要介護度を決めるのは誰?―脳梗塞後の退院支援で見る多職種の役割分担
第112回医師国家試験 C問題 第45問
国試問題にチャレンジ
72歳の男性。脳梗塞で入院し,急性期治療を終え,現在は回復期病棟でリハビリテーションを行っている。右半身麻痺と嚥下障害が残存しているが,病状が安定してきたので退院を見据えて療養環境を調整することになった。 多職種連携における職種と役割の組合せで誤っているのはどれか。
- a.看護師 ―― 吸痰処置の指導
- b.薬剤師 ―― 服薬の指導
- c.理学療法士 ―― 関節拘縮の予防
- d.管理栄養士 ―― 食事の指導
- e.ケアマネジャー ―― 介護度の認定
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
脳梗塞後に片麻痺や嚥下障害が残った患者の在宅移行では、看護師による吸引などの医療処置の指導、薬剤師による服薬指導と剤形の工夫、理学療法士による拘縮予防と基本動作訓練、管理栄養士による嚥下調整食や減塩の指導など、多職種がそれぞれの専門性を生かして関わります。要介護度を認定するのは保険者である市町村であり、認定調査と主治医意見書をもとにした一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て決まります。ケアマネジャー(介護支援専門員)の役割は、認定された要介護度に基づくケアプランの作成とサービス事業者との連絡調整であり、認定そのものは行いません。介護保険では65歳以上は原因を問わず、40〜64歳は特定疾病が原因の場合に給付対象となる点も合わせて押さえておきましょう。各職種の役割と制度の仕組みを正しく理解することは、医師が主治医意見書を書き、チーム医療の要として退院支援を進めるための基礎になります。
解答・解説
正解はeです
症例の整理
72歳の男性で、脳梗塞の急性期治療を終え、回復期リハビリテーション病棟で訓練中である。右片麻痺と嚥下障害という後遺症が残っているが、全身状態は落ち着いており、自宅などへの退院に向けて生活環境を整える段階にある。診断としては脳梗塞後遺症(右片麻痺・嚥下障害)であり、本問は診断ではなく退院支援に関わる各専門職の役割を問うている。
退院支援と多職種連携
片麻痺と嚥下障害が残る高齢者が在宅へ戻るには、医療面(誤嚥への対応、痰の吸引、服薬管理)、機能面(関節拘縮・廃用の予防、移動・ADL〔日常生活動作〕の維持)、栄養面(嚥下機能に合った食形態や栄養量の確保)、制度面(介護保険サービスの利用)の各方面から支援が必要になる。医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャー(介護支援専門員)などがそれぞれの専門性を生かして関与し、退院前カンファレンスなどで情報を共有する。
設問の考え方
「誤っているもの」を選ぶ問題である。各職種の本来の業務を思い浮かべ、その職種が担う役割として妥当かを判断する。特に介護保険制度では、「要介護度を決める主体(市町村)」と「決まった要介護度に基づいてケアプランを立てる者(ケアマネジャー)」を区別できるかが鍵となる。
選択肢考察
- ×a. 看護師 ―― 吸痰処置の指導
適切な組合せである。嚥下障害がある患者は唾液や食物の誤嚥により痰が増えやすく、在宅でも喀痰吸引が必要になることがある。看護師は吸引の手技や清潔操作、吸引のタイミング、異常時の対応を本人・家族に指導する役割を担う。家族による吸引は医行為であるが、在宅で家族が行うことは認められており、その指導は看護師の重要な業務である。
- ×b. 薬剤師 ―― 服薬の指導
適切な組合せである。脳梗塞後は再発予防のための抗血小板薬や抗凝固薬、降圧薬などを長期に服用することが多い。薬剤師は薬の作用・副作用、飲み忘れへの対策、出血傾向などの注意点を説明する。嚥下障害がある場合は、錠剤の粉砕可否、簡易懸濁法、剤形の変更など、安全に服用できる方法の提案も行う。
- ×c. 理学療法士 ―― 関節拘縮の予防
適切な組合せである。理学療法士は、基本的動作能力(寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行など)の回復・維持を目的に、運動療法や物理療法を行う専門職である。麻痺側は動かさないでいると関節が固まりやすいため、関節可動域訓練やポジショニングによる拘縮予防は理学療法士の代表的な役割であり、家族への自主訓練の指導も担う。
- ×d. 管理栄養士 ―― 食事の指導
適切な組合せである。管理栄養士は栄養状態を評価し、必要エネルギー量や栄養素の配分を考えた食事を計画・指導する。嚥下障害がある患者では、言語聴覚士の嚥下評価をふまえて、とろみの付け方や嚥下調整食の形態などを家族に具体的に指導する。また、脳梗塞の再発予防として減塩などの生活習慣病対策も指導内容に含まれる。
- ○e. ケアマネジャー ―― 介護度の認定
誤った組合せであり、これが正解である。要介護度(要支援・要介護の区分)を認定するのは保険者である市町村(特別区を含む)である。申請を受けた市町村は認定調査と主治医意見書をもとにコンピュータによる一次判定を行い、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会の二次判定(審査・判定)を経て、市町村が認定する。ケアマネジャー(介護支援専門員)は認定調査を委託されて行うことはあるが、認定そのものを行う立場にはない。ケアマネジャーの本来の役割は、認定された要介護度の範囲内で本人の希望や心身の状態に応じたケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、サービス事業者との連絡調整を行うことである。
要介護認定の流れ
1. 本人または家族(代行として地域包括支援センターや居宅介護支援事業者も可)が市町村の窓口に申請する。 2. 市町村の職員などが自宅や病院を訪問して認定調査を行う(指定居宅介護支援事業者などに委託されることもある)。同時に市町村が主治医に主治医意見書を依頼する。 3. 認定調査の結果などをもとにコンピュータで一次判定を行う。 4. 介護認定審査会が一次判定結果、特記事項、主治医意見書をもとに二次判定を行う。 5. 市町村が要支援1・2、要介護1〜5、または非該当(自立)を認定し、本人に通知する。原則として申請から30日以内に結果が出る。
介護保険の被保険者
第1号被保険者は65歳以上で、原因を問わず要介護・要支援状態となれば給付を受けられる。第2号被保険者は40〜64歳の医療保険加入者で、脳血管疾患など16種類の特定疾病が原因の場合に限り給付対象となる。
退院支援に関わる主な職種と役割
・医師:病状評価、治療方針の決定、主治医意見書の作成 ・看護師:療養上の世話と医療処置(吸引、経管栄養など)の指導、退院後の生活の調整 ・薬剤師:服薬指導、剤形の工夫、薬剤管理 ・理学療法士:基本動作の訓練、拘縮予防、住環境(手すり・段差など)への助言 ・作業療法士:食事・更衣・排泄などの応用的動作や家事動作の訓練、福祉用具の選定 ・言語聴覚士:嚥下機能の評価・訓練、失語症・構音障害への対応 ・管理栄養士:栄養評価、嚥下調整食や治療食の指導 ・医療ソーシャルワーカー(MSW):社会制度の紹介、経済的問題や転院・施設入所の相談 ・ケアマネジャー:ケアプラン作成とサービス事業者との連絡調整
POINT
・要介護度を認定するのは市町村であり、判定は介護認定審査会が行う。ケアマネジャーは認定しない。 ・ケアマネジャー(介護支援専門員)の役割はケアプランの作成とサービス調整である。 ・在宅移行には、看護師(吸引などの医療処置指導)、薬剤師(服薬指導)、理学療法士(拘縮予防・動作訓練)、管理栄養士(食事指導)、言語聴覚士(嚥下訓練)など多職種の関与が必要である。
