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思春期のゴールはどこにある?―女子の二次性徴を「順番」で理解する

第112回医師国家試験 C問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第6問

女子の二次性徴のうち最も遅れてみられるのはどれか。

  1. a.初経
  2. b.子宮発育
  3. c.恥毛発生
  4. d.乳房発育
  5. e.全身の骨端線閉鎖

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、女子の二次性徴がどんな順番で現れるかを問う問題だ。ポイントは、個々の年齢を丸暗記することではなく、思春期の「始まり」と「終わり」を何が告げるのかを押さえること。まずは思春期がどうやって始まるのか、ホルモンの流れから整理してみよう。
医学生医学生
視床下部からGnRHが出て、下垂体からLHとFSHが分泌されて、卵巣がエストロゲンを作り始める、という流れでしたよね。生理学の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。思春期にはGnRHの律動的な分泌が始まって、卵巣が目を覚ます。そのエストロゲンと、副腎や卵巣由来のアンドロゲンの作用で、二次性徴が一定の順序で現れてくるんだ。では、女子で最初に現れる徴候は何だと思う?
医学生医学生
初経のイメージが強いですが……一番目立つ変化なので最初かと思ってしまいます。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。初経は実は中盤以降のイベントなんだ。最初に現れるのは乳房発育で、日本人女子ではおおむね10歳前後。タナー分類でいう乳房2度、いわゆる乳房の芽生えだね。エストロゲンが働き始めた最初のサインと考えるといい。
医学生医学生
乳房発育が先なんですね。恥毛はその後ですか。
ドクタードクター
そう。恥毛発生は主にアンドロゲンの作用によるもので、11歳前後、乳房発育に続いて現れることが多い。ただし前後が入れ替わる子もいるので、厳密な順番として固執しすぎないこと。腋毛は恥毛よりやや遅れる。その後に身長の急伸、つまり成長スパートが来て、初経は平均12歳台で起こる。
医学生医学生
子宮発育はどの位置になりますか。外から見えないので、つい忘れがちです。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。子宮はエストロゲンの作用で思春期の開始とほぼ同時期から大きくなり、体部が頸部より大きい成人型の形へ変わっていく。初経の前提となる変化だから、当然初経より前に進んでいる。外表からは評価できないので、タナー分類には含まれないんだ。
医学生医学生
そうすると、初経が来たら成長は終わり、ということでしょうか。
ドクタードクター
ここがもう一つの落とし穴。初経は身長の最大成長速度を過ぎた後に来ることが多いけれど、その後もしばらく、数cm程度は身長が伸び続ける。成長が本当に止まるのは、長管骨の骨端線、つまり成長軟骨板が閉鎖したときだ。女子ではだいたい15〜16歳ころで、これが思春期の終わりを示す。
医学生医学生
だから選択肢の中で最も遅いのは全身の骨端線閉鎖なんですね。成長の終点そのものですから。
ドクタードクター
正解。細かい年齢を忘れても「骨端線閉鎖=身長の伸びが止まる=思春期の最終段階」と理解していれば迷わない。ちなみに、骨端線を閉じる方向に強く働くのもエストロゲンなんだ。成長スパートを起こすのもエストロゲン、最後に骨端線を閉じるのもエストロゲン、という二面性を押さえておこう。
医学生医学生
小児科の実習で、思春期早発症の子は最終身長が低くなりやすいと聞きました。それもエストロゲンの影響ですか。
ドクタードクター
まさにそれだ。早くからエストロゲンにさらされると、一時的には背が伸びて目立つけれど、骨端線も早く閉じてしまうので、最終的には低身長になりやすい。女子では7歳6か月未満の乳房発育、8歳未満の陰毛発生、10歳6か月未満の初経が早発症を疑う目安とされている。手のX線で骨年齢を評価するのも、骨端線の状態を見るためなんだ。
医学生医学生
逆に遅い場合はどう考えればいいですか。
ドクタードクター
13歳になっても乳房発育がない場合や、一定の年齢までに初経がない場合は、思春期遅発症や原発性無月経として精査を考える。男子との比較も押さえておくといい。男子の最初の徴候は精巣容量の増大で、4mL以上が目安。思春期の開始は女子より約2年遅く、成長スパートも遅れて来るんだ。
医学生医学生
女子は乳房、男子は精巣が最初のサインで、どちらも最後は骨端線閉鎖で締めくくられる、と整理しておきます。
ドクタードクター
いいまとめだね。順番は個人差も大きいから、年齢はあくまで目安として、ホルモンの作用と結びつけて理解しておくと、成長曲線を読むときや早発症・遅発症を判断するときに必ず役に立つよ。

