StudyMed医師国家試験

「よくある健診」と「法定の健診」は違う―母子保健法が定める1歳6か月児・3歳児健診

第111回医師国家試験 G問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第33問

母子保健法に規定されている児の健康診査の時期で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.1か月
  2. b.4か月
  3. c.1歳
  4. d.1歳6か月
  5. e.3歳

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は母子保健法で健診の時期がどう定められているかを問う問題だ。着眼点は、実際に広く行われている健診と、法律の条文で時期が明記されている健診を区別できるかどうか。まず、子どもの健診というと、どの時期が思い浮かぶかな。
医学生医学生
1か月健診、4か月健診、1歳半健診、3歳児健診……。全部やっている気がするので、正直どれも正しく見えます。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だよ。実際に多くの市町村がその時期に健診をしているからね。でも母子保健法では、健診について二つの条文で位置づけが分かれているんだ。第12条は、市町村が「行わなければならない」義務の健診。第13条は、それ以外に必要に応じて行う健診だ。
医学生医学生
義務として時期が書かれているのはどれなんですか。
ドクタードクター
第12条に明記されているのは、満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児の健診と、満3歳を超え満4歳に達しない幼児の健診の二つだけ。つまり1歳6か月児健診と3歳児健診だね。これが正解の二つになる。
医学生医学生
じゃあ1か月健診は法律に書かれていないんですか。小児科実習で、生まれた病院で1か月健診をしているのを見ました。
ドクタードクター
1か月健診はとても大事な機会で、体重増加や黄疸の遷延、先天異常、哺乳の状況、ビタミンK2シロップの投与確認などを行う。でも法律上は第13条の「必要に応じて行う健診」に位置づけられるんだ。近年は国が費用助成を進めているけれど、第12条の義務健診ではない点は変わらない。
医学生医学生
4か月健診も同じ扱いですか。首のすわりを確認する健診ですよね。
ドクタードクター
そう。3〜4か月健診は首のすわり、股関節脱臼のスクリーニング、体重増加の評価などを目的に、ほぼすべての市町村で行われている。それでも時期を法律が定めているわけではなく、第13条に基づいて市町村が実施しているものだ。
医学生医学生
1歳はどうでしょう。1歳前後でも健診があった気がします。
ドクタードクター
9〜10か月健診や1歳前後の健診をしている自治体はあるけれど、母子保健法は満1歳を健診時期として定めていない。第12条の幼児健診は、1歳6か月児と3歳児の二つのみ、と覚えておけばいい。
医学生医学生
なぜ1歳6か月と3歳が義務になっているんでしょうか。何か発達の節目なんですか。
ドクタードクター
いい質問だね。1歳6か月は独歩の完成、意味のある単語の出現、指さしなど、運動・言語・社会性の発達を評価しやすい時期で、精神運動発達遅滞や自閉スペクトラム症の早期発見に適している。歯科健診も併せて行われるよ。3歳では二語文以上の会話ができるかに加えて、視覚検査や聴覚検査、尿検査、歯科健診が行われる。
医学生医学生
3歳の視覚検査は弱視の発見のためですよね。眼科の講義で、視覚の感受性期を過ぎると治療効果が落ちると習いました。
ドクタードクター
その通り。弱視は感受性期のうちに治療を始める必要があるから、3歳でのスクリーニングの意義は大きい。難聴も言語発達に直結するから、早期発見が重要だね。
医学生医学生
法定の義務健診は1歳6か月と3歳、乳児健診は市町村が必要に応じて行う、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に関連知識も押さえておこう。母子保健法の施策は、原則として市町村が実施主体なんだ。妊娠の届出と母子健康手帳の交付、新生児訪問指導、出生時体重2,500g未満の低体重児の届出、未熟児訪問指導、養育医療の給付などがある。妊婦健診も第13条に基づいて市町村が行っている。
医学生医学生
公衆衛生の試験では、実施主体が都道府県か市町村かで迷うことが多かったです。
ドクタードクター
母子保健は身近な市町村、と押さえておくと整理しやすいよ。臨床の場面でも、健診で見つかった発達の遅れや視力・聴力の異常を、医療機関や療育へきちんとつなぐことが大切だ。健診は「見つける」だけでなく、支援につなぐ入り口でもあるんだ。

まとめ

母子保健法第12条により、市町村が実施を義務付けられている健診は、満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児の1歳6か月児健診と、満3歳を超え満4歳に達しない幼児の3歳児健診の二つです。1か月や3〜4か月などの乳児健診、妊婦健診は広く実施されていますが、第13条に基づき市町村が必要に応じて行うもので、時期は法律で特定されていません。1歳6か月では独歩・有意語・指さしなど発達の評価、3歳では言語発達に加えて視覚・聴覚検査による弱視や難聴の発見が重視されます。母子健康手帳の交付や低体重児の届出など、母子保健法の施策の実施主体は原則として市町村です。「よく行われている健診」と「法定の健診」を区別して理解することは、公衆衛生の知識としてだけでなく、地域の子育て支援に関わる医師としての基礎にもなります。

