StudyMed医師国家試験

薬を使ったら皮疹が出た―添付文書で真っ先に開くべきページはどこか

第119回医師国家試験 E問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第119回 E問題 第25問

薬物投与で皮疹が出現した場合に,添付文書でまず確認するのはどれか。

  1. a.効能又は効果
  2. b.用法及び用量
  3. c.相互作用
  4. d.副作用
  5. e.薬物動態

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、薬物投与中に皮疹が出たとき、添付文書のどの項目をまず確認するかという問題だ。考え方の軸は「この皮疹は何を意味するのか」。そこがわかれば、見るべき項目は自然に決まるよ。
医学生医学生
治療目的とは関係のない反応なので、まず薬疹を疑うということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。治療目的とは異なる、薬物による望ましくない作用、つまり副作用だ。だから最初に開くのは「副作用」の項目になる。そこには、その薬で皮疹が起こりうるか、頻度はどのくらいか、どんな重症型があるかが書かれている。
医学生医学生
副作用の欄は、重大なものとそれ以外に分かれていたような気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。「重大な副作用」と「その他の副作用」に分かれている。発疹や瘙痒のような比較的軽いものは「その他の副作用」に器官別・頻度別の表で載っていて、生命や機能予後に関わるものは「重大な副作用」に初期症状や対処法とともに記載されているんだ。
医学生医学生
皮膚科の講義で習ったStevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症は、「重大な副作用」のほうですね。
ドクタードクター
そう。ほかに薬剤性過敏症症候群、急性汎発性発疹性膿疱症、アナフィラキシーなども重大な副作用として挙げられることがある。目の前の皮疹がこうした重症型の入り口かもしれない、という目で副作用欄を読むことが大切だ。では、ほかの選択肢も見ておこう。「効能又は効果」はどうかな。
医学生医学生
その薬が何の病気に使えるか、つまり適応の欄ですよね。皮疹の評価には直接関係なさそうです。
ドクタードクター
正解。投与目的の確認には役立つけれど、意図しない皮疹の評価には結びつかない。「用法及び用量」はどうだろう。
医学生医学生
量が多すぎたせいで皮疹が出た可能性も考えて、ここを見るのかと少し迷いました。
ドクタードクター
その発想自体は悪くないよ。ただ、薬疹の多くは用量に依存しないアレルギー性の機序で起こる。だから過量投与を見直す場面はあっても、皮疹が出て最初に見る項目ではないんだ。
医学生医学生
「相互作用」は、併用薬が多い患者さんなら関係しそうに思えます。臨床実習の内科病棟では、10種類以上飲んでいる方も珍しくありませんでした。
ドクタードクター
確かに併用禁忌や併用注意を後から確認する意義はある。でも、その皮疹がその薬の有害反応として知られているかを知るための一次情報は、副作用欄にある。「薬物動態」も同じで、吸収・分布・代謝・排泄や半減期がわかるから、薬がどれくらいで体から抜けるかの参考にはなるけれど、原因評価の出発点ではない。
医学生医学生
つまり、皮疹が出たらまず副作用欄で既知の副作用かどうかと重症型を確認して、ほかの項目は必要に応じて後から見る、という順番ですね。
ドクタードクター
その通り。そして実際の臨床では、添付文書を開く前後に、原則として被疑薬を中止することも忘れないでほしい。原因薬がはっきりしなければ、必要性の低い薬から中止を検討する。
医学生医学生
重症薬疹を疑うサインは何でしたっけ。
ドクタードクター
発熱、口唇・口腔・眼・外陰部などの粘膜疹、水疱や表皮剝離、広範な紅斑、リンパ節腫脹、肝障害などだ。こうした所見があれば、速やかに皮膚科専門医と連携しよう。
医学生医学生
添付文書自体についても知っておくべきことはありますか。CBTの勉強では「使用上の注意」の中に副作用がある、と覚えていたのですが。
ドクタードクター
いい質問だ。2019年の記載要領改正で「使用上の注意」という大見出しや「原則禁忌」「慎重投与」の項は廃止され、通し番号付きの項目に整理された。今は警告、禁忌に始まり、副作用は独立した11番の項目になっている。また紙の添付文書の同梱は原則廃止され、PMDAのウェブサイトや外箱のバーコードから電子版を閲覧する仕組みになった。新しい副作用情報が入ると随時改訂されるから、最新版を確認する習慣が大事だ。
医学生医学生
重い副作用が起きたときの制度もありましたよね。
ドクタードクター
医薬品副作用被害救済制度の対象となりうること、そして医療関係者が国に副作用を報告できる医薬品・医療機器等安全性情報報告制度があることも押さえておこう。副作用に気づき、確かめ、対応し、共有する。その最初の一歩が添付文書の副作用欄なんだ。

