StudyMed医師国家試験

改善の陰で増えたもの―健やか親子21第1次評価が示した「思春期の心」の課題

第112回医師国家試験 F問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第112回 F問題 第32問

 健やか親子21(第1次)で設定した目標項目のうち,平成25年の最終評価で目標設定当時より悪化していると評価されたのはどれか。

  1. a.周産期死亡率
  2. b.10代の自殺率
  3. c.むし歯のない3歳児の割合
  4. d.育児期間中の両親の自宅での喫煙率
  5. e.生後6か月までにBCG接種を終了している者の割合

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、母子保健の国民運動計画「健やか親子21」の第1次計画が、最終評価でどんな結果になったかを問う問題だ。多くの指標が改善したなかで、数少ない「悪化」した項目は何か。そこに注目しよう。
医学生医学生
健やか親子21は公衆衛生の講義で名前だけ聞きました。そもそもどういう計画なんですか。
ドクタードクター
21世紀の母子保健の取り組みの方向性と目標を示した国民運動計画だ。第1次は2001年に始まって、当初は2010年までの予定だったけれど、次世代育成支援対策推進法の行動計画の期間に合わせて2014年まで延長された。その最終評価が2013年に行われ、各目標項目が策定時からどう変化したかが判定されたんだ。
医学生医学生
目標項目はいくつくらいあったんですか。
ドクタードクター
全部で74項目。そのうち約8割が「改善した」、つまり目標達成か、未達成でも改善と判定された。一方で「悪化した」と判定されたのはたった2項目だけ。それが「10代の自殺率」と「全出生数中の低出生体重児の割合」だ。
医学生医学生
2つだけなら覚えやすいですね。じゃあ正解は10代の自殺率ですか。
ドクタードクター
その通り。目標は「減少傾向へ」だったけれど、人口10万対で10〜14歳は1.1から1.3へ、15〜19歳は6.4から8.5へと、どちらの年齢区分でも上昇した。思春期の心の健康が引き続き大きな課題であることを示す結果で、第2次計画にも引き継がれているんだ。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、思春期外来に摂食障害や不登校の子が来ていたのを思い出しました。体の病気より心の問題が目立つ年代なんですね。
ドクタードクター
いい実感だね。では他の選択肢も確認しよう。周産期死亡率はどうだと思う?
医学生医学生
日本の周産期医療は世界トップレベルだと習ったので、改善していそうです。
ドクタードクター
正解。周産期死亡率は妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡を合わせたもので、策定時から評価時にかけて低下した。目標の「世界最高を維持」を達成して、改善と評価されているよ。
医学生医学生
むし歯のない3歳児の割合も、最近の子どもはむし歯が減っていると聞きます。
ドクタードクター
そうだね。目標の80%以上に対して、68.7%から81.0%へと上がって目標を達成した。フッ化物の利用や保護者の口腔衛生意識の向上が背景にあると考えられている。BCGの接種割合も目標の95%維持に対して94.7%とほぼ目標水準で、改善・達成と評価された。
医学生医学生
両親の自宅での喫煙率は、まだ吸っている父親が多そうなので悪化したかと迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。評価時でも父親41.5%、母親8.1%と、「なくす」という目標には届かなかった。でも策定時よりは下がっているから、「改善したが目標未達成」という判定なんだ。未達成と悪化は別物だ、という点に注意しよう。受動喫煙は乳幼児突然死症候群や小児の呼吸器疾患のリスクになるから、第2次計画でも引き続き取り上げられている。
医学生医学生
もう一つの悪化項目の低出生体重児が増えた理由は何ですか。周産期医療は良くなっているのに不思議です。
ドクタードクター
良い疑問だ。晩産化、多胎妊娠、若い女性のやせ、妊娠中の過度な体重増加抑制などが関与すると考えられている。救命できる赤ちゃんが増えたことと、小さく生まれる赤ちゃんが増えたことは別の話なんだ。低出生体重は将来の生活習慣病リスクとの関連も指摘されていて、成人期まで見据えた課題といえる。
医学生医学生
第2次計画ではどんな点が重視されたんですか。
ドクタードクター
第2次は2015年度から始まり、「すべての子どもが健やかに育つ社会」の実現を目指している。基盤課題は、切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策、学童期・思春期から成人期に向けた保健対策、子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくりの3つ。重点課題は「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」と「妊娠期からの児童虐待防止対策」の2つだ。その後は成育基本法に基づく成育医療等基本方針のもとで、理念を広める国民運動として位置づけられているよ。
医学生医学生
第1次で悪化した思春期の課題が、第2次の基盤課題に入っているわけですね。数値の流れと政策のつながりで覚えると忘れにくそうです。
ドクタードクター
その通り。臨床でも、思春期の患者を診るときは身体症状の背景に心理的な問題や自殺リスクがないかを意識することが大切だ。統計の数字は、目の前の患者さんを診る視点にもつながっているんだよ。