解答・解説

正解はd, eです

母子保健法は、妊産婦・乳児・幼児の健康の保持増進を目的とした法律であり、健康診査(健診)について二つの条文で異なる位置づけを与えている。

第12条:市町村に実施が義務付けられた健診

市町村は、次の幼児に対して健康診査を「行わなければならない」と規定されている。 ・満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児 → 1歳6か月児健康診査(いわゆる1歳半健診) ・満3歳を超え満4歳に達しない幼児 → 3歳児健康診査

第13条:必要に応じて行う健診

第12条の健診のほか、市町村は必要に応じて妊産婦・乳児・幼児に健康診査を行い、または受診を勧奨しなければならないとされている。妊婦健診や、1か月・3〜4か月・6〜7か月・9〜10か月などの乳児健診はこの条文を根拠に各市町村が実施しているもので、実施時期や回数は法律で特定されていない。 したがって「母子保健法に規定されている時期」として条文に年齢が明記されているのは、1歳6か月と3歳の二つである。実際には多くの市町村が乳児期にも健診を行っているため、「よく行われている健診」と「法律で時期が定められた健診」を区別できるかがポイントとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  1か月

    1か月健診は、出生した医療機関などで広く行われ、体重増加、黄疸の遷延、先天異常、哺乳状況、ビタミンK2シロップの投与確認などを行う重要な機会である。しかし母子保健法で時期が明記された健診ではなく、第13条の「必要に応じて行う健診」に位置づけられる。近年は国が市町村による1か月児健診の費用助成を進めているが、法定の義務健診(第12条)ではない点は変わらない。

  2. ×b.  4か月

    3〜4か月健診は首のすわり(頸定)の確認、股関節脱臼のスクリーニング、体重増加の評価などを目的に、ほぼすべての市町村で実施されている。ただし実施時期を法律が定めているわけではなく、第13条に基づき市町村が判断して行う乳児健診である。

  3. ×c.  1歳

    9〜10か月健診や1歳前後の健診を行う自治体はあるが、母子保健法は満1歳を健診時期として定めていない。第12条が対象とする幼児健診は1歳6か月児と3歳児の二つのみである。

  4. ○d.  1歳6か月

    母子保健法第12条により、市町村は満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児に健康診査を行わなければならない。この時期は独歩の完成、意味のある単語(有意語)の出現、指さしなど運動・言語・社会性の発達を評価しやすく、精神運動発達遅滞や自閉スペクトラム症などの早期発見に適している。歯科健診も併せて行われ、う歯予防の指導の機会にもなる。

  5. ○e.  3歳

    母子保健法第12条により、市町村は満3歳を超え満4歳に達しない幼児に健康診査を行わなければならない。身体発育、言語発達(二語文以上の会話)、社会性の評価に加え、視覚検査(弱視・斜視の発見)や聴覚検査(難聴の発見)、尿検査、歯科健診などが行われる。弱視は視覚の感受性期のうちに治療を始める必要があるため、この時期のスクリーニングの意義は大きい。

乳幼児健診の法的な位置づけ

・第12条(義務):1歳6か月児健診、3歳児健診。実施主体は市町村。 ・第13条(必要に応じて実施・勧奨):妊婦健診、乳児健診(1か月、3〜4か月、6〜7か月、9〜10か月など)、その他の幼児健診。時期や回数は市町村の判断による。

母子保健法に基づく主な施策(実施主体はいずれも市町村)

・妊娠の届出(第15条)と母子健康手帳の交付(第16条) ・保健指導(第10条)、新生児訪問指導(第11条)、妊産婦訪問指導等(第17条) ・低体重児の届出(第18条):出生時体重2,500g未満の児 ・未熟児訪問指導(第19条)、養育医療の給付(第20条) ・こども家庭センター(旧 母子健康包括支援センター)による切れ目のない支援

各健診で重視される評価項目の例

・1か月:体重増加、黄疸、哺乳、先天異常 ・3〜4か月:頸定、股関節脱臼、追視 ・1歳6か月:独歩、有意語、指さし、う歯 ・3歳:二語文・会話、視力(弱視)、聴力、尿検査

POINT

・母子保健法第12条で市町村に実施が義務付けられた健診は「1歳6か月児健診」と「3歳児健診」の二つのみ。 ・対象は「満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児」「満3歳を超え満4歳に達しない幼児」。 ・妊婦健診や乳児健診(1か月、3〜4か月など)は第13条に基づき、市町村が必要に応じて実施する。 ・母子保健法の施策の実施主体は原則として市町村である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。