StudyMed医師国家試験

「あと何mEq入れられる?」―維持輸液に足せるカリウムは引き算で決まる

第112回医師国家試験 C問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第4問

末梢静脈路から1Lの維持輸液製剤(電解質組成:Na+ 35mEq/L,K+ 20mEq/L,Cl- 35 mEq/L)を投与する際,この製剤に追加できるカリウムの最大量(mEq)はどれか。

  1. a.2
  2. b.4
  3. c.20
  4. d.40
  5. e.200

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、点滴にカリウムを追加するときの安全な上限を問う問題だ。計算自体は簡単だけど、カギは「製剤にもともと入っているカリウム」を見落とさないこと。まず、カリウムを静脈から入れるときに守るべき上限は何種類あったか覚えているかな。
医学生医学生
臨床薬理の講義で「濃度・速度・1日量」の3つがあると習いました。でも数字があやふやです。
ドクタードクター
3つ挙げられれば十分な出発点だよ。一般的な基準として、濃度は40 mEq/L以下、速度は20 mEq/時以下、1日量は100 mEq以下。この問題で問われているのはどれだと思う?
医学生医学生
1Lの製剤に追加する量なので、濃度の上限ですね。40 mEq/Lだから、40 mEqを足せばいいのかなと思いました。
ドクタードクター
そこが典型的な落とし穴なんだ。この維持輸液製剤には、すでに1Lあたり20 mEqのカリウムが入っている。追加後の濃度が40 mEq/Lを超えてはいけないのだから、どう計算する?
医学生医学生
40 mEq/Lから、もともとの20 mEqを引いて……追加できるのは20 mEqですね。
ドクタードクター
正解。追加後はちょうど40 mEq/Lで、上限ぴったりになる。逆に40 mEqを加えると合計60 mEq/Lになって上限を超えてしまう。上限値そのものの数字が選択肢に並んでいるのは、まさにこの見落としを狙っているわけだ。
医学生医学生
2や4 mEqは安全ではありますけど、「最大量」としては少なすぎるということですね。
ドクタードクター
そう。どちらも上限まで大きな余裕が残るから、問いには合わない。そして200 mEqは濃度の上限どころか1日量の上限も大きく超える、命に関わる量だ。
医学生医学生
そもそも、なぜカリウムはそんなに厳しく制限されているんですか。
ドクタードクター
生理学で習った静止膜電位を思い出してほしい。心筋の静止膜電位は細胞内外のカリウム濃度差で決まる。高濃度のカリウムが急に血中に入ると膜電位が浅くなり、伝導障害や心室細動を起こして心停止に至ることがある。加えて末梢静脈では、高濃度のカリウムが血管痛や静脈炎の原因にもなるんだ。
医学生医学生
高カリウム血症の心電図は、CBTの勉強でテント状T波から覚えました。
ドクタードクター
いいね。進行するとPR延長とP波の平低化・消失、QRS幅の拡大、サインカーブ様波形を経て心室細動・心停止へと進む。だからカリウムを投与している間は、血清カリウム値と心電図をモニターするんだ。
医学生医学生
内科の病棟実習で、指導医の先生が尿量を確認してからカリウム入りの点滴を指示していたのも同じ理由でしょうか。
ドクタードクター
その通り。カリウムは主に腎臓から排泄されるから、尿が出ていない、あるいは腎機能が落ちている患者では容易に高カリウム血症になる。目安として0.5 mL/kg/時以上の尿量が保たれていることを確認してから投与するのが基本だ。
医学生医学生
維持輸液、いわゆる3号液にもともとカリウムが入っているのはなぜですか。
ドクタードクター
3号液は水分と電解質の1日必要量を補うための輸液で、成人に1日約2L入れると、カリウムの1日必要量である約40 mEqをおおむね補える組成になっている。だから足りない分を追加するときは、必ず製剤中の量と合算して考える必要があるんだ。
医学生医学生
医療安全の講義で、カリウム製剤のワンショット静注は禁止と聞きました。
ドクタードクター
大事なポイントだね。高濃度のカリウム製剤を原液のまま急速に静注して患者が亡くなる事故が過去に起きていて、ハイリスク薬として扱われている。今ではワンショット用の針がつかない構造のキット製剤を使ったり、ほかの注射薬と分けて保管したりと、誤用を防ぐ工夫がされている。研修医になって自分で指示を出すとき、濃度・速度・1日量の3つを必ず確認する習慣をつけてほしい。

