カレンダーより骨が知っている―二次性徴の順番と「骨年齢」の意味
第111回医師国家試験 E問題 第19問
国試問題にチャレンジ
二次性徴について正しいのはどれか。
- a.女子では陰毛の出現が最初の徴候である。
- b.男子では腋毛の出現が最初の徴候である。
- c.発現は暦年齢より骨年齢によく相関する。
- d.陰茎の成長は思春期後期に出現する。
- e.身長急伸は初経の後に起こる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
二次性徴は視床下部―下垂体―性腺系の活性化によって起こり、最初の徴候は女子では乳房発育、男子では精巣容量の増大(4 mL以上)です。女子では乳房発育に続いて陰毛、身長急伸、初経の順に進み、身長急伸は初経より前に起こります。男子では精巣増大に続き思春期前半に陰茎の発育と陰毛が現れ、腋毛・ひげ・変声は後半の所見です。性ホルモンは骨の成長と同時に骨成熟を進めるため、二次性徴の発現は暦年齢より骨年齢とよく相関し、手のX線写真による骨年齢評価は思春期早発症や遅発症の診療に欠かせません。出現順序と骨年齢の意味を理解しておくことは、低身長や思春期の異常を相談された際の評価の土台になります。
解答・解説
正解はcです
テーマ
二次性徴(思春期に性ホルモンの作用で現れる身体の性差の発達)の出現順序と、その発現時期を規定する因子を問う問題である。
二次性徴が起こる仕組み
思春期になると視床下部からのGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の律動的分泌が始まり、下垂体からLH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され、性腺(卵巣・精巣)からエストロゲンやテストステロンが分泌される。これらの性ホルモンは乳房・外性器・体毛の発達を促すと同時に、骨の長軸方向の成長を加速させ(身長急伸)、さらに骨端線(成長板)の成熟・閉鎖も進める。
解き方の考え方
・最初の徴候:女子は乳房発育(乳房腫大、thelarche)、男子は精巣容量の増大である。陰毛や腋毛は副腎・性腺アンドロゲンによるもので、それより後に現れる。 ・身長急伸と初経:女子の身長急伸(成長スパート)は思春期の比較的早い時期に起こり、ピークを過ぎてから初経が来る。初経以降は骨端線の閉鎖が進むため、身長の伸びは鈍る。 ・暦年齢と骨年齢:性ホルモンは骨成熟そのものを進めるため、二次性徴の発現は暦年齢(生まれてからの年数)よりも骨年齢(骨の成熟度から推定した生物学的年齢)とよく一致する。 これらを押さえれば、正しい記述は「発現は暦年齢より骨年齢によく相関する」であると判断できる。
選択肢考察
- ×a. 女子では陰毛の出現が最初の徴候である。
誤り。女子の二次性徴で最初に現れるのは乳房の発育(Tanner分類2度:乳房のつぼみ状隆起)である。その後、陰毛の発生、外性器の発達、身長急伸を経て、最後に初経が来るのが一般的な順序である。陰毛の出現は副腎由来のアンドロゲンの影響が大きく、乳房発育より遅れて現れることが多い。
- ×b. 男子では腋毛の出現が最初の徴候である。
誤り。男子で最初に現れる徴候は精巣容量の増大(Tanner分類2度、精巣容量4 mL以上が目安)である。続いて陰茎の発育、陰毛の発生が起こり、腋毛・ひげ・声変わり(変声)は思春期の後半に現れる。腋毛はむしろ遅い徴候であり、最初の徴候ではない。
- ○c. 発現は暦年齢より骨年齢によく相関する。
正しい。二次性徴を引き起こすエストロゲン・アンドロゲンなどの性ホルモンは、骨の成長を促すと同時に骨成熟(骨端線の閉鎖へ向かう変化)を進める。このため二次性徴の発現時期は、個人差の大きい暦年齢よりも、身体の成熟度を反映する骨年齢とよく対応する。臨床的にも、思春期の早発・遅発を評価する際には手のX線写真で骨年齢を評価し、暦年齢・身長と比較する。
- ×d. 陰茎の成長は思春期後期に出現する。
誤り。陰茎の成長は精巣容量の増大に続いて、思春期の前半(Tanner分類3度ごろ)から始まる。思春期後期に現れるのは腋毛・ひげ・変声などである。精巣から分泌されるテストステロンが増加すると、比較的早い段階で陰茎の長さ・太さが増してくる。
- ×e. 身長急伸は初経の後に起こる。
誤り。女子の身長急伸(成長スパート)は乳房発育が始まって間もない思春期前半に起こり、初経はその身長増加速度のピークを過ぎた後に来る。初経のころにはエストロゲンの作用で骨端線の閉鎖が進み始めているため、初経後の身長の伸びは限られる。したがって身長急伸は初経の前に起こる。
二次性徴の出現順序(典型例)
・女子:乳房発育 → 陰毛発生 → 身長急伸 → 初経 → 腋毛(陰毛と乳房の順序が前後することもあるが、乳房発育が最初となるのが典型) ・男子:精巣容量増大 → 陰茎発育・陰毛発生 → 身長急伸 → 腋毛・ひげ・変声 ・男子の身長急伸は女子より約2年遅れて始まり、そのピーク時期は思春期の中〜後期にあたる。女子は思春期の早い段階でピークを迎える。
Tanner分類
乳房(女子)、外性器(男子)、陰毛(男女)の発達を1度(思春期前)〜5度(成人型)の5段階で評価する分類である。思春期の開始はTanner 2度の出現で判断する。
骨年齢
手(手根骨・中手骨・指骨)のX線写真から骨の成熟度を評価し、それが何歳相当かを示したものである。幼児期では手根骨の化骨核(骨化中心)の数が簡便な目安となる。標準的な評価法にTW2法(Tanner-Whitehouse法)やGreulich-Pyleのアトラス法がある。 ・骨年齢が遅れる:体質性思春期遅発症、成長ホルモン分泌不全、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症など ・骨年齢が進む:思春期早発症、先天性副腎過形成など(性ホルモン過剰) 骨年齢と思春期発来がともに遅れている場合は、体質性のほか内分泌疾患の存在を考えて精査する。
思春期早発症の目安(日本の診断の手引きの基準)
・女子:7歳6か月未満で乳房発育、8歳未満で陰毛発生、10歳6か月未満で初経 ・男子:9歳未満で精巣容量増大、10歳未満で陰毛発生、11歳未満で腋毛・ひげ・変声
POINT
・二次性徴の最初の徴候:女子は乳房発育、男子は精巣容量の増大(4 mL以上)。 ・陰毛・腋毛は最初の徴候ではない。腋毛・ひげ・変声は男子の思春期後半の所見。 ・陰茎の成長は精巣増大に続く思春期前半の所見。 ・女子の身長急伸は初経の前。初経以後は骨端線閉鎖が進み、身長の伸びは小さい。 ・二次性徴の発現は暦年齢より骨年齢とよく相関する。骨年齢は手のX線写真で評価する。