まとめ

女子の二次性徴は、GnRH分泌の開始に続く卵巣からのエストロゲン産生などによって進み、おおむね乳房発育(約10歳)→恥毛発生→成長スパート→初経(平均12歳台)の順に現れ、子宮も思春期の開始とほぼ同時期から発育します。初経後も身長は数cm程度伸び続け、エストロゲンの作用で全身の骨端線が閉鎖する15〜16歳ころに成長が止まり、これが思春期の最終段階となります。エストロゲンは成長スパートと骨端線閉鎖の両方に関わるため、思春期早発症では一時的に背が伸びても最終身長が低くなりやすい点が臨床上重要です。男子では精巣容量の増大が最初の徴候で、思春期の開始は女子より約2年遅れます。二次性徴の順序をホルモンの働きと結びつけて理解しておくことは、成長曲線の評価や早発症・遅発症の判断の基礎になります。

解答・解説

正解はeです

思春期には視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の律動的分泌が始まり、下垂体から黄体形成ホルモン(LH)・卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、卵巣が成熟してエストロゲンを産生するようになる。このエストロゲンと副腎・卵巣由来のアンドロゲンの作用によって、女子では一定の順序で二次性徴が現れる。 日本人女子の一般的な順序は、乳房発育(乳房発育開始、thelarche:おおむね10歳前後)→ 恥毛発生(pubarche:11歳前後)→ 身長の急伸(成長スパート)→ 初経(menarche:平均12歳台)であり、その後エストロゲンの作用で骨端線(成長軟骨板)が閉鎖して身長の伸びが止まり、思春期が完了する(15〜16歳ころ)。 したがって選択肢の中で最も遅く起こるのは全身の骨端線閉鎖である。細かい年齢を覚えていなくても、骨端線閉鎖は成長の終わり=思春期の最終段階であると理解していれば正答できる。

選択肢考察

  1. ×a.  初経

    初経は乳房発育・恥毛発生に続いて起こり、日本人女子の平均初経年齢は12歳台である。身長の伸びのピーク(最大成長速度)を過ぎた後に来ることが多く、初経後も身長はしばらく伸び続ける(数cm程度)。骨端線閉鎖はその後に起こるため、初経は最も遅い現象ではない。

  2. ×b.  子宮発育

    子宮は思春期の開始とともにエストロゲンの作用で増大し、体部が頸部より大きい成人型の形態へ変化していく。乳房発育とほぼ同時期から進む変化であり、初経の前提となるものなので、骨端線閉鎖より早い。また子宮発育は外見から判断できないため、タナー分類などの外表上の二次性徴の評価には通常含めない。

  3. ×c.  恥毛発生

    恥毛発生は主に副腎・卵巣由来のアンドロゲンの作用によるもので、乳房発育に続いて11歳前後に現れることが多い(乳房発育と前後することもある)。腋毛は恥毛よりやや遅れて生える。いずれも初経・骨端線閉鎖より早い。

  4. ×d.  乳房発育

    乳房発育(乳房の芽生え、タナー分類2度)はエストロゲンの作用による変化で、女子の二次性徴の中で最初に現れる徴候である。日本人女子では10歳前後に始まることが多い。したがって最も早い徴候であり、最も遅いものではない。

  5. ○e.  全身の骨端線閉鎖

    長管骨の骨端線(成長軟骨板)は、思春期のエストロゲンの作用によって成長スパートを起こしたのち、やがて閉鎖する。骨端線が閉鎖すると縦方向の骨成長は終わり、身長の伸びが止まる。女子では初経後数年、15〜16歳ころに全身の骨端線が閉鎖し、これが思春期の終了を示す。したがって選択肢の中で最も遅く起こる現象である。

女子の二次性徴の順序(目安)

乳房発育(約10歳)→ 恥毛発生(約11歳)→ 成長スパート(身長の最大成長速度)→ 腋毛発生 → 初経(平均12歳台)→ 骨端線閉鎖・身長の伸びの停止(15〜16歳ころ) 個人差が大きく、年齢はあくまで目安である。

男子との比較

男子では精巣容量の増大(4mL以上)が最初の徴候で、その後に陰茎増大、恥毛発生、成長スパート、変声、腋毛・ひげの発生と続く。男子の思春期は女子より約2年遅れて始まり、成長スパートも遅い。

タナー(Tanner)分類

乳房と恥毛(男子では外性器と恥毛)の発達を1〜5度に分けて評価する方法である。1度が思春期前、5度が成人型である。

思春期早発症・遅発症の目安(女子)

7歳6か月未満で乳房発育、8歳未満で陰毛発生、10歳6か月未満で初経がみられる場合は思春期早発症を疑う。思春期早発症ではエストロゲンが早期に作用して骨端線が早く閉鎖するため、最終身長が低くなりやすい。逆に、13歳になっても乳房発育がない、あるいは15歳(または18歳)までに初経がないなどの場合は思春期遅発症や原発性無月経として精査を考える。

POINT

・女子の二次性徴は「乳房発育 → 恥毛発生 → 初経」の順に起こり、最初の徴候は乳房発育である。 ・骨端線閉鎖は身長の伸びの停止を意味し、思春期の最終段階(女子では15〜16歳ころ)である。 ・骨端線閉鎖を促すのはエストロゲンであり、思春期早発症では最終身長が低くなりやすい。 ・男子の最初の徴候は精巣容量の増大である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。