「環境」はどこに入る?―ICFの2部門構成で読み解く生活機能と障害
第113回医師国家試験 C問題 第3問
国試問題にチャレンジ
国際生活機能分類〈ICF〉の「生活機能と障害」の構成要素に含まれないのはどれか。
- a.活動
- b.環境
- c.参加
- d.心身機能
- e.身体構造
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
国際生活機能分類〈ICF〉は2001年にWHOが採択した分類で、第1部門「生活機能と障害」(心身機能・身体構造、活動、参加)と第2部門「背景因子」(環境因子、個人因子)から構成されます。環境は背景因子に属するため、「生活機能と障害」の構成要素には含まれません。生活機能の各要素に問題が生じた状態はそれぞれ機能障害・活動制限・参加制約と表現され、環境因子は促進因子にも阻害因子にもなり得ます。ICIDHの一方向モデルから、プラス面を含む中立的な記述と双方向の相互作用モデルへと発展した点も重要です。ICFの構造を理解することは、リハビリテーションや介護の現場で、本人の生活全体と周囲の環境を含めて支援を考える基盤になります。
解答・解説
正解はbです
国際生活機能分類〈ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health〉は、2001年のWHO総会で採択された、人の生活機能と障害を記述するための国際的な分類である。それまでの国際障害分類〈ICIDH〉を改訂したものである。 ICFは全体を2つの部門に分けて整理している。 第1部門「生活機能と障害」:心身機能・身体構造、活動、参加 第2部門「背景因子」:環境因子、個人因子 つまり、本人の体や行動・社会との関わりそのものを表すのが「生活機能と障害」であり、それに影響を及ぼす周囲の条件や本人の特性を表すのが「背景因子」である。 本問は「含まれないもの」を問う形式である。選択肢のうち、活動・参加・心身機能・身体構造は第1部門の構成要素であり、環境(環境因子)だけが第2部門の「背景因子」に属する。したがって正解はbである。
選択肢考察
- ×a. 活動
活動(activity)とは、個人が課題や行為を遂行することを指し、歩行、食事、着替え、入浴、コミュニケーションなどの日常生活動作が典型例である。「生活機能と障害」の構成要素に含まれる。活動が困難になった状態は「活動制限」と表現される。
- ○b. 環境
環境(環境因子)は、人々が生活し人生を送る物理的・社会的環境や人々の社会的な態度を指す。具体的には、住居の段差や福祉用具などの物的環境、家族・介護者などの人的環境、医療・福祉サービスや制度などが含まれる。これは「生活機能と障害」ではなく、もう一方の部門である「背景因子」の構成要素である。したがって「生活機能と障害」に含まれないものとして、本問の正解となる。なお環境因子は、生活機能を高める方向に働く場合は「促進因子」、妨げる方向に働く場合は「阻害因子」と評価される。
- ×c. 参加
参加(participation)とは、生活・人生のさまざまな場面に関わることを指し、家庭内での役割、仕事、学校、地域活動、趣味やスポーツなどの社会生活がこれにあたる。「生活機能と障害」の構成要素に含まれる。参加が困難になった状態は「参加制約」と表現される。
- ×d. 心身機能
心身機能(body functions)とは、身体系の生理的機能のことで、精神機能などの心理的機能も含む。例として、視覚・聴覚、筋力、関節可動域、認知機能などがある。身体構造とあわせて「生活機能と障害」の構成要素に含まれる。
- ×e. 身体構造
身体構造(body structures)とは、器官、肢体およびその構成部分など、身体の解剖学的な部分を指す。心身機能とあわせて「生活機能と障害」の構成要素に含まれる。心身機能や身体構造に問題が生じた状態(著しい変異や喪失)は「機能障害(構造障害を含む)」と表現される。
ICFの構成(全体像)
第1部門 生活機能と障害 ・心身機能・身体構造 ← 問題が生じた状態:機能障害(構造障害を含む) ・活動 ← 問題が生じた状態:活動制限 ・参加 ← 問題が生じた状態:参加制約 第2部門 背景因子 ・環境因子(物的・人的・社会的環境) ・個人因子(年齢、性別、生活歴、価値観、ライフスタイルなど。多様性が大きいためICFでは分類項目を設けていない) これらに「健康状態(疾患・変調・傷害など)」を加えた要素が、互いに双方向の矢印で結ばれ影響し合うものとして図式化されている(相互作用モデル)。
ICIDHからICFへの変化
1980年にWHOが発表したICIDHは、「疾患・変調→機能障害→能力障害→社会的不利」という一方向の流れで障害を捉え、マイナス面の分類が中心であった。ICFでは、①障害だけでなく生活機能というプラス面を含めて中立的な用語で記述する、②各要素が双方向に影響し合うと考える、③環境因子などの背景因子を新たに加えた、という点が大きな変更点である。これにより、例えばバリアフリー化(環境因子の改善)によって参加が拡大する、といった考え方を整理しやすくなった。
ICFの意義
医療・介護・福祉の専門職だけでなく、本人や家族も含めて生活機能や障害の状況を共通の言葉で理解するための枠組みとして用いられ、リハビリテーションや介護の計画立案に活用されている。
POINT
・ICFは2001年にWHOが採択、ICIDHの改訂版。 ・「生活機能と障害」=心身機能・身体構造、活動、参加。 ・「背景因子」=環境因子、個人因子。 ・否定的側面は、機能障害・活動制限・参加制約と表現する。 ・各要素は双方向に影響し合う相互作用モデルである。
