うぶ毛だけが逆向きに動く―外表所見で読み解く新生児の成熟度
第111回医師国家試験 B問題 第29問
国試問題にチャレンジ
正期産児より早産児にみられる所見はどれか。
- a.うぶ毛が多い。
- b.耳介軟骨が厚い。
- c.皮下脂肪が厚い。
- d.皮膚角化層が厚い。
- e.足底のしわが多い。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
新生児の成熟度は、皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房、耳介、外性器などの外表所見と、姿勢や筋緊張などの神経学的所見を組み合わせたDubowitz法やNew Ballard法で評価します。皮下脂肪、皮膚角化層、耳介軟骨、足底のしわ、乳輪・乳腺、陰嚢のしわは成熟とともに増える・厚くなる所見であり、正期産児の特徴です。これに対し、うぶ毛は妊娠28週前後に最も多くなった後、妊娠末期に抜け落ちて減るため、正期産児より早産児で多く見られます。早産児の皮下脂肪や角化層の乏しさは、低体温や不感蒸泄の増加、皮膚損傷につながるため、保育器での保温・加湿が欠かせません。「成熟で増えるもの」と「減るもの」を整理しておくことは、在胎週数の推定だけでなく早産児管理の理解にも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
テーマ
新生児の外表所見から成熟度(在胎週数)を推定する考え方を問う問題である。早産児は妊娠22週0日〜36週6日、正期産児は37週0日〜41週6日に生まれた児をいう。在胎週数が不明確な場合や、発育の評価を行う場合には、外表所見(皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳房、耳介、外性器)と神経学的所見(姿勢、筋緊張、関節の角度など)を点数化する Dubowitz 法や New Ballard 法で成熟度を評価する。
正解を導く考え方
胎児は妊娠後期に向かって、皮下脂肪の蓄積、皮膚の角化・肥厚、耳介軟骨の発達、足底のしわの増加といった「成熟に伴って増える・厚くなる」変化を示す。一方、うぶ毛(胎毛、lanugo)は妊娠中期に全身に生え、その後妊娠末期にかけて抜け落ちて減っていく「成熟に伴って減る」所見である。したがって、正期産児より早産児で目立つのは、うぶ毛が多いことである。他の選択肢はいずれも成熟が進んだ児(正期産児)の特徴である。
選択肢考察
- ○a. うぶ毛が多い。
うぶ毛(胎毛)は妊娠20週ごろから全身に生え始め、妊娠28週前後に最も多くなる。その後は妊娠末期にかけて抜け落ち、正期産児では肩や背部などにわずかに残る程度となる。そのため、早産児(特に在胎28〜34週ごろ)では全身にうぶ毛が多く見られ、未熟性を示す所見となる。なお、New Ballard 法では妊娠24週未満の極端な早産児ではうぶ毛がまだ乏しいとされるが、一般的な早産児と正期産児を比べれば、早産児の方がうぶ毛が多い。
- ×b. 耳介軟骨が厚い。
耳介軟骨は在胎週数が進むにつれて発達し、厚く硬くなる。正期産児の耳介はしっかりした形を保ち、折り曲げてもすぐに元に戻る。早産児では軟骨が薄く柔らかいため、耳介が平たく、折り曲げると戻りが遅い(あるいは戻らない)。耳介軟骨が厚いのは成熟した児の所見である。
- ×c. 皮下脂肪が厚い。
皮下脂肪は主に妊娠後期(特に30週以降)に急速に蓄積する。正期産児は皮下脂肪によりふっくらした体型となり、体温保持にも役立つ。早産児では皮下脂肪が乏しく、皮膚にしわが寄って痩せて見え、低体温になりやすい。皮下脂肪が厚いのは成熟した児の所見である。
- ×d. 皮膚角化層が厚い。
表皮の角化層は妊娠後期に発達して厚くなり、皮膚のバリア機能が整う。早産児では角化層が薄いため、皮膚が赤くゼラチン状で透明感があり、皮下の血管が透けて見える。また水分が皮膚から蒸発しやすい(不感蒸泄が多い)。正期産児では皮膚が厚くなり、表面の落屑やひび割れが見られることもある。角化層が厚いのは成熟した児の所見である。
- ×e. 足底のしわが多い。
足底のしわ(足底溝)は、まず足底の前方(つま先側)に現れ、在胎週数が進むにつれて踵側へ広がり、正期産児では足底全体に見られるようになる。早産児ではしわが少なく、前方の一部にとどまる。足底のしわが多いのは成熟した児の所見である。
成熟度評価で用いる主な外表所見の変化(未熟 → 成熟)
・皮膚:薄く赤く透明で血管が透見できる → 厚く不透明になり、落屑・ひび割れが見られる ・うぶ毛:妊娠中期に全身に増加 → 妊娠末期に減少し、正期産では一部に残るのみ ・胎脂:妊娠中期から蓄積 → 妊娠末期(特に過期産)には減少 ・足底のしわ:少ない、前方のみ → 足底全体に及ぶ ・乳房(乳輪・乳腺):乳輪が目立たず乳腺組織を触れない → 乳輪が隆起し乳腺組織を触れる ・耳介:軟骨が薄く平たく、折り曲げると戻りにくい → 軟骨が厚く硬く、すぐ戻る ・外性器:男児は精巣が未下降で陰嚢のしわが少ない → 精巣が陰嚢内に下降し陰嚢のしわが多い。女児は陰核・小陰唇が目立つ → 大陰唇が発達して小陰唇・陰核を覆う
神経学的所見
成熟に伴い四肢の屈曲姿勢と筋緊張が強くなる。早産児は四肢を伸ばした姿勢をとり、スカーフ徴候(腕を反対側の肩へ引いたときに肘が正中を大きく越える)や膝窩角が大きいなど、筋緊張の低さが目立つ。
早産児の外表の特徴が臨床上もつ意味
皮下脂肪や角化層が乏しいことは、低体温や水分喪失(不感蒸泄の増加)、皮膚損傷の起こりやすさにつながるため、保育器による保温・加湿などの管理が必要となる。
POINT
・成熟に伴って増える・厚くなるもの:皮下脂肪、皮膚角化層、耳介軟骨、足底のしわ、乳輪・乳腺、陰嚢のしわ。 ・成熟に伴って減るもの:うぶ毛(妊娠28週前後が最多)、皮膚の透明感、胎脂(妊娠末期に減少)。 ・早産児の外表所見:うぶ毛が多い、皮膚が薄く赤く透明、皮下脂肪が乏しい、耳介が柔らかい、足底のしわが少ない。 ・成熟度評価法:Dubowitz 法、New Ballard 法(外表所見+神経学的所見)。
