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爆風は「空気」を狙う―一次爆傷で守られる臓器はどこか

第112回医師国家試験 C問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第5問

圧力波による一次爆傷を受けにくいのはどれか。

  1. a.眼球
  2. b.鼓膜
  3. c.肺
  4. d.胸椎
  5. e.消化管

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は爆傷、つまり爆発による外傷の問題だ。考えるべきは、衝撃波という圧力波が体のどこに損傷を起こしやすいかという「仕組み」。仕組みがわかれば、丸暗記しなくても答えが出せる。まず、爆傷の分類は覚えているかな。
医学生医学生
救急医学の講義で一次から四次まであると習いましたが、正直、中身は混ざっています。
ドクタードクター
整理しておこう。一次爆傷は圧力波そのものが体に作用して生じる損傷。二次爆傷は飛んできた破片などが刺さる損傷で、爆傷の中で最も多い。三次爆傷は体が吹き飛ばされて地面や壁に叩きつけられる損傷。四次爆傷は熱傷や有毒ガスの吸入など、それ以外のものだ。
医学生医学生
では一次爆傷は、圧力が強くかかるところならどこでも起こるんでしょうか。
ドクタードクター
そこが大事なポイントなんだ。圧力波は、密度の違う物質の境界、特に空気と組織の境界を通るときに大きなエネルギーを放出して、組織を剥がしたり裂いたりする。だから狙われやすいのは、中に空気を含む臓器なんだ。
医学生医学生
空気を含む臓器というと、肺と消化管、それに中耳でしょうか。
ドクタードクター
その通り。鼓膜は外耳道と中耳腔の空気に挟まれた薄い膜で、圧力変化に最も敏感だ。比較的低い圧力でも穿孔を起こし、一次爆傷で最も頻度が高い。
医学生医学生
耳鼻科の臨床実習で、外傷性鼓膜穿孔の患者さんを見たことがあります。鼓膜が破れていれば爆風を強く受けた目安になりますね。
ドクタードクター
目安にはなるね。ただし注意が必要で、鼓膜が正常だからといってほかの臓器の爆傷を否定することはできない。次に肺はどうだろう。
医学生医学生
肺胞は空気と組織の境界のかたまりなので、一番やられそうです。
ドクタードクター
いい推論だ。肺挫傷や肺胞内出血、いわゆる爆傷肺を起こし、気胸や縦隔気腫も生じうる。さらに肺胞と血管が交通すると空気塞栓が脳や冠動脈に飛んで急死の原因になる。一次爆傷による死亡の主要因なんだ。消化管も内腔にガスを含むから、腸管壁の出血や穿孔を起こしやすく、特にガスの多い結腸が損傷されやすい。
医学生医学生
眼球は空気を含んでいないのに、損傷を受けやすいんですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。眼球は体表に露出しているから、圧力波を直接受けてしまう。前房出血や網膜剥離、ひどいと眼球破裂も起こる。破片による二次爆傷としての眼外傷も多いから、爆発の現場では眼の診察も欠かせない。
医学生医学生
となると、体の深部にあって空気を含まない胸椎は、圧力波そのものでは傷つきにくい、ということですね。
ドクタードクター
正解。胸椎は硬い骨組織で、空気とも接していないし体表にも出ていない。だから一次爆傷を受けにくい。ただし、爆発で脊椎を骨折しないという意味ではないよ。
医学生医学生
吹き飛ばされて叩きつけられれば骨折しますよね。それは三次爆傷ということですか。
ドクタードクター
その通り。骨折は主に飛来物による二次爆傷や、吹き飛ばされての三次爆傷で生じる。一次は「圧力波」、骨折は「物理的な衝突」と分けて考えれば混乱しない。
医学生医学生
臨床で注意すべきことはありますか。
ドクタードクター
いくつかある。まず、屋内や車内など閉鎖空間での爆発は圧力波が反射して増強されるから、一次爆傷が重症化しやすい。爆傷肺は受傷直後に症状が軽くても数時間で悪化することがあるので経過観察が必要だし、陽圧換気は気胸や空気塞栓を悪化させうるから慎重に行う。消化管も、時間をおいて穿孔が明らかになる遅発性穿孔があるから、腹部症状の推移を追うことが大切だ。
医学生医学生
目立つ外傷がなくても、空気を含む臓器を順にチェックしていく必要があるんですね。
ドクタードクター
そう。大規模災害やテロでは多数の傷病者が同時に運ばれてくる。見た目の傷が軽くても、鼓膜・肺・消化管・眼を意識して評価する視点を持っておいてほしい。

まとめ

一次爆傷は爆発の衝撃波(圧力波)が直接体に作用して生じる損傷で、圧力波が空気と組織の境界で大きなエネルギーを放出するため、鼓膜・中耳、肺、消化管といったガスを含む臓器と、体表に露出した眼球が損傷されやすくなります。最も頻度が高いのは鼓膜穿孔で、致死的となるのは爆傷肺とそれに伴う空気塞栓です。一方、深部にあり空気を含まない胸椎などの骨は一次爆傷を受けにくく、骨折は主に飛来物による二次爆傷や吹き飛ばされての三次爆傷で生じます。爆傷の分類と損傷機序を理解しておくことは、外見上の傷が軽い傷病者に潜む重篤な損傷を見逃さないための、災害・救急医療の基本となります。

