症状が出る前に見つけ出す―新生児マススクリーニングで学ぶ予防の3段階
第111回医師国家試験 B問題 第28問
国試問題にチャレンジ
二次予防について正しいのはどれか。
- a.性感染症に対してコンドーム使用を推奨
- b.新生児マススクリーニングの施行
- c.河川に遊泳禁止の看板を掲示
- d.適切な睡眠時間を指導
- e.ワクチンの接種
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
疾病予防は、発生そのものを防ぐ一次予防、無症状や軽症の段階で見つけて治療する二次予防、発症後の悪化防止やリハビリテーション・社会復帰を図る三次予防の3段階に分けられます。コンドームの使用推奨やワクチン接種は感染の成立を防ぐ特異的予防、遊泳禁止の看板は事故防止、睡眠指導は健康増進であり、いずれも一次予防です。新生児マススクリーニングは、出生時に症状のない先天性代謝異常症や内分泌疾患を踵採血で見つけ出し、食事療法やホルモン補充で障害を防ぐ、二次予防の典型例です。「その時点で病気はすでに始まっているか」「目的は発生を防ぐことか、早く見つけることか」を考えれば段階を見分けられます。スクリーニングが有効となる条件や偽陽性の害も含めて理解しておくことは、健診や検診の結果を患者に説明する臨床の場面でも役立ちます。
解答・解説
正解はbです
テーマ
疾病予防の3段階(一次予防・二次予防・三次予防)の区別を問う問題である。この考え方は Leavell と Clark が提唱した予防医学の枠組みに基づく。 ・一次予防:病気にかかる前(健康な段階)に、発生そのものを防ぐ。健康増進(健康教育、栄養・運動・休養の指導など)と特異的予防(予防接種、事故防止、環境対策、感染経路の遮断など)からなる。 ・二次予防:すでに病気が始まっているが症状が出ていない、あるいは軽い段階で見つけ出し(早期発見)、早く治療して(早期治療)、進行や合併症・障害を防ぐ。健康診断、がん検診、スクリーニング検査が代表例である。 ・三次予防:病気が発症した後に、機能障害の悪化を防ぎ、リハビリテーションで日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を回復させ、再発防止や社会復帰を図る。
正解を導く考え方
各選択肢について「その対策を行う時点で、対象者はすでに病気をもっている可能性があるか」「目的は発生を防ぐことか、早く見つけることか」を考えるとよい。発生を防ぐための行動変容、環境整備、予防接種は一次予防であり、まだ症状が現れていない病気を検査で見つけ出す取り組みが二次予防である。選択肢のうち検査によって無症状の疾患を拾い上げるものは新生児マススクリーニングだけである。
選択肢考察
- ×a. 性感染症に対してコンドーム使用を推奨
コンドームは性行為の際に病原体が粘膜や体液を介して伝わるのを物理的に遮断し、性感染症(クラミジア感染症、淋菌感染症、梅毒、HIV感染症など)にかからないようにする手段である。感染の成立そのものを防ぐことが目的であり、一次予防(特異的予防)に当たる。
- ○b. 新生児マススクリーニングの施行
新生児マススクリーニングは、生後数日(おおむね生後4〜6日)の新生児の踵から少量の血液をろ紙に採取し、先天性代謝異常症(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症など)や内分泌疾患(先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症)を調べる検査である。これらの疾患は出生時にはほとんど症状がないが、放置すると知的障害や副腎クリーゼなど重い障害・生命の危険をもたらす。症状が出る前に見つけて食事療法やホルモン補充を始めることで障害の発生を防ぐのが目的であり、早期発見・早期治療による二次予防の典型である。現在はタンデムマス法の導入により、アミノ酸代謝異常症・有機酸代謝異常症・脂肪酸代謝異常症を含む20種類以上の疾患が対象となっている。
- ×c. 河川に遊泳禁止の看板を掲示
危険な場所での遊泳を思いとどまらせ、溺水などの事故を未然に防ぐための対策である。事故(外傷)の発生を防ぐことが目的であり、一次予防(特異的予防のうちの事故防止)に当たる。
- ×d. 適切な睡眠時間を指導
十分な休養・睡眠をとるよう生活習慣を整えることは、高血圧・糖尿病などの生活習慣病やうつ病などの精神疾患の発症リスクを下げ、全体的な健康を保持・増進する。特定の疾患を見つける行為ではなく、健康な人が病気にならないようにする健康教育・生活指導であり、一次予防(健康増進)に当たる。
- ×e. ワクチンの接種
ワクチンは病原体の抗原を前もって体内に入れて免疫(抗体や細胞性免疫)を獲得させ、特定の感染症の発症や重症化を防ぐものである。病気が起こる前に行う特定疾患への対策であり、一次予防の中の特異的予防の代表例である。
予防の3段階と具体例
・一次予防(発生予防) 健康増進:健康教育、栄養指導、運動習慣、適切な睡眠・休養、禁煙指導など 特異的予防:予防接種、事故防止(シートベルト・ヘルメット、危険箇所の表示)、職場の有害物質対策、上下水道の整備、食品衛生、感染経路対策(手洗い、コンドーム)、ヨード添加など ・二次予防(早期発見・早期治療) 健康診断、特定健康診査、がん検診(胃・大腸・肺・乳・子宮頸がん)、新生児マススクリーニング、新生児聴覚スクリーニング、妊婦健診での感染症検査など ・三次予防(悪化防止・社会復帰) リハビリテーション、再発予防のための服薬・生活管理、心臓リハビリテーション、作業療法・職業訓練、職場復帰支援など
スクリーニングが成り立つ条件
スクリーニングを二次予防として行う価値があるのは、対象疾患が重大で一定の頻度があり、無症状の期間に検出でき、早期に治療すると予後が改善し、検査が安全・簡便で、精度(感度・特異度)が十分であり、費用に見合う効果がある場合である。新生児マススクリーニングの対象疾患はこの条件をよく満たしている。
POINT
・一次予防:発生を防ぐ(健康増進+特異的予防:予防接種、事故防止、感染経路の遮断)。 ・二次予防:早期発見・早期治療(健診、がん検診、新生児マススクリーニング)。 ・三次予防:悪化防止・リハビリテーション・社会復帰。 ・「無症状のうちに検査で見つけるか」が二次予防を見分ける鍵である。
