易スコアである。2016年に発表された敗血症の新定義(Sepsis-3)とともに提唱された。採血などの検査を必要とせず、次の3項目だけで評価する。 ①呼吸数 22回/分以上 ②意識の変容(GCS〈Glasgow Coma Scale〉15点未満) ③収縮期血圧 100mmHg以下 各項目を満たせば1点ずつ加算し、合計は0〜3点となる。2点以上を陽性とし、敗血症を疑って臓器障害の評価(SOFAスコアの算出)や集中治療を含む早期介入を検討する。
本問の当てはめ
・意識レベル GCS 15:満点で意識変容はない → 0点 ・呼吸数 26/分:22/分以上 → 1点 ・血圧 92/50mmHg:収縮期血圧は92mmHgで100mmHg以下 → 1点 合計2点となる。 なお、体温(39.2℃)や脈拍(112/分)はqSOFAの評価項目に含まれない。これらは従来の全身性炎症反応症候群(SIRS)の基準に含まれる項目であり、qSOFAと混同しないことが本問のポイントである。また、最高点は3点なので「4点」になることはありえない。
選択肢考察
- ×a. 0点
誤り。呼吸数26/分(22/分以上)と収縮期血圧92mmHg(100mmHg以下)の2項目が基準を満たしており、0点にはならない。
- ×b. 1点
誤り。呼吸数と収縮期血圧の2項目が該当する。どちらか一方を見落とすと1点と誤答しやすい。特に収縮期血圧の基準は「90mmHg未満」ではなく「100mmHg以下」である点に注意する。
- ○c. 2点
正しい。GCS 15で意識変容はなく0点、呼吸数26/分は22/分以上で1点、収縮期血圧92mmHgは100mmHg以下で1点であり、合計2点となる。qSOFA陽性(2点以上)であり、敗血症を疑って臓器障害の評価と早期治療を進めるべき状態である。
- ×d. 3点
誤り。3点となるには意識変容(GCS 15未満)も必要だが、本例はGCS 15で意識は清明である。発熱や頻脈を項目に含めて加点するのは誤りで、それらはSIRS基準の項目である。
- ×e. 4点
誤り。qSOFAは3項目で構成され、最高点は3点である。4点になることはない。
敗血症の定義(Sepsis-3, 2016年)
敗血症は「感染症に対する生体反応の調節不全により、生命を脅かす臓器障害が生じた状態」と定義される。臓器障害は、SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアが感染前のベースラインから2点以上急上昇したことで判定する。つまり、敗血症の診断そのものはqSOFAではなくSOFAスコアで行う。qSOFAはあくまで拾い上げ(スクリーニング)のための道具である。
SOFAスコア
呼吸(PaO2/FIO2比)、凝固(血小板数)、肝(ビリルビン値)、循環(平均動脈圧や血管作動薬の使用量)、中枢神経(GCS)、腎(クレアチニン値または尿量)の6臓器系を、それぞれ0〜4点で評価する。血液検査や動脈血ガス分析が必要なため、救急外来や一般病棟ではすぐには算出しにくい。そこで検査不要のqSOFAが考案された。
敗血症性ショック
敗血症のうち、十分な輸液を行っても平均動脈圧65mmHg以上を保つために血管収縮薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超える状態をいう。死亡率が大きく上昇する。
SIRS基準との違い
旧定義(Sepsis-1/2)では、感染症に加えて全身性炎症反応症候群(SIRS:体温>38℃または<36℃、心拍数>90/分、呼吸数>20/分またはPaCO2<32Torr、白血球数>12,000/μLまたは<4,000/μLまたは未熟顆粒球>10%のうち2項目以上)を満たせば敗血症とされていた。しかしSIRSは特異度が低く、軽症の感染症でも容易に満たしてしまうため、Sepsis-3で臓器障害を重視した定義へ改められた。本問の患者は発熱と頻脈があり、SIRS基準では体温・心拍数・呼吸数の3項目を満たすが、qSOFAの計算には体温と心拍数は使わない。
qSOFAの位置づけ
qSOFAは特異度は比較的高いものの感度が低く、qSOFA陰性でも敗血症を否定できない。このため国際ガイドライン(SSCG 2021)では、qSOFAを単独のスクリーニング手段として用いることは推奨しないとされた(SIRS、NEWS、MEWSなどと比べて)。臨床ではqSOFAが陰性でも、疑わしければSOFAスコアや乳酸値の評価を行う。
POINT
・qSOFAの3項目:呼吸数≧22/分、意識変容(GCS<15)、収縮期血圧≦100mmHg。各1点で0〜3点。 ・2点以上で陽性 → 敗血症を疑い、SOFAスコアで臓器障害を評価する。 ・体温・脈拍・白血球数はqSOFAに含まれない(SIRSの項目)。 ・敗血症の診断はSOFAスコアのベースラインから2点以上の上昇による(Sepsis-3)。 ・敗血症性ショック:輸液後も平均動脈圧65mmHg以上の維持に血管収縮薬を要し、かつ乳酸値>2mmol/L。
