針は寝かせて浅く平行に―「膨疹」をつくる皮内注射の基本
第111回医師国家試験 H問題 第9問
国試問題にチャレンジ
皮内注射について正しいのはどれか。
- a.注射部位をよく揉む。
- b.インスリン投与に用いる。
- c.注射後24時間は入浴を控える。
- d.血液の逆流を確かめてから注入する。
- e.刺入後は皮膚の表面と平行に針を進める。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
皮内注射は真皮内に約0.1mLの薬液を注入する方法で、全身投与ではなくツベルクリン反応やアレルギー皮内テストなど局所の皮膚反応をみる検査に用いられます。細い針を刃面を上にして皮膚とほぼ平行に浅く刺入し、平行を保ったまま進めて膨疹をつくるのが要点で、膨疹ができなければ皮下に入った可能性があります。注射後に揉むと薬液が広がって判定を誤るため揉まず、真皮には太い血管がないため逆流確認も行わず、24時間もの入浴制限は不要です。インスリンは吸収を安定させるため皮下注射で投与し、刺入角度や吸収速度は皮内・皮下・筋肉・静脈の順で異なります。注射法を深さと目的で整理しておくことは、臨床実習や研修での安全な手技と検査結果の正しい解釈につながります。
解答・解説
正解はeです
皮内注射は、皮膚のごく浅い層である真皮内に、少量(通常0.1mL程度)の薬液を注入する方法である。皮膚は外側から表皮(厚さ約0.1〜0.2mm)、真皮(約1〜4mm、部位により異なる)、皮下組織の順に重なっている。皮内注射はこの薄い真皮の中に薬液を入れなければならないので、手技の要点はいかに浅く刺すかにある。
皮内注射の目的
全身に作用させるための投与経路ではなく、主に局所の皮膚反応を観察する検査として行う。代表的なのはツベルクリン反応、アレルギーの皮内反応テスト(薬剤や抗原に対する即時型反応の確認)である。BCGは管針による経皮接種なので、皮内注射とは区別する。
手技の要点
・部位は前腕屈側など、皮膚が薄く血管や神経の走行が少なく、反応を観察しやすい場所を選ぶ。 ・細い針(26〜27G程度)を、刃面(ベベル)を上に向けて、皮膚とほぼ平行(約10〜15度以下)に浅く刺入する。 ・刃面が皮内に隠れる程度まで進めたら、皮膚表面と平行を保ったまま数mm進め、薬液を注入する。 ・正しく皮内に入ると、注入部が白っぽく盛り上がった膨疹(直径数mm程度)ができ、毛穴が目立って皮膚がミカンの皮のように見える。膨疹ができずに抵抗なく入っていく場合は、皮下に入っている可能性が高い。 ・抜針後は揉まず、膨疹の位置に印をつけて判定時刻に反応を観察する。 本問は、皮内注射と皮下注射・筋肉注射・静脈注射の違い(深さ、目的、手技上の注意)を整理できているかを問うている。
選択肢考察
- ×a. 注射部位をよく揉む。
誤り。皮内注射の後に注射部位を揉むと、真皮内にとどめた薬液が周囲や皮下組織へ広がる。その結果、膨疹の大きさや発赤・硬結が正しく評価できなくなり、ツベルクリン反応やアレルギー皮内テストの判定を誤るおそれがある。物理的な刺激で発赤が生じ、偽陽性の原因にもなる。抜針後はアルコール綿で軽く押さえる程度にとどめ、揉まない。なお、揉むことがあるのは一部の筋肉注射で吸収を促したい場合だが、薬剤によっては揉んではならないものもある。
- ×b. インスリン投与に用いる。
誤り。インスリンは皮下注射で投与する。皮下組織に注入すると血中への吸収が緩やかで一定になり、血糖降下作用を安定して得られる。注射部位は腹壁、上腕外側、大腿外側、臀部などで、同じ場所に繰り返し打つと脂肪組織が硬くなる(リポハイパートロフィー)。そのため注射部位を少しずつずらす。皮内注射は注入できる量がごく少なく吸収も一定しないので、全身作用を目的とする薬剤の投与には適さない。
- ×c. 注射後24時間は入浴を控える。
誤り。皮内注射の後に24時間も入浴を控える必要はない。刺入部はごく小さく、注射後しばらく(1時間程度)たてば入浴しても差し支えないとされる。ただし判定前の皮内反応部位を、入浴時に強くこすったり揉んだりしないよう指導する。
- ×d. 血液の逆流を確かめてから注入する。
誤り。皮内注射で刺入する真皮浅層には、注射針に血液が逆流するほどの太い血管がない。そのため逆流の確認(内筒を引いて血液が戻らないか確かめる操作)は通常行わない。また、刺入が浅いので、内筒を引く操作で針先がずれて皮内から抜けやすくなる。逆流の確認は、薬液を誤って血管内に入れないために、筋肉注射などで行われることがある操作である。静脈注射では、針先が血管内にあることを確かめる目的で逆流を確認する。
- ○e. 刺入後は皮膚の表面と平行に針を進める。
正しい。真皮はごく薄いので、針をほぼ寝かせた角度(約10〜15度以下)で浅く刺入する。刃面が皮内に入ったら、皮膚表面と平行を保ったまま数mm進めて薬液を注入する。角度をつけたまま進めると針先が深くなって皮下組織に達し、膨疹ができずに検査として成り立たなくなる。参考までに、ほかの注射の刺入角度の目安は、皮下注射が約10〜30度、筋肉注射が約45〜90度である。
注射法の比較
・皮内注射:真皮内に注入する。刺入角度は皮膚とほぼ平行(約10〜15度以下)。注入量はごく少量(約0.1mL)。目的はツベルクリン反応、アレルギー皮内テストなど。吸収は最も遅い。 ・皮下注射:皮下組織(脂肪層)に注入する。刺入角度は約10〜30度。代表的な薬剤はインスリン、ヘパリン類、一部のワクチン。吸収は比較的緩やかで、効果は持続的。 ・筋肉注射:筋層に注入する。刺入角度は約45〜90度。筋肉は血流が豊富なため、皮下注射より吸収が速い。油性製剤や懸濁液、刺激性のある薬剤も投与できる。部位は三角筋や中殿筋などで、坐骨神経・橈骨神経などの神経損傷を避ける部位選択が重要である。 ・静脈注射:静脈内に直接投与する。吸収過程がなく、効果の発現が最も速い。経口投与と異なり肝臓の初回通過効果を受けない。 吸収速度の一般的な順序は、静脈注射 > 筋肉注射 > 皮下注射 > 皮内注射(> 経口)である。
ツベルクリン反応
結核菌に対する遅延型(Ⅳ型)アレルギー反応をみる検査である。精製ツベルクリン(PPD)0.1mLを前腕屈側に皮内注射し、48時間後に発赤・硬結の径を測定して判定する。BCG接種の影響を受けるため、現在、結核感染の診断にはインターフェロンγ遊離試験(IGRA)がよく用いられる。
POINT
・皮内注射は真皮内への注入で、主にツベルクリン反応やアレルギー皮内テストなどの検査に用いる。 ・皮膚とほぼ平行に浅く刺入し、平行を保ったまま進めて膨疹をつくる。 ・注射後は揉まない(薬液が広がり判定を誤る)。 ・真皮には太い血管がないので、血液の逆流確認は行わない。 ・インスリンは皮下注射で投与する。 ・24時間の入浴制限は不要である。