まとめ

薬物投与中に出現した皮疹は、治療目的と異なる望ましくない作用、すなわち副作用(薬疹)をまず疑い、添付文書の「副作用」欄を最初に確認します。副作用欄は「重大な副作用」と「その他の副作用」に分かれ、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群などの重症薬疹は前者に初期症状や対処法とともに記載されています。効能又は効果、用法及び用量、相互作用、薬物動態も薬の理解には重要ですが、皮疹の原因評価の出発点ではありません。臨床では原則として被疑薬を中止し、発熱・粘膜疹・水疱などの重症化徴候があれば速やかに皮膚科と連携します。2019年の記載要領改正で項目構成が整理され電子化も進んだ添付文書を、最新の情報源として正しく使いこなすことが安全な薬物治療につながります。

解答・解説

正解はdです

テーマ

医療用医薬品の添付文書は、医薬品を適正に使うための最も基本的な公的情報源である。本問は、薬物を投与している最中に皮疹が出てきたとき、添付文書のどの項目を最初に参照すべきかを問うている。

考え方

治療のために投与した薬物で皮疹が生じることは、治療の目的とは異なる、望ましくない作用の発現である。したがってまず疑うべきは薬疹(薬物による皮膚の有害反応)であり、確認すべきは「その薬物で皮疹が起こり得るか、どの程度の頻度で、どのような重症型があるか」という情報である。これらは添付文書の「副作用」の項に記載されている。 実際の臨床では、薬疹を疑ったら原則として被疑薬を中止し、そのうえで副作用欄を参照して次のような点を確かめる。 ・皮疹(発疹、蕁麻疹、紅斑など)が既知の副作用として記載されているか、その発現頻度 ・「重大な副作用」の中に、Stevens-Johnson症候群(SJS、皮膚粘膜眼症候群)、中毒性表皮壊死症(TEN)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)、アナフィラキシーなどの重症型が挙げられているか ・初期症状、発現時期の目安、観察すべき点、対処方法 他の項目(効能・効果、用法・用量、相互作用、薬物動態)も薬物を理解するうえでは重要だが、「出現した皮疹が薬物によるものか」を判断する手がかりとして真っ先に見るべき項目ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  効能又は効果

    その薬物がどの疾患・状態の治療や予防に用いることを承認されているか(適応)を記載した項目である。投与目的を確認するには役立つが、意図しない皮疹が出たことの評価には直接結びつかない。最初に確認すべき項目ではない。

  2. ×b.  用法及び用量

    投与経路、1回量、投与回数、投与期間など、使い方と量を定めた項目である。過量投与の有無を見直す場面はありうるが、薬疹の多くは用量に依存しないアレルギー性の機序で起こるため、皮疹が出たときにまず参照する項目ではない。

  3. ×c.  相互作用

    併用禁忌・併用注意として、他の薬物や食品と一緒に使ったときに作用の増強・減弱や有害事象が生じる組み合わせを記載した項目である。併用薬が多い患者では後から確認する意義があるが、皮疹がその薬物の有害反応かどうかを知るための一次情報は副作用欄にあり、最初に見る項目ではない。

