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カレンダーより骨が知っている―二次性徴の順番と「骨年齢」の意味

第111回医師国家試験 E問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第111回 E問題 第19問

二次性徴について正しいのはどれか。

  1. a.女子では陰毛の出現が最初の徴候である。
  2. b.男子では腋毛の出現が最初の徴候である。
  3. c.発現は暦年齢より骨年齢によく相関する。
  4. d.陰茎の成長は思春期後期に出現する。
  5. e.身長急伸は初経の後に起こる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は思春期の二次性徴についての知識問題だ。押さえるべきは2点。男女それぞれで「最初に何が起こり、最後に何が来るか」という出現順序と、二次性徴の時期が何と結びついているか、だよ。まず仕組みから確認しよう。二次性徴はどうやって始まるかな。
医学生医学生
視床下部からGnRHが出て、下垂体のLH・FSHが増えて、性腺から性ホルモンが分泌される流れですよね。生理学の講義でやりました。
ドクタードクター
その通り。思春期になるとGnRHの律動的な分泌が始まり、卵巣からはエストロゲン、精巣からはテストステロンが出てくる。これらが乳房や外性器、体毛を発達させると同時に、骨にも作用するのがポイントなんだ。では女子の二次性徴で最初に現れるものは何だと思う?
医学生医学生
陰毛かなと思ったんですが……毛が生えるのが分かりやすい変化なので。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。女子で最初に現れるのは乳房の発育、つまり乳房がつぼみ状に膨らみ始めることで、Tanner分類の2度にあたる。陰毛はそれに続いて出てくることが多い。陰毛は副腎由来のアンドロゲンの影響が大きく、乳房発育より遅れるのが典型なんだ。
医学生医学生
なるほど。では男子は腋毛が最初、というのも違いそうですね。
ドクタードクター
そう。男子で最初に現れるのは精巣容量の増大で、4 mL以上が目安になる。そこから陰茎の発育と陰毛の発生が続き、腋毛・ひげ・声変わりは思春期の後半になってから現れる。腋毛はむしろ遅いサインなんだ。
医学生医学生
小児科の実習で、外来の先生がオーキドメーターという数珠みたいな器具で精巣の大きさを測っていました。あれが思春期開始の判定なんですね。
ドクタードクター
よく見ていたね。外見だけでは分かりにくいから、客観的に測ることに意味がある。ついでに陰茎の成長の時期も確認しておこう。思春期の後期に起こると思う?
医学生医学生
精巣の次に来るなら、前半ではないでしょうか。後期に来るのは腋毛やひげ、変声のほうだと思います。
ドクタードクター
正解。テストステロンが増え始めると比較的早い段階で陰茎は大きくなり始めるから、思春期の前半、Tanner 3度ごろから目立ってくる。次は女子の身長急伸と初経の関係だ。どちらが先かな。
医学生医学生
初経が来てから背が伸びる印象があったんですが、逆でしたっけ。
ドクタードクター
逆なんだ。女子の身長急伸は乳房発育が始まって間もない思春期の早い時期に起こり、身長が伸びるスピードのピークを過ぎてから初経が来る。初経のころにはエストロゲンの作用で骨端線の閉鎖が進み始めているから、その後の伸びは限られるんだよ。
医学生医学生
性ホルモンは骨を伸ばすだけじゃなくて、成長板を閉じる方向にも働くということですね。
ドクタードクター
その通り。そこから正解が見えてくる。性ホルモンは骨の成熟そのものを進めるから、二次性徴の発現は生まれてからの年数である暦年齢よりも、骨の成熟度から推定した骨年齢とよく相関する。これが正しい記述だ。
医学生医学生
同じ12歳でも、体の成熟度は人によってかなり違いますもんね。骨年齢はどうやって測るんでしたっけ。
ドクタードクター
手のX線写真で手根骨や中手骨、指骨の成熟度を評価する。TW2法やGreulich-Pyleのアトラス法が標準的な方法だ。思春期が早すぎる、あるいは遅すぎるという相談では、骨年齢を暦年齢や身長と比べて評価するのが基本になる。
医学生医学生
骨年齢が遅れていたら体質性思春期遅発症、進んでいたら思春期早発症を考える、という感じでしょうか。
ドクタードクター
大筋はいいね。骨年齢が遅れる病態には体質性思春期遅発症のほか、成長ホルモン分泌不全、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症などがある。逆に思春期早発症や先天性副腎過形成のように性ホルモンが過剰だと骨年齢は進む。骨年齢が進みすぎると骨端線が早く閉じて、最終身長が低くなるおそれがあるのが臨床上の注意点だ。
医学生医学生
子どものうちは背が高くても、大人になると低くなってしまうことがあるんですね。
ドクタードクター
そう。だから思春期早発症では早めの診断と治療が大切になる。日本の診断の手引きでは、女子なら7歳6か月未満の乳房発育、男子なら9歳未満の精巣容量増大などが目安になっているよ。

まとめ

二次性徴は視床下部―下垂体―性腺系の活性化によって起こり、最初の徴候は女子では乳房発育、男子では精巣容量の増大(4 mL以上)です。女子では乳房発育に続いて陰毛、身長急伸、初経の順に進み、身長急伸は初経より前に起こります。男子では精巣増大に続き思春期前半に陰茎の発育と陰毛が現れ、腋毛・ひげ・変声は後半の所見です。性ホルモンは骨の成長と同時に骨成熟を進めるため、二次性徴の発現は暦年齢より骨年齢とよく相関し、手のX線写真による骨年齢評価は思春期早発症や遅発症の診療に欠かせません。出現順序と骨年齢の意味を理解しておくことは、低身長や思春期の異常を相談された際の評価の土台になります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

