StudyMed医師国家試験

「義務」か「推奨」か―食品のアレルギー表示を分ける境界線

第111回医師国家試験 B問題 第39問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第39問

食物アレルギー症状を引き起こすことが明らかになった食品のうち,加工食品に表示が義務付けられている特定原材料はどれか。3つ選べ。

  1. a.卵
  2. b.小麦
  3. c.そば
  4. d.大豆
  5. e.ゼラチン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の分野から、加工食品のアレルギー表示制度を問う問題だ。ポイントは、表示が法律で「義務」とされる特定原材料と、「推奨」にとどまる特定原材料に準ずるものの線引き。まず、表示義務の品目がどう選ばれているか知っているかな。
医学生医学生
患者数が多い食品が選ばれている、というイメージです。
ドクタードクター
半分正解だね。基準は「発症数が多い」か「重篤な症状を起こしやすい」かのどちらか。患者数だけでなく、アナフィラキシーのような重症例の起こりやすさも考慮されているんだ。現在の特定原材料は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目。くるみは患者数の増加を受けて2023年に追加されたもので、この問題の出題当時は7品目だったけれど、答えは変わらない。
医学生医学生
CBTの勉強で7品目を覚えた気がしますが、くるみが入ったなら更新しないといけませんね。
ドクタードクター
そうだね。では選択肢を見ていこう。まず卵から。
医学生医学生
小児科の実習で、食物負荷試験を受けに来ていた子の多くが卵アレルギーでした。
ドクタードクター
鶏卵は乳幼児の即時型食物アレルギーの原因として最も多い。主な抗原は卵白のオボアルブミンとオボムコイドで、オボアルブミンは加熱で抗原性が下がりやすく、オボムコイドは熱に強い。成長とともに耐性を獲得して食べられるようになる子が多いのも特徴だ。患者数の多さから、特定原材料として表示義務がある。
医学生医学生
小麦は子どもだけでなく大人でも問題になると聞きました。
ドクタードクター
その通り。小麦は乳幼児期の主要な原因食物であると同時に、成人では小麦を食べた後に運動して起こる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの代表的な原因になる。主な抗原はω-5グリアジンだ。発症数が多く重篤化もしうるので、これも表示義務の対象だね。
医学生医学生
そばは、卵や小麦ほど患者さんが多い印象はないんですが。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。そばは発症数では卵・乳・小麦に及ばないけれど、ごく微量でもアナフィラキシーショックを起こしやすく、耐性も獲得しにくい。つまり「重篤になりやすい」側の理由で選ばれている代表格なんだ。落花生も同じタイプだよ。
医学生医学生
なるほど、選定基準が2本立てなのがよくわかります。大豆も身近な食品なので義務かと思いました。
ドクタードクター
そう思う人は多いけれど、大豆は特定原材料に準ずるもので、表示は推奨にとどまる。ただし臨床的には興味深い食品で、シラカバなどカバノキ科の花粉症の人では、花粉抗原と交差反応する大豆タンパクのために、豆乳を飲んで口腔アレルギー症候群や時にアナフィラキシーを起こすことがある。一方、味噌や醤油のような発酵食品は抗原性が下がっていて、摂取できる場合も多い。
医学生医学生
ゼラチンは、微生物学の講義でワクチンの話として聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく覚えているね。かつて麻疹・風疹・水痘などの生ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンによる感作やアレルギー反応が問題になり、その後ワクチンからのゼラチン除去や低減が進められた。食品のゼラチンで初めて感作されることはまれで、表示は推奨にとどまる準ずるものの一つだ。
医学生医学生
整理すると、卵・小麦・そばが義務、大豆とゼラチンは推奨、ということですね。
ドクタードクター
その通り。準ずるものは20品目あって、ごま、カシューナッツ、牛肉、鶏肉、いか、いくら、キウイフルーツ、バナナなどが含まれる。制度の根拠も押さえておこう。アレルギー表示は2002年に食品衛生法に基づいて始まり、現在は2015年施行の食品表示法と食品表示基準に引き継がれている。表示は原則として原材料ごとに個別に行う。
医学生医学生
お店の量り売りのお惣菜やレストランの料理にも表示義務はあるんですか。
ドクタードクター
義務の対象は容器包装された加工食品で、量り売りの惣菜や外食は対象外なんだ。だから患者さんへの生活指導では、外食時には店に直接確認するよう伝えることが大切になる。また、鶏卵・牛乳・小麦は年齢とともに耐性を獲得しやすいけれど、そば・落花生・甲殻類・木の実類は耐性を得にくい。患者さんの年齢と原因食物から、今後の見通しを説明できるようにしておこう。

