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窓口負担は何で決まる?―後期高齢者医療制度のカギは「前年の所得」

第113回医師国家試験 C問題 第4問

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第113回 C問題 第4問

後期高齢者医療制度における自己負担割合を決定するために必要な情報はどれか。

  1. a.資産
  2. b.居住地
  3. c.要介護度
  4. d.家族構成
  5. e.前年の所得

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は後期高齢者医療制度の自己負担割合がテーマだ。医療機関の窓口で何割払うかを決める判定基準は何か、という制度の仕組みを問う問題だね。まずは制度の全体像から整理しよう。後期高齢者医療制度の対象者は誰かな。
医学生医学生
75歳以上の人ですよね。それと、65歳から74歳でも一定の障害がある人は加入できると習った気がします。
ドクタードクター
その通り。2008年に高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて創設された独立した医療保険制度で、運営主体は都道府県ごとに全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合だ。では、自己負担割合は何で決まると思う?
医学生医学生
高齢者だと介護が必要な人ほど医療費もかかるので、要介護度で決まるのかなと思いました。
ドクタードクター
直感としては分かるけれど、そこは違うんだ。要介護度は介護保険で使えるサービスの量、つまり区分支給限度基準額などを決める指標で、医療保険の負担割合とは関係しない。自己負担割合は本人の所得に応じて決まり、基準になるのは前年の所得なんだ。
医学生医学生
所得ですか。具体的には何割になるんでしょう。
ドクタードクター
現行制度では原則1割、一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得者は3割の3区分だ。2割の区分は2022年10月に新設されたもので、それ以前は1割と3割の2区分だった。区分の数は変わっても、所得で判定するという仕組みは同じだよ。
医学生医学生
所得というのは、具体的にどの数字を見るんですか。
ドクタードクター
住民税の課税所得や年金収入などをもとに判定する。現役並み所得者の目安は住民税課税所得145万円以上だ。ただし課税所得が基準以上でも、収入が単身で383万円未満、2人以上の世帯で520万円未満なら、申請により負担割合が下がる仕組みもある。そして負担割合は毎年8月に見直される。
医学生医学生
資産はどうでしょう。預貯金がたくさんある人は負担が増えそうなイメージがあります。
ドクタードクター
そこも混同しやすいところだ。後期高齢者医療の自己負担割合では、預貯金や不動産などの資産額は判定に使われない。介護保険施設での食費・居住費の軽減、いわゆる補足給付には預貯金の資産要件があるけれど、それは別の制度なんだ。
医学生医学生
運営が都道府県単位なら、住んでいる場所で負担割合が違うこともありますか。
ドクタードクター
保険料率は都道府県ごとに異なるけれど、窓口の自己負担割合は全国共通の所得基準で決まるから、居住地で変わることはない。保険料と窓口負担を分けて考えるのが大事だね。
医学生医学生
家族構成はどうですか。さっきの収入基準は世帯の人数で違うと言っていましたよね。
ドクタードクター
鋭い指摘だ。後期高齢者医療制度は個人単位で加入し、保険料も一人ひとりに課される。確かに収入で確認する段階では、同じ世帯の被保険者が1人か2人以上かで基準額が異なるけれど、判定の中心はあくまで所得・収入で、家族構成そのものが判定基準になるわけではないんだ。
医学生医学生
整理すると、資産も居住地も要介護度も家族構成も直接の基準ではなく、前年の所得で決まる、ということですね。
ドクタードクター
その通り。年齢ごとの負担割合もまとめて覚えておこう。義務教育就学前は2割、就学後から69歳までは3割、70〜74歳は2割で現役並み所得者は3割、75歳以上は原則1割だ。
医学生医学生
臨床実習で総合診療科を回ったとき、高齢の患者さんが「負担が2割になった」と話していました。所得による判定の結果なんですね。
ドクタードクター
そういう声は外来でよく聞くよ。もうひとつ、財源も押さえておこう。患者負担を除いた給付費のおおむね5割が公費、約4割が現役世代の保険からの後期高齢者支援金、約1割が高齢者自身の保険料だ。さらに高額療養費制度の月ごとの上限額も所得区分で決まるから、所得区分は医療費負担のさまざまな場面で関わってくる。
医学生医学生
患者さんの医療費の心配に応えるためにも、制度の基本は知っておくべきですね。
ドクタードクター
その通り。治療方針を考えるうえで、患者さんの経済的負担への配慮は欠かせない。医療ソーシャルワーカーと連携するときにも、こうした知識が役立つよ。

まとめ

後期高齢者医療制度は75歳以上(および一定の障害がある65〜74歳)を対象に、都道府県単位の広域連合が運営する独立した医療保険制度です。窓口の自己負担割合は前年の所得(住民税課税所得や年金収入など)をもとに判定され、原則1割、一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割となり、毎年8月に見直されます。資産、居住地、要介護度、家族構成はそれ自体が判定基準ではなく、要介護度は介護保険、資産要件は介護保険の補足給付というように、別制度の基準と混同しないことが重要です。高額療養費の上限額も所得区分で決まるため、所得に基づく負担の仕組みを理解しておくことは、患者さんの経済的負担に配慮した診療やソーシャルワーカーとの連携に役立ちます。