解答・解説

正解はdです

爆発による外傷(爆傷)は、損傷を生じる仕組みによって一次から四次(分類によっては五次)に分けられる。このうち一次爆傷は、爆発で生じた衝撃波(急激な圧力上昇とその後の陰圧からなる圧力波)が体に直接ぶつかって生じる損傷である。 圧力波は密度の異なる物質の境界、特に空気と組織(液体・軟部組織)の境界を通過するときに大きなエネルギーを放出し、組織の剥離・断裂・出血を起こす(剥離効果・内破効果などと説明される)。そのため一次爆傷を受けやすいのは、(1) 内部に空気(ガス)を含む臓器、すなわち中耳・鼓膜、肺、消化管と、(2) 体表に露出し圧力波を直接受ける臓器、すなわち眼球である。 これに対し、体の深部にあって空気と接しない硬い組織である骨(胸椎など)は、圧力波そのものでは損傷を受けにくい。したがって受けにくいものとして胸椎を選ぶ。なお、骨折は飛来物や体が吹き飛ばされて叩きつけられることによる二次・三次爆傷として起こりうる点と区別しておく。

選択肢考察

  1. ×a.  眼球

    眼球は体表に露出しているため圧力波を直接受け、一次爆傷を起こしやすい。前房出血・眼底出血、網膜剥離、さらには眼球破裂を生じうる。なお、眼外傷は飛散した破片による二次爆傷としても頻度が高い。

  2. ×b.  鼓膜

    鼓膜は外耳道の空気と中耳腔の空気に挟まれた薄い膜で、圧力変化に最も敏感な構造である。比較的低い圧力でも穿孔を生じ、一次爆傷の中で最も頻度が高い。耳小骨離断や内耳障害(感音難聴、耳鳴)を伴うこともある。鼓膜所見は爆風への曝露の程度を推測する手がかりとされてきたが、鼓膜が正常でも他臓器の爆傷を否定できない。

  3. ×c.  肺

    肺は大量の空気を含み、肺胞壁という空気と組織の境界が無数に存在するため、一次爆傷を最も受けやすい臓器の一つである。肺挫傷・肺胞内出血(爆傷肺 blast lung)、気胸、縦隔気腫を起こし、肺胞と血管の交通により空気塞栓(脳・冠動脈)を生じて急死の原因となる。一次爆傷による死亡の主要因である。

  4. ○d.  胸椎

    胸椎は体の深部にあり、内部に空気を含まず、体表にも露出していない。圧力波が空気と組織の境界で強くエネルギーを放出するという一次爆傷の機序からみて、骨組織である胸椎は圧力波そのものによる損傷を受けにくい。したがって本問の正解である。脊椎損傷が爆発で起こるとすれば、主に体が吹き飛ばされて衝突する三次爆傷などによる。

  5. ×e.  消化管

    消化管は内腔にガスを含む中空臓器であり、圧力波により腸管壁の出血(壁内血腫)、挫傷、穿孔を起こしやすい。特にガスの多い結腸(回盲部付近など)が損傷されやすい。穿孔が受傷から時間をおいて顕在化する遅発性穿孔もあるため、腹部症状の経過観察が必要である。

爆傷の分類

一次爆傷:衝撃波(圧力波)が体に直接作用して生じる損傷。鼓膜穿孔、爆傷肺、消化管損傷、眼球損傷など。 二次爆傷:爆発で飛散した破片や物体が体に当たって生じる損傷。穿通創・刺創など。爆傷で最も多い。 三次爆傷:爆風で体が吹き飛ばされ、地面や壁に叩きつけられて生じる損傷。骨折、頭部外傷、鈍的外傷など。建物の倒壊による圧挫損傷もここに含めることがある。 四次爆傷:上記以外の損傷。熱傷、有毒ガスの吸入、粉塵による気道障害、既存疾患の増悪など。 (汚染物質・放射性物質などによる影響を五次爆傷とする分類もある。)

一次爆傷の好発部位の考え方

圧力波は空気と組織の境界でエネルギーを放出するため、ガスを含む臓器(中耳・鼓膜、肺、消化管)が損傷されやすい。加えて体表に露出した眼球も直接圧力波を受ける。閉鎖空間(屋内・車内など)での爆発では圧力波が反射して増強されるため、一次爆傷が重症化しやすい。

爆傷肺の特徴

呼吸困難、喀血、低酸素血症、胸部X線での両側性の浸潤影(蝶形陰影を呈することがある)などを示す。受傷直後は症状が軽くても数時間以内に増悪することがあり、経過観察が必要である。陽圧換気は気胸や空気塞栓を悪化させうるため注意を要する。

POINT

・一次爆傷は圧力波が直接作用して生じ、空気(ガス)を含む臓器(鼓膜・中耳、肺、消化管)と体表に露出した眼球が損傷されやすい。 ・最も頻度が高いのは鼓膜穿孔、致死的なのは爆傷肺と空気塞栓。 ・骨(胸椎など)は一次爆傷を受けにくく、骨折は主に二次・三次爆傷で生じる。 ・爆傷の分類(一次:圧力波、二次:飛来物、三次:吹き飛ばされての衝突、四次:熱傷・有毒ガスなどその他)を押さえる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。