まとめ

健やか親子21(第1次)は2001年に始まった母子保健の国民運動計画で、2014年まで延長され、2013年の最終評価では74項目の約8割が改善と判定されました。悪化と判定されたのは「10代の自殺率」と「全出生数中の低出生体重児の割合」の2項目のみで、10代の自殺率は10〜14歳・15〜19歳のいずれの年齢区分でも上昇しました。周産期死亡率、むし歯のない3歳児の割合、BCG接種割合は改善・達成と評価され、育児期間中の両親の自宅での喫煙率は改善したものの目標未達成でした。低出生体重児の増加には晩産化、多胎妊娠、若い女性のやせなどが関与すると考えられています。第2次計画(2015年度〜)では思春期保健が基盤課題に、育てにくさを感じる親への支援と妊娠期からの児童虐待防止が重点課題に据えられており、評価結果と政策の流れを結びつけて理解することが、母子保健の全体像をつかむ助けになります。

解答・解説

正解はbです

「健やか親子21」は、21世紀の母子保健の取り組みの方向性と目標を示した国民運動計画である。第1次計画は2001年(平成13年)に始まり、当初は2010年までの計画であったが、次世代育成支援対策推進法の行動計画期間と合わせるために2014年(平成26年)まで延長された。その最終評価が2013年(平成25年)に行われ、各目標項目が策定時の値と比べてどう変化したかが判定された。 最終評価では、全74項目のうち約8割が「改善した」(目標達成と、目標未達成だが改善の両方を含む)と判定された一方、「悪化した」と判定された項目は2つにとどまった。その2項目が「10代の自殺率」と「全出生数中の低出生体重児の割合」である。 したがって本問は、周産期死亡率・3歳児のう蝕・BCG接種などの母子保健指標がおおむね改善したなかで、思春期の心の問題に関わる指標が悪化したという、第1次計画の成果と課題を問う設問である。正解の判断には「悪化した2項目」を覚えておけば十分である。

選択肢考察

  1. ×a.  周産期死亡率

    周産期死亡率(妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡を合わせた率)は、策定時から評価時にかけて出産千対で5.8から4.0へ、出生千対で3.8から2.7へと低下した。目標は「世界最高を維持」であり、これを達成して改善と評価された。悪化した項目ではない。

  2. ○b.  10代の自殺率

    目標は「減少傾向へ」であったが、策定時(2000年)と評価時(2012年)を比べると、人口10万対で10〜14歳は1.1から1.3へ、15〜19歳は6.4から8.5へと上昇した。年齢区分のいずれでも上昇しており、最終評価で「悪化した」と判定された2項目のうちの1つである。思春期の心の健康対策が引き続き課題であることを示す結果であり、第2次計画でも重点的な課題として引き継がれた。

  3. ×c.  むし歯のない3歳児の割合

    目標値「80%以上」に対し、策定時(2000年)68.7%から評価時(2012年)81.0%へと上昇し、目標を達成した。フッ化物の利用や保護者の口腔衛生意識の向上などを背景に、乳幼児のう蝕は長期的に減少している。悪化した項目ではない。

  4. ×d.  育児期間中の両親の自宅での喫煙率

    評価時点の自宅での喫煙率は父親41.5%、母親8.1%であった。目標(なくす)には届かなかったものの、策定時より低下しており「改善したが目標未達成」と評価された。受動喫煙は乳幼児突然死症候群(SIDS)や小児の呼吸器疾患のリスクとなるため、第2次計画でも引き続き取り上げられている。悪化した項目ではない。

  5. ×e.  生後6か月までにBCG接種を終了している者の割合

    目標は「95%を維持」で、評価時は94.7%とほぼ目標水準にあり、改善・達成と評価された。BCGの定期接種は2005年に生後6か月未満に前倒しされ、その後2013年から標準的な接種期間が生後5〜8か月未満(対象は1歳未満)へと変更されている。悪化した項目ではない。

健やか親子21の変遷

・第1次:2001〜2014年(当初2010年までの計画を延長)。4つの主要課題は、(1)思春期の保健対策の強化と健康教育の推進、(2)妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援、(3)小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備、(4)子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減。 ・第2次:2015年度(平成27年度)から開始。「すべての子どもが健やかに育つ社会」の実現を目指し、3つの基盤課題(切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策、学童期・思春期から成人期に向けた保健対策、子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり)と、2つの重点課題(育てにくさを感じる親に寄り添う支援、妊娠期からの児童虐待防止対策)を設定した。 ・その後は、成育基本法(2019年施行)に基づく「成育医療等基本方針」のもとで、その理念を広く周知する国民運動として位置づけられている。

第1次最終評価(2013年)の概要

・74項目中、改善(目標達成+目標未達成だが改善)が約8割、変わらないが少数、悪化が2項目、評価不能が少数。 ・悪化した2項目:10代の自殺率、全出生数中の低出生体重児の割合。 ・低出生体重児の増加には、晩産化、多胎妊娠、若い女性のやせ、妊娠中の過度な体重増加抑制などが関与すると考えられている。

POINT

・健やか親子21(第1次)最終評価で「悪化」とされたのは、10代の自殺率と全出生数中の低出生体重児の割合の2項目である。 ・周産期死亡率、3歳児のう蝕のない者の割合、BCG接種率などは改善・達成。 ・両親の自宅での喫煙率は改善したが目標未達成。 ・第2次計画は2015年度から開始され、重点課題は「育てにくさを感じる親への支援」と「妊娠期からの児童虐待防止対策」。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。