まとめ

カリウムの静脈内投与では、濃度40 mEq/L以下、速度20 mEq/時以下、1日量100 mEq以下という上限を守ることが基本です。維持輸液製剤にはもともとカリウムが含まれていることが多いため、追加できる量は「上限濃度 − 製剤中のカリウム量」で求め、本問では40 − 20 = 20 mEqとなります。高濃度のカリウムは心筋の静止膜電位を変化させて致死的不整脈を起こしうるため、ワンショット静注は禁止され、投与中は血清カリウム値・心電図・尿量の確認が欠かせません。日常的に行われる輸液だからこそ、カリウムの安全管理は研修医になった初日から求められる必須の知識です。

解答・解説

正解はcです

カリウム(K)を静脈内に投与するときは、「濃度」「速度」「1日量」の上限を守る必要がある。高濃度のKが急に血中に入ると、心筋の静止膜電位が変わって伝導障害や心室細動などの致死的不整脈が起こり、心停止に至ることがある。また、末梢静脈では高濃度のKにより血管痛や静脈炎が起こりやすい。

K投与の主な上限(塩化カリウム注射液などの添付文書に基づく一般的な基準)

・濃度:40 mEq/L以下に薄めて使う ・速度:20 mEq/時を超えない ・1日量:100 mEqを超えない

本問の考え方

問われているのは濃度の上限である。末梢静脈から投与できる輸液中のK濃度は最大40 mEq/Lである。 本製剤1 Lにはすでに K⁺ 20 mEq/L × 1 L = 20 mEq が含まれている。 したがって、追加できる最大量は 40 mEq/L × 1 L − 20 mEq = 20 mEq となる。追加後のK濃度は40 mEq/Lで、上限ちょうどである。 維持輸液製剤(いわゆる3号液)にはもともとKが含まれていることが多く、Kを追加するときは「製剤にすでに入っているK」と「追加するK」の合計で濃度を考えることが大切である。

選択肢考察

  1. ×a.  2

    2 mEqを追加すると濃度は22 mEq/Lとなり、上限の40 mEq/Lまでまだ余裕がある。「追加できる最大量」としては少なすぎるため誤りである。

  2. ×b.  4

    4 mEqを追加しても濃度は24 mEq/Lであり、上限の40 mEq/Lには届かない。最大量ではないため誤りである。輸液製剤の組成表などでよく見る数値に引きずられないよう注意する。

  3. ○c.  20

    末梢静脈から投与する輸液のK濃度の上限は40 mEq/Lである。本製剤1 Lにはすでに20 mEqのKが含まれているので、追加できるのは40 − 20 = 20 mEqとなる。追加後の濃度はちょうど40 mEq/Lになり、これが最大量である。

  4. ×d.  40

    40 mEqは1 Lあたりの濃度上限そのものの値である。これを追加すると、もともと入っている20 mEqと合わせて60 mEq/Lとなり、上限を超える。製剤中にすでにKが含まれていることを見落とすと選びやすい誤りである。

  5. ×e.  200

    200 mEqを追加すると220 mEq/Lという非常に高い濃度になる。これは濃度の上限(40 mEq/L)だけでなく、1日量の上限(100 mEq)も大きく超えており、致死的不整脈や心停止を起こしうる危険な量である。

静注用カリウム製剤の安全管理

・高濃度のK製剤(塩化カリウム注射液、アスパラギン酸カリウム注射液など)は、ワンショット静注(原液のまま急速に静注すること)が禁止されている。原液を誤って急速に静注したことによる死亡事故が過去に起きており、ハイリスク薬として扱われる。 ・誤用を防ぐため、ワンショット静注に使う針がつかない構造のプレフィルドシリンジ製剤やキット製剤が使われ、ほかの注射薬と区別して保管するなどの対策がとられている。 ・投与中は血清K値と心電図をモニターし、尿量が保たれている(目安として0.5 mL/kg/時以上)ことを確認してから投与する。腎機能が低下している患者では高カリウム血症になりやすいため特に注意する。

高カリウム血症の心電図変化

テント状T波 → PR間隔の延長・P波の平低化から消失 → QRS幅の拡大 → サインカーブ様波形 → 心室細動・心停止、と進む。

維持輸液(3号液)

水分と電解質の1日必要量を補うための輸液で、Naは35〜40 mEq/L程度、Kは20 mEq/L程度を含む製剤が多い。成人で1日に約2 Lを投与すると、Na・Kの1日必要量(Kは約40 mEq/日)をおおむね補える組成となっている。

中心静脈からの投与

中心静脈では血流量が多いため、末梢静脈より高い濃度で投与されることもあるが、その場合も投与速度の上限を守り、心電図モニター下で慎重に行う。

POINT

・静注用Kの上限:濃度40 mEq/L以下、速度20 mEq/時以下、1日量100 mEq以下。 ・K製剤のワンショット静注は禁止(致死的不整脈・心停止の危険)。 ・追加できるK量は「上限濃度 − 製剤にすでに含まれるK」で求める。本問は40 − 20 = 20 mEq。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。