まとめ

加工食品のアレルギー表示は、表示が義務の「特定原材料」と、推奨にとどまる「特定原材料に準ずるもの」に分かれます。特定原材料は発症数が多いか重篤化しやすい食品から選ばれ、現在はえび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生の8品目(くるみは2023年追加)で、卵・小麦は患者数の多さ、そば・落花生は重篤性の高さが主な理由です。大豆やゼラチン、ごま、カシューナッツなど20品目は準ずるものとして表示が推奨されるにとどまります。制度は2002年に食品衛生法で始まり現在は食品表示法に基づきますが、量り売りや外食は義務の対象外です。この線引きを理解することは、国家試験対策だけでなく、食物アレルギー患者への生活指導や誤食予防に直結します。

解答・解説

正解はa, b, cです

本問は、食物アレルギーの原因となる食品のうち、加工食品への表示が法令で「義務」とされている特定原材料を問う知識問題である。

アレルギー表示制度の枠組み

アレルギー物質を含む加工食品による健康被害を防ぐため、2002(平成14)年4月から食品衛生法に基づくアレルギー表示が始まった。現在は2015(平成27)年4月施行の食品表示法と食品表示基準に引き継がれている。表示の対象となる品目は、法的な拘束力の強さによって次の2群に分かれる。 ・特定原材料(表示義務): 発症数が多い食品、または重篤な症状(アナフィラキシーなど)を起こしやすい食品。現在はえび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の8品目である。 ・特定原材料に準ずるもの(表示推奨): 発症例は一定数あるが、特定原材料ほど多くない、または重篤例が少ない食品。大豆やゼラチンなど20品目があり、表示は「可能な限り努める」とされる。

解き方

選択肢のうち、卵・小麦・そばの3つが特定原材料、大豆とゼラチンは特定原材料に準ずるもの(推奨表示)に入る。「義務」と「推奨」の線引きを覚えていれば解ける。なお、出題当時の特定原材料は7品目(くるみ追加前)だったが、本問の正解は変わらない。

選択肢考察

  1. ○a.  卵

    鶏卵は乳幼児の即時型食物アレルギーの原因として最も多く、患者数が非常に多いため特定原材料として表示が義務付けられている。主な抗原は卵白のオボアルブミン(加熱で抗原性が下がりやすい)やオボムコイド(加熱に強い)である。成長とともに耐性を獲得して食べられるようになる例が多い。

  2. ○b.  小麦

    小麦は乳幼児期の主要な原因食物であり、学童期以降や成人でも原因となる。成人では、小麦を食べた後に運動して起こる食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の原因として代表的である(主な抗原はω-5グリアジン)。発症数が多く重篤化もしうるため、特定原材料として表示義務の対象である。

  3. ○c.  そば

    そばは発症数こそ卵・乳・小麦より少ないが、ごく微量でもアナフィラキシーショックなどの重篤な症状を起こしやすく、耐性獲得もしにくい。幼児から成人まで原因となる。重症度の高さを理由に、特定原材料として表示が義務付けられている。

  4. ×d.  大豆

    大豆は「特定原材料に準ずるもの」に分類され、表示は推奨にとどまり義務ではない。シラカバなどカバノキ科花粉症の患者では、花粉抗原(Bet v 1)と交差反応する大豆タンパク(Gly m 4)により、豆乳の摂取で口腔アレルギー症候群や時にアナフィラキシーを生じることがある。一方、味噌・醤油など発酵加工品は抗原性が低下しており、摂取できる場合も多い。

  5. ×e.  ゼラチン

    ゼラチンも「特定原材料に準ずるもの」であり、表示は推奨で義務ではない。食品中のゼラチンで初めて感作されることはまれである。かつて麻疹・風疹・水痘などの生ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンによる感作やアレルギー反応が問題となったが、その後ワクチンのゼラチン除去・低減が進められた。

特定原材料(表示義務)8品目

えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ) ・くるみは患者数の増加を受けて2023(令和5)年に追加された(2025年3月末までの経過措置期間を経て完全義務化)。それ以前は7品目であった。

特定原材料に準ずるもの(表示推奨)20品目

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

表示の原則

・アレルゲンは原則として原材料ごとに「(一部に卵・小麦を含む)」のように個別表示する。複数をまとめて記載する一括表示は例外的な扱いとなっている(2015年の食品表示基準で原則が整理された)。 ・容器包装された加工食品が対象であり、店頭で量り売りする惣菜や外食は表示義務の対象外である。

原因食物の年齢による変化

・乳幼児期: 鶏卵、牛乳、小麦が多い。近年は木の実類(特にくるみ)が増えている。 ・学童期以降〜成人: 甲殻類、小麦、果物、魚類、そば、落花生などの比重が高まる。 ・鶏卵・牛乳・小麦は年齢とともに耐性を獲得しやすいが、そば・落花生・甲殻類・木の実類は耐性を獲得しにくい。

POINT

・表示義務のある特定原材料は、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生の8品目(くるみは2023年追加)。 ・大豆、ゼラチン、ごま、カシューナッツ、牛肉などは「特定原材料に準ずるもの」で表示は推奨(任意)。 ・選定の根拠は「発症数が多い」または「重篤になりやすい」こと。そば・落花生は後者の代表。 ・法的根拠は2002年の食品衛生法に始まり、現在は食品表示法(2015年施行)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。