StudyMed医師国家試験

「見る・聞く・知的・からだ・病気」―特別支援学校の5障害を整理する

第118回医師国家試験 C問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第10問

特別支援学校の対象となる障害はどれか。

  1. a.自閉症
  2. b.学習障害
  3. c.言語障害
  4. d.情緒障害
  5. e.知的障害

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は特別支援教育の制度を問う問題だ。障害のある子どもの学びの場には、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導、通常の学級での配慮といういくつかの段階がある。その中で「特別支援学校」の対象がどの障害かを、法律の規定に沿って考えよう。
医学生医学生
自閉症の子が特別支援学校に通っている話を聞いたことがあるので、自閉症も対象かと思いました。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだね。特別支援学校の対象は学校教育法第72条に定められていて、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)の5つに限られる。「見る・聞く・知的・からだ・病気」と覚えるといい。
医学生医学生
その5つの中に入っているのは、選択肢だと知的障害だけですね。
ドクタードクター
正解。知的障害は特別支援学校の対象5障害のひとつだ。では、自閉症の子が特別支援学校に通っているのはなぜだと思う?
医学生医学生
もしかして、知的障害を合併しているからでしょうか。
ドクタードクター
その通り。自閉スペクトラム症に一定以上の程度の知的障害を合併していれば、知的障害を理由に知的障害特別支援学校に就学することがある。あくまで対象になっているのは知的障害であって、自閉症そのものが規定されているわけではない。自閉症単独なら、小・中学校の自閉症・情緒障害特別支援学級や通級による指導で対応するんだ。
医学生医学生
情緒障害も同じ扱いですか。小児科実習で、選択性かん黙の子を診たことがあります。
ドクタードクター
いい例だね。情緒障害は、選択性かん黙のように情緒の現れ方の偏りを自分の意思でコントロールできず、学校生活に支障をきたす状態をいう。これも自閉症・情緒障害特別支援学級や通級の対象で、特別支援学校の対象ではない。
医学生医学生
言語障害はどうでしょう。耳鼻咽喉科を回ったとき、構音障害の子が「ことばの教室」に通っていると聞きました。
ドクタードクター
まさにそれが答えだ。構音障害や吃音などの言語障害は、小・中学校の言語障害特別支援学級や、通級による指導、いわゆる「ことばの教室」で対応する。特別支援学校の5障害には含まれない。
医学生医学生
学習障害は、知的な遅れがないのに読み書きや計算が特に苦手な状態でしたよね。
ドクタードクター
そう。全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するといった特定の能力に著しい困難を示す。通常の学級に在籍しながら週に一定時間だけ別の場で指導を受ける通級による指導の対象で、ADHDも同様だ。特別支援学校の対象ではないし、特別支援学級の障害種別にも含まれていない。
医学生医学生
逆に、知的障害は通級の対象になりますか。
ドクタードクター
いい質問だ。知的障害は通級による指導の対象外なんだ。特定の時間だけ別指導をするより、生活に結びついた内容を継続して学ぶ必要があるためとされている。つまり知的障害は特別支援学校か特別支援学級で学ぶ。障害ごとに、どの場が使えるかが違うことを押さえておこう。
医学生医学生
学校は5障害、学級と通級は言語障害や自閉症・情緒障害を含む、LDとADHDは通級、知的障害は通級なし、という整理ですね。
ドクタードクター
よくまとまった。もう少し発展知識を足しておこう。かつては盲学校・聾学校・養護学校に分かれていたが、2007年度から特別支援学校に一本化された。また、以前は一定の程度に該当すれば原則として特別支援学校に就学する仕組みだったが、2013年の学校教育法施行令改正で改められ、今は障害の状態、本人・保護者の意見、医学・心理学などの専門家の意見を踏まえて、市町村教育委員会が総合的に判断する。
医学生医学生
就学前の発達相談で、医師の意見書が求められる場面もありそうですね。
ドクタードクター
そうなんだ。小児科医や精神科医は、診断名だけでなく、その子にどんな支援の場が合うかを家族と一緒に考える役割を担う。制度を知っていると、保護者の不安に具体的に答えられるようになるよ。

まとめ

特別支援学校の対象は学校教育法第72条により、視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱(身体虚弱を含む)の5障害に限られ、選択肢の中では知的障害だけが該当します。言語障害、自閉症、情緒障害は小・中学校の特別支援学級や通級による指導で、学習障害やADHDは通級による指導で対応され、一方で知的障害は通級の対象外です。自閉症の子どもが特別支援学校に通うのは、合併する知的障害が理由である点に注意が必要です。2013年以降、就学先は本人・保護者や専門家の意見を踏まえて市町村教育委員会が総合的に決定しており、医師にも診断にとどまらず適切な学びの場を考える視点が求められます。

