StudyMed医師国家試験

48時間後の赤い硬結―ツベルクリン反応が映し出す「T細胞の記憶」

第111回医師国家試験 G問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第21問

ツベルクリン反応に関連する免疫細胞はどれか。

  1. a.B細胞
  2. b.T細胞
  3. c.好中球
  4. d.好酸球
  5. e.NK細胞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ツベルクリン反応がどんな仕組みで起こるかを問う免疫学の問題だ。着眼点はひとつ、「この反応はアレルギーの何型に当たるか」。そこが分かれば、主役の細胞は自然に決まるよ。
医学生医学生
ツベルクリン反応って、注射してから2日後に見るんでしたよね。ずいぶん時間がかかるなと思っていました。
ドクタードクター
その「時間がかかる」こそが最大のヒントなんだ。結核菌の培養液から精製した蛋白抗原、PPDを前腕に皮内注射して、48時間後に発赤と硬結の大きさを測る。花粉症のように数分で反応が出るものとは明らかに違うよね。
医学生医学生
遅れて出るということは、Ⅳ型、遅延型アレルギーでしょうか。
ドクタードクター
その通り。過去に結核菌に感染したりBCGを接種したりした人の体内には、結核菌抗原を覚えている記憶T細胞がいる。PPDが入ると抗原提示細胞がそれを提示し、感作されたCD4陽性T細胞、主にTh1細胞が再活性化される。Th1細胞はIFN-γなどのサイトカインを放出して、マクロファージを呼び寄せて活性化する。この細胞浸潤が発赤と硬結の正体なんだ。
医学生医学生
だから答えはT細胞なんですね。抗体が出てこないのが特徴ですか。
ドクタードクター
そう、Ⅳ型は抗体を介さない細胞性免疫の反応だ。T細胞が集まって増え、サイトカインを作るまでに時間を要するから、反応のピークが24〜72時間後になる。では、ほかの選択肢も確認しよう。B細胞はどうかな。
医学生医学生
B細胞は形質細胞になって抗体を作る液性免疫の担い手なので、Ⅰ〜Ⅲ型のほうに関わる細胞だと思います。
ドクタードクター
正解。IgEが関わるⅠ型、IgGやIgMが細胞を傷害するⅡ型、免疫複合体が沈着するⅢ型、いずれも抗体が主役だ。抗体を介さないツベルクリン反応の中心ではない。次は好中球。
医学生医学生
基礎の免疫学の講義で、Arthus反応では好中球が集まると習いました。でもあれはⅢ型でしたね。
ドクタードクター
よく覚えているね。好中球は細菌に対する初期の自然免疫の食細胞で、Ⅲ型では免疫複合体と補体に誘導されて浸潤する。ツベルクリン反応の局所にも二次的に好中球が来ることはあるけれど、反応を抗原特異的に引き起こしているのは感作T細胞で、浸潤の主体もリンパ球とマクロファージだ。
医学生医学生
好酸球は喘息や寄生虫で増えるイメージです。
ドクタードクター
そうだね。好酸球はTh2型サイトカインのIL-5などで誘導され、Ⅰ型アレルギーの遅発相や寄生虫感染で働く。ツベルクリン反応はTh1型の反応だから方向性が違う。最後のNK細胞はどうだろう。
医学生医学生
NK細胞もリンパ球なので少し迷いましたが、自然免疫の細胞でしたよね。
ドクタードクター
その通り。NK細胞は事前の感作なしにウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する。ツベルクリン反応は「過去に感作されたかどうか」を見る獲得免疫の反応だから、NK細胞は主役になれないんだ。
医学生医学生
Ⅳ型の代表例には、接触皮膚炎や移植片拒絶もありましたよね。CBTの勉強で一緒に覚えました。
ドクタードクター
いい整理だ。ほかに結核やサルコイドーシスの肉芽腫形成もⅣ型だよ。臨床で大事なのは、細胞性免疫が落ちていると、結核に感染していても反応が陰性化しうること。HIV感染症、ステロイドや免疫抑制薬の使用、粟粒結核のような重症結核、サルコイドーシス、麻疹罹患後などが代表だ。
医学生医学生
呼吸器内科の実習で、サルコイドーシスの患者さんはツベルクリン反応が陰性になると教わりました。逆に偽陽性もあるんですか。
ドクタードクター
BCG接種でも陽性になってしまうのが大きな弱点だ。日本ではBCGが広く行われているから、結核感染の判定には使いにくい。そこで現在はIGRA、つまりインターフェロンγ遊離試験が潜在性結核感染症の診断に広く用いられている。BCG株にはないESAT-6やCFP-10という結核菌特異抗原でT細胞を刺激して、出てくるIFN-γを測る検査だ。
医学生医学生
IGRAもT細胞の反応を見ているという点では、ツベルクリン反応と同じ原理なんですね。
ドクタードクター
まさにそう。どちらも細胞性免疫を映す検査だから、免疫抑制状態では結果の解釈に注意が必要になる。仕組みを理解しておけば、検査の限界まで見通せるよ。

まとめ

ツベルクリン反応は、精製ツベルクリン(PPD)を皮内注射して48時間後に発赤・硬結を判定する検査で、Ⅳ型(遅延型)アレルギーに分類されます。結核菌抗原に感作されたCD4陽性Th1細胞がIFN-γなどを放出し、マクロファージを集積・活性化させることで反応が生じるため、中心となる免疫細胞はT細胞です。B細胞は抗体を介するⅠ〜Ⅲ型、好中球はⅢ型、好酸球はⅠ型遅発相や寄生虫感染、NK細胞は感作不要の自然免疫に関わり、いずれも主役ではありません。細胞性免疫が低下すると偽陰性となり、BCG接種で偽陽性となるため、結核感染の診断には結核菌特異抗原を用いるIGRAが広く使われています。アレルギーの4分類を細胞と時間経過で整理しておくことは、検査結果の解釈や免疫抑制患者の診療に直結する基礎となります。