二次性徴(思春期に性ホルモンの作用で現れる身体の性差の発達)の出現順序と、その発現時期を規定する因子を問う問題である。

二次性徴が起こる仕組み

思春期になると視床下部からのGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の律動的分泌が始まり、下垂体からLH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され、性腺(卵巣・精巣)からエストロゲンやテストステロンが分泌される。これらの性ホルモンは乳房・外性器・体毛の発達を促すと同時に、骨の長軸方向の成長を加速させ(身長急伸)、さらに骨端線(成長板)の成熟・閉鎖も進める。

解き方の考え方

・最初の徴候:女子は乳房発育(乳房腫大、thelarche)、男子は精巣容量の増大である。陰毛や腋毛は副腎・性腺アンドロゲンによるもので、それより後に現れる。 ・身長急伸と初経:女子の身長急伸(成長スパート)は思春期の比較的早い時期に起こり、ピークを過ぎてから初経が来る。初経以降は骨端線の閉鎖が進むため、身長の伸びは鈍る。 ・暦年齢と骨年齢:性ホルモンは骨成熟そのものを進めるため、二次性徴の発現は暦年齢(生まれてからの年数)よりも骨年齢(骨の成熟度から推定した生物学的年齢)とよく一致する。 これらを押さえれば、正しい記述は「発現は暦年齢より骨年齢によく相関する」であると判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  女子では陰毛の出現が最初の徴候である。

    誤り。女子の二次性徴で最初に現れるのは乳房の発育(Tanner分類2度:乳房のつぼみ状隆起)である。その後、陰毛の発生、外性器の発達、身長急伸を経て、最後に初経が来るのが一般的な順序である。陰毛の出現は副腎由来のアンドロゲンの影響が大きく、乳房発育より遅れて現れることが多い。

  2. ×b.  男子では腋毛の出現が最初の徴候である。

    誤り。男子で最初に現れる徴候は精巣容量の増大(Tanner分類2度、精巣容量4 mL以上が目安)である。続いて陰茎の発育、陰毛の発生が起こり、腋毛・ひげ・声変わり(変声)は思春期の後半に現れる。腋毛はむしろ遅い徴候であり、最初の徴候ではない。

  3. ○c.  発現は暦年齢より骨年齢によく相関する。

    正しい。二次性徴を引き起こすエストロゲン・アンドロゲンなどの性ホルモンは、骨の成長を促すと同時に骨成熟(骨端線の閉鎖へ向かう変化)を進める。このため二次性徴の発現時期は、個人差の大きい暦年齢よりも、身体の成熟度を反映する骨年齢とよく対応する。臨床的にも、思春期の早発・遅発を評価する際には手のX線写真で骨年齢を評価し、暦年齢・身長と比較する。

  4. ×d.  陰茎の成長は思春期後期に出現する。

    誤り。陰茎の成長は精巣容量の増大に続いて、思春期の前半(Tanner分類3度ごろ)から始まる。思春期後期に現れるのは腋毛・ひげ・変声などである。精巣から分泌されるテストステロンが増加すると、比較的早い段階で陰茎の長さ・太さが増してくる。

  5. ×e.  身長急伸は初経の後に起こる。

    誤り。女子の身長急伸(成長スパート)は乳房発育が始まって間もない思春期前半に起こり、初経はその身長増加速度のピークを過ぎた後に来る。初経のころにはエストロゲンの作用で骨端線の閉鎖が進み始めているため、初経後の身長の伸びは限られる。したがって身長急伸は初経の前に起こる。

二次性徴の出現順序(典型例)

・女子:乳房発育 → 陰毛発生 → 身長急伸 → 初経 → 腋毛(陰毛と乳房の順序が前後することもあるが、乳房発育が最初となるのが典型) ・男子:精巣容量増大 → 陰茎発育・陰毛発生 → 身長急伸 → 腋毛・ひげ・変声 ・男子の身長急伸は女子より約2年遅れて始まり、そのピーク時期は思春期の中〜後期にあたる。女子は思春期の早い段階でピークを迎える。

Tanner分類

乳房(女子)、外性器(男子)、陰毛(男女)の発達を1度(思春期前)〜5度(成人型)の5段階で評価する分類である。思春期の開始はTanner 2度の出現で判断する。

骨年齢

手(手根骨・中手骨・指骨)のX線写真から骨の成熟度を評価し、それが何歳相当かを示したものである。幼児期では手根骨の化骨核(骨化中心)の数が簡便な目安となる。標準的な評価法にTW2法(Tanner-Whitehouse法)やGreulich-Pyleのアトラス法がある。 ・骨年齢が遅れる:体質性思春期遅発症、成長ホルモン分泌不全、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症など ・骨年齢が進む:思春期早発症、先天性副腎過形成など(性ホルモン過剰) 骨年齢と思春期発来がともに遅れている場合は、体質性のほか内分泌疾患の存在を考えて精査する。

思春期早発症の目安(日本の診断の手引きの基準)

・女子:7歳6か月未満で乳房発育、8歳未満で陰毛発生、10歳6か月未満で初経 ・男子:9歳未満で精巣容量増大、10歳未満で陰毛発生、11歳未満で腋毛・ひげ・変声

POINT

・二次性徴の最初の徴候:女子は乳房発育、男子は精巣容量の増大(4 mL以上)。 ・陰毛・腋毛は最初の徴候ではない。腋毛・ひげ・変声は男子の思春期後半の所見。 ・陰茎の成長は精巣増大に続く思春期前半の所見。 ・女子の身長急伸は初経の前。初経以後は骨端線閉鎖が進み、身長の伸びは小さい。 ・二次性徴の発現は暦年齢より骨年齢とよく相関する。骨年齢は手のX線写真で評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。