解答・解説

正解はeです

テーマ

障害のある子どもの教育(特別支援教育)は、障害の種類と程度に応じて「特別支援学校」「特別支援学級」「通級による指導」「通常の学級での配慮」という複数の場が用意されている。本問は、このうち特別支援学校がどの障害を対象としているかを問うものである。

考え方

特別支援学校の対象は学校教育法第72条に定められており、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱者(身体虚弱者を含む)の5つに限られる。覚え方としては「見る・聞く・知的・からだ(肢体)・病気」の5領域である。 一方、言語障害、自閉症、情緒障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)は、この5領域に含まれない。これらは小・中学校に置かれる特別支援学級や、通常の学級に在籍しながら一部の時間だけ別の場で指導を受ける通級による指導で対応される。 したがって選択肢のうち特別支援学校の対象として法令に規定されているのは知的障害のみであり、正解はeとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  自閉症

    誤り。自閉症(自閉スペクトラム症)は特別支援学校の対象5障害に含まれない。小・中学校の「自閉症・情緒障害特別支援学級」や、通級による指導の対象である。なお、自閉症に知的障害を合併し、その程度が一定以上であれば、知的障害を理由として知的障害特別支援学校に就学することはある。しかしそれは知的障害が対象となっているのであり、自閉症そのものが特別支援学校の対象障害として規定されているわけではない。

  2. ×b.  学習障害

    誤り。学習障害(LD:learning disabilities)は、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するといった能力のうち特定のものの習得や使用に著しい困難を示す状態である。通常の学級に在籍したまま、週に一定時間だけ特別な指導を受ける「通級による指導」の対象であり(平成18年度から対象に追加)、特別支援学校の対象ではない。

  3. ×c.  言語障害

    誤り。言語障害は、構音障害(発音が不明瞭)や吃音(話し言葉のリズムが滑らかでない)などにより、話し言葉によるコミュニケーションが円滑に進まない状態をいう。小・中学校の言語障害特別支援学級や、通級による指導(いわゆる「ことばの教室」)で対応され、特別支援学校の対象5障害には含まれない。

  4. ×d.  情緒障害

    誤り。情緒障害は、心理的要因による選択性かん黙などのように、情緒の現れ方が偏っていたり激しかったりする状態を自分の意思ではコントロールできず、学校生活や社会生活に支障をきたす状態をいう。自閉症・情緒障害特別支援学級や通級による指導の対象であり、特別支援学校の対象ではない。

  5. ○e.  知的障害

    正しい。知的障害は学校教育法第72条で定める特別支援学校の対象5障害(視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱〔身体虚弱を含む〕)の一つである。就学先は障害の程度に応じて決まり、学校教育法施行令第22条の3に定める程度(他人との意思疎通が困難で日常生活に頻繁に援助を要する程度など)に該当する場合は特別支援学校、それより軽い場合は小・中学校の知的障害特別支援学級が検討される。なお、知的障害は通級による指導の対象には含まれない。これは、知的障害では特定の時間だけ別指導をするよりも、生活に結びついた内容を継続的に学ぶ必要があるためとされる。

特別支援教育の場と対象

1. 特別支援学校(学校教育法第72条) 幼稚園・小学校・中学校・高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害による学習上・生活上の困難を克服し自立を図るための知識技能を授けることを目的とする学校である。対象は視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)の5障害で、それぞれ学校教育法施行令第22条の3に障害の程度が定められている。かつては盲学校・聾学校・養護学校に分かれていたが、2007年度(平成19年度)から特別支援学校に一本化された。 2. 特別支援学級(学校教育法第81条) 小・中学校などに置かれる少人数の学級である。対象は知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害である。 3. 通級による指導 通常の学級に在籍し、大部分の授業は通常の学級で受けながら、障害に応じた特別の指導を別の場(通級指導教室)で一部受ける形態である。対象は言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肢体不自由、病弱・身体虚弱である。知的障害は対象外である。2018年度からは高等学校でも実施されている。

整理

・特別支援学校のみ:該当なし(視覚障害・聴覚障害は特別支援学級では弱視・難聴として扱われる) ・学校+学級:知的障害(通級は対象外) ・学校+学級+通級:肢体不自由、病弱・身体虚弱、視覚(弱視)、聴覚(難聴) ・学級+通級(学校の対象外):言語障害、自閉症、情緒障害 ・通級のみ:学習障害、注意欠陥多動性障害

就学先の決定

2013年の学校教育法施行令改正により、施行令第22条の3に該当する子どもは原則として特別支援学校に就学するという仕組みが改められた。現在は、障害の状態、本人・保護者の意見、教育学・医学・心理学等の専門家の意見などを踏まえ、市町村教育委員会が総合的に判断して就学先を決定する。

POINT

・特別支援学校の対象は5障害:視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む) ・言語障害、自閉症、情緒障害は特別支援学級・通級による指導の対象で、特別支援学校の対象ではない ・学習障害(LD)とADHDは通級による指導の対象 ・知的障害は通級による指導の対象外

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。