解答・解説

正解はbです

ツベルクリン反応がどの型の免疫反応に当たるかを理解していれば解ける問題である。

ツベルクリン反応とは

結核菌の培養液から抽出・精製した蛋白抗原である精製ツベルクリン(PPD: purified protein derivative)を前腕屈側に皮内注射し、48時間後に注射部位の発赤・硬結の大きさを判定する検査である。結核菌(またはBCG)に対して過去に感作が成立しているかどうかを調べる。

反応の仕組み

過去の感染やBCG接種で結核菌抗原に感作された人では、抗原特異的な記憶T細胞が体内に存在する。PPDが皮内に入ると、抗原提示細胞が抗原を提示し、感作されたCD4陽性T細胞(主にTh1細胞)が再活性化される。Th1細胞はインターフェロンγ(IFN-γ)、IL-2、TNFなどのサイトカインを放出し、単球・マクロファージを局所に呼び寄せて活性化する。その結果、細胞浸潤による発赤と硬結が生じる。 この一連の過程は抗体を介さず、T細胞の動員と増殖、サイトカイン産生に時間を要するため、反応のピークは抗原投与後24〜72時間(判定は48時間後)となる。これがⅣ型(遅延型、細胞性免疫型)アレルギーであり、中心的役割を担う免疫細胞はT細胞である。

選択肢考察

  1. ×a.  B細胞

    誤り。B細胞は形質細胞に分化して抗体を産生し、液性免疫を担う。抗体が関与するのはⅠ型(IgE)、Ⅱ型(IgG・IgMによる細胞傷害)、Ⅲ型(免疫複合体)アレルギーであり、抗体を介さないⅣ型アレルギーであるツベルクリン反応の主役ではない。

  2. ○b.  T細胞

    正しい。ツベルクリン反応は感作T細胞によるⅣ型(遅延型)アレルギーである。結核菌抗原に感作されたCD4陽性Th1細胞がPPDに反応してIFN-γなどを放出し、マクロファージを活性化・集積させることで、注射部位に発赤と硬結が生じる。細胞性免疫が低下した状態(HIV感染症、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の使用、粟粒結核などの重症結核、サルコイドーシス、麻疹罹患後など)では、感染があっても反応が陰性化しうる。

  3. ×c.  好中球

    誤り。好中球は細菌感染に対する初期の自然免疫で働く食細胞であり、Ⅲ型アレルギー(Arthus反応など)では免疫複合体と補体に誘導されて主体的に浸潤する。ツベルクリン反応の局所にも二次的に好中球が集まることはあるが、抗原特異的に反応を引き起こすのは感作T細胞であり、浸潤細胞の主体もリンパ球とマクロファージである。

  4. ×d.  好酸球

    誤り。好酸球はⅠ型アレルギーの遅発相(気管支喘息など)や寄生虫感染で増加・活性化する細胞であり、主にTh2型サイトカイン(IL-5など)によって誘導される。Th1型の反応であるツベルクリン反応の中心ではない。

  5. ×e.  NK細胞

    誤り。ナチュラルキラー(NK)細胞は自然免疫に属するリンパ球で、事前の感作を必要とせずにウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する。ツベルクリン反応は過去の感作に依存する抗原特異的な獲得免疫反応であり、NK細胞が中心となる反応ではない。

Coombs & Gell分類によるアレルギーの4型

・Ⅰ型(即時型・アナフィラキシー型): IgEと肥満細胞・好塩基球。数分〜数十分で発症。例: 花粉症、アトピー型喘息、アナフィラキシー、即時型皮内反応。 ・Ⅱ型(細胞傷害型): 細胞表面抗原に対するIgG・IgMと補体。例: 自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、Goodpasture症候群。Basedow病や重症筋無力症のような受容体抗体による病態を別にⅤ型とする考え方もある。 ・Ⅲ型(免疫複合体型): 抗原抗体複合体の沈着と補体・好中球。例: 血清病、全身性エリテマトーデス、溶連菌感染後糸球体腎炎、Arthus反応。 ・Ⅳ型(遅延型・細胞性免疫型): 感作T細胞とマクロファージ。24〜72時間で反応。例: ツベルクリン反応、接触皮膚炎、移植片拒絶反応、肉芽腫形成(結核、サルコイドーシス)。

ツベルクリン反応の限界とIGRA

BCG接種でも陽性となるため、BCG接種が広く行われる日本では結核感染の判定に用いにくい。このため現在は、結核菌特異抗原(ESAT-6、CFP-10。BCG株には含まれない)でT細胞を刺激し、放出されるIFN-γを測定するインターフェロンγ遊離試験(IGRA: QuantiFERON、T-SPOTなど)が潜在性結核感染症の診断に広く用いられている。IGRAも原理はT細胞の応答をみる検査であり、ツベルクリン反応と同じく細胞性免疫を反映する。

POINT

・ツベルクリン反応はⅣ型(遅延型)アレルギーであり、主役は感作T細胞(Th1細胞)とマクロファージである。 ・PPDを皮内注射し、48時間後に発赤・硬結を判定する。 ・Ⅳ型アレルギーの代表例: ツベルクリン反応、接触皮膚炎、移植片拒絶、肉芽腫形成。 ・細胞性免疫が低下した状態では偽陰性となりうる。BCG接種で偽陽性となるため、結核感染の診断にはIGRAが用いられる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。