  4. ○d.  副作用

    副作用とは、治療目的とは異なる、薬物によって生じる望ましくない作用である。投与中に出現した皮疹はまさにこれに当たり、副作用欄を見れば、皮疹が既知の副作用か、その頻度はどの程度か、SJS・TEN・DIHSなどの重症型が「重大な副作用」として挙げられているか、初期症状や対処法は何かを確認できる。被疑薬の中止・継続の判断や重症化の見張りに直結するため、最初に確認すべき項目である。

  5. ×e.  薬物動態

    吸収、分布、代謝、排泄(ADME)の経時的な過程や、血中濃度推移、半減期、生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)などを記載した項目である。薬物が体内からどれくらいで消失するかを知る参考にはなるが、皮疹の原因評価として最初に見る項目ではない。

添付文書の位置づけ

医療用医薬品の添付文書は、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づいて製造販売業者が作成する公的文書で、医師・薬剤師などの医療従事者に向けて、適正使用に必要な情報を提供するものである。新たな副作用情報などが得られると随時改訂される。2021年8月からは原則として紙の添付文書の同梱が廃止され、電子化された添付文書(注意事項等情報)を医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトや、外箱のGS1バーコードを読み取ることで閲覧する仕組みになった。

現行の記載項目(2019年の記載要領改正後)

従来あった「使用上の注意」という大見出し、「原則禁忌」「慎重投与」の項は廃止され、通し番号付きの項目に整理された。主な項目の順序は次のとおりである。 1 警告/2 禁忌/3 組成・性状/4 効能又は効果/5 効能又は効果に関連する注意/6 用法及び用量/7 用法及び用量に関連する注意/8 重要な基本的注意/9 特定の背景を有する患者に関する注意(合併症・既往歴、腎機能障害、肝機能障害、生殖能を有する者、妊婦、授乳婦、小児、高齢者など)/10 相互作用(併用禁忌・併用注意)/11 副作用(11.1 重大な副作用、11.2 その他の副作用)/12 臨床検査結果に及ぼす影響/13 過量投与/14 適用上の注意/15 その他の注意/16 薬物動態/17 臨床成績/18 薬効薬理/19 有効成分に関する理化学的知見/20 取扱い上の注意/21 承認条件/22 包装/23 主要文献/24 文献請求先及び問い合わせ先/25 保険給付上の注意/26 製造販売業者等

副作用欄の構成

「重大な副作用」には、生命や機能予後に関わりうるもの(SJS、TEN、DIHS、アナフィラキシー、肝機能障害、無顆粒球症など)が、初期症状や対処法とともに記載される。「その他の副作用」には、発疹・瘙痒などの比較的軽いものが、器官別・頻度別に表形式で示される。

薬疹を疑ったときの対応

・被疑薬を中止する(原因薬が不明なら、必要性の低い薬から中止を検討する)。 ・発熱、粘膜疹(口唇・口腔・眼・外陰部のびらん)、水疱・表皮剝離、広範な紅斑、リンパ節腫脹、肝障害などがあれば重症薬疹を疑い、速やかに皮膚科専門医と連携する。 ・重篤な副作用が生じた場合は、医薬品副作用被害救済制度の対象となりうること、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に基づき医療関係者が国(PMDA)へ報告できることも押さえておく。

POINT

・薬物投与中に出現した皮疹は、まず薬疹(副作用)を疑い、添付文書の「副作用」欄を確認する。 ・副作用欄は「重大な副作用」と「その他の副作用」に分かれ、SJS・TEN・DIHSなどの重症薬疹は前者に記載される。 ・薬疹を疑ったら原則として被疑薬を中止し、粘膜疹・発熱・水疱などの重症化徴候に注意する。 ・2019年の記載要領改正で「使用上の注意」「原則禁忌」「慎重投与」は廃止され、項目は番号付きで整理された(副作用は11番)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。