解答・解説

正解はeです

後期高齢者医療制度は、2008年4月に「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて創設された、75歳以上の者(および65〜74歳で一定の障害があると認定された者)が加入する独立した医療保険制度である。運営主体は、都道府県ごとにすべての市町村が加入して設置される後期高齢者医療広域連合である。 医療機関の窓口で支払う自己負担割合は、本人の所得に応じて決まる。現行制度では、原則1割、一定以上の所得がある者は2割、現役並み所得者は3割の3区分である。2割の区分は2022年10月に新設されたもので、それ以前は1割と3割の2区分であった。区分の数は変わったが、いずれの区分に該当するかを所得によって判定するという仕組みは変わっていない。 どの区分にあたるかは、住民税の課税所得や年金収入などの所得・収入をもとに判定される。基準とするのは前年の所得(1〜7月分の負担割合は前々年の所得)で、毎年8月に負担割合が見直される。したがって、自己負担割合の決定に必要な情報は「前年の所得」である。 資産額、居住地、要介護度、家族構成は、それ自体で負担割合を決める判定基準にはなっていない。

選択肢考察

  1. ×a.  資産

    後期高齢者医療制度の自己負担割合は、所得と収入をもとに判定され、預貯金や不動産などの資産額は判定に用いられない。なお、介護保険施設での食費・居住費の軽減(補足給付)では預貯金額などの資産要件があるが、それとは別の制度であり混同しないようにする。

  2. ×b.  居住地

    後期高齢者医療制度は都道府県単位の広域連合が運営しており、保険料率は都道府県ごとに異なる。しかし、窓口での自己負担割合は全国共通の所得基準で決まり、どこに住んでいるかによって変わることはない。

  3. ×c.  要介護度

    要介護度は、介護保険で利用できるサービスの量(区分支給限度基準額)などを決めるための指標であり、医療保険の自己負担割合とは関係しない。なお、65〜74歳の者が後期高齢者医療制度に加入できるのは、寝たきりなど一定の障害があると広域連合から認定された場合であり、これは要介護認定とは別の仕組みである。

  4. ×d.  家族構成

    後期高齢者医療制度は個人単位で加入し、保険料も被保険者一人ひとりに課される。自己負担割合も本人の所得をもとに判定され、家族構成そのものが判定基準になるわけではない。なお、所得基準に該当した後に年収で確認する段階では、同じ世帯に後期高齢者医療の被保険者が1人か2人以上かで収入の基準額が異なるが、判定の中心はあくまで所得・収入である。

  5. ○e.  前年の所得

    自己負担割合は、前年の所得(住民税の課税所得や年金収入など)をもとに判定される。現役世代と同等の所得がある者(現役並み所得者:住民税課税所得145万円以上が目安)は3割、一定以上の所得がある者は2割(2022年10月から)、それ以外は1割である。現役並み所得の判定では、課税所得が基準以上でも、収入が単身世帯で383万円未満、2人以上の世帯で520万円未満であれば申請により1割(2022年10月以降は2割または1割)となる。負担割合は毎年8月に前年の所得に基づいて見直される。

後期高齢者医療制度の概要

・根拠法:高齢者の医療の確保に関する法律(2008年4月施行。旧老人保健制度を改めたもの) ・対象:75歳以上の全員、および65〜74歳で一定の障害があると認定された者 ・運営主体:都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合(保険料の徴収や窓口業務は市町村が担う) ・加入単位:個人単位。保険料も被保険者一人ひとりが負担する(多くは年金から天引き) ・財源:患者負担を除いた給付費のおおむね5割を公費、約4割を現役世代の医療保険からの支援金(後期高齢者支援金)、約1割を高齢者自身の保険料でまかなう

医療保険の自己負担割合(年齢別の整理)

・義務教育就学前:2割 ・義務教育就学後〜69歳:3割 ・70〜74歳:2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上:1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割)

前期高齢者との違い

65〜74歳の前期高齢者は、独立した制度ではなく、それまで加入していた健康保険や国民健康保険にそのまま加入する。退職後の高齢者は国民健康保険に集中しやすいため、保険者間で前期高齢者の加入割合に応じた財政調整が行われている。

高額療養費

自己負担には、所得区分に応じて月ごとの上限額が設けられており(高額療養費制度)、ここでも所得区分が用いられる。

POINT

・後期高齢者医療制度:75歳以上(一定の障害がある65〜74歳を含む)、運営は都道府県単位の広域連合。 ・自己負担割合は前年の所得で決まる(資産・居住地・要介護度・家族構成は判定基準ではない)。 ・2022年10月以降は1割・2割・3割の3区分(一定以上所得者の2割区分が新設された。それ以前は1割・3割の2区分)。 ・負担割合は毎年8月に見直される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。